ビタミンK製剤一覧と種類・適応・使い分けの要点

ビタミンK製剤にはK1・K2の2種類があり、適応・禁忌・投与スケジュールに明確な使い分けがあります。グラケー・ケイツー・カチーフなど主要製剤の特徴を正確に把握できていますか?

ビタミンK製剤一覧と種類・適応・使い分けの完全ガイド

ワルファリン服用中の骨粗鬆症患者に、グラケーを処方するとINRが全く動かなくなります。


📋 この記事の3ポイント要約
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ビタミンK製剤はK1・K2で適応が明確に異なる

フィトナジオン(K1)は幅広い欠乏症・ワルファリン解毒薬、メナテトレノン(K2)は新生児出血症予防と骨粗鬆症治療に特化。同じ「ビタミンK製剤」でも役割がまったく違います。

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グラケー(K2)はワルファリンと「併用禁忌」

骨粗鬆症治療薬のグラケーはワルファリンとの併用が禁忌。一方、K1製剤は解毒薬として使われるため「併用注意」にとどまります。この差を見落とすと医療事故につながります。

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新生児投与は2021年の提言で「3か月法」が推奨

日本小児科学会ほか16学会・団体が2021年に提言。従来の「3回法」では頭蓋内出血の予防が不十分なケースがあり、生後3か月まで週1回・計13回投与する「3か月法」が推奨されています。


ビタミンK製剤一覧:主要薬品の商品名・一般名・剤形・薬価まとめ

ビタミンK製剤は、大きく「ビタミンK1製剤(フィトナジオン)」と「ビタミンK2製剤(メナテトレノン)」に分類されます。臨床の場では商品名で呼ばれることが多いため、まず一覧表で全体像を把握しておくことが重要です。




















































































商品名 一般名 分類 剤形・規格 製造販売元 薬価(目安)
ケーワン錠5mg フィトナジオン K1製剤(先発) 錠剤 5mg エーザイ 約9.5円/錠
ビタミンK1錠5mg「ツルハラ」 フィトナジオン K1製剤(後発) 錠剤 5mg 鶴原製薬 約5.9円/錠
カチーフN錠5mg フィトナジオン K1製剤(準先発) 錠剤 5mg 武田薬品工業 約12円/錠
カチーフN散10mg/g フィトナジオン K1製剤(準先発) 散剤 10mg/g 武田薬品工業 約29.7円/g
ケイツーカプセル5mg メナテトレノン K2製剤(先発) カプセル 5mg エーザイ 約17円/Cap
ケイツーシロップ0.2% メナテトレノン K2製剤(先発) シロップ 0.2%(2mg/mL) アルフレッサ ファーマ 約62円/mL
ケイツーN静注10mg メナテトレノン K2製剤(注射) 注射液 10mg/管 エーザイ 約298円/管
グラケーカプセル15mg メナテトレノン K2製剤・骨粗鬆症専用(先発) カプセル 15mg エーザイ 約27円/Cap
メナテトレノンカプセル15mg「YD」他 メナテトレノン K2製剤・骨粗鬆症専用(後発) カプセル 15mg 陽進堂・東和薬品 等 後発品薬価


一覧で見ると、同じメナテトレノン(K2)でも「ケイツー」と「グラケー」では適応症がまったく異なります。これが最も混乱しやすいポイントです。


グラケーは骨粗鬆症治療専用で、1日45mg(15mg×3回)が標準用量です。一方、ケイツーの止血目的では1日15〜45mgを使用します。規格は同じ15mgカプセルに見えても、添付文書上の適応症と用量がまるで別物と考えてください。


参考リンク:ビタミンK製剤の商品名・薬価・製造元が一覧で確認できます
KEGG MEDICUS:ビタミンK商品一覧(薬価・添加物・相互作用比較)


