「補助金は申請期限まで余裕があると思っていたら、予算上限に達した12月24日に受付が突然終了し、5.4万円を受け取れなかった診療所が続出しています。」
医療費助成のオンライン資格確認とは、マイナンバーカード(マイナ保険証)1枚で、医療保険の資格情報と同時に地方単独医療費助成や公費負担医療の受給者証情報をオンラインで取得できる仕組みのことです。この基盤システムが「Public Medical Hub(PMH)」と呼ばれており、デジタル庁が開発・運用しています。
従来は、こどもの医療費助成、障害者医療費助成、ひとり親家庭医療費助成などの受給者証は紙で発行され、患者が毎回窓口に持参する必要がありました。紛失リスクや持参忘れによる再来院が現場スタッフにとって大きな事務負担になっていたのはよく知られた話ですね。PMHが導入されると、マイナ保険証をカードリーダーにかざすだけで受給者証情報が自動で取り込まれるため、窓口での確認作業が大幅に省力化されます。
つまり、患者・自治体・医療機関の三者全員にメリットがある仕組みです。
令和5〜6年度の先行実施では、22都道府県・161市町村の計183自治体が参加しました。令和7年度中には600を超える自治体への拡大が予定されており、さらに令和8年度(2026年度)中には全国規模での導入が目指されています。医療機関としてはこの流れに乗り遅れないよう、今のうちにシステム整備の検討を進めておくことが重要です。
なお、PMHシステムは令和9年(2027年)4月に社会保険診療報酬支払基金(支払基金)への移管が予定されています。これが原則として令和8年度中に導入を完了する必要がある理由の一つです。期限が決まっている点は要注意です。
参考:デジタル庁「Public Medical Hub(PMH)」公式ページ(医療機関・薬局向けの情報、最新の対応ベンダー一覧を掲載)
デジタル庁|自治体・医療機関等をつなぐ情報連携システム(Public Medical Hub)
補助金の対象は病院・診療所・薬局で、それぞれ補助上限額と補助率が異なります。これが条件です。
まず、最も多くの施設が該当する診療所について説明します。医療費助成のオンライン資格確認に係るレセコン改修のみを実施する場合、補助上限額は5.4万円(事業費7.3万円を上限にその3/4を補助)となります。さらに「マイナ診察券対応との一体改修」も同時に行う場合は上限額が上がります。診療所の場合、費用全体の4分の3が補助されるため、比較的有利な補助率です。
病院の場合はより大きな金額が動きます。再来受付機の改修を含まない場合の上限は28.3万円(事業費56.6万円の1/2)ですが、再来受付機等の改修を含む場合は最大60万円(事業費120万円の1/2)まで補助されます。これは使えそうです。
薬局は、大型チェーン薬局以外の場合は診療所と同じく5.4万円(事業費7.3万円の3/4)が上限です。一方、グループで処方箋受付が月4万回以上の大型チェーン薬局は補助率が1/2となり、上限は3.6万円に下がります。大型チェーン薬局だけは例外です。
補助対象となる改修内容は主に次の3区分に分かれています。
- ① 医療費助成のオンライン資格確認に係るレセコン改修のみ
- ② 医療費助成オンライン資格確認+マイナ診察券の一体改修
- ③ マイナ診察券のみの改修(診療所・病院のみ対象)
令和7年度においては、①の「医療費助成のみ」区分は2025年12月24日に予算上限到達で受付終了となりました。②と③は2026年1月31日まで受付継続となっています。申請する区分によって状況が異なるため、最新の情報を必ずポータルサイトで確認してください。
参考:社会保険診療報酬支払基金「医療費助成のオンライン資格確認・マイナンバーカードの診察券利用に関する助成金(令和7年度)」(交付額の詳細マトリクスが確認できます)
申請の流れは5ステップで構成されています。順を追って確認しましょう。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① | レセコン等の改修を完了する |
| ② | システムベンダから請求書を受領し、チェックシートに必要事項を記入してもらう |
| ③ | システムベンダ等に改修費用を精算する |
| ④ | システムベンダから領収書と領収書内訳書を受領する |
| ⑤ | 書類を添付して「医療機関等向け総合ポータルサイト」からオンライン申請する |
申請に必須の書類は以下の3点です。
- 📄 領収書(写):精算が確認できる書類。見積書・請求書・注文書は不可。
- 📄 領収書内訳書:領収書の詳細な内訳を税込み金額で記載したもの。合計額が領収書と一致している必要あり。
- 📄 チェックシート:ベンダーが改修内容を記入する書類。医療機関側での記入は不要だが、ベンダーへの依頼を忘れずに。
