EASIスコアが7点以下でも、生物学的製剤の適応になるケースがあります。
EASIスコア(Eczema Area and Severity Index)は、アトピー性皮膚炎(AD)の重症度を医師が客観的に数値化するための評価ツールです。1990年代に乾癬の評価指標として確立されたPASI(Psoriasis Area and Severity Index)の手法を参考に開発されており、2001年にHanifin JMらによって正式に論文報告されました。
この指標の大きな特徴は、主観症状(かゆみなど)を含まない点にあります。つまり患者の自覚的な訴えではなく、医師が皮疹の状態を視診・触診して数値を算出するという、純粋に客観的な評価法です。これは医師間でのスコアのばらつきを減らし、治療前後の比較を公平に行うために重要な設計思想です。
最高得点は72点で、スコアが高いほど重症度が高いことを示します。国内外の臨床試験や診療ガイドラインで広く採用されており、デュピルマブ(デュピクセント®)やウパダシチニブ(リンヴォック®)などの生物学的製剤・JAK阻害薬の治療効果判定にも必須の指標として位置づけられています。
重要なのが重症度判定の区分です。
| EASIスコア | 重症度区分 |
|---|---|
| 0点 | 寛解 |
| 0.1〜1.0点 | ほぼ寛解 |
| 1.1〜7.0点 | 軽症 |
| 7.1〜21.0点 | 中等症 |
| 21.1〜50.0点 | 重症 |
| 50.1〜72.0点 | 最重症 |
つまり7点以下が「軽症以下」という区分です。
ただし、EASIスコアの絶対値だけで治療の適応を決めることは必ずしも適切ではありません。かゆみが非常に強い(NRSが高い)場合や、QOLへの影響が大きい場合は、EASIスコアが比較的低くても積極的な治療介入が検討されます。これが冒頭の「EASIスコアが7点以下でも、生物学的製剤の適応になるケースがある」という意味です。臨床判断は数字だけで完結しないということですね。
EASIと合わせてよく使われる指標にPOEM(患者が記入する自己評価)やIGAスコア(5段階の総合評価)があります。これらを組み合わせることで、客観的重症度と患者のQOLを同時に把握できます。
easiスコアの計算は、大きく2つのステップに分けられます。「①各部位の重症度スコアを算出する」→「②部位ごとの係数を掛けて合計する」という流れです。
ステップ1:4つの身体部位を評価する
EASIでは全身を以下の4部位に分けます。
- 頭頸部(Head/Neck)
- 体幹(Trunk)
- 上肢(Upper limbs)
- 下肢(Lower limbs)
それぞれの部位について、4つの皮疹の徴候を0〜3点の4段階(中間値として1.5・2.5も使用可)で評価します。
| 徴候 | 評価内容 |
|---|---|
| 紅斑(Erythema) | 赤みの強さ |
| 浸潤/丘疹(Induration/Papulation) | 皮膚の盛り上がり・硬さ |
| 掻破痕(Excoriation) | 引っ掻いた跡 |
| 苔癬化(Lichenification) | 皮膚の肥厚・ゴワゴワ感 |
評価は「その部位全体の平均的な病変」で行います。局所的に最も強い部分を選ぶのではなく、その区域全体の「印象的な平均」を評価するのが原則です。これは見落としがちなポイントです。
ステップ2:面積スコアを評価する
次に各部位について、皮疹が占める面積の割合(%)を0〜6の7段階でスコア化します。
| 皮疹面積(%) | 面積スコア |
|---|---|
| 0 | 0 |
| 1〜9 | 1 |
| 10〜29 | 2 |
| 30〜49 | 3 |
| 50〜69 | 4 |
| 70〜89 | 5 |
| 90〜100 | 6 |
ステップ3:部位スコアを算出する
各部位のスコアは「(4徴候の重症度の合計)× 面積スコア × 部位係数」で計算します。
部位係数が、8歳以上と7歳以下で異なります。これが実臨床で最もよく起こる計算ミスの原因です。
| 身体部位 | 8歳以上の係数 | 7歳以下の係数 |
|---|---|---|
| 頭頸部 | 0.1 | 0.2 |
| 体幹 | 0.3 | 0.3 |
| 上肢 | 0.2 | 0.2 |
| 下肢 | 0.4 | 0.3 |
小児では頭部が体表面積に占める割合が大きいため、頭頸部の係数が成人の2倍(0.1→0.2)になっています。一方、下肢の係数は逆に小さくなります(0.4→0.3)。係数の変更に注意が必要です。
最終スコアの算出
4部位のスコアをすべて足し合わせたものが最終的なEASIスコアです(最大72点)。
計算が煩雑なため、実臨床ではNPO皮膚科学会(npo-hifu.net)やマルホのオンライン計算シートを活用すると入力ミスを大幅に減らせます。計算ツールは必須です。
【NPO皮膚科学会】EASIスコア・mEASIスコアの自動計算ツール(クリニカルレコードへのコピー機能付き)
EASIスコアの計算で特に注意が必要なのが、重症度スコアの中間値ルールです。現場でよく起きるのが「0.5」を入力してしまうミスです。
正式なルールは次の通りです。
- 使用可能な中間値:1.5と2.5のみ
- 使用不可:0.5
つまり重症度の入力値は「0・1・1.5・2・2.5・3」の6段階が正解で、「0.5」という入力は認められていません。これは日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024でも明記されており、学会公認のルールです。
なぜこのルールがあるのかというと、「なし(0)」と「軽度(1)」の間を細分化することの臨床的意義が乏しく、評価者間の一致率を下げるリスクがあるためです。一方、「軽度(1)と中等度(2)」あるいは「中等度(2)と重度(3)」の境界は臨床的に区別が難しい場面があり、1.5・2.5の中間値が認められています。
