SPF50を使っていても、塗る量が足りなければ実際の効果はSPF10程度しかありません。
「SPF50+のものを朝しっかり塗ったから大丈夫」と感じる人は少なくありません。しかし、この考え方には大きな落とし穴があります。SPFの数値はあくまで「1cm²あたり2mgを塗布したときの効果」をもとに算出されています。顔全体に必要な量は約0.8g(500円玉大)ですが、多くの人が実際に使う量はその1/4程度と言われており、その場合、SPF50の日焼け止めでも実際に得られる効果はSPF10前後にまで落ちてしまいます。
SPF50とSPF10の差は大きいですね。これは数値の問題だけでなく、健康上のリスクに直結します。
加えて、日焼け止めは汗・皮脂・摩擦によって徐々に落ちていくため、数値が高いものを使っていても塗り直しなしでは効果を維持できません。特に屋外での活動や夏場のように汗をかきやすい状況では、2時間以内に効果が大幅に低下することが皮膚科医によって指摘されています。屋内であっても、窓ガラスはUVAを透過するため、デスクワーク中でも紫外線を受けています。屋内での推奨塗り直し頻度は3〜4時間おきが目安です。
PAの数値については誤解が多いです。PAは「UVAに対する防御効果の高さ」を示すものであり、持続時間ではありません。「PA++++だから長時間効く」は誤りで、この点は医療従事者も正確に理解しておく必要があります。
UVB(紫外線B波)はシミや日焼けの直接原因に、UVA(紫外線A波)はシワやたるみ・肌老化の原因になります。紫外線によるダメージは蓄積するため、医療従事者として患者さんに正確な情報を伝えるためにも、自身が正しい習慣を身につけておくことが大切です。
参考:日焼け止めのSPF・適正量・塗り直しに関する皮膚科医の解説(救援クリニック)
https://kyuen-clinic.jp/blogs/doctors-cosmetics/sunsreen-reapply
メイクをしたまま日焼け止めを塗り直すのは難しい、と感じる人が多いのは事実です。クリームやジェルタイプの日焼け止めをメイクの上にそのまま塗ると、ファンデーションが溶けてよれが起きてしまいます。これはクリームタイプに含まれる油性成分がメイクの下地や粉体成分を溶かしてしまうためです。つまり、メイクの上から塗り直す場合は「剤形の選択」が最初のポイントになります。
まず崩れたメイクを整えることが先決です。
塗り直しの基本的な手順は以下の通りです。
| ステップ | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| ① | ティッシュ・あぶらとり紙で軽く押さえる | 余分な皮脂・汗を取り除く。こすらない |
| ② | 崩れたメイクをパウダーで整える | ファンデーションを重ね塗りする前に整える |
| ③ | 日焼け止めをメイクの上から薄く塗る | 少量ずつ、叩き込むようにのばす |
| ④ | UVパウダーで仕上げる | メイク直し感覚でUV効果を補強できる |
ポイントは「皮脂と汗を先に取り除くこと」です。肌表面に皮脂が残ったまま日焼け止めを重ねると、よれの原因になるだけでなく、均一に塗布できず日焼け止め効果にムラが生じます。ティッシュで軽く押さえるだけで、その後の仕上がりが大きく変わります。
また、メイクの上から塗り直す量は「少量ずつ」を意識してください。一度に大量につけようとするとメイクが崩れやすくなります。パール粒1個分程度を薄く何度か重ねるイメージが適切です。これが基本です。
参考:日焼け止めの正しい塗り直し方と適量についての解説(ラロッシュポゼ皮膚科医監修)
https://www.laroche-posay.jp/dermclass/tomori19.html
メイクの上から日焼け止めを塗り直すには、剤形の選択が効果を左右します。現在市販されている塗り直し向けアイテムは、大きく3つのタイプに分類されます。それぞれ使い勝手と効果のバランスが異なるため、自分の使用シーンに合わせて選ぶことが重要です。
| タイプ | メリット | 注意点 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 🟡 パウダータイプ | メイク直しと同時にUVケアができる。皮脂吸着で崩れにくい | 塗布量が少ないとSPF効果が不十分になる | 外出中のこまめな塗り直し全般 |
| 🔵 ミストタイプ | 超微細な霧でメイクを崩しにくい。保湿成分入りが多い | 推奨量を確保するために10〜15秒以上噴霧が必要 | 汗をかいた後・短時間での補正 |
