ゴム手袋を毎日使っている医療従事者でも、ある日突然かぶれが難治化して休職に追い込まれるケースがあります。
アレルギー性接触皮膚炎(ACD)は、<strong>Ⅳ型(遅延型)アレルギー反応に分類されます。 これはⅠ型のようにIgE抗体が介在するのではなく、感作されたTリンパ球(CD4陽性・CD8陽性)が主体となって引き起こされる免疫応答です。 つまり即時型ではなく、細胞性免疫が主役ということですね。ebisu-hifuka+1
アレルゲンが初めて皮膚に接触すると、樹状細胞(ランゲルハンス細胞)が抗原を取り込み、所属リンパ節でT細胞を感作します。この感作期間は通常2週間程度ですが、場合によっては半年以上かかることも報告されています。 感作が成立した後に同じアレルゲンに再接触すると、24〜72時間以内に湿疹反応がピークに達します。yaotome-skin-clinic+1
Ⅰ型アレルギー(即時型)と混同されやすい点に注意が必要です。ⅠはIgE/肥満細胞を介した15〜30分での反応で、代表疾患は蕁麻疹・アナフィラキシーです。 一方Ⅳ型は反応が「遅い」という特徴が診断のヒントになります。これが基本です。
参考)https://www.tmghig.jp/hospital/department/surgery/dermatology/allergic-dermatitis/
| アレルギー型 | 介在物質 | 反応出現時間 | 代表疾患 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ型(即時型) | IgE・肥満細胞 | 15〜30分 | 蕁麻疹、アナフィラキシー、花粉症 |
| Ⅱ型(細胞障害型) | IgG・IgM抗体 | 数時間 | 自己免疫性溶血性貧血 |
| Ⅲ型(免疫複合体型) | IgG・IgM免疫複合体 | 数時間〜1日 | 血清病、糸球体腎炎 |
| Ⅳ型(遅延型) | 感作Tリンパ球 | 24〜72時間 | アレルギー性接触皮膚炎、薬疹 |
Ⅳ型アレルギーは「ツベルクリン型」とも呼ばれ、結核の診断に使うツベルクリン反応もこの機序を利用しています。 意外ですね。
参考)アレルギー性皮膚炎|市川駅徒歩1分、桜こどもクリニック市川|…
「昨日から使い始めた化粧品で今日すぐかぶれた」という訴えを聞いたとき、それはアレルギー性接触皮膚炎ではなく刺激性接触皮膚炎の可能性が高いです。 アレルギー性の場合、初回接触では症状は出ません。これが原因特定を難しくする最大の落とし穴です。
参考)えいご皮フ科その赤みやかゆみ、放置しないで! 接触皮膚炎の見…
感作期間には個人差があり、アレルゲンの種類・濃度・接触時間などの条件が複雑に絡み合います。 例えばゴム手袋の加硫促進剤のような職業的アレルゲンに毎日長時間触れている医療従事者では、比較的短期間で感作が成立することがあります。感作が成立した後の再刺激では、数時間〜1日程度でアレルギー反応が誘発されます。tanabe-pharma+1
臨床現場での重要なポイントは「以前は問題なく使えていた」という患者の訴えをそのまま否定材料にしないことです。数週間〜数ヶ月前から使い続けていたものが原因アレルゲンというケースは非常に多くあります。感作期間の認識が診断精度を左右します。
Ⅳ型アレルギーである以上、血液検査でのIgE測定では診断できません。これが基本です。アレルギー性接触皮膚炎の確定診断にはパッチテストが必須です。 原因と考えられる物質を背部や上腕内側に貼付し、皮膚反応を観察します。
参考)パッチテスト
検査の流れは以下の通りです。
参考)パッチテストでアレルギー性接触皮膚炎の原因を見つけて治療しよ…
