冬だけ保湿すれば十分と思うと、夏の隠れ乾燥で院内感染リスクが上がります。
乾燥する季節の代表は冬です。しかし「なぜ下がるのか」を正確に理解している人は意外と少ないです。
空気が含める水分量(飽和水蒸気量)は温度によって変わります。冬の外気は気温が低いため、そもそも水蒸気を保持できる量が極端に少ない状態です。気象庁のデータによると、東京の1月の平均相対湿度は52%ですが、この数字は屋外の値。室内でエアコン暖房をかけると温度が上がり、「座れる席数(飽和水蒸気量)」が増える一方で、水分量は変わらないため、相対湿度は一気に20〜30%台まで低下することがあります。真冬の乾燥は数字以上に深刻です。
| 月 | 東京の平均相対湿度(屋外) | 暖房使用時の室内湿度目安 |
|---|---|---|
| 1月 | 約52% | 20〜30%台になることも |
| 2月 | 約53% | 同上 |
| 6月 | 約75% | 冷房使用で40%前後 |
| 7月 | 約78% | 冷房使用で40%前後 |
年間の相対湿度は全国平均で70%ですが、暖房・冷房によって室内ではこの数値を大きく下回ります。つまり、乾燥は「屋外の天気」ではなく「室内の空調環境」で決まる部分が大きいということです。
医療従事者にとって重要なのは、患者さんが長時間過ごす病室・処置室・待合室の湿度管理が、直接的な感染リスクや皮膚トラブルに直結するという点です。これが基本です。
【参考:ダイキン工業「乾燥の困りごとと解決法」 — 年間湿度推移と暖房時の室内湿度低下メカニズムを図解で解説】
「2月を超えたら乾燥は落ち着く」と思っていたら、3月の乾燥で粘膜が傷つきます。
気象予報士の解説によると、最も乾燥しやすいのは厳冬期の1月ではなく、気温が上がり始める2月中旬〜3月であることがあります。理由は2つあります。第一に、ロシア・大陸由来のからっからの空気がまだ流れ込んでいること。第二に、気温が上がると大陸の乾いた空気でも「結露しにくく」なり、水分がそのまま蒸発するため乾燥が加速します。
具体的に言うと、絶対湿度が7g/㎥以下になると季節性インフルエンザの流行に適した「警戒」レベルとされています。この条件が、1月よりも2月下旬〜3月の晴天日に発生しやすいのです。空の青さが美しい春先の快晴は、医療の現場では「乾燥日和」です。
3月は乾燥対策を緩めてはいけません。病棟や外来の湿度計を確認する習慣を、年度末であっても続けることが大切です。
【参考:CBC Radio「気をつけたい冬場の乾燥。1月より3月の方が乾燥がひどい理由は?」 — 気象予報士が解説する春先の乾燥メカニズム】
「手洗いを増やせば感染対策は万全」ではなく、手荒れが手洗い回避を招きます。
花王プロフェッショナルの調査によると、厳しい感染管理が必要な病棟では、医師や看護師の手洗い回数が1日50〜60回にも及ぶことがあります。これは健康な手でも角層の水分・脂質を大量に奪います。乾燥する季節には、もともと空気中の湿度が低いため、手指表面からの水分蒸発がさらに加速します。
手荒れが進んだ手で手指消毒剤を使うと、しみて痛い。結果として手指衛生の遵守率が下がるという問題が生じます。ある病院職員149名を対象にした調査では、手指衛生を守れない理由として「手が荒れる」と回答した人が26.2%(39名)に上りました。約4人に1人が手荒れを理由に手洗いをためらっているということです。
乾燥する季節の手荒れは、個人の美容問題ではなく、院内感染管理の問題です。これが原則です。
訪問看護師22名を対象にしたアンケートでは、全員が「手指の乾燥が気になる」と回答しています。乾燥する季節の手指ケアは、全医療従事者が向き合うべき現実的な課題です。
【参考:花王プロフェッショナル「手指衛生の徹底が簡単ではない理由」 — 手荒れが手指衛生遵守率を下げるメカニズムと対策】
「加湿器をつけていれば安心」と思っていると、屋外の相対湿度52%という数字で判断して乾燥に気づかないことがあります。
重要なのは相対湿度ではなく絶対湿度です。湿度が40%以下になると、ウイルスを含む飛沫の水分が蒸発して粒子が軽くなります。落下速度が遅くなり、約30分間も空気中を漂い続けます。湿度60%の環境と比べると、ウイルスが空気中に滞在する時間が大幅に延長されます。
インフルエンザウイルスは21℃の室内で湿度65%を16時間保つと、99%の増殖力・感染力が低下するという研究結果があります。一方、湿度が40%を下回ると一気に活性化します。病院や診療所の室内が乾燥する冬季、暖房によって相対湿度が20〜30%台に落ちていれば、医療従事者も患者もウイルスにさらされるリスクが高まります。
乾燥する季節に対して、加湿目標を「相対湿度50〜60%」に設定するだけでなく、絶対湿度計(温湿度計)を使って7g/㎥を下回っていないか確認するのが、より精度の高い管理方法です。これは使えそうです。
なお、加湿しすぎると湿度60%を超えた場合にカビ・ダニが繁殖しやすくなるというリスクもあります。医療施設では40〜60%の範囲を維持することが推奨されています。
【参考:君津健康センター「冬の感染症予防と乾燥対策について」 — 湿度とインフルエンザウイルス生存率の研究に基づく解説】
「皮膚科的なケア」は感染対策とは別の話と思うと、手指の微小な傷口が院内感染の入口になります。
あまり語られない視点として、皮膚のバリア機能と感染管理の関連があります。健康な皮膚の角質層は、細菌やウイルスの侵入を防ぐレンガ積みのような構造を持っています。しかし乾燥する季節に角質層の水分が奪われると、このバリアにひびが入り、細菌の定着・侵入リスクが高まります。
特に手指の場合、ひびやあかぎれの状態では、常在菌以外の病原菌が皮膚に留まりやすくなります。乾燥による手荒れは「見た目の問題」ではなく、「感染媒介のリスク管理」の問題です。厳しいところです。
実践的な対策として、以下の考え方が役に立ちます。
乾燥する季節は秋口から春まで続きます。11月に乾燥対策を始め、3月いっぱいは継続することが基本です。年度の変わり目でも気を抜かないことが重要です。
【参考:マルホ「季節や生活習慣によって乾燥する方」 — 低湿度環境による皮脂欠乏症と皮膚バリア機能の解説】
【参考:日本環境感染学会「手指衛生 なぜ?どのように?いつ?」 — WHOガイドラインに基づく医療従事者向け手指衛生の実践指針PDF】
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