| 🟠 スティックタイプ | 手を汚さず直接塗れる。携帯性が高い | 塗りムラが出やすい。端部分(小鼻・目周り)が塗りにくい | ピンポイントの補正・外出先での手軽な塗り直し |
スプレータイプは一見便利ですが、顔への適量(約0.8g)を確保するには10〜15秒以上の噴霧が必要です。実際のところ、多くの人はシュッと2〜3回吹きかける程度で終わらせているため、SPF効果が大幅に低下している可能性があります。これは使えそうです。
また、スプレーは粒子が細かく吸引リスクもあるため、顔への使用には注意が必要とする専門家もいます。特に敏感肌や呼吸器系に配慮が必要な方は、パウダーやスティックタイプのほうが安全です。
パウダータイプは「SPF50/PA+++」程度のものも多く、メイク直しと紫外線対策が同時にできる点で忙しい医療従事者にとって非常に実用的です。ブラシ一体型やパフ付きのものも増えており、院外の移動中や外来合間でも手軽に使用できます。
参考:メイクの上から使える日焼け止めアイテム最新情報(MAQUIA公式)
https://maquia.hpplus.jp/skincare/news/116655/
医療従事者は患者さんへの紫外線対策の指導を行う立場でもあります。とりわけ抗がん剤治療中の患者や光線過敏症のリスクがある方への指導では、正確な知識が不可欠です。
塗り直しの基本的な頻度は「2〜3時間おき」が原則です。ただし、以下の状況では早めの塗り直しを推奨します。
- 🌡️ 汗をかいた後:体温調節による発汗でも日焼け止めは落ちる
- 🤧 タオル・ハンカチで顔を拭いた後:摩擦による落ちが顕著
- 💧 水に触れた後:耐水性製品でも完全には防げない
- ☀️ 直射日光を長時間浴びる活動前後:10時〜14時のピーク時間帯は特に注意
日本の紫外線量が強くなるのは3月頃から急激に増し始め、5〜7月にかけてピークを迎えます。1日の中では午前10時〜午後14時が最も強い時間帯です。気象庁のデータによると、曇りの日でも晴天の約6割の紫外線が降り注いでいます。油断は禁物ということですね。
また、日本の皮膚がん患者数は2000年以降に増加傾向にあり、2019年の患者数は約2万9400人で1980年(約4300人)の約7倍にまで増えています(日経メディカル調べ)。こうした数字を患者さんへの説明材料として活用することで、紫外線対策の重要性を具体的に伝えることができます。
参考:紫外線による健康影響と対策(環境省)
https://www.env.go.jp/chemi/uv/uv_pdf/02.pdf
参考:皮膚がんの患者数・統計情報(国立がん研究センター中央病院 看護・患者向け情報)
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/nursing/power/010/100/index.html
塗り直しの問題を「どう塗り直すか」という観点だけで考えるのには限界があります。重要なのは「最初のメイクをどう設計するか」という発想の転換です。
塗り直しが楽になる朝のメイク設計の視点を持つことが大切です。
たとえば、朝の日焼け止めの下地づくりを工夫するだけで、日中の塗り直しの負担が大幅に減ります。具体的には以下のような方法が効果的です。
- 下地にUV効果のあるものを使う:SPF30前後の化粧下地を使えば、朝の日焼け止めを省略でき層が薄くなるため、日中の塗り直し時にもよれにくい
- ファンデーションにもSPF効果のあるものを選ぶ:ファンデーション自体にSPF20〜30程度があると、塗り直し時に上からUVパウダーを乗せるだけでUV効果の補完ができる
- 仕上げに崩れにくいフィックスミストを使う:最初のメイクを崩れにくく固定しておくと、日中の日焼け止め塗り直しでよれにくくなる
つまり、朝の下地からの設計が午後の塗り直しを左右するということですね。
医療従事者の場合、マスク着用による摩擦も化粧崩れの一因です。マスクが頻繁に当たる頬・口周りは特に日焼け止めが落ちやすい部位であるため、この部分は特に意識して塗り直すことが重要です。シリコン配合のコーティング力が高い日焼け止めを選ぶ、またはパウダータイプでフィックスするといった対策が有効です。
また、皮膚科監修のスティックタイプは最近品質が向上しており、SPF50+/PA++++の高スペックを持ちながらクリームと遜色ない塗り心地のものも増えています。院内のロッカーや白衣のポケットに入れておき、外来の合間に素早く塗り直せる仕組みを整えることが、継続的な紫外線対策の鍵です。
参考:化粧崩れを防ぐ日焼け止め塗り直し術と製品選び(資生堂アネッサ公式)
https://www.shiseido.co.jp/anessa/shigaisen/howto_spray/