特定疾患療養管理料の算定要件と初診の注意点完全ガイド

特定疾患療養管理料の算定要件と初診の関係を正確に理解できていますか?初診から1ヶ月以内の算定不可ルールや2026年改定の新施設基準など、知らないと返還リスクに直結するポイントをわかりやすく解説します。

特定疾患療養管理料の算定要件と初診の正しい知識

初診日に指導をしっかり行っても、その月の管理料請求が丸ごと返還対象になることがあります。


この記事の3つのポイント
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初診から1ヶ月は算定不可

特定疾患療養管理料は初診料算定日から1ヶ月を経過した日以降でないと請求できません。初診当日はもちろん、翌日以降も1ヶ月間は算定対象外です。

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個別指導でカルテ記載なしは返還対象

レセプトで査定されなくても、個別指導でカルテへの指導内容記載がなければ不当請求と判断され、返還命令が下ります。

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2026年改定で施設基準が新設

令和8年度改定により、長期処方・リフィル処方箋対応の院内掲示が施設基準として義務付けられました。経過措置なしのため即日対応が必要です。


特定疾患療養管理料とは何か・対象疾患と点数の基本

特定疾患療養管理料(B000)は、厚生労働大臣が定める疾患を主病とする患者に対して、かかりつけ医が治療計画を立て、服薬・運動・栄養などの療養上の管理を計画的に行った場合に算定できる管理料です。算定できるのは診療所と許可病床数200床未満の病院に限られており、大病院では算定対象外となります。これはプライマリケアを担うかかりつけ医機能を評価する趣旨によるものです。


2024年度(令和6年)の診療報酬改定によって、それまで対象疾患の中心を占めていた糖尿病・高血圧性疾患・脂質異常症の3疾患が除外されました。これらは新設の「生活習慣病管理料(Ⅰ)(Ⅱ)」へ移行されたため、内科クリニックでは算定体制の大幅な見直しが求められています。


2024年改定で新たに対象疾患として追加されたのは「アナフィラキシー」と「ギラン・バレー症候群」の2疾患です。現在の対象疾患は、結核・悪性新生物・甲状腺障害・虚血性心疾患・不整脈・心不全・脳血管疾患・喘息・胃潰瘍・十二指腸潰瘍・肝疾患(慢性)・慢性膵炎など、主に慢性・難治性の疾患が並んでいます。


算定点数は施設の種別によって異なります。


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施設区分 対面診療 情報通信機器(オンライン)
診療所 225点 196点
100床未満の病院 147点 128点
100床以上200床未満の病院 87点 76点


月2回まで算定できます。算定のための特別な届出は不要ですが、オンライン診療で算定する場合は「情報通信機器を用いた診療に係る施設基準」の届出が別途必要な点に注意してください。


つまり、届出なしで請求できる管理料です。


参考リンク(厚生労働省・傷病名マスター 特定疾患療養管理料対象疾患の公式一覧):

診療報酬情報提供サービス「傷病名マスター」(厚生労働省)


特定疾患療養管理料の算定要件・初診から1ヶ月の正確な解釈

多くの医療事務担当者が「初診の翌月になれば算定できる」と勘違いしているケースがあります。これは誤りです。


正確には、初診料を算定した日から起算して1ヶ月を経過した日以降が算定可能日です。「1ヶ月経過」とは、たとえば5月10日に初診を行った場合、算定可能になるのは6月10日以降となります。翌月の1日(6月1日)から算定できるわけではありません。この点が実務上でよく混同されるポイントです。


さらに重要なのが「特定疾患と診断した日」ではなく「初診料を算定した日」を起点とする点です。たとえば5月10日に風邪で受診(初診料算定)し、その後慢性気管支炎が判明した場合でも、慢性気管支炎の診断日ではなく最初の初診料算定日(5月10日)から1ヶ月が起算されます。


1ヶ月を経過した日が休日にあたる場合は、その直前の休日でない日(平日)に要件を満たしていれば算定が可能です。また、1ヶ月を経過した日が翌々月の1日にあたるケースでも、前月の末日以前には算定できません。


初診料との併算定は絶対に不可です。


算定できないタイミングをまとめると、以下のとおりです。



  • 初診料を算定した初診当日(初診料に管理料が含まれるとみなされるため)

  • 初診日から起算して1ヶ月を経過するまでの期間

  • 自院から退院した日から1ヶ月を経過するまでの期間

  • 入院中(入院基本料に含まれるため)


