経過措置期限が過ぎた後も在庫を使い続けると、その分は保険請求できず全額自施設の持ち出しになります。
2025年4月15日、日本臓器製薬株式会社はジクロフェナクNaゲル1%「日本臓器」を含む複数の外用製剤について、製造販売終了を正式に告知しました。終了理由は公式文書において「諸般の事情」と記載されており、品質管理体制と製造ラインの適正化を主な背景とした整理と見られています。
製造販売元は東光薬品工業株式会社であり、販売元として日本臓器製薬が担っていた構造でした。今回終了の対象となったのはゲル1%だけではありません。クリーム1%、テープ15mg・30mg、パップ70mg・140mg、ローション1%と、ジクロフェナクナトリウムを有効成分とする外用製剤ほぼ全ラインが対象となっています。
最終供給時期は包装規格ごとに異なり、ゲル1%(50g×10本、50g×50本)は2025年8〜10月が目安となっていました。これはシリアルナンバー(GS1コード)単位での管理に基づいており、製造ロットの消化状況によって若干の前後が生じることも告知されています。つまり経過措置終了を迎えるタイミングと在庫消尽のタイミングは必ずしも一致しないことに注意が必要です。
なお、2023年にも一度、25g規格の販売中止案内が発出されており、そのときの代替品は50g規格への一本化でした。今回の2025年4月告知はゲル剤全規格の完全終了を意味しており、段階的な縮小の最終フェーズと位置づけられます。
経過措置期限は全製品一律で<strong>2026年3月31日と設定されました。これは厚生労働省告示に基づく薬価基準収載終了のスケジュールと連動しており、4月1日以降は当該医薬品コードによる保険請求が認められなくなります。
日本臓器製薬 製造販売終了のご案内(全終了品目一覧・代替品・経過措置期限記載)
経過措置とは、製造販売中止や薬価基準削除が決定した医薬品について、医療機関や薬局が在庫を消化し、代替品への移行準備を整えるための猶予期間のことです。猶予期間中は保険請求が認められますが、期限を1日でも過ぎると薬価基準から完全に削除され、保険適用が消滅します。
結論はシンプルです。これが「経過措置の終了=保険請求不可」の意味です。
この点を見落とすと深刻な損失につながります。たとえばジクロフェナクNaゲル1%の薬価は1g当たり3.00円であり、50g製品1本では150円です。件数が多い調剤薬局では月100本単位での調剤が発生することもあり、1本当たり少額に見えても積み重なれば数万円規模の返戻・持ち出しになりえます。
経過措置終了後に誤って旧医薬品コードで請求した場合、審査支払機関から返戻処分が発生します。返戻が来た後の再請求は、適切なコードでの請求に切り替える必要がありますが、経過措置終了後はそもそも当該コード自体が薬価基準から削除されているため、再請求の方法が限られます。
また、電子処方箋を導入している薬局では追加の注意が必要です。「調剤年月日が経過措置期間内であっても、調剤結果登録日が経過措置期間外の場合はエラーになる」という仕様があるため、3月31日以前の調剤結果でも、4月以降に登録しようとすると登録自体ができない状態になります。これは電子処方箋管理サービスの仕様として確認されており、対応が遅れている施設は早急にシステム担当者へ確認を取ることをお勧めします。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 経過措置品目 | ジクロフェナクNaゲル1%「日本臓器」ほか11品目 |
| 経過措置終了日 | 2026年3月31日 |
| 終了後の扱い | 薬価基準から削除・保険請求不可 |
| 適切な対応 | 代替品コードへ切り替え・レセコン更新 |
厳しいところですね。しかし、期限は明確です。
社会保険診療報酬支払基金 経過措置医薬品情報(最新の告示情報・延長情報を随時更新)
日本臓器製薬が公式に案内している代替品は、「ジクロフェナクNaゲル1%「ラクール」」(製造販売元:三友薬品株式会社、発売元:ラクール薬品販売株式会社)です。同じジクロフェナクナトリウム1%のゲル剤であり、後発品(ジェネリック)の位置づけで薬価も3.00円/gと同額です。
代替品への切り替えは実質的に「レセコン・電子カルテの薬剤コード変更」が中心作業となります。これだけで済むパターンです。
切り替え作業の大まかな流れは以下のとおりです。
先発品を希望する患者への対応も想定しておく必要があります。ジクロフェナクNaゲルの先発品にはナボールゲル1%(久光製薬)とボルタレンゲル1%(同仁医薬化工)の2品目があります。薬価はそれぞれナボールゲル1%が5.1円/g、ボルタレンゲル1%が3.2円/gと後発品より高くなりますが、先発品選定療養費の適用関係はジェネリック変更の方向性が基本となるため、変更理由を明確にした上で対応してください。
