「スコアが高いほど、肌の状態が悪い」という項目が実はVISIAには存在します。
VISIA(ビジア)は、米国Canfield Scientific社が開発した医療用の肌画像診断システムです。美容皮膚科や美容外科のカウンセリング現場で広く使われており、一般的なコスメカウンターの肌診断器とは根本的に異なる精度を持っています。
機器の仕組みとしては、カラー写真・UV写真・クロスポーラライズド光(偏光光)の3種類の光源を使って顔全体を撮影します。これにより、表面のシミだけでなく、肌内部に潜む色素沈着や血管走行まで可視化できます。撮影は3方向から固定ポジションで行われ、3次元ポジションマッチング機能によって撮影ぶれを最小限に抑えています。つまり、数ヵ月後・数年後に再撮影しても、同一条件での比較が可能という点が医療機器としての強みです。
データベースには、世界109,300人以上(うち日本人データ11,000人以上)の測定結果が蓄積されています。これは、単なる「今の肌の写真」ではなく、「同年代・同性の平均値との相対比較」を行える根拠となっています。医療従事者にとって重要なのは、この点です。主観に頼らず、数値として客観的に「その患者の肌はどの位置にあるか」を示せるため、治療方針の説明や患者説得においても説得力が格段に上がります。
撮影時間は約5分と短く、メイクオフ後に顔を機器に固定するだけです。痛みや刺激は一切なく、患者への負担も低い点も現場で使いやすい理由の一つです。
参考:Canfield Scientific社によるVISIA公式製品情報
https://www.canfieldsci.com/imaging-systems/visia-complexion-analysis/
VISIAのスコアで最も誤解されやすいのが「数値の高低がどちらを意味するか」という点です。これが冒頭の驚きの一文につながります。
まず基本的な仕組みを整理します。VISIAのスコアはパーセンタイル値で表示されます。これは「同年代・同性100人中、自分は何番目に位置するか」を示すものです。スコアが50%の場合は「ちょうど平均」ということを指し、50%を超えていれば平均より良好、下回れば平均より注意が必要という読み方になります。つまり50%が基本の基準です。
| 項目 | スコアが高い意味 | スコアが低い意味 |
|---|---|---|
| シミ(Spots) | シミが少なく良好 | シミが多く要注意 |
| 隠れジミ(UV Spots) | 隠れジミが少ない | 将来のシミ予備軍が多い |
| シワ(Wrinkles) | シワが少なく良好 | シワが多い |
| 毛穴(Pores) | 毛穴の状態が良好 | 毛穴の乱れが大きい |
| キメ(Texture) | キメが整っている | キメが乱れている |
| 赤み(Redness) | 赤みが少ない | 炎症・血管拡張が多い |
| ポルフィリン(Porphyrins) | ⚠️高いほど要注意 | アクネ菌代謝物が少ない |
ここで重要な例外があります。「ポルフィリン」だけは他の項目と逆の読み方をします。ポルフィリンはアクネ菌の代謝物で、値が高いほどアクネ菌が多く存在し、ニキビができやすい肌状態であることを示します。つまり、ポルフィリンのスコアは「低いほど良好」です。これは医療従事者でも混乱しやすい部分です。患者に誤った説明をしてしまうと、スキンケア指導が逆方向になりかねません。ポルフィリンだけは例外と覚えておけばOKです。
また、スコアは絶対値ではなく相対値です。スコアが70%であっても、それは「同年代の上位30%に入る良い状態」を意味するだけであり、「絶対的に良い肌」を保証するものではありません。これも患者説明時に丁寧に伝えるべきポイントです。
VISIAが解析する8項目のうち、医療現場で特に活用度が高い「隠れジミ」と「肌年齢(TruSkin Age)」について詳しく見ていきます。
隠れジミ(UV Spots)の意味
通常の可視光では見えないシミ予備軍を、UV撮影によって可視化する項目です。表面に出ていないため患者本人が全く自覚していないことが多く、現場での「気づき」を与える項目として非常に有効です。例えば、シミがほとんど見当たらない30代前半の患者でも、UV撮影をすると頬全体に多数の隠れジミが確認されるケースは珍しくありません。放置すれば数年以内に表面化するリスクがある部分です。これは使えそうです。