退院後の1ヶ月制限については、かつては他院からの退院も含む解釈が行われていましたが、平成28年度(2016年)の改定以降、留意事項通知に「自院からの退院」に限る旨が明記されました。他院を退院した直後に自院を受診した患者への算定は、現在の解釈では制限されません。この変更を知らずに算定を控えているクリニックもあるため、確認しておく価値があります。これは使えそうです。


参考リンク(京都府保険医協会 保険診療Q&A 特定疾患療養管理料の算定タイミング詳解):

保険診療Q&A 531(京都府保険医協会)


特定疾患療養管理料の算定要件・主病の定義と算定できないケース

対象疾患が主病でなければ算定できません。これが原則です。


「主病」とは、最も医療資源が投入されている病態を指し、単にカルテや電子カルテ上に病名が登録されているだけでは不十分です。実際の診療内容が主病に対する療養管理・指導を伴っていなければ、カルテ上の登録がどうあれ算定要件を満たさないと判断されます。


以下に、よくある算定不可のケースを整理します。



  • 🚫 <strong>主病以外の疾患が主体の受診:喘息患者が上気道炎・咽頭炎・季節性アレルギーのみで受診した場合は、主病の管理を行っていないため算定不可。

  • 🚫 主病の治療を他院で受けている場合:患者の心不全を別のクリニックで治療していて、自院では別の疾患で受診している場合は算定不可。

  • 🚫 同一医療機関の複数科で重複算定:同一保険医療機関内で2科以上の受診がある場合、主病を治療している診療科のみ算定可。

  • 🚫 200床以上の病院:施設要件として算定不可(許可病床数が200床未満の医療機関のみ対象)。


一方で「他院で甲状腺障害の治療を受けており、自院では喘息の管理をしている」ケースは、それぞれの主病が異なる医療機関での管理となるため、両院での算定は可能です。特定疾患療養管理料は医療機関をまたいで合計月2回まで、という制限ではなく、あくまで各医療機関が主病に対する管理を行った場合にそれぞれ月2回算定できる仕組みです。厳しいところですね。


また、以下の管理料・指導料との併算定はできません。



  • 生活習慣病管理料(Ⅰ・Ⅱ)

  • ウイルス疾患指導料

  • てんかん指導料

  • 難病外来指導管理料

  • 小児特定疾患カウンセリング料・小児療養指導料

  • 皮膚科特定疾患指導管理料

  • 慢性疼痛疾患管理料

  • 耳鼻咽喉科特定疾患指導管理料

  • 在宅療養指導管理料(第2部第2節第1款の各区分)

  • 心身医学療法


重複して算定してしまっていないか、レセプト提出前の確認フローに組み込むことが重要です。


特定疾患療養管理料の算定要件・カルテ記載と個別指導リスク

実際の指導を行っていても、カルテに記載がなければ算定できません。


日本医事新報社の識者コラム(工藤弘志・順心病院)によれば、個別指導において最も指摘頻度が高い項目が特定疾患療養管理料であると明記されています。カルテに療養管理の要点が記載されていない場合、レセプト審査では査定されなかったとしても、個別指導の場で「支払条件を満たしていない不当請求」と判断され、返還命令が下されます。


カルテ記載に求められるのは「管理の内容の要点」です。画一的なコピー文・テンプレートの使い回しも指導時に問題視されることがあります。個々の患者状態に即した具体的な記載が求められます。記載の参考となるSOAPフォーマットの例を示します。



  • 📝 S(主観):「最近咳が落ち着いている」「夜間に息苦しさがある」など患者の訴えを記録

  • 📝 O(客観):SpO₂・呼吸数・聴診所見など客観的なバイタルや検査結果

  • 📝 A(評価):「現在の治療を継続し経過観察」「吸入薬の用量を増量する」などの判断と指導内容

  • 📝 P(計画):次回受診日・処方内容の変更・検査予定など具体的な計画


「指導した」という事実だけでなく「何を・どのように指導したか」が第三者が読んでも理解できる形で残されていることが重要です。


算定漏れも問題ですが、記載漏れによる返還リスクはより深刻です。


個別指導の結果が「再指導」となった場合、次の指導で問題が解消されなければ「監査」へ移行し、最悪の場合は保険医療機関の指定取り消しや保険医登録の抹消といった重大な行政処分につながります。電子カルテを使用している医療機関では、テンプレートを整備しつつも患者ごとの内容を個別に修正・追記するルールを院内で統一しておくことが、現実的かつ効果的な対策です。