判定にはICDRG(国際接触皮膚炎研究班)基準が使用されます。 反応なし(陰性)から強陽性まで段階的に評価し、発赤のみ・丘疹・水疱の有無で判定します。重要なのは、2回の読み取りを行うことです。Ⅳ型の遅延型という特性上、72〜96時間後になって初めて陽性になるケースがあるため、48時間での1回判定だけでは見落としが生じることがあります。
参考)http://www.tokyo-med.ac.jp/derma/gairai/gairai_patch.html
医療従事者が職場での手袋を原因として疑う場合、実際に使用している製品をそのまま持参してパッチテストに使うことも有用です。これは使えそうです。
参考:日本皮膚科学会による接触皮膚炎診療ガイドライン2020。パッチテストの判定基準や推奨アレルゲンパネルについて詳細に記載されています。
医療従事者にとって最も身近なアレルゲンのひとつがゴム手袋の加硫促進剤です。 加硫促進剤はラテックス・合成ゴム問わず、ほとんどのゴム手袋製品に含まれており、医療従事者の職業性皮膚疾患の主要原因となっています。チウラム・カルバメート・メルカプトベンゾチアゾールなどがその代表例です。
参考)第10章ゴム手袋における化学物質によるアレルギー性接触皮膚炎…
「ラテックスフリーの手袋に替えたのに症状が治まらない」という訴えを経験したことはないでしょうか?ラテックスアレルギー(Ⅰ型)には対応できても、加硫促進剤によるアレルギー性接触皮膚炎(Ⅳ型)は合成ゴム手袋にも存在するため、解決しないケースがあります。 加硫促進剤フリーの手袋への変更が唯一の回避策です。cardinalhealth-info+1
医療従事者の主要なアレルゲンには以下があります。
参考)職業性皮膚疾患/Q&A|一般社団法人日本アレルギー学会
手湿疹を抱える医療従事者の多くは「刺激性」と「アレルギー性」が混在しています。刺激性接触皮膚炎単独であれば保湿・刺激回避で改善することが多いですが、アレルギー性が混在すると難治化します。アレルゲン回避が条件です。
参考:日本ラテックスアレルギー協会によるゴム手袋の化学物質アレルギー性接触皮膚炎の解説。加硫促進剤の種類・検査・生活指導が詳しく解説されています。
ゴム手袋における化学物質によるアレルギー性接触皮膚炎(日本ラテックスアレルギー協会)
臨床現場でしばしば問題になるのが、Ⅰ型(即時型)とⅣ型(遅延型)の混在です。ラテックスアレルギーを例にとると、天然ゴムラテックスたんぱく質に対するⅠ型反応(蕁麻疹・鼻炎・アナフィラキシー)と、加硫促進剤に対するⅣ型反応(接触皮膚炎)が同一人物に同時に存在することがあります。 つまり「ⅠかⅣか」ではなく「両方」というケースです。
参考)Link Vol.20医療現場で知っておきたい、 手術用ゴム…
これが診断を複雑にします。手袋使用後の手の症状だけを見ていると「かぶれ」に見えますが、同時に鼻炎症状があればⅠ型も疑わなければなりません。見逃すとアナフィラキシーリスクを残したまま業務継続させることになります。厳しいところですね。
手術室など密閉空間でのパウダー付きラテックス手袋のグローブパウダーには、ラテックスたんぱく質が付着しており、空気中への飛散による吸入感作も起こり得ます。皮膚接触のみに着目していると、感作経路を見落とすリスクがあります。職場環境全体を評価する視点が、医療従事者の職業性皮膚疾患診療では不可欠です。
職業性アレルギー疾患が疑われる場合は、皮膚科専門医への紹介に加え、職場環境の改善(加硫促進剤フリー手袋の導入・適切な皮膚保護クリームの使用)を同時に進めることが再発防止につながります。
参考:日本アレルギー学会による職業性皮膚疾患Q&A。医療従事者の手袋アレルギーへの対処法が具体的に解説されています。