ビタミンK製剤の作用機序:凝固因子・骨代謝への2つの働き

ビタミンK製剤がなぜこれほど多くの場面で使われるのか、作用機序から整理することで理解が深まります。


ビタミンKの最も基本的な役割は、肝臓でのビタミンK依存性凝固因子(第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子)のγカルボキシル化です。具体的には、凝固因子のグルタミン酸残基にCOOH基を付加することで活性化する反応を触媒します。これがうまく機能しないと、見た目上は凝固因子が産生されていても活性を持たないPIVKA(ビタミンK欠乏・拮抗誘導タンパク質)が生じます。PIVKA-IIはプロトロンビン(第Ⅱ因子)の前駆体として知られており、肝細胞がんのマーカーとしても使われているのはこのためです。


意外ですね。骨との関係も、この「γカルボキシル化」という同じ仕組みで説明できます。


骨基質タンパク質であるオステオカルシンもビタミンK依存性タンパクで、K不足の状態ではγカルボキシル化が不十分なアンダーカルボキシル化オステオカルシン(ucOC)が増加します。ucOCが増加すると骨基質の形成が障害されます。グラケーが骨粗鬆症治療薬として使われる根拠はここにあります。1995年に骨粗鬆症適応が承認されて以来、日本の骨粗鬆症診療ガイドラインにも位置づけられてきました。



  • 🩸 <strong>凝固系への作用:第Ⅱ・Ⅶ・Ⅸ・Ⅹ因子のγカルボキシル化を促進し、出血傾向・低プロトロンビン血症を改善します。ワルファリンはこの反応を阻害する薬剤のため、K1はその解毒薬として機能します。

  • 🦴 骨代謝への作用:オステオカルシンのγカルボキシル化を介して骨形成を促進し、PTH(副甲状腺ホルモン)による骨吸収を抑制します。これがグラケーの骨粗鬆症治療の根拠です。

  • 🔬 抗凝固薬との拮抗:ワルファリンはビタミンKエポキシド還元酵素(VKOR)を阻害してK1・K2の働きを阻止します。この拮抗関係が、K2製剤とワルファリンの「併用禁忌」につながります。


K1とK2の作用の本質は同一ですが、体内での分布や半減期・組織移行性が異なります。K1の半減期は約17時間、K2(MK-4)は肝臓外組織(骨・動脈壁など)にも移行しやすい特性があります。これが両者の「適応の使い分け」に反映されているわけです。


参考リンク:ビタミンK依存性凝固因子の作用機序を専門的に解説しています
日本血栓止血学会用語集:ビタミンK依存性凝固因子


ビタミンK製剤の適応・使い分け:K1とK2の選択基準

処方監査や服薬指導の現場で最も頻繁に問われるのが、K1(フィトナジオン)とK2(メナテトレノン)の使い分けです。添付文書上の適応症を正確に把握しておくことで、ヒヤリハットを防げます。


K1製剤(フィトナジオン:ケーワン・カチーフN)の適応


K1製剤は「幅広い欠乏症対応と解毒薬」と覚えるのが基本です。



  • ビタミンK欠乏症の予防と治療(各種疾患・薬剤起因)

  • クマリン系抗凝固薬(ワルファリン等)投与による低プロトロンビン血症 → 解毒薬としての使用

  • サリチル酸・抗生物質投与中の低プロトロンビン血症

  • 胆道・消化管障害によるビタミンK吸収障害

  • 新生児・肝障害に伴う低プロトロンビン血症

  • ビタミンK欠乏が推定される出血


ワルファリン服用中の患者に急性出血や過剰抗凝固状態が生じた場合、K1は解毒薬として使用する必要があるため「併用注意」にとどまります。この点がK2との大きな違いです。


K2製剤(メナテトレノン:ケイツー・グラケー)の適応


K2製剤の適応は2つの製品で明確に分かれています。つまり「ケイツー=止血・欠乏症」「グラケー=骨粗鬆症」が原則です。



  • ケイツー(カプセル5mg・シロップ・注射):新生児低プロトロンビン血症・分娩時出血・抗生物質投与中の低プロトロンビン血症・クマリン系殺鼠剤中毒

  • ケイツーシロップ:新生児出血症・乳児ビタミンK欠乏性出血症の予防と治療

  • グラケー(カプセル15mg):骨粗鬆症における骨量・疼痛の改善(1日45mg)


