サラゾスルファピリジン腸溶錠500mg出荷調整の現状と対応

サラゾスルファピリジン腸溶錠500mgの出荷調整が続く中、医療従事者はどう対応すべきか。限定出荷の背景・代替品の選択・診療報酬への影響まで、現場で使える情報をまとめました。あなたの施設は正しく対応できていますか?

サラゾスルファピリジン腸溶錠500mg出荷調整の背景・代替品・診療報酬への影響

後発品を先発品に切り替えるだけで、施設の後発品加算が減算対象になる場合があります。


この記事でわかること
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出荷調整の背景

「CH」「NIG」両製品で続く限定出荷の理由と最新状況(2025年〜2026年)を解説します。

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代替品の選択と注意点

普通錠との適応の違い、先発品アザルフィジンENへの切り替え時に起こりうるトラブルを説明します。

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診療報酬上の特例措置

後発医薬品使用体制加算への影響と、令和8年の臨時的な取扱い(除外特例)の活用方法を紹介します。


サラゾスルファピリジン腸溶錠500mgの出荷調整が続く理由と最新状況

サラゾスルファピリジン腸溶錠500mgは、関節リウマチ治療の場面で長く使われてきた抗リウマチ薬(DMARD)です。先発品はあゆみ製薬の「アザルフィジンEN錠500mg」(薬価25.9円/錠)で、後発品として「CH(長生堂製薬/日本ジェネリック)」「NIG(日医工岐阜工場)」などが流通しています。


現在の出荷調整の中心は「CH」品です。2025年1月20日付けで日本ジェネリックが「計画を大きく上回る急激な出荷増」を理由に限定出荷(出荷量:A「出荷量通常」、対応状況:②「自社の事情」)を開始しました。同年12月にも限定出荷継続を告知し、製造所の変更(2026年1月頃の新製造所からの出荷予定)を発表したものの、変更後も「当面の間、対応できる限度を超える状況が継続すると予想」とされています。つまり製造所が変わっても供給不足は続く、ということです。


一方「NIG」品も問題が山積しています。日医工の品質不正問題に端を発した製造ラインの適正化の結果、「サラゾスルファピリジン腸溶錠500mg『日医工』」は2023年1月に出荷停止→販売中止という経緯をたどりました。後継として「NIG」ブランドで日医工岐阜工場が製造を継続していましたが、2025年6月にはPTP500錠包装で供給支障が発生し代替包装の使用を呼びかけるなど、不安定な状態が続いていました。2026年2月1日からは販売元が日医工に移管され(製造は日医工岐阜工場)、一部規格で限定出荷解除となっています。


このような状況が生じた背景として、2021年下半期以降の後発品全体の出荷調整問題があります。厚労省が2020年に開催した「医療用医薬品の安定確保策に関する関係者会議」の資料でも、サラゾスルファピリジン500mgは「関節リウマチ治療薬として広く使用され、代替薬が存在しない」と明記されており、代替性の低さゆえに安定確保の優先度が高い成分として位置づけられてきました。


結論は、複数要因が重なった問題ということです。「需要急増+製造所の対応能力の限界」という短期的要因と、「品質不正問題による製造ラインの縮小・販売中止」という中長期的要因が同時に進行しています。


DSJP(医療用医薬品供給状況データベース):サラゾスルファピリジン腸溶錠500mg「CH」の最新出荷状況を確認できます


サラゾスルファピリジン腸溶錠500mgの代替品選択における注意点

出荷調整を受けて、まず検討されるのが代替品への切り替えです。ここには意外なほど複雑な注意点が潜んでいます。


最初に押さえてほしいのが「腸溶錠と普通錠の適応の違い」です。サラゾスルファピリジン製剤には大きく2つの剤形が存在します。


| 剤形 | 代表的な先発品 | 主な適応症 |
|------|--------------|----------|
| 普通錠(素錠) | サラゾピリン錠500mg(ファイザー) | 潰瘍性大腸炎・限局性腸炎・非特異性大腸炎 |
| 腸溶錠 | アザルフィジンEN錠250mg/500mg(あゆみ製薬) | 関節リウマチ |


