「眠くならない」と説明したロラタジンで、実は1%以上の患者に眠気が出ています。
ロラタジン(代表的商品名:クラリチン)は、第2世代の持続性選択的H₁受容体拮抗薬です。成人に対する標準用量は、1回10mgを1日1回・食後経口投与と定められており、錠剤またはOD錠(口腔内崩壊錠)の形で処方されます。
食後投与が規定されているのは、国内で実施されたすべての二重盲検比較試験が食後投与の条件下で行われたためです。実は薬物動態データを見ると、活性代謝物であるdescarboethoxyloratadine(DCL)の全身曝露(AUC)に対して食事の影響はほとんど認められていません。ただし、ロラタジン本体のCmaxは食後投与時に空腹時の約1.7倍になることが報告されています。
定常状態への到達は連投4日目が目安です。この点はよく見落とされがちで、「飲み始めて3日経っても効かない」という患者からの相談に対し、「もう少し続けましょう」と根拠を持って説明できる重要な知識です。1日1回投与でよいこと、しかも効果発現が服用後30分〜1時間程度と速いことも、患者へのアドヒアランス指導に役立てられます。
つまり、即効性と持続性を両立しているのがロラタジンの強みです。
効能・効果はアレルギー性鼻炎、蕁麻疹、皮膚疾患(湿疹・皮膚炎・皮膚そう痒症)に伴うそう痒の3つです。作用機序として、ロラタジンおよびその活性代謝物DCLが末梢のヒスタミンH₁受容体を選択的に遮断します。脳内への移行が比較的低いため、中枢抑制による眠気が出にくい「非鎮静性」に分類されることがあります。
参考:ロラタジンOD錠10mg(トーワ)の添付文書全文(KEGG)
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00060006
「非鎮静性」と説明されることが多いロラタジンですが、添付文書の副作用情報を確認すると、眠気と倦怠感は1%以上の頻度で報告されています。国内の長期投与試験(成人53例)では、眠気が6例(11.3%)、倦怠感・嘔気・発疹が各1例(1.9%)に認められました。「眠くならない薬ですよ」と言い切るのは正確ではなく、「他の抗ヒスタミン薬より眠気が出にくい薬です」というニュアンスが正確です。
眠気以外の副作用については、次のように整理できます。
| 系統 | 1%以上 | 0.1〜1%未満 | 頻度不明 |
|---|---|---|---|
| 精神神経系 | 眠気、倦怠感 | めまい、頭痛 | — |
| 消化器 | — | 腹痛、口渇、嘔気・嘔吐、下痢 | 胃炎 |
| 肝臓 | — | ALT・AST・γ-GTP上昇 | — |
| 過敏症 | — | 発疹 | そう痒、紅斑 |
| 循環器 | — | 動悸 | — |
重大な副作用として、ショック・アナフィラキシー、てんかん(特にてんかんの既往がある患者に対しては十分な問診が必要)、痙攣、肝機能障害・黄疸(AST・ALT・γ-GTPの著明な上昇を伴うもの)が添付文書に記載されています。いずれも頻度不明ですが、疑わしい症状が現れた際はただちに投与を中止し適切な処置を講じる必要があります。
重大な副作用は頻度不明でも見逃せません。
過量投与に関しては、海外で40〜180mgの過量服用により眠気・頻脈・頭痛が報告されています。また、ロラタジンとDCLは血液透析によって除去できないため、透析患者への過量投与時の対処には特に注意が必要です。
参考:ロラタジンの副作用と注意点について詳しく解説(大正製薬アレルラボ)
https://brand.taisho.co.jp/allerlab/kafun/038/
ロラタジンは肝代謝型の薬剤であるため、肝機能・腎機能・年齢によって血中濃度が大きく変化します。この点が最もクリティカルな処方上の判断ポイントです。
肝機能障害患者では、ロラタジンのCmaxが健康成人比で1.4〜1.7倍、AUCは2.8〜3.8倍にまで上昇する可能性があります。さらにロラタジンのt1/2は健康成人の平均14.3時間に対し、肝機能障害患者では平均24.1時間、DCLのt1/2は平均37.1時間と健康成人の約2〜3倍に延長します。肝障害が重度であるほどこの影響は大きくなるため、肝機能障害患者への投与は慎重に行うことが求められます。
腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス≦29mL/min)においても、ロラタジンのCmaxおよびAUCが健康成人比で1.5〜1.7倍、DCLのAUCは約2倍に上昇します。重要な点として、ロラタジンは血液透析で除去できないため、透析患者への対応は薬物動態的に難しい側面があります。
腎障害では血液透析での除去ができないのが原則です。
高齢者(66〜78歳)では、ロラタジンのCmaxが1.6〜1.9倍、AUCが1.5〜2.0倍に上昇し、血中濃度が高い状態で持続しやすくなります。DCLのCmaxも約1.7倍となることが外国人データで示されています。高齢者は一般に肝・腎機能が低下しているため、添付文書では「高い血中濃度が持続するおそれがある」と明記されており、観察を強化することが重要です。
