あなたが「後発品なので代替品はすぐ見つかる」と思っているなら、薬価差が最大2倍近くになり保険請求に影響が出ます。
ジアゼパム散1%「アメル」は、共和薬品工業株式会社(大阪市北区)が製造販売していたジアゼパムの後発医薬品(ジェネリック)散剤です。薬価は1g当たり6.30円で、先発品と比較して安価な選択肢として多くの医療機関・保険薬局で採用されていました。
2021年7月、共和薬品工業は「諸般の事情」を理由にジアゼパム散1%「アメル」の販売中止を発表しました。背景には、同社が複数品目で抱えていた製造上の問題があります。2021年10月には、同社の三田工場・鳥取工場において製造方法や製造手順書の不備が新たに発覚し、84品目を出荷調整するとともに、52品目について在庫消尽後に供給を一時停止すると公表しています。
在庫消尽の時期は2021年12月頃と案内されました。つまり、現場レベルでの実質的な入手困難はすでに数年前から始まっていたということです。
その後、ジアゼパム散1%「アメル」は経過措置品目として薬価基準に残留する形となり、経過措置期間は2025年3月31日をもって満了しました。結論は、2025年4月に薬価基準から正式に削除されたということです。現在は保険請求上、この品目を使用して請求することはできません。
販売中止の発表から薬価削除まで約4年の経過措置期間がありましたが、実際の在庫消尽はずっと早い段階であったため、多くの施設ではすでに切替対応を済ませているはずです。ただし、経過措置期間の終了を見落とし、処方箋や院内採用薬リストの更新が遅れていた場合は要注意です。
PMDA 添付文書情報(ジアゼパム散1%「アメル」製造販売中止に伴う経過措置関連)
ジアゼパム散1%「アメル」の公式な代替製品として案内されているのは、先発品のホリゾン散1%(丸石製薬株式会社、薬価13.40円/g→現行11.50円/g)とセルシン散1%(T's製薬、現行9.70円/g)です。
薬価を具体的に比較すると、次のようになります。
| 製品名 | 製造販売元 | 区分 | 薬価(1%1g) |
|---|---|---|---|
| ジアゼパム散1%「アメル」 | 共和薬品工業 | 後発品(削除済) | 6.30円 |
| セルシン散1% | T's製薬 | 準先発品 | 9.70円 |
| ホリゾン散1% | 丸石製薬 | 準先発品 | 11.50円 |
セルシン散1%への切替でも1g当たり約3.4円の差、ホリゾン散1%では約5.2円の差が生じます。少量処方であれば大きな問題になりにくいですが、慢性疾患などで一度に多量処方する患者では積算すると差額が目に見えてきます。これは使えそうです。
切替先として、同じ一般名(ジアゼパム)の散剤であるため有効成分・含量・剤形はすべて同一です。つまり、同一成分・同一規格への切替なら問題ありません。ただし、先発品への切替となるため処方箋の記載内容によっては疑義照会が必要になるケースもあります。
また、多くの病院・薬局では「ジアゼパム散1%「アメル」→セルシン散1%へ採用切替」という形で内規を整備しています。滋賀医科大学医学部附属病院など複数の施設が同様の対応をとっており、実績のある切替パターンです。施設ごとに薬事委員会の承認を経て採用切替を正式に記録しておくことが原則です。
KEGG MEDICUS ジアゼパム製品一覧(セルシン散・ホリゾン散の薬価確認に)
代替品へ切り替える際には、処方箋の記載方法と院内手続きのどちらも正確に対応しなければなりません。厳しいところですね。
まず処方箋の観点から整理します。ジアゼパム散1%「アメル」が販売中止・薬価削除となった後も、「一般名処方」で「ジアゼパム散1%」と書かれている処方箋であれば、セルシン散1%やホリゾン散1%への変更は薬剤師の判断で対応可能です。一方、「ジアゼパム散1%「アメル」」と銘柄指定で記載されていた処方箋が残っている場合は、処方医への変更依頼または疑義照会が必要です。銘柄指定のまま他剤に変更して調剤すると、保険請求上のリスクになります。
次に院内採用薬の整備についてです。薬事委員会などを通じて採用薬のデータベースおよびオーダリングシステム・電子カルテ上のマスタを更新していない施設では、処方が入力できない・または誤った品目が反映されるという問題が起きます。2025年3月末の経過措置満了に合わせてマスタ更新を済ませておくことが条件です。
さらに注意が必要な点として、在宅医療や外来への散薬調剤を行っている保険薬局では、自家製剤加算の算定が絡む場合もあります。切替に伴って加算の対象が変わるかどうか確認が必要な場面もあるため、担当薬剤師はその都度の確認を忘れずに行ってください。
厚生労働省:処方せんに記載された医薬品の後発医薬品への変更について(変更可否の判断根拠として)
ジアゼパムは「麻薬及び向精神薬取締法(麻向法)」において第三種向精神薬に分類されています。これは多くの医療従事者が日常業務で意識しているはずの点ですが、販売中止・切替という非日常的な場面では、管理上の対応が抜け落ちやすくなります。
ジアゼパム散1%「アメル」の在庫が施設内に残っている場合、その廃棄には法律上のルールが適用されます。向精神薬の廃棄については、第三種向精神薬は麻向法上は廃棄の届出こそ不要ですが、廃棄方法は「回収が困難な方法」でなければなりません。具体的には焼却・酸・アルカリによる分解・希釈・他の薬剤との混合などが挙げられます。
廃棄の記録については、法律上は第一種・第二種向精神薬のみ記録義務が明示されており、第三種向精神薬には明示的な記録義務はありません。しかし、日本薬剤師会および各都道府県の「薬局における向精神薬取扱いの手引」では、記録と2年間の保存を推奨しています。万が一の調査・監査に備える意味でも、記録を残しておくことが原則です。
向精神薬の廃棄記録に残す項目は次のとおりです。
なお、散剤であるジアゼパム散の場合は、バラ包装での在庫管理をしていた施設も多いため、残量の正確な把握と帳簿上の整合性を合わせて確認してください。「帳簿残量と現物が合わない」という状況は、麻向法上の問題になりかねません。これは必須の確認作業です。
厚生労働省:薬局における向精神薬取扱いの手引(廃棄・記録の要件確認に)
ジアゼパム散1%「アメル」の販売中止は、後発医薬品業界全体が抱える構造的な問題を反映しています。意外ですね。同社は2021年に製造方法・手順書の不備により84品目の出荷調整・52品目の供給停止を公表しており、ジアゼパム散はその流れの中で最終的に販売中止に至った品目のひとつです。
後発医薬品の供給不安は、2021年以降に業界全体で広がった問題です。複数のジェネリックメーカーが相次いで品質問題・製造不正を抱えたことで、医療現場では代替品の入手困難が慢性化しました。ジアゼパム散は向精神薬という特性から他の一般薬以上に切替の慎重さが求められた品目でもあり、現場の負荷は小さくありませんでした。
こうした経験をふまえて、今後の備えとして医療機関・薬局に求められる対応は以下のとおりです。
厚生労働省は後発医薬品産業の少量多品目生産の適正化を進めており、今後も品目整理による販売中止案件は増加が予想されます。「なんとなく在庫が入ってこなくなった」という状況に気づいてから動くのでは遅い場面も出てきます。早め早めの情報収集と院内の意思決定フローを整えておくことが、現場を守ることにつながります。
データインデックス:薬価基準削除と経過措置(経過措置の仕組みを理解するための参考情報)