韓国コスメを個人輸入して患者に勧めると、薬機法違反になるケースがあります。
「機能性化粧品」という言葉を聞いて、日本の薬用化粧品(医薬部外品)と同じものをイメージする方は多いです。しかし、これは大きな誤解です。
日本の法律上、「機能性化粧品」という区分は存在しません。日本では製品は「化粧品」と「医薬部外品(薬用)」の2種類に分類され、美白やニキビ予防の効果が認められる製品は医薬部外品として厚生労働省が管理します。一方、「機能性化粧品」という言葉は、日本では法律に基づかないマーケティング上の表現にすぎません。
韓国では状況がまったく異なります。韓国の化粧品法では「機能性化粧品(기능성화장품)」が制度として明確に定義されており、MFDS(食品医薬品安全処)が成分・効果・安全性を審査したうえで承認します。いわば、韓国の「機能性化粧品」は日本の「医薬部外品」に相当する法的カテゴリーです。
認められている機能カテゴリーは多岐にわたります。
| 機能カテゴリー | 代表的な承認成分 |
|---|---|
| 美白 | ナイアシンアミド、アルブチン、グルタチオン |
| しわ改善 | レチノール、アデノシン、ナイアシンアミド |
| 紫外線防止 | 各種UVフィルター |
| バリア機能改善 | パンテノール、セラミド、CICAツボクサエキス |
| トーンアップ | ナイアシンアミド |
| 育毛・脱毛抑制 | ニコチン酸アミドなど |
| 妊娠線の赤み軽減 | (2025年7月改正で新設) |
さらに重要なのが「二重機能性化粧品」の存在です。これは1つの製品で2つの機能が同時に承認される制度で、たとえば「美白+しわ改善」「紫外線防止+美白」といった組み合わせが公式に認められています。日本ではこの二重機能を1製品で表示する制度がないため、韓国コスメが患者から「効果の幅が広い」と感じられる背景のひとつになっています。
2024年の韓国コスメ輸出額は102億ドル(約1兆4500億円)と過去最高を記録しました。日本における輸入化粧品に占める韓国製品のシェアは30.3%に達し、フランス(24.4%)を抑えてトップとなっています。機能性化粧品カテゴリーだけで前年比35.2%増・7300億円規模に拡大しており、しわ改善製品に至っては前年比70%増という急伸を見せています。これほどのスピードで普及している以上、医療従事者が制度の基礎を把握していないと、患者の質問に正確に答えられない状況が生まれます。
参考:韓国MFDSによる2024年の化粧品統計・輸出過去最高の公式発表を日本語で解説した記事
韓国コスメのシワ改善や美白が世界で人気に、2024年の輸出が過去最高 ─ ヒフコNEWS
患者が「同じ成分が入っているのに、韓国版のほうが効いた気がする」と話す場面があります。これは感覚的な話ではなく、実際に成分の配合上限が国によって異なるため起きる現象です。
日本と韓国のルールの差を具体的に見ていきましょう。
| 成分 | 日本での扱い | 韓国での扱い |
|---|---|---|
| サリチル酸 | 化粧品への上限 0.2% | 最大2%まで許容 |
| トラネキサム酸 | 化粧品への配合 不可(医薬部外品のみOK) | 化粧品への配合 可能 |
| ナイアシンアミド | 効果表現に制限あり | 美白+しわ改善の二重機能として正式承認 |
| レチノール | しわ改善として一部承認(表現は限定的) | しわ改善機能化粧品として正式承認 |
サリチル酸の差は10倍です。日本の化粧品に上限0.2%で配合される場合と、韓国で2%まで許容される場合とでは、ニキビ改善や角質ケアへのアプローチが根本的に異なります。これは、皮膚科医が患者のセルフケアアドバイスをする際に把握しておくべき知識です。
ナイアシンアミドはさらに重要な成分です。日本でもナイアシンアミド配合の製品は多数ありますが、「美白とシワ改善の両方に効く」と製品に直接表示できるのは韓国の機能性化粧品に限られます。韓国ではこの成分が二重機能性化粧品の主役として広く使われており、15%配合の製品まで市場に流通しています。ナイアシンアミドが条件です。