これらの患者群に対しては、用量調整の明確な基準は添付文書上に定められていませんが、投与頻度を隔日にするなど臨床的判断に基づく対応が推奨されるケースもあります。処方前に肝機能・腎機能検査値を確認する習慣が、副作用リスクの低減につながります。
参考:ロラタジン錠10mg「サワイ」基本情報(日経メディカル)
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/44/4490027F1146.html
ロラタジンからDCLへの代謝にはCYP3A4とCYP2D6が関与しています。これらの代謝酵素を阻害する薬剤と併用すると、ロラタジンおよびDCLの血漿中濃度が上昇するため、患者の状態を十分に観察しながら使用する必要があります。
添付文書が「併用注意」として特に名指ししているのは、エリスロマイシン(CYP3A4阻害)とシメチジン(CYP3A4・CYP2D6阻害)の2剤です。いずれも臨床試験で血漿中ロラタジン・DCL濃度の上昇が確認されています。ただし、これらの試験ではQTc間隔を含む心電図への影響は認められていないとも報告されており、致命的な相互作用とはなっていません。これは使えそうな情報です。
一方、ロラタジン自身のCYP阻害能については、in vitro試験で時間依存型阻害を示さないと考えられており、代謝酵素阻害による他剤への影響は低いと評価されています。つまり、ロラタジンが他の薬剤の血中濃度を上げるリスクは比較的低いということです。
他剤への影響が少ないのは、処方設計上のメリットです。
注意が必要な飲み合わせをまとめると、以下のとおりです。
もう一点、医療従事者としてよく把握しておきたいのが、抗ヒスタミン成分を含む市販の総合感冒薬や花粉症薬との重複投与です。患者がOTC薬を自己判断で追加購入するケースは少なくないため、処方時に「市販の鼻炎薬・風邪薬は一緒に飲まないように」と明確に伝えることがリスク管理になります。
参考:ロラタジンの相互作用情報(ニチイコ添付文書PDF)
https://www.nichiiko.co.jp/medicine/files/11-079.pdf
花粉症シーズンやアレルギー疾患の増悪期には、妊婦・授乳婦からのアレルギー薬処方相談が増えます。ロラタジンは比較的安全性が高い薬剤として認識されやすいですが、添付文書の記載は想像より慎重です。
妊婦または妊娠している可能性のある女性には「投与しないことが望ましい」とされています。動物試験(ラット・ウサギ)で催奇形性は認められていないものの、ラットでは胎仔への移行が報告されているためです。禁忌ではなく「望ましくない」という表現ですが、これは「治療上の利益が上回る場合は使用を検討する余地がある」という意味合いを含んでいます。妊婦への処方時には、必ず産婦人科医との連携確認を行い、患者へのインフォームドコンセントを記録しておくことが重要です。
インフォームドコンセントの記録が原則です。
授乳婦については、「治療上の有益性および母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続または中止を検討すること」と記載されています。外国人データではあるものの、授乳婦にロラタジン40mgを単回投与した試験で、投与後48時間までの母乳への移行率は0.03%と非常に低値でした。AUC母乳/AUC血漿比はロラタジンで1.2、DCLで0.8と報告されています。
移行率0.03%は極めて低い値ですね。
ただし、この数値はあくまで40mg単回投与での試験データであり、10mg連日投与での長期暴露データとは状況が異なる点に注意が必要です。「わずかだから大丈夫」と単純に説明するのではなく、「移行量は微量ですが、授乳を継続するかどうかは個別の状況を踏まえて判断します」というアプローチが、医療従事者として求められる姿勢です。
さらに見落とされやすい重要な情報として、ロラタジンはアレルゲン皮内反応を抑制するため、皮内反応検査(スクラッチテスト・皮内テストなど)を実施する3〜5日前より投与を中止しなければなりません。これを知らずに中止せずに検査を行うと、偽陰性が生じてアレルゲンの同定に失敗する可能性があります。アレルギー検査を前に控えた患者が受診した際には、現在服用中の薬剤を必ず確認することが求められます。
検査3〜5日前の中止が条件です。
特に「ロラタジンは眠くなりにくいから大丈夫」と思い込んでいる患者がそのまま服用を続けて検査に来るケースは現場でも起こりやすいため、処方時に「アレルギー検査を受ける予定があれば事前に伝えてください」と一言添えるだけでトラブルを防げます。
参考:ロラタジン錠10mg「日医工」添付文書(JAPIC)
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00059862.pdf
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