普通の不織布マスクをしているのに、患者の柔軟剤の香りで頭痛が出て業務を離脱した例が報告されています。
「香りつきの柔軟剤を使ってきた患者さんが来るだけで頭痛が出て、業務を続けられなくなった」——医療従事者のこのような声が、近年SNSや医療系の場でも増えています。
香害とは、柔軟剤・芳香剤・制汗剤・合成洗剤などに含まれる合成香料の化学物質によって、頭痛・めまい・吐き気・のどの痛み・倦怠感などの健康被害が生じる問題です。2010年前後から増えつづけており、国内の香害被害者は推定約1,000万人、患者レベルの人は550万人程度と推計されています(ダイヤモンド・オンライン,2018)。
医療現場はとくに注意が必要です。患者は様々なケア用品を使って来院しますし、同僚スタッフの衣類に染みついた柔軟剤の香りも密閉された病棟では逃げ場がありません。しかも、化学物質過敏症(MCS)の患者の約60.7%が「職場の香害のために過去1年間で休職・失職を経験した」というデータもあります(北條祥子,川崎医科大,2018)。深刻ですね。
医療従事者が香害にさらされやすい主な場面を整理すると、次のとおりです。
- 患者の衣類・寝具に残存した柔軟剤・防虫剤の香り
- 同僚スタッフが使用する香りつき洗剤や制汗剤
- 訪問者・見舞い客が持ち込む香水・芳香グッズ
- 院内で使用するアルコール消毒液(コロナ禍以降に増加)
香害への最初の対策として多くの人が手にするのがマスクです。しかし、どのマスクを選ぶかで防御効果は大きく変わります。この点が原則です。
参考:化学物質過敏症のメカニズムと症状について、済生会が解説しています。
香害対策に使えるマスクには大きく3つの種類があり、それぞれに特性と限界があります。つまり「目的に合った選択」が条件です。
① 一般的な不織布マスク(サージカルマスク)
医療現場でもっとも普及しているのが不織布マスクです。ウイルスや飛沫に対しては高い防御効果がありますが、香料成分に対してはほとんど効果がありません。香料を構成するVOC(揮発性有機化合物)は粒子径が非常に小さく、不織布の繊維の隙間をすり抜けてしまうからです。サージカルマスクは香害対策としては不十分、と覚えておきましょう。
② 活性炭入りマスク(キーメイトマスクなど)
活性炭は無数の微細孔を持ち、臭いやガス成分を吸着する性質があります。香料成分の吸着にも一定の効果が認められており、化学物質過敏症の当事者の間で広く使われています。クラレが製造する「キーメイトマスク」はその代表例で、活性炭を大量に含むプリーツ型構造が特徴です。
ただし、重要な注意点があります。活性炭マスクは一定量の臭気やガスを吸着すると飽和状態になり、効果が失われます。「臭気感が強くなってきたら交換」が基本で、開封後は保管中も吸着が進む点も忘れてはなりません(シンユーサン活性炭マスク資料,2022)。これは見落としがちですね。
③ 防塵マスク+オーガニックコットンカバータイプ
活性炭フィルターに反応してしまう人や、肌への刺激が気になる人向けの選択肢が、防塵・防臭マスクをオーガニックコットンカバーで包む使い方です。wacca(ワッカ)のマスクはその代表的な製品で、GOTS・OCS認証のオーガニックコットン100%、加工工程での化学薬品不使用、溶剤を使わない糊抜き製法が採用されています。使用者の97%が購入後に満足している(wacca公式データ)という数字も信頼の根拠になります。これは使えそうです。
各マスクの特徴をまとめると、次のとおりです。
| マスクの種類 | 香料への効果 | 肌への優しさ | 繰り返し使用 |
|---|---|---|---|
| 不織布(サージカル) | ほぼなし | 普通 | ❌使い捨て |
| 活性炭入りマスク | ◎(飽和まで) | 個人差あり | ❌使い捨て |
| 防塵マスク+カバー | ◎(フィルター次第) | ◎(素材による) | ✅カバーは洗濯可 |
参考:化学物質過敏症患者向けマスク・フィルターの種類と使い分けについて詳しく解説されています。
活性炭入りフィルターとガーゼフィルター|カナリアの手帖(wacca代表・横山奈保子)
「どのマスクが一番いいか」ではなく、「今の状況に何が合っているか」を考えるのが正しい選び方です。結論はシンプルです。
軽度の違和感・予防段階にある場合
まだ化学物質過敏症と診断されておらず、「特定の香りで気分が悪くなることがある」という軽度の段階では、活性炭入りフィルターを通常のマスクのポケットに挿入する方法が有効です。市販の活性炭シートをはがきサイズ(約10cm×15cm)程度にカットして挿入する形でも、口元の香料濃度を下げる効果が期待できます。
