眠気が出た患者ほど、むしろ副作用が軽症で回復が早い場合があります。
レキソタン錠(一般名:ブロマゼパム)は、ベンゾジアゼピン系の精神神経用剤として神経症・うつ病・心身症などに広く用いられています。その薬理作用の核心はGABAニューロンの抑制作用の増強であり、抗不安・筋弛緩・催眠・抗けいれんという4つの作用を持ちます。
添付文書(2023年7月改訂第1版)によれば、副作用の発現頻度が1%以上と明記されているものは以下のとおりです。
| 副作用名 | 発現頻度 | 系統 |
|---|---|---|
| 眠気 | 20.6% | 精神神経系 |
| ふらつき | 7.2% | 精神神経系 |
| 疲労感 | 5.0% | その他 |
| めまい・興奮・気分高揚・歩行失調 | 1%以上 | 精神神経系 |
| 口渇 | 1%以上 | 消化器 |
眠気は約5人に1人に出ると考えると、処方頻度の高い外来診療でも決して稀ではありません。これは、はがき1枚の横幅(約10cm)くらいの薄さの認識でいると、臨床現場では想定外の頻度で患者から報告を受けることになります。
重要なのは重大な副作用の扱いです。依存性・刺激興奮・錯乱はいずれも「頻度不明」と分類されています。頻度不明であるということは、見逃されやすいという意味でもあります。出現した際には投与中止など適切な処置が必要であり、観察の継続が不可欠です。
1%未満の副作用には、不眠・頭痛・振戦・構音障害・排尿困難・視覚障害なども含まれます。これらは患者が自発的に申告しないケースも多く、定期的な問診で確認する姿勢が大切です。
参考:レキソタンの添付文書情報(KEGG MEDICUSデータベース)
医療用医薬品:レキソタン(レキソタン錠1 他)- KEGG MEDICUS
依存性はレキソタンを含むベンゾジアゼピン系薬剤全般に共通する重大な副作用です。添付文書の8.2項には、「漫然とした継続投与による長期使用を避けること」と明確に記載されています。これが原則です。
依存の構成要素は大きく4つに整理できます。
離脱症状は通常7日以内に出現し、症状のピークは中止後2〜3日以内とされています。意外なことに、依存は投与量を守っていても発生する可能性があります。つまり、医師の指示どおりに服用していても安心とは言えません。
1ヶ月以上の連用は特に注意が必要とされており、複数の抗不安薬を重複して使用している患者ではリスクがさらに高まります。耐性が形成されると「前より薬が効かなくなった」という訴えが出てきます。このサインを見逃さないことが重要です。
減薬の方法には①1回量を少しずつ減らす、②服用間隔を延ばす、③他剤に置き換える、の3通りがあります。どの方法を選ぶかは、患者の服薬量・不安症状の強さ・生活環境によって異なり、数ヶ月をかけるケースも珍しくありません。急激な中止は厳禁です。
参考:レキソタンの依存性・離脱症状についての詳細解説
【抗不安薬】レキソタンの作用と依存性や耐性などの副作用について解説 - くすりの窓口
高齢者への投与は特に慎重な姿勢が求められます。添付文書9.8項には「少量から投与を開始するなど注意すること。運動失調等の副作用が発現しやすい」と明記されています。これは単なる形式的な注意書きではありません。
厚生労働科学研究の報告では、75歳以上の高齢者や中等度以上の認知症患者では、ベンゾジアゼピン系抗不安薬によってせん妄・過鎮静・運動失調・転倒・認知機能低下のリスクが顕著に高まるとされています。転倒から大腿骨骨折に至るリスクは、非服用者と比べて統計的に有意に増加するという報告も複数あります。
特に注目すべきなのが、骨折後の継続処方問題です。2025年8月に報告された研究では、大腿骨骨折を経験した21,123人の高齢患者のうち、54%(約11,465人)が骨折後も同用量または増量でBZD系薬を継続投与されていたことが明らかになりました。約2人に1人が、骨折という明確な警告サインの後も薬を中止されていないということです。