腸溶錠は「消化器系症状の副作用軽減」を目的として小腸での吸収を狙って設計されており、普通錠とは用法用量も異なります。愛媛大学医学部附属病院の医薬品安全使用ニュース(2024年10月)でも、「適応の異なるサラゾスルファピリジン製剤が処方された事例が当院で報告されている」と警告が出されています。後発品の持参薬から院内処方への切り替えの際は特に要注意です。


同じ成分、同じ規格でも適応が違います。これが原則です。


在庫が確保できない場合に先発品のアザルフィジンEN錠500mgへ変更するのは正攻法の対応です。ただし薬価に注意が必要です。先発品のアザルフィジンEN錠500mgは25.9円/錠、後発品の「NIG」は24.2円/錠と、後発品のほうが安価ですが、差額はわずか1.7円/錠と小さくなっています(2025年4月時点の薬価)。患者さんへの説明にあたっては、費用の変化を丁寧に伝えることが信頼につながります。


250mg規格でも同様の問題が起きています。令和7年度薬価改定(2025年4月)では、「サラゾスルファピリジン腸溶錠250mg『NIG』」が薬価維持となった一方、先発品のアザルフィジンEN錠250mgが引き下げを受け、後発品の薬価が先発品を上回る「薬価逆転」が発生しました。意外ですね。この場合、後発品を積極的に選ぶ意味が薄れるだけでなく、患者負担が増えるケースも生じえます。現場での薬価確認は欠かせません。


一般名処方で調剤する際も注意が必要です。「サラゾスルファピリジン腸溶錠」という一般名で処方された場合、腸溶錠に該当する後発品が複数ありますが、500mg規格と250mg規格を間違えないよう、規格の確認は必須です。


愛媛大学医学部附属病院 医薬品安全使用ニュース(2024年10月):普通錠と腸溶錠の適応違いによる事例が紹介されています


サラゾスルファピリジン腸溶錠500mgの出荷調整が診療報酬に与える影響

出荷調整は現場の在庫管理だけの問題ではありません。診療報酬上の加算にも直接影響します。これは重大な問題です。


後発医薬品調剤体制加算(薬局)や後発医薬品使用体制加算(病院・有床診療所)は、後発品の使用割合(数量シェア)が施設基準を満たさないと算定できなくなります。出荷調整の影響で先発品を多く使わざるを得ない状況が続けば、数量シェアが下落し、加算が取れなくなるリスクがあります。


厚生労働省はこの問題に対応するために、臨時的な特例措置を設けています。2025年9月25日付け事務連絡では、出荷停止品目と同一成分・同一投与形態の医薬品について、後発医薬品使用体制加算等の実績要件の算出対象から除外できる取扱いが定められました。


そして令和8年3月5日付けで、この特例措置が2026年4月以降も延長される見通しとなっています。適用期間は令和8年9月30日まで。令和8年6月1日から新設される「地域支援・医薬品供給対応体制加算」でも同様の取扱いが適用される予定です。


ただし重要な条件があります。「別添2に示す全ての品目について算出対象から除外することとし、一部の成分の品目のみ算出対象から除外することは認められない」という規定がある点です。除外するならその月は指定品目の全成分を対象にしなければなりません。一部だけ摘まみ食いはできません。


また、令和7年3月7日付けの保医発0307第2号では、後発医薬品調剤体制加算における「算定対象となる後発医薬品」の範囲についても整理が行われています。サラゾスルファピリジン腸溶錠250mg「CH」は令和8年3月5日付けの通知の別添リストに含まれており(薬価12.50円と記載)、対象品目に含まれていることが確認できます。


施設ごとに毎月の特例適用の可否を判断し、変更があれば届出も必要になります。面倒ですが、加算を守るために欠かせない対応です。


厚生労働省:令和8年3月5日 後発医薬品の出荷停止等を踏まえた診療報酬上の臨時的な取扱いについて(最新の特例措置と除外品目リストを確認できます)


サラゾスルファピリジン腸溶錠500mg出荷調整で現場が見落としがちな「普通錠との取り違え」リスク

出荷調整の話題になると、医療従事者の多くは「どの代替品を使うか」「在庫をどう確保するか」に意識が向きます。しかし実際の医療現場で重大なヒヤリハットとして報告されているのは、「腸溶錠と普通錠の取り違え」です。