参考リンク(日本医事新報社 識者の眼:個別指導で返還金を求められる事例 特定疾患療養管理料に注意):

【識者の眼】個別指導で返還金を求められる事例─特定疾患療養管理料に注意(日本医事新報社)


特定疾患療養管理料の算定要件・2026年改定で変わった施設基準と実務対応

2026年度(令和8年度)の診療報酬改定によって、特定疾患療養管理料に新たな施設基準と算定要件が追加されました。経過措置は設けられておらず、改定施行と同時に対応が必要です。


新たに義務付けられた内容は2点です。



  • 【施設基準】患者の状態に応じて28日以上の長期投薬またはリフィル処方箋の交付が可能であることを、医療機関の見やすい場所に掲示すること。

  • 【算定要件】患者から求められた場合に、患者の状態を踏まえて適切に長期処方・リフィル処方箋に対応すること。


掲示が施設基準、対応が算定要件です。


この改定の背景には、慢性疾患の安定した患者について毎月来院を強制するのではなく、長期処方やリフィル処方箋を活用した受診効率化を推進するという医療政策の方向性があります。掲示義務はあくまで「対応可能であることの周知」であり、全患者に長期処方を強制するものではありません。患者個々の状態を踏まえて適切に判断することが前提です。


実務上は、受付窓口や待合室の見やすい位置に掲示物を設置することが最低限の対応となります。一部のクリニックではウェブサイトへの掲示も行われており、2025年6月以降はウェブサイトへの掲載も義務化が予定されています。院内掲示と合わせてウェブサイトの確認・更新も早めに進めておくのが得策です。


また、2026年改定では「胃潰瘍・十二指腸潰瘍」についても除外規定が新設されました。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)の投与が禁忌である消化性潰瘍の患者に対してNSAIDsを使用し続けている場合は、特定疾患療養管理料の算定対象から除外されます。禁忌薬剤を投与したまま管理料を算定することは医療の質的整合性に反するという観点からの改定で、処方内容の確認が実務上必要になります。これは注意が必要です。


参考リンク(クレドメディカル 特定疾患療養管理料【2026年2月更新】最新の施設基準・算定要件解説):

特定疾患療養管理料【2026年2月更新】(クレドメディカル)


特定疾患療養管理料の算定要件・初診月の算定漏れを防ぐ独自の運用チェック術

算定漏れは、不正請求と並ぶ実害です。


算定漏れが起きやすい状況として特に多いのが「初診月の管理」です。初診を行った月はまだ算定できないため問題はないものの、翌月以降に算定フラグを立て忘れてしまうケースが現場では頻繁に発生します。電子カルテや医事コンピューターによっては、初診日から1ヶ月が経過した後に自動で算定フラグを立てる機能が搭載されているものもありますが、全システムに対応しているわけではありません。


実務的に効果的な運用ルールとして、以下の3点が有効です。



  • 🗓️ 初診時に翌月の算定開始日をカルテにメモする:初診日を記録する際に「〇月〇日以降から特定疾患療養管理料算定可能」と一言追記するだけで見落とし防止につながります。

  • 🔁 月次の対象患者リストで確認する:毎月初旬に特定疾患を主病として登録している患者の一覧を医事システムから出力し、算定可能日を過ぎているにもかかわらず算定されていないケースを拾い上げる仕組みを作ります。

  • 📋 主病登録と算定フラグのダブルチェック:新患登録時の病名入力担当と、会計担当を別の担当者が確認する二重チェック体制が有効です。特に急性疾患で受診した患者に後日慢性疾患が判明するパターンは算定漏れになりやすく、注意が必要です。


診療所で月2回算定すると225点×2=450点、1点10円として4,500円分の収益が1患者・1ヶ月あたりになります。慢性疾患患者が月50人いれば、算定漏れゼロとそうでない場合の差は毎月22万5,000円(年間270万円)以上になる計算です。医療機関の経営面にとって無視できない金額です。


初診から1ヶ月経過後に確実に算定を開始できているかどうか、一度棚卸しをする価値があります。


参考リンク(厚生労働省 診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項通知・医科点数表関連):

別添1 医科診療報酬点数表に関する事項(厚生労働省 令和8年3月)