EASIスコアが50点を超えても、実は生物学的製剤の適用基準はEASI16点から始まります。
EASI(Eczema Area and Severity Index)は、アトピー性皮膚炎(AD)の皮疹の面積と重症度を組み合わせて数値化する、国際的に広く使用される客観的評価指標です。元来、乾癬の評価指標であるPASI(Psoriasis Area and Severity Index)を改良する形で開発されており、2001年にHanifinらによって発表されました。
スコア範囲は最低0点から最高72点で構成され、点数が高いほど重症度が高いことを意味します。重症度の分類は以下の6段階が国際的な標準として採用されています。
| EASIスコア | 重症度区分 |
|---|---|
| 0点 | 寛解 |
| 0.1〜1.0点 | ほぼ寛解 |
| 1.1〜7.0点 | 軽症 |
| 7.1〜21.0点 | 中等症 |
| 21.1〜50.0点 | 重症 |
| 50.1〜72.0点 | 最重症 |
臨床現場では「アトピー性皮膚炎は見た目だけで重症度が判定できる」と思いがちですが、実際には皮疹の分布・性状・面積を系統的に評価しなければ、医師間でスコアが大きくばらつくことが知られています。
つまり、主観的印象に頼ると過小・過大評価が起きやすい疾患です。
EASIスコアは医師が評価する客観的指標(Observer-Reported Outcome)であり、患者自身が評価するPOEM(Patient-Oriented Eczema Measure)などの主観的指標と組み合わせることで、より多角的な病態把握が可能になります。日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」でも、EASIは治療評価に有用な指標として位置付けられています。
以下のリンクでは、アトピー性皮膚炎の重症度分類と治療評価の要点を近畿大学の大塚篤司教授が詳しく解説しています。
アトピー性皮膚炎の重症度分類と治療評価(HOKUTO|大塚篤司氏解説)
EASIスコアの計算は、一見シンプルに見えますが、部位ごとの重み付け係数と年齢補正が加わるため、正確に理解しておく必要があります。
まず身体を「頭頸部」「上肢」「体幹」「下肢」の4つの部位に分けます。それぞれの部位で以下の4つの徴候を評価します。
各徴候は「なし:0点」「軽度:1点」「中等度:2点」「重度:3点」の4段階で評価します。なお、1.5点や2.5点といった中間値も使用可能ですが、0.5点は使用できません。これが慣れていない評価者の落とし穴になりやすいポイントです。
次に、各部位の皮疹が占める面積の割合を0〜6点でスコア化します(面積スコア)。
| 面積の割合 | 面積スコア |
|---|---|
| 0% | 0点 |
| 1〜9% | 1点 |
| 10〜29% | 2点 |
| 30〜49% | 3点 |
| 50〜69% | 4点 |
| 70〜89% | 5点 |
| 90〜100% | 6点 |
算出式は「(4つの徴候の合計スコア)×(面積スコア)×(部位別重み付け係数)」です。各部位のスコアを合算した値がEASIの総スコアになります。
ここで重要なのが部位別の重み付け係数です。8歳以上の患者では以下の係数を使用します。
これが基本です。
ただし、7歳以下の小児では頭頸部の係数が0.1ではなく0.2になり、その分下肢の係数が0.3に変わります。小児の場合、頭部が体に占める割合が成人より大きいことを反映した補正です。7歳以下の患者に成人と同じ係数を誤って使うと、スコアが実際より低く算出されてしまいます。小児のEASI評価では年齢確認が最初の必須ステップです。
EASIスコアの計算には、マルホ株式会社やアッヴィ社が提供している無料の計算シート・オンラインツールを活用すると、計算ミスを減らすことができます。
臨床現場では複数の重症度評価指標が使われており、それぞれの特徴を把握したうえで使い分けることが重要です。これが条件です。
IGAスコア(Investigator's Global Assessment)は、皮疹全体を0〜4点の5段階で評価する簡便な指標です。計算不要で迅速に判定できる点が長所ですが、全体的な印象に依存するため、詳細な変化を捉えにくいという弱点があります。
SCORADスコアは0〜103点のスケールで、紅斑・浮腫・滲出・苔癬化・鱗屑・乾燥の6項目の皮疹所見に加え、かゆみと睡眠障害という主観的指標(各0〜10点)も含むのが特徴です。EASIが純粋に客観的指標であるのに対し、SCORADは主観的評価も組み込んだ総合指標という位置付けです。
POEMスコアは患者自身が過去1週間の症状を7項目(0〜28点)で評価する、患者報告型の指標です。スコア4点以上の改善が臨床的意義のある変化とされています。