実際のスコアが50%を下回っていた場合(隠れジミが多い状態)、IPL治療や美白内服の検討を早期に提案できます。逆にスコアが50%以上で隠れジミが少なければ、現在のUVケア継続が正解であることを数値で示せます。このように「現在のケアの効果を裏付ける」ツールとしても機能します。
肌年齢(TruSkin Age)の仕組み
これは実年齢と異なる「肌年齢」を算出する機能です。VISIAは蓄積された世界中の肌データベースと比較し、シミ・シワ・毛穴などの各スコアの組み合わせから「その肌の総合状態は何歳相当か」を数値で示します。
肌年齢が実年齢より若ければ「現在のケアは正しい」と説明でき、実年齢より老けていれば「どの項目に問題があるか」を具体的に指摘しながら治療計画を立てる出発点になります。数値を見ながら話ができるため、患者のモチベーションを引き出しやすく、治療離脱率の低下にも繋がります。これが条件です。
シワ(Wrinkles)の解析
額・目尻・口周りのシワを画像解析で定量評価します。特に目尻のちりめんじわは視認が難しい部位のため、VISIAによる可視化はボトックス提案の有力な根拠になります。
赤み(Redness)の臨床的意義
炎症・毛細血管拡張・酒さなどが赤みとして反映されます。「なんとなく顔が赤い」という訴えに対して、赤みの分布を可視化することで原因推定の精度が上がります。肝斑との鑑別においても、偏光光(メラニンインデックス)モードを組み合わせることで、「表面のシミに見えて実は炎症後の赤み」という見落としを防げます。
参考:美容看護師によるVISIA各項目の詳細解説(千葉内科在宅・美容皮膚科クリニック)
https://chibabiyou.com/2026/01/visia-counseling/
VISIAのスコアはあくまでも「同年代・同性との相対比較」です。これが意外な盲点を生みます。
例えば、30代と40代でスコア60%が出たとします。どちらも「同年代の上位40%」という評価ですが、40代のスコア60%は30代のスコア60%よりも絶対的な肌ダメージが大きい可能性があります。なぜなら40代の「平均」自体が、30代の「平均」よりも肌ダメージが蓄積された状態を前提にしているからです。つまり、スコアが高くても年齢とともに平均ラインそのものが下がっているという点を見落としてはいけません。
このことは患者への説明で特に重要です。「スコアが50以上だから大丈夫」という安易な安心感を与えないことが大切です。「今のケアで年齢平均を維持できている」という解釈と、「年齢が上がるにつれて維持するためにより積極的なケアが必要になる」という将来予測を合わせて伝えることが、長期的な信頼関係にもつながります。
また、隠れジミ(UV Spots)は20〜30代でスコアが大幅に平均を下回るケースが多い傾向があります。これは若い頃の紫外線対策の不足が蓄積されるためです。患者が「若いからシミはまだ先の話」と思い込んでいることが多いため、UV撮影の結果は特にインパクトを与えやすい項目です。この項目だけで患者の治療意識が大きく変わることも少なくありません。
一方、スコアが全体的に平均以上(70〜80%台)であっても、1つの項目だけが突出して低い場合があります。例えば、シミ・シワ・キメは良好なのにポルフィリンが高い(ニキビ菌が多い)ケースです。このような「弱点の局在化」を見つけるのが、VISIAを使ったカウンセリングの真の価値です。全体の平均スコアだけを見て「問題なし」と判断してしまうと、改善が必要な箇所を見逃します。全項目を均等に見ることが原則です。
参考:VISIA肌診断の数値と見方の解説(藤井クリニック)
https://www.fujiiclinic-umeda.com/column158.html
VISIAの診断結果は、「見せる」だけでなく「治療計画の根拠にする」ことで最大の価値を発揮します。
まず、スコアに基づいた治療優先度の設定が可能になります。例えば、隠れジミのスコアが20%(同年代下位20%)の場合は、目に見えないシミ予備軍の対策を最優先とし、フォトフェイシャル(IPL)や美白内服を提案するロジックが成立します。患者への説明も「気になるから」ではなく「スコアが平均の半分以下だから」という客観的な根拠に変わります。これは臨床での説得力が大きく違います。
