ワンデュロパッチ出荷停止で知るべき代替と対応策

ワンデュロパッチの出荷停止・自主回収の経緯から、代替薬フェントステープへの切り替え手順、麻薬管理の注意点まで医療従事者が今すぐ確認すべき情報とは?

ワンデュロパッチ出荷停止の全容と医療現場が取るべき対応策

フェントステープへの切り替えが「当日から即日」できると思ったら、eラーニング未受講だと処方できない落とし穴があります。


📋 この記事の3つのポイント
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出荷停止の経緯

2024年8月の出荷停止から自主回収(クラスII)まで、ヤンセンファーマが一次包装材変更を原因とする品質問題で複数フェーズの対応を迫られた経緯を整理します。

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代替薬への切り替え手順

フェントステープなど代替薬へのオピオイド換算・切り替えタイミングの基本と、慢性疼痛使用時に必須のeラーニング受講要件について解説します。

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麻薬管理の注意点

出荷停止・自主回収時に医療機関・薬局が行うべき在庫確認・返品・廃棄届の手続きを、法的リスクの観点からわかりやすく説明します。


ワンデュロパッチ出荷停止の経緯と2025年3月の現状

ワンデュロ®パッチ(一般名:フェンタニル)は、ヤンセンファーマ株式会社が製造販売する経皮吸収型の持続性疼痛治療剤です。がん性疼痛および非がん性慢性疼痛に適応を持ち、24時間ごとの貼り替えで血中濃度を維持する1日型フェンタニル貼付剤として広く使われてきました。


問題が表面化したのは2024年7月です。年次安定性モニタリングプログラムにより、ワンデュロ®パッチ0.84mgの15か月時点での安定性試験において、有効成分フェンタニルの分解物(合計)が規格値内ながら増加傾向を示すことが確認されました。調査の結果、2021年12月に実施した一次包装資材の材質変更が原因と判明。供給元での製造終了に伴って行われた変更であり、元の資材には戻せないという状況でした。


つまり、製造過程の根本課題が「後戻りできない変更」にあったということですね。


これを受けてヤンセンファーマは2024年8月11日より出荷停止を実施。同年10月1日には「次ロット製品の製造過程の課題解決に時間を要しているため、出荷停止期間が長期化する見込み」として改めて医療関係者に周知しました。公益社団法人日本麻酔科学会も学会サイトで同月に告知し、早期の治療オプション変更を呼びかけています。


その後、2024年12月23日に「有効期間を36か月から15か月に短縮する」という条件付きで限定出荷として再開されました。しかし翌2025年2月10日には新たな局面を迎えます。有効成分の分解物(フェンタニルN-オキシド)が承認規格値付近であり、使用期限内に規格値を超える可能性が否定できないとして、ワンデュロ®パッチ0.84mg・1.7mg・6.7mgの3規格が自主回収(クラスII)対象となりました。


ここでポイントがあります。


クラスIIの自主回収は「使用すると一時的・可逆的な健康影響を及ぼすおそれがある、または重篤な健康被害のおそれはほとんどない」区分ですが、ヤンセンファーマは「分解物は人の健康に影響を与えるものではないことが確認されている」としています。現時点での健康被害報告はゼロです。


そして2025年3月、ヤンセンファーマは「諸般の事情により現在の弊社在庫をもって供給停止となる」と医療関係者各位に向けて正式に告知。在庫消尽予定時期として0.84mg・1.7mg・5mg・6.7mgは2025年4月下旬、3.4mgは2025年5月下旬と明記されています。再開見通しについての記載はなく、事実上の販売終了に近い状況が続いています。


参考リンク(出荷停止の公式案内・日本麻酔科学会掲載PDFへのリンク)。
ヤンセンファーマ:ワンデュロ®パッチ 供給停止のお知らせとお詫び(2025年3月・日本麻酔科学会掲載PDF)


参考リンク(自主回収の詳細・Johnson & Johnson日本公式ページ)。
「ワンデュロ®パッチ」自主回収(クラスII)のお知らせ(2025年2月10日・J&J日本公式)


ワンデュロパッチ出荷停止の主な代替薬と換算の考え方

代替薬の第一選択として、ヤンセンファーマ自身が案内文書に明記しているのが「フェントス®テープ(フェンタニルクエン酸塩・1日型)」です。製造販売元は久光製薬株式会社、発売元は協和キリン株式会社で、ワンデュロパッチと同じ24時間ごとの貼り替えサイクルを持つフェンタニル製剤です。