トラネキサム酸は特に注意が必要です。日本では美白有効成分として医薬部外品に限られており、化粧品への配合はそもそも認められていません。ところが韓国では化粧品に普通に配合できるため、個人輸入などで入手した製品には日本の医薬部外品と同等またはそれ以上の美白効果が期待される成分が化粧品として流通しています。日本の薬機法の枠組みでは「ただの化粧品」に分類される可能性があり、このグレーゾーンが患者との対話で混乱を生む原因になります。
レチノールについても見落とせません。韓国ではレチノール配合製品がMFDSからしわ改善機能化粧品として正式に承認されているものがある一方、日本では「シワを改善します」という表現そのものを化粧品の広告に使うことが難しいという状況があります。これは法的表現の問題であり、成分の品質とは別の話です。
参考:日本と韓国の制度の違い・二重機能性化粧品について詳述した専門記事
日本vs韓国|機能性化粧品・医薬部外品・二重機能性を徹底比較 ─ recolne
韓国の機能性化粧品は制度的に充実している一方で、誇張された広告が問題になっているのも事実です。これは医療従事者が患者に「この製品は信頼できるか」を判断する際に直接関わる情報です。
2025年、韓国MFDS(食品医薬品安全処)は、医療行為を連想させる表現を使った化粧品の違反広告144件を摘発し、アクセス制限を要請しました。問題とされた表現は以下のようなものです。
- 「塗るボトックス」「フィラー治療効果」
- 「細胞再生」「筋肉弛緩」「抗炎症」
- 「幹細胞」「二重あごリフティング」
- 「成分が真皮まで届く」(2025年8月にも83件摘発)
- 「皮膚科専用」「皮膚科施術用」「病院専用」(2025年2月改正で禁止表現に追加)
摘発された144件のうち、医薬品と誤認させる表現が含まれていたものが57.6%(83件)を占めていました。残りも「誤解を招く表現」や「機能性化粧品と誤認される恐れのある表現」として問題視されています。
厳しいですね。しかしこれは韓国に限った話ではありません。日本でも「塗るボトックス」という表現のある製品は現在も市場に出回っており、薬機法との整合性が問われているものが少なくありません。韓国MFDSが禁止した表現の多くが、日本国内の広告でも見かけられることは、医療従事者として認識しておく価値があります。
2025年1月からはさらに規制が強化されました。韓国では「皮膚科医がおすすめ」「医師監修」といった医療関係者の推薦を匂わせる表現も禁止対象になっており、2025年3月時点で合計237件の摘発事例が報告されています。
これは使えそうです。患者が「韓国の皮膚科でも使われている再生クリームを買ってきた」と言ってきたとき、その表現が広告上のものか、実際に医療機関で処方されている製品かを区別する視点が必要になります。実際に韓国の美容皮膚科の施術後アフターケアとして使われているPDRN配合クリームやEGF配合クリームは実在しますが、同じ成分名を使って「皮膚科施術用」と主張する化粧品の中には違反広告として摘発されたものも含まれています。
参考:韓国MFDSが摘発した「塗るボトックス」などの違反広告144件の詳細レポート
「塗るボトックス」「フィラー治療効果」など、化粧品の違反広告が韓国で摘発 ─ ヒフコNEWS
「韓国のQoo10で買った美容液を使っているのですが、大丈夫ですか?」という質問は、今や珍しくない患者からの相談です。この場合、医療従事者として何を伝えるべきか、整理しておく必要があります。
問題の核心は、日本と韓国の規制体系がまったく別物であるという点です。韓国でMFDSの承認を受けた機能性化粧品であっても、日本に持ち込む場合は日本の薬機法の対象になります。韓国で化粧品として認められている成分や表現が、日本では医薬部外品に相当する成分濃度であったり、そもそも使用が禁止されていたりするケースがあります。
個人輸入の場合、以下のようなリスクが現実として存在します。
- 🚨 日本で使用禁止の成分が含まれていても、購入者本人には判断が難しい
- 🚨 成分表示が韓国語のみで記載されており、日本語の正式表示名称と照合できない
