減量しただけで発作が重積化し、入院が必要になるケースがあります。
リボトリール錠 0.5mg(一般名:クロナゼパム)は、ベンゾジアゼピン系に分類される抗てんかん薬です。製造販売元は太陽ファルマ株式会社であり、向精神薬(第三種)かつ処方箋医薬品に指定されています。1981年の発売以来、難治性てんかんをはじめとする多様な発作型に用いられてきた歴史ある薬剤です。
作用機序について見ると、抑制性GABAニューロンのシナプス後膜に存在するGABAA受容体のベンゾジアゼピン結合部位にアゴニストとして高い親和性で結合し、GABA親和性を増大させることで神経の過剰な興奮を抑制します。これが抗けいれん・抗不安・催眠・筋弛緩という多彩な薬理作用をもたらす基盤となっています。
承認適応は以下の3つの発作型に限られています。
- 小型(運動)発作:ミオクロニー発作、失立(無動)発作、点頭てんかん(幼児けい縮発作・BNSけいれん等)
- 精神運動発作
- 自律神経発作
つまり大発作型(強直間代発作)への保険適用はない点を押さえておく必要があります。
薬価は1錠あたり9.6円(0.5mg錠)、YJコードは1139003F1040です。後述するように、臨床現場では適応外使用も少なくありませんが、処方に際しては承認適応を正確に把握した上での判断が求められます。これが原則です。
参考として、PMDAに掲載されている最新の添付文書はこちらから確認できます。
添付文書に定められた用法・用量は、成人・小児ともに初回量として1日0.5〜1mgを1〜3回に分けた経口投与から開始します。以後、症状に応じて至適効果が得られるまで徐々に増量し、通常の維持量は1日2〜6mgを1〜3回に分けて投与します。投与初期の眠気やふらつきを防ぐためにも、少量からの漸増が絶対的な原則です。
乳・幼児への投与は体重に基づいた設定となっており、初回量は1日体重1kgあたり0.025mgを1〜3回分割投与し、維持量は1日体重1kgあたり0.1mgです。小児は成人よりも副作用への感受性が高いため、個々の体重・状態に応じた細やかな調整が求められます。
薬物動態の面では、クロナゼパム1mgを健康成人男性6例に単回経口投与した試験において、血中濃度は投与2時間後に最高値(6.5 ng/mL)に達し、半減期は約27時間と報告されています。この長い半減期はジアゼパム(20〜100時間)と同程度の水準であり、1日1〜3回の投与でも比較的安定した血中濃度が維持できる一方、体内蓄積にも注意が必要です。蓄積しやすいということです。
また、ヒト血清蛋白との結合率は約95%(in vitro)と高く、他の高タンパク結合薬との競合による相互作用リスクも念頭に置かなければなりません。なお、投与後4日までに尿中に40〜60%、糞中に10〜30%が排泄されます(外国人データ)。
クロナゼパムの臨床使用上有効な血中濃度は20〜70 ng/mLとされており、定期的なTDM(薬物血中濃度モニタリング)が症例によっては有益となる場合があります。添付文書上、連用中は「定期的に肝・腎機能検査、血液検査を行うことが望ましい」と明記されています。これは長期投与時の安全管理に欠かせない視点です。
副作用の把握は、使用する医療従事者にとって最重要事項のひとつです。添付文書の承認時調査および使用成績調査では、5,206例中1,423例(27.3%)に副作用が認められました。主な副作用は眠気(13.9%)、ふらつき(7.6%)、喘鳴(2.7%)です。
その他の副作用として頻度別に整理すると、以下のとおりです。
- 5%以上:眠気(24.7%)、ふらつき(15.6%)
- 0.1〜5%未満:喘鳴、めまい、運動失調、唾液増加(流涎等)、発疹、倦怠感 など
- 頻度不明:意識障害、幻覚、うつ状態、攻撃的反応、肝機能異常 など
重大な副作用として特に注意を要するのは4つです。①依存性、②呼吸抑制・睡眠中の多呼吸発作、③刺激興奮・錯乱、④肝機能障害・黄疸です。
依存性については「連用により生じることがある」と明記されており、急激な減量・中止でけいれん発作、せん妄、振戦、不眠、不安、幻覚、妄想等の離脱症状が出現する可能性があります。離脱症状は危険です。そのため投与中止は必ず段階的な漸減によって行わなければなりません。
また、長期投与患者における転倒・骨折リスクも見逃せません。半減期の長さから翌日への持ち越し効果が生じやすく、特に高齢者では転倒リスクが健常者と比較して2倍以上増加するという報告があります。高齢患者への処方では少量から開始し、日常生活動作への影響を定期的に評価することが重要です。
精神障害として傾眠、神経過敏(不機嫌、興奮等)、感情鈍麻、感情不安定などが長期服用で現れる頻度は16.8%という報告もあります。つまり6人に1人以上の割合です。これは患者への事前説明においても無視できない数字と言えます。
なお、乳・幼児に対しては喘鳴、唾液増加(流涎等)、嚥下障害への注意が特記されており、これらの症状が出た場合には投与を中止するなど適切な処置が求められます。