ただし、換算は「1対1では行えない」という点が極めて重要です。


フェントステープとワンデュロパッチは、製剤の基剤・構造が異なるため、フェンタニル含有量が同じ数値でも皮膚への吸収特性に違いがあります。また、両製剤の添付文書における経口モルヒネとのフェンタニル換算比にも差があり、ワンデュロパッチは150:1を採用しているのに対し、フェントステープの添付文書は100:1に基づいています(国立がん研究センター換算表より)。


| 換算比 | ワンデュロパッチ | フェントステープ |
|---|---|---|
| 経口モルヒネ:フェンタニル | 150:1 | 100:1(添付文書準拠) |
| 貼替サイクル | 24時間(1日型) | 24時間(1日型) |
| 慢性疼痛使用 | eラーニング受講が必要 | eラーニング受講が必要 |


この換算比の差は見落とされがちです。


たとえば経口モルヒネ60mg/日をワンデュロパッチで換算すると0.4mg/日相当となりますが、フェントステープの換算比100:1で当てはめると0.6mg/日相当になり、同じ「フェンタニル製剤への切り替え」でも計算値がズレることがあります。過量投与は呼吸抑制の重大リスクにつながるため、切り替え前には各製剤の添付文書・適正使用ガイドを改めて確認することが原則です。


一方、3日型のデュロテップ®MTパッチ(ヤンセンファーマ製・同様に出荷停止中)やフェンタニル3日用テープのジェネリック品(東和薬品「フェンタニル3日用テープ」、帝國製薬/テルモ「フェンタニル3日用テープ テイコク」等)も代替候補となります。3日型への切り替えは貼り替え頻度が週2回に減少するため、在宅患者・介護者の負担軽減につながります。これは使えそうです。


切り替えタイミングについても整理が必要です。フェントステープ・デュロテップMTパッチへ他のオピオイドから変更する際は、先行薬の最終投与の12時間後を目安に貼付を開始し、次回から変更薬のみにするというスケジュールが一般的なガイダンスとして示されています。ただし患者個別の疼痛コントロール状況に応じた調整は不可欠です。


参考リンク(国立がん研究センター・オピオイド製剤換算表)。
国立がん研究センター:オピオイド製剤換算表(フェンタニル各製剤・換算比の実践的な一覧)


ワンデュロパッチ出荷停止時の代替薬でeラーニングが必要になる条件

ここが医療現場で最もトラブルになりやすいポイントです。


フェントステープ(およびデュロテップMTパッチ・ワンデュロパッチ)を<strong>慢性疼痛(非がん性)に使用する場合、厚生労働省の承認条件として、処方医師が製造販売業者の提供する講習(eラーニング)を受講していることが必須とされています。これはがん性疼痛への使用では不要な手順であり、同じフェンタニル製剤でも適応によって手続きが180度変わります。


eラーニングが必要なのはこの条件のみです。


具体的には、①医師が慢性疼痛eラーニングを受講し、②受講修了後に医師専用の「確認書」が発行され、③調剤時に薬剤師が確認書の提示を受けるか、適正使用管理窓口でWEB確認を行ってから初めて調剤できます。処方箋には「慢性疼痛」である旨の記載も必要です。


実際の調剤現場では、「担当医がeラーニング未受講のままフェントステープに切り替え処方を出し、薬局窓口で受領できない」という事態が生じ得ます。特にワンデュロパッチを急遽切り替えなければならない場面で、受講手続きに数日かかるため患者の疼痛コントロールに空白期間が生じるリスクがあります。これは痛いですね。


慢性疼痛でのeラーニング受講に関する問い合わせ先は、協和キリン株式会社の慢性疼痛eラーニング専用フォームが窓口となっています。新規受講希望者はメールフォームから申し込み、専用WEBサイトのアクセス情報を受け取る形になります。処方切り替えを予定している施設は、事前に受講状況を確認しておくことを強くお勧めします。


また、薬剤師の立場では「確認書の有効期限や病院ごとの登録状況」の確認が現実的な確認ステップになります。処方医師が異動したケースや、複数の医師が在籍する施設では受講状況が医師ごとに異なるため、一括管理の整備が必要です。


参考リンク(フェントステープ慢性疼痛適正使用ガイド・PMDA掲載)。
フェントス®テープ 適正使用ガイド(PMDA掲載・慢性疼痛における切り替え換算表も収録)


参考リンク(慢性疼痛eラーニング問い合わせ先・協和キリン)。
慢性疼痛eラーニングに関するお問い合わせ(協和キリン メディカルインフォメーション)