治療前後の比較という活用法も重要です。同じ条件・同じ部位で撮影を繰り返すことにより、数値の変化として治療効果が可視化されます。「なんとなく明るくなった気がする」という患者の感覚的な評価を、「シミスコアが45%から62%に改善」という数値に変換できるのは、医療の質の証明にもなります。患者満足度と継続率の向上につながります。いいことですね。
カウンセリングにおける具体的な活用の流れは次のとおりです。
| スコア状況 | 代表的な提案内容 | 主な施術例 |
|---|---|---|
| 隠れジミが低い(50%以下) | 早期の光治療+美白ケア | IPL(フォトフェイシャル)、トラネキサム酸内服 |
| ポルフィリンが高い | アクネ菌対策・皮脂コントロール | アゼライン酸、サリチル酸、エレクトロポレーション |
| 赤みが低い(50%以下) | 炎症・血管病変への対処 | IPL(血管モード)、セラミド補充ケア |
| 毛穴が低い(50%以下) | 毛穴の種類別ケア | ダーマペン、ポテンツァ、HydraFacial |
| 肌年齢>実年齢 | 総合的な肌エイジングケア | ピコレーザー、ボトックス、ハイフ |
さらに、VISIAは将来シミュレーション機能(Skin Advisor)も搭載しているモデルがあります。現在のケアを続けた場合・治療を行った場合の肌状態を予測表示できるため、予防美容の動機付けとして非常に効果的です。「5年後の肌」を見せながら治療の必要性を説明するアプローチは、患者が自ら「治療したい」と思う流れを自然に作れます。
医療従事者として大切なのは、スコアの高低を「良い・悪い」という評価で終わらせないことです。「なぜそのスコアになっているのか」「どのような生活習慣・紫外線歴・既往歴が関係しているか」を合わせて読み解き、患者一人ひとりに合ったオーダーメイドの治療提案へ落とし込む。VISIAはそのためのツールです。スコアの読み方と治療への橋渡しが条件です。
参考:VISIA Evolution 製品概要(株式会社インテグラル)
https://www.integralcorp.jp/skin/products/visia-evolution/
医療の現場でVISIAを最大限に活かすうえで、見落とされがちな視点があります。それは「スコアの絶対値より、時系列の変化を追うことのほうが重要」という考え方です。
一般的には「スコアが50以上かどうか」という同年代比較に注目が集まります。ところが臨床上の真の価値は、治療前後・ケア変更前後のスコア推移にあります。例えば、初回スコアがシミ35%(平均以下)であっても、3ヵ月後のスコアが55%になっていれば、「同年代平均を下回る状態から平均以上に改善した」という明確な進歩が数値で示せます。患者にとっては「頑張った証拠」になり、治療継続のモチベーションが大きく高まります。
定点観測の推奨頻度としては、一般的に月1回の治療に合わせてVISIA撮影を行うクリニックが多いです。3〜6ヵ月単位でのスコア比較が、治療の効果判定に適しています。ただし、日焼け直後・肌荒れ中・生理前後などは一時的にスコアが下がりやすいため、測定条件をできる限り一定にすることも定点観測の精度を上げるために重要です。メイクオフ後の清潔な状態で、なるべく同時間帯・同季節に撮影するのが理想です。
また、VISIAのスコアは日焼け止めの効果検証にも活用できます。特に隠れジミ(UV Spots)の項目は、紫外線防御の継続によって半年〜1年スケールで改善が期待できる項目です。日焼け止めの使用を患者に指導したうえで、次回撮影でスコアを確認することで、「あなたの日焼け止めは正しく機能している」という客観的なフィードバックが可能になります。これは通常の診察では提示できない視点です。患者の自己ケアへの信頼感を高める効果があります。
なお、スコア比較を行う際は、異なるクリニック間での数値の単純比較には注意が必要です。VISIAは同一機器・同一条件での比較前提で設計されています。クリニックを変えた場合、撮影時の照明条件や機器のキャリブレーションの違いによってスコアが変化することがあります。この点を患者に事前に伝えておくことで、「前のクリニックと数値が違う」という混乱を防げます。定点観測は同一クリニックで続けることが条件です。
参考:BIANCA ClinicによるVISIA治療前後の活用解説
https://biancaclinic.jp/visia/