すでに化学物質過敏症の診断がある場合・重症の場合
既に診断がついている場合や香料に強く反応する場合は、フィルター素材そのものへの反応が問題になることがあります。活性炭マスクに使われる不織布の接着剤や繊維に反応するケースも珍しくありません。この場合、オーガニックコットン100%素材のマスクカバーを外層として使用し、内側にキーメイトなどの活性炭フィルターを組み合わせる方法が有効です。
医療従事者が業務中に使う場合の注意点
業務中は長時間着用になるため、活性炭マスクの「飽和」が起こりやすい状況です。とくに患者対応が続く日は、フィルターの交換タイミングを意識する必要があります。「臭気感が戻ってきたら交換する」を基本として、混雑するフロアや長時間の夜勤では複数枚を用意しておくと安心です。
また、マスクの選択と並行して「自分の衣類の洗濯に無香料洗剤・無香料柔軟剤を使う」ことも、自分が香害の加害者にならないための実践として重要です。まず自分から、という姿勢ですね。
参考:化学物質過敏症向けマスクの種類とメーカー情報はこちらで詳しく確認できます。
化学物質過敏症用マスク|マスク専門ホームページ(mask.co.jp)
マスクは個人を守る手段ですが、それだけで職場の香害問題は解決しません。この視点が欠けていることが多いです。
医療機関では、患者・スタッフ双方への「香りへの配慮」を呼びかける取り組みが各地で始まっています。神奈川県藤沢市や名古屋市などの自治体でも、柔軟剤・芳香剤の使用を控えるよう公式に呼びかけており、医療機関内での掲示・案内が有効な対策とされています。
職場でできる具体的な取り組みは次のとおりです。
- スタッフへの啓発:勉強会や院内掲示で「香害の存在」を周知する
- ユニフォームの洗濯ルール:柔軟剤禁止または無香料限定にする
- 患者へのお願い:受診案内に「入院・診察時は無香料洗剤をご使用ください」と記載する
- 換気と空気清浄:密閉空間での香料濃度を下げるための定期換気を徹底する
「職場の香害のために休職した」医療従事者の声は少なくありません。化学物質過敏症(MCS)患者の60.7%が職場の香害が原因で休職・失職を経験しているというデータを踏まえると、医療機関は患者だけでなくスタッフ自身も守る義務があります。マスクは最後の砦、が基本です。
また、化学物質過敏症の患者が来院した際は、「強い香りのする場所・人の近くを避ける」「換気の良い待合スペースに案内する」「看護師・担当スタッフが無香料衣類で対応する」といった配慮が、患者の安心感と信頼に直結します。
参考:香害と化学物質過敏症についての啓発ページ。医療機関でも応用できる内容です。
「香害」や「化学物質過敏症」に苦しんでいる人がいます|名古屋市
マスクの選び方を学んで実践しても、「マスクを袋から出したときすでに香料の匂いがする」「洗濯してもマスクに他の衣類の香りが移っている」という問題が発生することがあります。これを「移香(いこう)」と呼びます。意外ですね。
移香とは、香料成分が別の衣類や製品に染み込む現象です。近年の柔軟剤に多用されているマイクロカプセル香料は繊維の深部まで入り込みやすく、一度移香が起きると通常の洗濯では落ちにくい性質を持っています。密閉した洗濯機のなかで香りつき衣類と一緒に洗われたマスクには、意図せず香料が付着している可能性があります。
移香を防ぐための実践ポイントは次のとおりです。
- 香害対策マスクは香りつき衣類と一緒に洗濯しない
- 香りつきの洗濯物と同じ棚・引き出しに収納しない
- マスクの保管はジッパー付き袋など密閉容器に入れる
- 購入した直後でも使用前に安全な環境で開封・確認する
waccaの製品では、梱包段階から二重包装にして外気(香料)が入らない配慮がされており、「届いたとき香料臭がなかった」という声が多くあります(wacca公式購入者の声)。これが条件です。移香への配慮が徹底された製品を選ぶ目線も、香害対策では重要な判断基準になります。
ケアの行き届いたマスクを正しく管理してこそ、はじめて香害対策が機能します。マスクを選ぶことと、マスクを正しく使い続けることは、両方セットで考える必要があります。
参考:香料対策マスクwacca(ワッカ)の特徴・購入者の声は公式サイトで確認できます。
過敏症患者自身が企画・開発した香料対策マスク|wacca(ワッカ)公式