ワルファリン服用中の患者ではK2製剤は原則使用不可です。グラケーが慢性的に投与されると、ワルファリンの抗凝固作用が持続的に減弱し、心房細動や血栓塞栓症のリスクが高まります。骨粗鬆症が合併している場合は、ビスホスホネート製剤・SERM・活性型ビタミンD製剤など代替薬の検討が必要です。


過去には「医師・看護師がワーファリンとグラケーの併用禁忌を知らなかった」事例が医療事故情報収集等事業の報告書(第7回)にも掲載されています。これは現場の薬剤師が処方監査で必ず確認すべき項目です。


参考リンク:ワーファリンとビタミンK製剤の相互作用に関する詳細が確認できます
エーザイ医療関係者向けFAQ:ワーファリンとビタミンK剤の相互作用


新生児・乳児への投与:3か月法への移行と「3回法では不十分」な理由

新生児・乳児へのビタミンK2シロップ投与は、予防投与の方法をめぐり2021年に大きく変わりました。この変化を理解していないと、現場での保護者への説明に誤りが生じるリスクがあります。


従来は「3回法」(哺乳確立時・生後1週/産科退院時・1か月健診時の計3回投与)が標準として普及していました。しかし日本小児科学会が2018年に行った調査で、3回法を実施した新生児のうち、2015〜2017年の3年間で11例が頭蓋内出血を発症していたことが明らかになりました(うち9例に肝胆道系基礎疾患あり)。


3か月法が重要です。


2021年11月には日本小児科学会を含む16学会・団体が共同提言を発表し、「生後3か月まで週1回・計13回投与する3か月法」 を推奨しています。投与量は1回1mL(メナテトレノン2mg)の経口投与です。



  • 📅 投与スケジュール(3か月法):①哺乳確立時(出生時) → ②生後1週または産科退院時(いずれか早い方) → ③その後、生後3か月まで週1回(計11回)

  • 🍼 注意点:1か月健診の時点で人工栄養が主体(おおむね半分以上)の場合は、それ以降の投与を中止して構いません(母乳よりも人工乳にK含有量が多いため)。

  • ⚠️ 肝胆道系疾患のスクリーニング:母子手帳の便色カードを活用し、胆道閉鎖症などを早期発見することも同時に求められています。便色カードの意義を保護者に正確に伝えることが医療者の責務です。


K1のシロップ剤(ケーワンシロップ)は市場に存在しないため、新生児の予防・治療にはケイツーシロップが使われます。これも臨床的に重要な知識です。なお、ワルファリン服用中の母体から生まれた新生児には、出生後にK1製剤を使用するケースもあるため、産科・新生児科との連携が欠かせません。


参考リンク:新生児へのビタミンK2投与法に関する16学会共同提言の全文が読めます
日本小児科学会:新生児と乳児のビタミンK欠乏性出血症発症予防に関する提言(2021年11月)


ビタミンK製剤の独自視点:「骨粗鬆症ガイドライン推奨グレードB」の意味と実臨床での立ち位置

ビタミンK2製剤(グラケー)は日本の骨粗鬆症診療ガイドラインで推奨グレードBに位置づけられています。しかし「なぜグレードAではないのか」という視点は、処方選択の根拠を説明するうえで非常に重要です。


ビスホスホネートやデノスマブと比較すると、グラケーの骨折抑制効果はメタアナリシスで「椎体骨折・非椎体骨折リスクの低下」が示されているものの、国際的な大規模臨床試験のエビデンスは限定的です。日本で骨粗鬆症治療薬として承認されている一方、欧米では骨粗鬆症適応で承認されていないという事実は、多くの医療者が見落としがちです。つまり、グラケーは日本独自のエビデンスに基づく治療薬という側面を持ちます。


それでも使える場面があります。


グラケーが積極的に選ばれるのは、以下のようなケースです。



  • 🚫 ビスホスホネートが使いにくい患者:重篤な逆流性食道炎・食道狭窄がある場合や、eGFR 35未満の腎機能低下例では経口ビスホスホネートが使用しにくく、グラケーが代替候補に挙がります。