- 🚨 「皮膚科施術用」「再生クリーム」と書かれた製品でも、化粧品としての規制しか受けていない場合がある
- 🚨 偽造品・品質劣化品のリスクを個人では排除しにくい
「個人輸入なら自己責任」というルールがあります。厚生労働省は個人輸入について、品質・有効性・安全性について国内の法的規制を受けず、日本の基準から外れる場合があることを明示しています。つまり患者が何らかの皮膚トラブルに見舞われても、販売者への法的追求が難しくなる可能性があります。
一方で、日本で正規輸入されている韓国の機能性化粧品(薬機法の基準をクリアして販売されているもの)は別の話です。日本の薬機法に沿って全成分を日本語で表示し、製造販売業者の責任のもとで流通しているため、これらは安全性の担保という観点から一定の信頼性があります。
医療従事者として患者に伝えるべき情報は1点に絞れます。「日本で正規流通している製品か、個人輸入(灰色ルート)のものか」を確認させることです。購入先がQoo10や海外通販サイト経由の並行輸入品の場合は、日本語の全成分表示がなされているかを確認するよう伝えるのが現実的なアドバイスになります。
参考:韓国コスメ輸入・販売に必要な薬機法上の手続きを解説した専門記事
韓国コスメを輸入して販売したい人が必ず知っておくべき薬機法の話 ─ note
韓国独自の視点として注目されているのが、美容皮膚科クリニック発の「ドクターズコスメ」と呼ばれる機能性化粧品のカテゴリーです。これは一般の化粧品とも医薬品とも異なるポジションに位置しており、医療従事者が理解すべき独自の文化と制度背景があります。
ドクターズコスメとは、医師または医療機関が開発に関わった化粧品を指します。韓国では美容皮膚科クリニックでの施術が日常的に行われており、施術後のアフターケア製品として開発された化粧品が市場に広まったものが多くあります。代表的なものとして、PDRN(ポリデオキシリボヌクレオチド)配合の再生クリームやEGF(上皮成長因子)配合クリームがあります。
PDRNはサーモンのDNAから抽出された成分で、韓国では「リジュラン注射」という皮膚科施術に用いられる成分として有名です。この成分を外用クリームに配合したものが「PDRN配合再生クリーム」として一般消費者向けに流通しています。800ppm〜数千ppmという濃度が製品ごとに異なっており、一部の薬剤師が成分分析を公表するなど、情報が活発に交換されています。
ただし、これらの製品についても明確な線引きが必要です。韓国のクリニックで実際に施術後アフターケアとして処方・推奨されているものと、同じ成分名を使いながら「皮膚科施術用」「病院専用」と広告しているものは別物です。前述の通り、後者は2025年2月のMFDS規制改正で禁止表現となっています。
EGFについても同様の状況があります。EGFは日本でも「ヒトオリゴペプチド-1」という表示名称で化粧品への配合が認められており、使用そのものは禁止されていません。韓国の皮膚科クリニックで施術後に使われるEGF配合クリームは実際に存在しますが、日本に輸入して販売する場合は薬機法上の手続きが必要になります。
医療従事者の立場から患者に伝えられる情報をまとめると、次の3点に整理できます。
- ✅ PDRNやEGF配合の再生クリームは、韓国の美容皮膚科で実際に使われているものがある
- ✅ ただし「皮膚科専用」「病院用」の広告は2025年から韓国でも違反表現として摘発対象になっている
- ✅ 日本への正規輸入品か個人輸入かを必ず確認させる
韓国のドクターズコスメブランドとして知られるものには、Arztin(エルツティン)、Carenology95(ケアノロジー)、CU SKINなどがあります。これらは韓国の美容皮膚科現場での使用実績を持ち、日本でも美容クリニックや皮膚科経由での取り扱いが増えています。
医療現場での使用実績がある成分を含む製品と、そうでない化粧品を区別する目を養うことが、患者からの相談に正確に答えるための出発点です。これが原則です。
参考:韓国ドクターズコスメの定義と医療機関での使用実態について解説した記事
韓国ドクターズコスメとは?医師が開発した機能性化粧品の選び方 ─ MEON PREMIER