厳しいところですね。これは処方見直しのタイミングを逃していると言わざるを得ません。
筋弛緩作用によるふらつき・歩行失調は夜間だけでなく、起床時・トイレへの移動時にも起きます。高齢者でレキソタンを含むBZD系薬を処方する際には、転倒歴・骨折歴の確認と、転倒リスク評価を処方判断に組み込む体制が現場には求められます。
参考:BZD系薬と高齢者の転倒・骨折リスクに関する研究
抗不安薬は高齢者において副作用が発現しやすく、過鎮静 - 厚生労働科学研究成果データベース
レキソタン錠に禁忌となる疾患は3つです。①ブロマゼパムへの過敏症の既往、②急性閉塞隅角緑内障(抗コリン作用で眼圧上昇)、③重症筋無力症(筋弛緩作用で悪化)。これだけ覚えておけばOKです。
相互作用として特に見落とされやすいのが「フルボキサミン(ルボックス・デプロメール)」との併用です。フルボキサミンは肝臓での酸化的代謝を阻害し、レキソタンのAUCを増加・血中半減期を延長させます。つまり、SSRI(フルボキサミン)とレキソタンを同時に処方すると、レキソタンの効果と副作用が強まりすぎる可能性があるということです。
患者指導では「お酒を飲む日は服用を避けてください」と一文添えるだけでも、副作用の重篤化を防げる場面があります。これは使えそうです。
授乳中の患者にも注意が必要です。ヒト母乳中へ移行することが報告されており、新生児に嗜眠・体重減少・黄疸増強を起こすおそれがあるため、授乳を避けるよう指導することが添付文書上で求められています。また、妊娠後期に投与した場合、新生児に呼吸抑制・無呼吸・筋緊張低下などが報告されており、有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ処方可能です。
過量投与時はフルマゼニル(アネキセート)によるベンゾジアゼピン受容体拮抗が処置として選択されます。ただし、フルマゼニル投与後に新たにレキソタンを投与する場合、鎮静・抗痙攣作用が変化・遅延するおそれがあり、添付文書でも注意喚起されています。
参考:ベンゾジアゼピン系薬剤の相互作用と投与注意事項
レキソタン錠1、他 - 今日の臨床サポート
臨床現場でよく見られるのは、「効果があるから継続」という漫然投与のパターンです。しかし添付文書が明示するように、長期投与は依存・耐性・認知機能低下のリスクを蓄積させます。現場で実践できる処方管理の視点を整理します。
まず処方開始時には、投与目的・目標期間・中止基準を患者と共有しておくことが重要です。「症状が落ち着いたら徐々に減薬する」という方針をあらかじめ伝えておくと、後の減薬がスムーズになります。これが条件です。
次に定期フォロー時には、以下の3点を確認します。
高齢者に対しては、転倒リスクアセスメントを同時に行うことが推奨されます。「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015」でも、BZD系薬は転倒・骨折のリスクが高いとして使用推奨外リストに入っています。代替薬としてはSSRI・SNRIや、依存性のないセディール(タンドスピロン)への切り替えを主治医と検討するフローを持っておくと実践的です。
処方日数の上限は法令上30日分が限度です(厚生労働省告示第107号、平成18年3月6日付)。これは漫然とした長期投与を防ぐための制度的な歯止めでもあります。30日ごとに来院するタイミングを、副作用評価と減薬検討のチェックポイントとして活用することが現実的です。
つまり、30日ごとに必ず見直しのチャンスが来るということです。このサイクルを意識した管理体制を薬剤師・医師・看護師が連携して作ることが、レキソタン錠の安全な使用に直結します。
参考:高齢者に対する安全な薬物療法の指針
高齢者の医薬品適正使用の指針(総論編)- 厚生労働省