ワンデュロパッチ出荷停止・回収時の麻薬管理手続きと法的注意点

ワンデュロパッチは医療用麻薬(麻薬及び向精神薬取締法の規制対象)です。出荷停止・自主回収であっても、通常の医薬品と同じ感覚で処分・返品することは法的に許されません。この点が医療機関と薬局の双方でリスクになり得ます。


麻薬管理が基本です。


まず、自主回収対象ロットを保有している場合の対応を整理します。製品番号が回収対象(2025年2月10日告知のクラスII対象製品)に該当するかどうかをロット番号で確認します。確認方法はヤンセンファーマの規制医薬品流通情報特別窓口(フリーダイヤル:0120-302-368)への問い合わせが確実です。


回収対象品を返品する場合、未使用品・患者から回収した使用済みパッチいずれも麻薬としての管理が維持されます。麻薬小売業者(薬局)が医療機関や患者からワンデュロパッチを引き取る際は「残余麻薬の受け取り」として麻薬帳簿に記録する必要があります。


| 場面 | 届出区分 | 提出先・期限 |
|---|---|---|
| 使用済み貼付剤の廃棄 | 調剤済麻薬廃棄届 | 廃棄後30日以内に都道府県知事 |
| 未使用品の廃棄 | 麻薬廃棄届(事前届) | 廃棄前に都道府県知事へ届出、麻薬取締員立会いが原則 |
| 患者返納 | 残余麻薬受領の記録 | 麻薬帳簿に記録(即日) |


厳しいところですね。


特に注意が必要なのが、「未使用のワンデュロパッチを普通に廃棄する」行為です。未調剤の麻薬を廃棄する場合は事前に都道府県知事への「麻薬廃棄届」が必要で、麻薬取締員の立会いのもと廃棄するのが原則です。在庫ロットが回収対象と判明した場合でも、この手続きを経ずに廃棄することは「無届廃棄」として麻薬及び向精神薬取締法違反になり得ます。


なお、自主回収に際してヤンセンファーマが特別な回収スキームを設ける場合は、同社の案内に従った手続きが最優先です。回収品の扱いについては必ず卸売業者または同社窓口に確認してから対応することが、法的トラブルを防ぐ最も確実な方法です。


参考リンク(厚生労働省・薬局における麻薬管理マニュアル)。
厚生労働省:薬局における麻薬管理マニュアル(廃棄手続き・帳簿記載の具体例を収録)


ワンデュロパッチ出荷停止が示す「使用期限短縮」という独自リスク管理の視点

今回の一連の問題には、あまり取り上げられていない独自の論点があります。それは「2024年12月の限定出荷再開時に使用期限が36か月から15か月に短縮された」という事実です。


再開品の使用期限は15か月が条件です。


通常36か月の有効期間で流通する医薬品が、15か月という通常より大幅に短い期限で出回ることは、現場の在庫管理・発注計画に直接影響します。たとえばワンデュロ®パッチ0.84mgの2024年12月23日出荷分(製造番号A0030)の使用期限は2025年4月30日と設定されていました。これはわずか4か月程度の有効期間です。


在庫回転が遅い施設では、気づいたら期限切れ麻薬が棚に残っていたというリスクが生じます。これは期限切れ麻薬の保管・廃棄手続きにつながり、行政への届出が必要になる法的負担が発生します。


さらに、再開→即自主回収(クラスII)という2か月未満のサイクルで状況が変化したことは、医療機関・薬局双方の情報収集体制を問い直す機会といえます。ヤンセンファーマからの連絡は学会(日本麻酔科学会・日本緩和医療学会)や卸売業者経由で届くことが多く、施設によっては情報が届くタイミングに差が出ます。


この情報格差が「古いロットを無意識に使い続ける」状況を生み出す可能性があります。


薬剤師が1か月に1度、医薬品安全情報やメーカーからの供給情報をDSJP(Drug Shortage Japan)やPMDA医薬品情報のページで確認する習慣があれば、こうした状況をいち早くキャッチして対応できます。特に麻薬貼付剤は患者ごとに在庫管理が必要な特性上、日常的なロット・期限の照合が不可欠です。つまり、情報収集の仕組み化が出荷停止リスクへの根本的な対策です。


参考リンク(DSJP・ワンデュロパッチ供給状況履歴)。
DSJP(Drug Shortage Japan):ワンデュロパッチ0.84mgの供給状況履歴(告知日・実施日・区分一覧)


参考リンク(2025年出荷調整情報まとめ・薬剤師向け情報サイト)。
2025年出荷停止・限定出荷情報まとめ(薬剤師向け・デュロテップMTパッチ/ワンデュロパッチ関連も収録)