蝶形紅斑はSLEの「シンボル」と信じている医療者ほど、初期の散在性紅斑を見落として診断が3〜6か月遅れるリスクがあります。
典型的な蝶形紅斑の特徴を整理します。
参考)蝶形紅斑
参考)全身性エリテマトーデス(SLE)(指定難病49) &#821…
これが基本です。
とくに「鼻唇溝を越えるか否か」は、後述する鑑別疾患との最重要ポイントになります。まずこの一点を確認する習慣をつけることが大切です。
以下の表で鑑別のポイントを確認できます。
| 特徴 | 蝶形紅斑(SLE) | 酒さ(ロザセア) | 脂漏性皮膚炎 |
|---|---|---|---|
| かゆみ | 基本なし | ほぼなし | あり(フケを伴う) |
| 毛細血管拡張 | なし | あり | なし |
| 日光過敏 | あり | あり | なし |
| 全身症状の合併 | あり(関節痛・発熱など) | なし | なし |
| 抗核抗体 | 陽性率高い | 陰性 | 陰性 |
鼻唇溝を越えるかどうかが原則です。
日光暴露後に頬が赤くなる患者を診た場合、「どちらの疾患か」を一発で判断しようとせず、鼻唇溝の関与・鱗屑の有無・全身症状の有無という3軸で確認するのが実践的な見分け方のコツです。
皮膚筋炎による顔面紅斑は、SLEの蝶形紅斑と非常によく似た外観を呈することがあります。 とくに小児の皮膚筋炎では外観が酷似しており、鑑別を要します。これは見落としやすい落とし穴です。
参考)全身性エリテマトーデス|大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・…
皮膚筋炎(DM)との主な鑑別点は以下の通りです。
参考)全身性エリテマトーデス|大阪大学大学院医学系研究科 呼吸器・…
SLEでも筋症状は出ますが、CKが顕著に上昇するケースはDMほど多くありません。この差を見逃さないことが重要です。
「顔が赤い」という訴えの患者を診る際、上眼瞼・指関節背面・筋力を追加確認するだけで、皮膚筋炎見落としのリスクを大幅に下げられます。これは使えそうです。
蝶形紅斑が疑われた際、皮疹所見だけで診断を確定しようとするのは危険です。SLEの確定診断には、臨床所見と免疫学的検査の組み合わせが不可欠です。
参考)全身性エリテマトーデス
現在広く用いられるのは1997年改訂ACR分類基準で、以下の11項目のうち4項目以上を満たすことが条件です。
参考)全身性エリテマトーデス総論|東大病院アレルギーリウマチ内科
1. 顔面紅斑(蝶形紅斑)
2. 円板状皮疹
3. 光線過敏
4. 口腔内潰瘍
5. 関節炎
6. 漿膜炎
7. 腎障害
8. 神経障害
9. 血液異常
10. 免疫異常
11. 抗核抗体陽性
「同時に4項目」は必須ではありません。 経過中に項目が揃っていくケースも多く、初診時には蝶形紅斑だけで他の基準を満たさない状態でも、SLEを疑って経過観察と追加検査を行うことが重要です。
参考)https://www.derm-hokudai.jp/wp/wp-content/uploads/2021/12/12-01.pdf
なお2019年には欧州リウマチ学会(EULAR)と米国リウマチ学会(ACR)が新たな分類基準を発表しており、臨床項目と免疫項目の重み付けスコアで10点以上をSLEと分類します。 抗核抗体陽性が入り口条件となっており、陰性の場合は基準から外れることに注意が必要です。
参考)https://chuo.kcho.jp/app/wp-content/uploads/2022/03/JC_No_2.pdf
まず抗核抗体(ANA)を確認するのが原則です。
蝶形紅斑を認めた場合の初期検査として、ANA・抗dsDNA抗体・抗Sm抗体・補体(C3/C4)・尿検査(蛋白・赤血球)を一括でオーダーする流れを院内でプロトコル化しておくと、診断遅延を防ぐ実用的な対策になります。
SLE患者の約20〜30%では、蝶形紅斑が初発症状として現れます。 しかし重要なのは、蝶形紅斑が「出ない」SLE患者が30〜50%存在するという事実です。 つまり「蝶形紅斑がないからSLEではない」という判断は誤りです。
参考)https://hifuka-otibohiroi.net/archives/2201
これが盲点です。
非典型例として知っておくべき状況を整理します。
また、SLE患者の75%に何らかの皮膚症状が認められ、蝶形紅斑はその中で最も頻度が高い症状です。 皮膚症状を「二次的な訴え」と捉えず、主訴として丁寧に評価することが早期診断に直結します。
蝶形紅斑の見落とし防止という観点では、顔面全体を系統的に観察する習慣が最も有効な対策です。具体的には、鼻背・両頬・鼻唇溝・眼瞼・口腔粘膜を順番に確認する「顔面5点チェック」をルーティン化すると、見落としリスクを大幅に低減できます。
なお、SLEに関する診療ガイドラインや最新の分類基準の詳細は以下の権威ある情報源で確認できます。
蝶形紅斑を含むSLEの皮膚症状・分類基準の詳細(難病情報センター)。
https://www.nanbyou.or.jp/entry/215
SLE分類基準(EULAR/ACR 2019)の解説(中外病院JC資料・PDF)。
https://chuo.kcho.jp/app/wp-content/uploads/2022/03/JC_No_2.pdf
膠原病の皮膚症状と蝶形紅斑の鑑別(日本皮膚科学会関連・杏林医学会雑誌)。