ここが重要です。ポータルサイトの注意書きでも明記されていますが、書類に不備があった場合は申請が一度取り消され、再申請が必要になります。特に多い不備パターンは①領収書の添付漏れ、②請求書を誤って添付、③領収書と内訳書の合計額の不一致、④チェックシートの添付漏れです。これらはすべて防げるミスです。
申請はすべてポータルサイトからオンラインで行います。書面の郵送は不要です。ただし、申請前にポータルサイト内の「助成金申請手順書」を必ず一読することが強く推奨されています。申請期限直前に書類の不備が発覚した場合、期限との兼ね合いで交付できなくなるリスクもある点は、特に留意しておきましょう。
なお、申請条件として、改修完了後に「オンライン資格確認等システム 環境設定情報更新」画面において医療費助成情報の利用を「利用する」に設定することが必要です。この設定をすることで、PMHシステム利用規約への同意とみなされます。
参考:社会保険診療報酬支払基金「訪問診療等・オンライン診療等・外来診療等におけるオンライン資格確認等導入に係る助成金」(申請様式・手順書も掲載)
「予算が余れば期限まで大丈夫」と思っている医療機関は少なくありません。ここが最大の落とし穴です。
令和7年度の実例を見ると、補助金の申請受付は2025年6月6日にスタートしたにもかかわらず、「医療費助成のオンライン資格確認に係る改修のみ(診療所②・病院②・薬局)」の区分は、申請期限の2026年1月31日より約5週間も早い2025年12月24日に予算上限到達で受付が終了しました。この事実を知らずに年明けに申請しようとした医療機関は、補助金を1円も受け取れなかったことになります。
厚生労働省のQ&Aにも「本補助金は予算の範囲内において交付されるものであり、補助額に達した場合には早期終了の可能性があること」と明記されています。つまり、申請期限はあくまでも「上限」であり、予算がなくなれば即座に終了するということです。予算切れには期限がありません。
具体的には、改修が完了してシステムベンダから領収書が届いた段階で、速やかに申請手続きを進めることが重要です。「年末にまとめてやろう」「確定申告が終わってから」といった後回しにしないことが原則です。
また、令和8年度(2026年度)の補助金については、現時点では令和8年度補正予算の活用を含む次期事業の案内が出ており、随時情報が更新されています。令和7年度で申請が間に合わなかった施設も、次期補助金の動向を注視しておきましょう。
| 区分 | 令和7年度の状況 |
|---|---|
| ①医療費助成のみ改修(診療所・病院②・薬局) | 🔴 2025年12月24日に予算上限到達で受付終了 |
| ②医療費助成+マイナ診察券の一体改修 | 🟢 2026年1月31日まで受付継続 |
| ③マイナ診察券のみ改修(診療所・病院のみ) | 🟢 2026年1月31日まで受付継続 |
参考:厚生労働省「医療費助成のオンライン資格確認 医療機関・薬局、レセコンベンダ向けの情報」(補助金リーフレットと最新の申請受付状況を確認できます)
厚生労働省|医療費助成のオンライン資格確認 医療機関・薬局向け情報
「医療費助成の補助金は外来診療の窓口対応のためのものだ」と思っている医療従事者が多いのですが、実は訪問診療・オンライン診療での資格確認にも別途補助金が設けられています。これは意外ですね。
訪問診療等(訪問診療・訪問歯科診療・往診等)においてオンライン資格確認を導入する際も、レセコン改修費やモバイル端末・汎用カードリーダーの購入費が補助対象となります。病院の場合は最大41.1万円(事業費82.2万円の1/2)、診療所の場合は最大12.8万円(事業費17.1万円の3/4)が補助されます。
在宅医療・訪問診療に力を入れているクリニックや、オンライン診療を実施している施設にとってはまさに見逃せない補助金です。外来対応のレセコン改修とは別に申請できるため、複数の改修を行う場合は区分ごとに別々の領収書で申請することが求められています。
ただし、注意すべき点があります。オンライン診療等(外来診療等・通常とは異なる動線・機器故障時等)の申請については「1回のみ」という制限があり、通常とは異なる動線と機器故障時等を別々に2回申請することはできません。これは補助金が1回のみが条件です。
また、訪問診療等と外来診療等の改修を「同一期間に実施した場合でも、原則として事業ごとに領収書等で申請する」というルールがあります。改修内容が重複する部分については注意が必要で、明確に改修内容が異なる場合にのみ別申請が認められます。
訪問診療等に係る助成金の申請期限は令和8年(2026年)1月31日でした(令和7年度の申請)。令和8年度以降の情報については、ポータルサイトの最新情報を確認することをお勧めします。
参考:社会保険診療報酬支払基金「訪問診療等・オンライン診療等・外来診療等のオンライン資格確認等導入に係る助成金(補助額・対象項目・申請手順の詳細)」