クロナゼパムの副作用と使用上の注意(てんかん専門医による解説)
禁忌は3項目に絞られています。①本剤の成分に対する過敏症の既往歴のある患者、②急性閉塞隅角緑内障の患者(抗コリン作用による眼圧上昇)、③重症筋無力症の患者(症状悪化のリスク)です。これらは処方前の確認が必須です。
相互作用については、特に以下の組み合わせに注意が求められます。
| 併用薬 | 注意事項 |
|---|---|
| フェニトイン(ヒダントイン誘導体) | 相互に血中濃度が変動する(上昇・低下ともあり)→TDMを推奨 |
| バルビツール酸誘導体・中枢神経抑制剤 | 中枢神経抑制作用が増強される |
| アルコール | 中枢神経抑制作用が増強。可能な限り併用回避 |
| バルプロ酸ナトリウム | アブサンス重積(欠神発作重積)が出現したとの報告あり |
| MAO阻害剤 | 舞踏病発現の報告あり。原則として併用しない |
| フルマゼニル(ベンゾジアゼピン受容体拮抗剤) | てんかん発作(けいれん)を誘発した報告があり、投与してはならない |
特にフルマゼニルとの関係は絶対的な禁忌ではなく「重要な基本的注意」として記載されていますが、実質的には投与しないこととされています。過量投与が疑われた場合の処置においても「フルマゼニルを投与しないこと」と明記されており、救急対応時に誤用されやすいポイントです。フルマゼニルは使えません。
また、あまり知られていない注意事項として、フルマゼニルが先に投与されていた患者に本剤を新たに投与する場合、鎮静・抗けいれん作用が変化・遅延するおそれがある点も添付文書に記載されています。
さらに妊婦への投与については、治療上の有益性が危険性を上回る場合にのみ投与するとされており、口唇裂・口蓋裂などの奇形リスクに関する疫学的報告、出産後の新生児離脱症状の可能性についても情報提供が必要です。授乳中は母乳への移行から授乳を避けさせることが求められています。
KEGG MEDICUS:リボトリール添付文書全文(禁忌・相互作用の詳細確認に)
クロナゼパムが他のベンゾジアゼピン系薬剤と異なる点として、添付文書に「本剤は比較的若年齢から長期使用されるので、耐性の上昇に十分注意すること」という文言が明記されている点が挙げられます。この記載は他の多くの抗てんかん薬には見られない特徴的な注意事項です。
耐性の問題とは何でしょうか?数か月以上の連用によって薬効に耐性が生じ、同じ用量では以前と同等の発作抑制効果が得られなくなる状態を指します。特にてんかん患者の場合、耐性によって発作頻度が投与前と同程度まで戻ることが報告されており、これを「慣れの現象」と呼ぶこともあります。クロナゼパムで一定の有効性が確認されていた患者が、2か月ほどで効果を失うケースも経験されています。
混合発作(2種類以上の発作型をもつ)患者では、本剤投与によって強直間代発作の誘発や発作回数の増加が起こりうることが特記されています。つまり、本剤を使うことで発作が悪化する可能性があるということです。特にLennox症候群の患者では、sleep-induced microseizures(睡眠中の多呼吸発作等)を誘発することがあります。これは驚くべき逆説的副作用です。
減量・中止時は最大のリスクが伴います。急激な減量や突然の中止によって、てんかん重積状態が出現する可能性があります。臨床現場の専門医は「減量する場合はきわめて少量ずつ行わなければならない」と強調しており、場合によっては減量も増量も身動きが取れない状態に陥ることがあります。長期使用の前にこのリスクを正確に理解した上で処方開始するかどうかを判断することが重要です。
ある難治例の記録では、クロナゼパムの減量を試みたところ夜間の強直発作が連続して一晩中続き、最終的に中止することで発作が落ち着いたという経過が報告されています。減量を慎重に進める必要があります。
2017年3月の添付文書改訂によって、連用による依存症形成リスクと急激な減量・中止による痙攣重積等の離脱症状について、より明確な注意喚起が追加されています。また2018年の診療報酬改定では、ベンゾジアゼピン系薬剤を12か月以上継続処方している場合に診療報酬点数が減算される措置も導入されました。長期処方の継続には、その必要性の定期的な再評価が求められます。これが現在の標準的な考え方です。
漸減の具体的な方法としては、1〜2週間ごとに前の用量の10〜25%ずつ減量するアプローチが専門家の間では経験的に支持されていますが、個々の患者の状態・罹病歴・他薬との兼ね合いによって柔軟に対応する必要があります。
なお、投薬期間制限医薬品に関する情報として、本剤の投薬量は1回90日分を限度とされています(厚生労働省告示第107号に基づく)。この点も外来処方時に確認しておくべき重要事項です。90日分が上限です。
クロナゼパムの多彩な適応とエビデンス・安全性の深掘り(長期使用上の問題点と減量・中止に関する知見も解説)