  • 💊 多剤服用中の高齢患者:副作用プロファイルが比較的穏やかで、消化器系の忍容性が高い点が高齢患者に有利に働く場合があります。

  • 🦴 骨量減少(OP予備群)のフォロー:明確な骨折リスクはないが骨量減少が進行している段階で、食事指導と組み合わせた介入として使われることもあります。


一方で、グラケーを処方する際に必ず確認しなければならないのが、ワルファリン服用の有無です。医療事故情報収集等事業の報告書(第7回)では「医師・看護師がワーファリンとグラケーの併用禁忌を知らなかった」という事例が記録されており、この確認を怠ると患者の血栓塞栓症リスクが上昇する可能性があります。電子カルテの併用薬チェックだけでなく、服薬指導時に患者本人への確認も合わせて行うことが安全管理の基本です。


また、グラケーは脂溶性ビタミンであるため、食後服用が吸収効率の観点から望ましい点も患者指導に盛り込みたいポイントです。1日3回の服用タイミングが守りにくい場合は、処方設計の見直しを医師に相談する余地があります。


参考リンク:骨粗鬆症ガイドラインにおける各薬剤の推奨グレードと根拠が確認できます
日本薬学会:ビタミンKと骨・作用機序と骨粗鬆症への応用


ビタミンK製剤の副作用・禁忌・注意事項:見落としてはいけない安全管理情報

ビタミンK製剤は一般に安全性が高い薬剤とされていますが、投与対象・経路・患者背景によってはリスクが生じます。安全に正確に使うための情報を整理します。


副作用



  • 消化器症状(悪心・嘔吐・下痢):最も頻度が高い副作用で、カプセル製剤での経口投与時に起こりやすい傾向があります。

  • 過敏反応:発疹・蕁麻疹など。K1注射製剤では、静脈内投与時に過敏反応・アナフィラキシーのリスクが報告されており、緩徐に投与する必要があります。

  • 肝機能異常:まれに見られますが、多くは軽度です。


副作用は比較的少ないです。


禁忌・慎重投与



  • ワルファリン服用中へのK2製剤(グラケー)投与:前述の通り、骨粗鬆症治療用K2製剤とワルファリンの併用は禁忌です。K1製剤は解毒薬としての使用があるため「併用注意」です。

  • 新生児への高濃度K3投与:合成型ビタミンK3(メナジオン)は新生児への過剰投与で溶血性貧血・核黄疸を引き起こすことが知られており、現在の医療用製剤にはK3はほぼ使用されていません。

  • ⚠️ DOAC(直接経口抗凝固薬)との相互作用:アピキサバン・リバーロキサバン・ダビガトランなどのDOACはビタミンK非依存性のため、K製剤との相互作用は問題になりません。ただし患者がワルファリンからDOACに切り替えた経緯がある場合は確認が必要です。


DOACなら問題ありません。


注射剤(K1・K2)使用時の注意


K1注射製剤は乳化剤を含むため、急速静注は禁忌です。投与速度を守り、アナフィラキシー対応の準備をしておくことが望まれます。K2注射製剤(ケイツーN静注)は1管10mgで、通常1日1〜2管の静脈内または筋肉内投与が行われます。


食事・ライフスタイル指導


ビタミンK製剤を使用している場面に限らず、ワルファリン服用患者の服薬指導では食事からのビタミンK摂取量の変動がPT-INRを大きく変動させます。ほうれん草100gに含まれるK1は約270μg(成人の目安量90〜120μgの2倍超)です。納豆1パック(50g)はK2を約600μgも含み、しかも腸内でのK2産生が数日間継続することから、「間隔をあけても食べられる」という誤解は危険です。服薬指導時に「納豆・クロレラ・青汁は継続的に禁止」と明確に伝えることが安全管理の観点から欠かせません。


参考リンク:ワルファリン服用中のビタミンK含有食品摂取に関してPMDAが回答しています
PMDA:ワルファリン服用中の納豆・クロレラ・青汁摂取に関するQ&A