PMDA(医薬品医療機器総合機構)が収集しているヒヤリハット事例の中には、「サラゾスルファピリジン」の検索名称から普通錠・腸溶錠を区別せずに選択してしまい、適応の異なる薬剤が処方・調剤されそうになった事例が含まれています。出荷調整下では通常とは異なる銘柄の薬剤が棚に並ぶことも増えるため、このリスクはさらに高まります。


取り違えが起きると何が問題なのか整理します。


- 普通錠を関節リウマチ患者に投与した場合:関節リウマチへの適応がなく(添付文書外使用になる)、期待する抗リウマチ効果が十分に得られない可能性があります。


- 腸溶錠を潰瘍性大腸炎患者に投与した場合:潰瘍性大腸炎への適応がなく、治療効果が不十分になる可能性があります。


- 用法用量の混乱:普通錠は通常1回1gを1日4回など、腸溶錠(関節リウマチ用途)とは用量が異なります。


愛媛大学医学部附属病院の事例紹介でも、「薬剤の検索名称に病名をそれぞれ追加し、処方時に確認できるよう対応した」という院内対策が紹介されています。電子カルテやオーダーシステムの設定を見直すことが現実的な防止策です。


出荷調整の対応で忙しい時期ほど、このようなヒューマンエラーのリスクが高まります。施設内での申し合わせを見直すなら今です。


日医工「サラゾスルファピリジン腸溶錠500mg『NIG』」製品情報:最新の供給状況・電子添文改訂情報を確認できます


サラゾスルファピリジン腸溶錠500mg出荷調整への薬局・病院薬剤部の現実的な対応策

ここまで状況と問題点を整理してきました。最後に、現場で実行できる具体的な対応策をまとめます。


在庫確認と発注管理の見直し


出荷調整品は「通常通りに発注しても入らない」という前提で動く必要があります。「CH」品については引き続き限定出荷が続く見通しです。卸業者との情報交換を密にし、入荷見込み量を把握したうえで、残量が少なくなった段階で医師・処方元への情報提供を行う体制を整えておくことが重要です。


先発品切り替え時の患者説明と費用確認


アザルフィジンEN錠500mgへの切り替えを検討する場合、薬価の確認は必須です。現時点ではアザルフィジンEN錠500mgが25.9円/錠、後発品「NIG」が24.2円/錠と差はわずかですが、患者の自己負担割合によっては1ヵ月の費用差が数十〜数百円単位で変わります。3割負担の患者さんであれば、1日4錠(2g/日)換算で1ヵ月約30日分の場合、先発品と後発品の差額は約(25.9−24.2)×4錠×30日×0.3≒約6円程度と微小ですが、説明責任を果たすことが大切です。


適応の確認とシステム対応


処方・調剤時に「腸溶錠」か「普通錠」かを明確に区別する仕組みをシステムに組み込むことが、最も効果的なエラー防止策です。具体的には、電子カルテの薬剤検索に「関節リウマチ用(腸溶錠)」「大腸炎用(普通錠)」のように適応疾患を付記する対応が推奨されます。


診療報酬上の特例適用の検討


令和8年4月以降も継続する特例措置(令和8年9月30日まで)の活用を検討してください。後発医薬品使用体制加算等の施設基準が維持できなくなる前に、自施設の数量シェアへの影響を試算し、特例適用が得策かどうかを確認してください。適用する場合は変更届出も忘れずに。


複数メーカーの在庫状況を定期的に把握する


DSJPのような医薬品供給状況データベースや、日本ジェネリック・日医工等のメーカーお知らせページを定期的にチェックする習慣をつけておくと、出荷調整の変化にいち早く気づくことができます。これが条件です。


出荷調整は「いつ解消されるかわからない」という不確実性を抱えています。現時点での最善策を取りながら、変化に対応できる体制を維持することが、医療従事者として患者さんを守る最大の防衛策です。


日本ジェネリック株式会社 お知らせ一覧:サラゾスルファピリジン腸溶錠「CH」の最新供給情報を随時確認できます