陰性クラスでも実際にアナフィラキシーを起こす患者は全体の約15〜20%に上ります。
cap-rast法(ImmunoCAP法)は、アレルゲンを固相化したセルロース担体(CAP)に患者血清を反応させ、特異的IgE抗体の濃度をkUA/Lの単位で定量化する検査です。結果はクラス0〜6に分類され、数値が大きいほど感作の程度が高いとされています。
クラス分類の目安は以下の通りです。
クラス2以上で臨床的に意義があると判断されることが多いですが、これが原則です。ただし「クラス=症状の重さ」と直結しない点が、現場での誤解を生む最大の要因です。
特異的IgEはあくまで「感作」の指標であり、感作されていても症状が出ない「不顕性感作」の状態は珍しくありません。つまり、クラスと臨床症状は別物です。この区別ができていないと、不必要な食物除去指導や過度な投薬につながるリスクがあります。
cap-rast法の感度はアレルゲンの種類によって大きく異なります。たとえば花粉アレルギー(スギ、ダニなど)では感度が85〜95%と比較的高いのに対し、食物アレルギーのなかでもピーナッツ以外のナッツ類や一部の魚類では感度が60〜70%程度にとどまることが知られています。
偽陰性が起きやすい状況として以下が挙げられます。
偽陰性が出やすい条件を知っておくことが重要です。特に「局所アレルギー」は近年注目されており、血清IgEが陰性でも鼻粘膜での局所特異的IgE産生によって通年性鼻炎を呈するケースが報告されています。この場合、cap-rast法だけを根拠に「アレルギーなし」と結論づけると治療機会を逃します。
偽陰性リスクが高い患者への対応として、皮膚プリックテストや好塩基球活性化試験(BAT)との組み合わせを検討する価値があります。これらを組み合わせることで診断精度が補完されます。
参考:アレルギー専門医向けガイドラインおよびIgE検査の解釈に関する情報
日本アレルギー学会 – アレルギー疾患の診療ガイドライン情報
日常診療でよく行われるView-39(アレルギー39項目スクリーニング)は、半定量的な多抗原スクリーニングです。一方、cap-rast法(ImmunoCAP)は単一アレルゲンまたは選択的な複数項目を定量的に測定します。この違いは重要です。
| 項目 | View-39(スクリーニング) | cap-rast法(ImmunoCAP) |
|---|---|---|
| 測定対象 | 39種類を一括 | 個別アレルゲンを選択 |
| 定量性 | 半定量(クラスのみ) | 定量(kUA/L値) |
| コスト | 1回で複数確認でき効率的 | 項目数に応じて増加 |
| 用途 | 初回スクリーニング | 確定・経過観察 |
スクリーニングで陽性が出た後、原因アレルゲンを絞り込む段階でcap-rast法を使うのが一般的な流れです。逆に、すでに疑わしいアレルゲンが明確な場合は最初からcap-rast法で定量評価するほうが効率的です。
また、コンポーネント解析(分子アレルギー診断)と組み合わせることで、交差反応性の高いPR-10タンパクへの感作なのか、真のアレルゲンへの感作なのかを区別できるようになっています。これは経口免疫療法の適応判断にも役立ちます。意外なことに、花粉症患者の口腔アレルギー症候群(OAS)の多くはPR-10への交差反応であり、cap-rast法でリンゴやモモが「クラス3」であっても加熱食品では症状が出ないケースが大半です。
cap-rast法は診断だけでなく、アレルゲン免疫療法(AIT)の効果判定にも使用されます。皮下免疫療法(SCIT)や舌下免疫療法(SLIT)の開始後、特異的IgE値は治療初期に一時的に上昇し、その後徐々に低下することが知られています。
この「一時的上昇」を知らずに治療効果がないと判断してしまうと、早期中断につながります。これは避けるべきです。一般的に免疫療法開始後3〜6か月は特異的IgEが上昇傾向を示し、12〜24か月以降で有意な低下が確認されるとされています(個人差があります)。
経過観察でのポイントを以下にまとめます。
特異的IgG4上昇の確認は、免疫療法の反応性を客観的に示せる指標です。これは使えそうです。患者への説明材料としても有効で、「IgEが下がっていないけれど体は反応している」という状況を数値で示せることは、治療継続のモチベーション維持に役立ちます。
あまり語られないことですが、臨床現場でcap-rast法が「正常」と出るにもかかわらずアレルギー様症状を呈する患者の一部は、非IgE依存性(non-IgE mediated)アレルギーのメカニズムで症状を起こしている可能性があります。
非IgE依存性反応が関与する代表的な病態には以下があります。
非IgE依存性が疑われる場合、cap-rast法を追加しても診断には結びつきません。この場合は内視鏡生検による好酸球浸潤の評価や、食物除去・負荷試験が診断の中心になります。
cap-rast法に「陰性だからアレルギーなし」とナラティブに依存することで、実は診断が数年単位で遅れているケースも報告されています。陰性=除外ではないということです。特にFPIESは診断までの平均期間が2〜3年とされており(国内外の報告による)、その間に繰り返す入院や栄養障害のリスクがあります。
参考:好酸球性消化管疾患・FPIESの診断に関わる情報
国立長寿医療研究センター – アレルギー疾患の診療情報
また、近年注目されている「ヒスタミン不耐症」はアレルギーではなく酵素活性(DAO酵素)の低下によるヒスタミン代謝障害ですが、症状がアレルギーと酷似するため、cap-rast法で陰性が続いた患者が最終的にこの診断に至るケースも少なくありません。こうした「cap-rast法の外側」にある疾患概念を持っておくことが、医療従事者としての総合診断力を高めるうえで重要です。