なお、ローション剤についても同様の終了が告知されており、代替品として「ジクロフェナクNaローション1%「ラクール」」(100g×10本)が案内されています。ゲルとローションで別々の切り替え作業が必要になる点も忘れずに確認してください。
データインデックス ジクロフェナクNaゲル1%「日本臓器」先発品・後発品一覧(代替候補の薬価比較に活用可)
代替品への切り替えにあたり、薬効・薬理の面から製剤特性をあらためて確認しておくことも業務の精度向上につながります。ジクロフェナクNaゲル1%「日本臓器」のインタビューフォームでは、本剤をフェニル酢酸系NSAIDであるジクロフェナクナトリウムを局所適用することにより、消化管障害や腎障害等の全身性副作用の低減化を図った経皮鎮痛消炎剤と位置づけています。
経口剤と比較した際の最大のメリットが、この全身性副作用の低減にあります。ただし注意が必要なのは「ゼロではない」という点です。
添付文書上で特に強調されているのが密封包帯法(ODT:Occlusive Dressing Technique)の禁止です。ODT、つまりラップや密封性の高い被覆材で塗布部位を覆って使用すると、経皮吸収量が大幅に増加し、経口剤・坐剤と同等レベルの全身副作用(消化管障害・腎機能低下・血圧上昇など)が出現するリスクがあります。患者指導の場面では、「サランラップなどで覆わないように」と具体的に伝えることが重要です。
製剤の組成としては、1g中にジクロフェナクナトリウム10mgを含有し、添加物としてヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリソルベート80などを使用しています。l-メントールを添加した微香性製剤であり、速乾性・低粘着性(べたつきにくい)という使用感の特徴を持ちます。これらの特性は代替品の「ラクール」でも基本的に共通しており、処方変更後の患者からの使用感に関する問い合わせに対して、「成分・製剤特性はほぼ同等です」と回答することが可能です。
重大な副作用としてはショック・アナフィラキシー・接触皮膚炎が添付文書に記載されています。頻度は不明とされていますが、過去に使用歴がある患者でも製剤変更後に接触皮膚炎が発症するケースはあるため、変更後の経過観察の必要性を処方医と共有しておくとよいでしょう。
PMDA 医療用医薬品情報(ジクロフェナクNaゲル1%「日本臓器」添付文書・審査情報の参照に)
医療従事者の多くは、今回の日本臓器製薬の製品終了に対して「ジクロフェナクNaゲルを『ラクール』に変えれば終わり」と考えがちです。しかし実際には、市場全体でジクロフェナクナトリウム外用剤の供給ソースが縮小しており、代替品自体の在庫逼迫リスクも同時に考慮する必要があります。これは見落としやすいリスクです。
2021年には日医工のジクロフェナクNaゲル1%「NIG」が品質管理体制と製造ライン適正化を理由に販売中止となっており、その経過措置満了日は2025年3月31日でした。さらに別メーカーのシオノケミカル製「SN」も出荷停止となり、日本ジェネリックが取り扱いを中止するなど、後発品の供給源は2020年代を通じて相次いで減少しています。
つまり2026年4月時点で市場に残るジクロフェナクNaゲル1%の後発品は「ラクール」が実質的に主力という構図になっています。集中します。後発品供給源の集中は、需要増加や製造トラブル発生時に即座に供給不足につながるリスクをはらんでいます。
この観点から、切り替え対応として推奨されるのは以下の点です。
まず短期的対応として、「ラクール」への移行と並行して、先発品であるナボールゲル1%またはボルタレンゲル1%の採用可否を施設内で検討しておくことが有効です。供給リスクが高まった際に、承認済みの代替品があれば対応スピードが全く異なります。
中長期的には、同系統の他剤型(クリーム・テープ・ローション)についても同様の供給動向チェックが必要です。今回の日本臓器製薬の終了告知には、ジクロフェナクナトリウムのクリーム・テープ・パップ・ローションが一括して含まれており、各剤型の代替品がそれぞれ別メーカーに分散している状況です。薬事担当者・医薬品情報担当者(MR)との定期的な情報収集体制が、こうしたリスク管理の基盤となります。
506品目の経過措置が一斉に2026年3月末で終了したことは、m3.com等の医療ニュースでも報告されており、調剤薬局・医療機関の薬剤在庫管理に広範な影響を与えています。ジクロフェナクNaゲルだけでなく、自施設で採用している他の経過措置品目についても同時に確認する機会として活用することをお勧めします。
m3.com:506品目の薬価削除と経過措置2026年3月末終了の概要報告(業界動向確認に)