0.5が入力できてしまう計算ツールも一部存在するため、ツール任せにせず自分でルールを把握しておくことが重要です。これだけ覚えておけばOKです。
もう一つ、見落とされがちなのが「苔癬化」の評価基準です。苔癬化(Lichenification)とは皮膚が慢性的な掻破刺激によって肥厚した状態で、触診で確認します。「ゴワゴワ感」や「皮膚紋理の増強」が目安ですが、視診だけでは過小評価することもあります。経験の少ない医師やスタッフが評価する際には、実際に触れながら評価することを意識してください。
また、評価は「最もひどい病変の部位」ではなく、「その区域全体の平均的な重症度」であることを繰り返し確認することが大切です。これは以下の原著論文にも明記されています。
「✓ それぞれの病変部の平均的重症度とする」(アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024)
厳しいところですね。しかし、評価の統一性がなければEASIスコアの意味がなくなるため、チーム全体で共通認識を持つことが重要です。施設内で定期的にキャリブレーション(評価統一のための訓練)を行うことが推奨されます。
【日本皮膚科学会】アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024(EASIスコアの評価ルールの公式記載あり)
EASIスコアが臨床試験や実臨床で使われる際、単に「スコアが何点になったか」という絶対値だけでなく、「ベースラインからどれだけ改善したか(%)」という改善率が非常に重要な意味を持ちます。
代表的な改善率指標が以下の3つです。
- EASI-50:ベースライン(治療開始前)のEASIスコアと比べて50%以上低下
- EASI-75:ベースラインから75%以上低下
- EASI-90:ベースラインから90%以上低下
この中で最も重要なのがEASI-75です。デュピルマブ(デュピクセント®)の第Ⅲ相試験(SOLO-1・SOLO-2試験)では、16週時点でのEASI-75達成率が主要評価項目の一つとして設定されており、プラセボ群と比べて統計的に有意な差が示されました。
実臨床でこの指標がどう使われるかを具体例で示します。たとえば、治療開始時のEASIスコアが40点の患者が治療後に10点になった場合、スコアは改善しているように見えます。しかし改善率は(40-10)/40=75%で、ちょうどEASI-75の達成と判定されます。これが治療評価の基準です。
一方、治療開始時に5点だった患者が1点になった場合、改善率は80%でEASI-75を超えますが、絶対値の変化は4点に過ぎません。この場合はもともと軽症であった可能性があります。つまり、改善率と絶対値の両方の視点が必要です。
近年ではさらに高い治療目標としてEASI-90を設定する動向も出てきています。JAK阻害薬の臨床試験では、EASI-90達成率が主要評価項目に設定されるケースも増えており、より厳格な寛解目標の達成が求められるようになっています。
治療効果を患者に説明する際にも、このような改善率を用いると「以前と比べてスコアが7割以上下がりました」といった形でわかりやすく伝えられます。これは使えそうです。
なお、改善率を計算する際はベースラインの記録を正確に残しておくことが前提となります。初診時や治療変更時のEASIスコアを必ずカルテに記録する習慣が不可欠です。
【HOKUTO】アトピー性皮膚炎の重症度分類と治療評価(大塚篤司氏)EASIスコアの臨床的意義と他指標との使い分け
EASIスコアは構造が明確な客観的指標ですが、「評価者間のばらつき」という現実的な問題が臨床現場では発生します。同じ患者を複数の医師や看護師が評価した場合に、スコアが一致しないことがあるのです。
研究によれば、評価者間の一致率を高めるためには、実際の評価訓練(キャリブレーション)が有効とされています。これは「座学でルールを覚えるだけでなく、写真や実際の症例を使って評価の基準を合わせる」というプロセスです。
具体的にはどのような取り組みが効果的なのでしょうか。たとえば、以下の方法が施設内で実施されています。
- 📸 標準写真集の活用:各重症度(0〜3点)の参考写真を院内に掲示・共有し、評価の基準を統一する
- 👥 定期的な評価会議:月に1回程度、同一症例を複数名で評価し、食い違いが出た場合に議論する
- 🖥️ 電子計算ツールの標準化:施設内で使用する計算ツールを統一し、入力ルール(0.5禁止など)を周知する
こうした取り組みは、特に臨床試験に参加している施設では必須とされていますが、一般の外来診療においても重要です。治療前後の比較や経過観察の信頼性は、評価の一貫性があって初めて成立します。
また、EASIスコアは医師だけでなく看護師や研究コーディネーターが評価することもあります。チーム全体でスコアリングの意味とルールを共有することが、臨床の質の向上に直結します。
もう一つ見落とされがちなのが「評価部位の明確な区分」です。たとえば、腰背部は「体幹」に含めるのか、「下肢」に近い部位として扱うのかを曖昧にすると、継続的な経過観察の際に一貫性が保てなくなります。これが原則です。体幹には胸腹部(55%)と腰背部(45%)が含まれ、臀部は下肢(10%)に含まれることを確認しておきましょう。
評価の安定性が担保されれば、EASIスコアは治療方針を患者・チーム間で共有するための「共通言語」として機能します。スコアの数字が持つ意味を全員で理解することが、患者のQOL向上への近道です。
【アレルギーi】アトピー性皮膚炎の診断とスコアリング(EASI・POEM・NRSなど各評価ツールの特徴まとめ)