2026年1月に発表された研究(Acta Derm Venereol誌)では、皮膚科研修医11名が13例のアトピー性皮膚炎患者に対して5種類の評価スケールを使用し、評価者間信頼性を比較しました。結果として、EASIが級内相関係数(ICC)0.768〜0.796と最も高い評価者間信頼性を示しました。SCORADやSASSADがそれに続き、TISスコアは最も信頼性が低かったことが報告されています。
意外ですね。
つまり、EASIは計算式がやや複雑に見えながらも、複数の評価者間でのばらつきが最も小さい指標ということです。生物学的製剤の治療効果を追跡する場面では、評価者が変わってもスコアの再現性を確保できるEASIの採用が特に推奨されます。
アトピー性皮膚炎重症度評価:研修医間でEASIが最高の信頼性(CareNet Academia)
近年のアトピー性皮膚炎治療では、生物学的製剤やヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬の登場によって、EASIスコアの役割が一段と大きくなっています。
デュピルマブ(商品名:デュピクセント)の最適使用推進ガイドラインによれば、投与対象の基準の一つとして「EASIスコア16以上」が設定されています。IGAスコア3以上、体表面積の病変割合10%以上との組み合わせで適用が判断されるため、EASIスコアは適用可否を左右する直接的な数値です。
臨床試験では、治療効果の指標として以下の達成率が頻用されます。
これは使えそうです。
デュピルマブの国際臨床試験では、16週後のEASI-75達成率はプラセボ群に対して統計学的に有意な差が確認されており、実臨床でのある施設報告(108例)ではEASI-75達成率が95.4%という高い数値が示されています。
また、アブロシチニブ(商品名:サイバインコ)などのJAK阻害薬でも、EASIスコア16以上・IGAスコア3以上が適用の要件となっています。生物学的製剤やJAK阻害薬を導入する際には、投与開始前のベースラインスコアを正確に記録しておくことが、後の治療効果判定に欠かせません。
記録を残すことが原則です。
投与開始前のEASIスコアを記録し忘れると、「どれだけ改善したか」を定量的に評価できなくなります。EASI-75達成という治療目標を患者と共有するためにも、初診時・導入時のスコアの記録は必須です。
アトピー性皮膚炎における生物学的製剤の使用ガイダンス(日本皮膚科学会)
EASIスコアは概念自体は理解しやすいのですが、実際の評価では複数の落とし穴があります。ここでは臨床で経験しやすい具体的な注意点を整理します。
① 0.5点の使用は禁止
徴候の評価は0・1・1.5・2・2.5・3の6段階が正しい刻みです。0.5点は使用不可のルールがあるにもかかわらず、「中間値は0.5刻みで入れてよい」と誤解しているケースが散見されます。0.5と入力してしまうと計算値が変わり、重症度区分が変わる可能性があります。これだけ覚えておけばOKです。
② 面積スコアは「部位全体に占める割合」で評価する
「全身の体表面積に占める割合」ではなく、あくまで「その部位(例:頭頸部)の中で皮疹がどれだけを占めるか」という相対評価です。ここを混同すると、特定部位のスコアが過小評価になりやすくなります。
③ かゆみ(そう痒)はEASIには含まれない
EASIはあくまで皮疹の客観的評価指標であり、かゆみの強さは含まれていません。そう痒の評価にはNRS(0〜10点)またはPP-NRS(過去24時間の最大かゆみ)を別途使用する必要があります。EASIだけで患者の苦痛を測ろうとするのは不十分です。
④ 同じ評価者が継続して担当することが望ましい
先述の通り、EASIは評価者間信頼性が高い指標とはいえ、評価者が毎回異なると微細なスコアの変動が「治療効果」なのか「評価者のばらつき」なのか区別しにくくなります。長期フォローの患者では、可能な限り同一の評価者が担当する体制が精度向上につながります。厳しいところですね。
⑤ EASIスコア単独では治療の全体像を把握できない
EASIが改善していても、患者が「まだつらい」と感じているケースがあります。これはEASIが捉えるのが皮疹の客観的な変化に限られるためです。POEMやDLQI(皮膚疾患生活の質指標)などの患者主観評価を組み合わせることで、治療による生活の質向上を包括的に把握できます。
これらの注意点を意識するだけで、EASIスコアの精度は大きく向上します。計算ツールを活用しつつ、評価の手順を標準化することが、現場での再現性を担保する最も確実な方法です。
EASIスコア自動計算ツール(NPO法人 皮膚の健康研究機構)