冷蔵庫で保管した目薬を点眼すると、角膜への刺激が増し、患者の「しみる」「痛い」という訴えが約2倍になるというデータがあります。
目薬ならすべて冷蔵庫で保管すればよい、と思っていませんか?実はそれは正確ではありません。
点眼薬の保管条件は、製品ごとに添付文書で明確に定められています。大きく分けると「室温保存(1〜30℃)」「冷所保存(1〜15℃)」「冷蔵保存(2〜8℃)」の3種類が存在します。これらを混同して管理すると、有効成分の分解・析出・変性につながることがあります。
冷所保存が必要な代表的な製品としては、ラタノプロスト点眼液(キサラタン®など)、ビマトプロスト点眼液(ルミガン®)、トラボプロスト点眼液(トラバタンズ®)といったプロスタグランジン系緑内障治療薬が挙げられます。これらは開封前は必ず冷蔵保存(2〜8℃)が必要です。
一方、開封後はキサラタン®であれば室温保存(25℃以下)で28日以内の使用が添付文書に記載されています。つまり開封前と開封後で保管条件が変わる製品が存在するということです。
これが原則です。開封の前後で条件が変わる製品については、患者への指導時にも必ず区別して説明する必要があります。
室温保存で問題のない製品を冷蔵庫に入れると、点眼時に冷たい液が角膜を刺激し、患者が「しみる」「痛い」と訴えるケースが増加します。また、冷蔵庫内での保管は結露が発生しやすく、容器のキャップ周囲が汚染されるリスクも否定できません。
保管条件の確認は、添付文書または各製品のインタビューフォームで行うのが確実です。日本医薬品情報センター(JAPIC)のデータベースや、PMDAの医薬品情報ページからも詳細を確認できます。
PMDA 医薬品医療機器情報提供ホームページ(添付文書検索)
開封後の目薬には使用期限があります。これは当然のことですね。
しかし、正確な期限を患者に伝えられていますか?一般的な防腐剤入り点眼薬の開封後使用期限は「1ヶ月(約28〜30日)」とされています。ところが、防腐剤フリーの単回使用型(ユニットドーズ型)製品は、1回使い切りが前提のため、開封後の保存自体が推奨されません。
開封後の品質劣化には複数の要因が関係しています。防腐剤(塩化ベンザルコニウム、ソルビン酸など)の経時的な濃度低下、有効成分の酸化・分解、そして容器口からの微生物汚染がその主なものです。
冷蔵庫で保管した場合、一見すると「低温で菌が増えにくい」ように思われます。しかし、冷蔵庫から出して室温に戻す操作を繰り返すことで、容器内外に温度差が生じ、空気中の水分が容器表面や点眼口付近に結露として付着します。この結露が汚染経路になるリスクは、病院薬学の観点からも見逃せません。
結露による汚染リスク、これは意外ですね。
点眼液の品質を保つためには、冷蔵庫保管が必須の製品であっても「点眼の15〜30分前に冷蔵庫から取り出して室温に戻す」という手順を患者に指導することが重要です。点眼時の液温が体温(36〜37℃)に近いほど、角膜刺激が軽減されることが薬理学的にも支持されています。
冷蔵保存が必要な目薬を、正しく管理できていますか?
冷蔵庫内での保管には、温度帯の選択が非常に重要です。家庭用冷蔵庫は庫内の場所によって温度差が生じやすく、ドアポケットは開閉のたびに温度が変動します。ドアポケットに目薬を置いた場合、庫内温度が2〜8℃の設定でも、実際にはそれ以上に上昇するケースがあります。
保管する際は、庫内の中段・奥側が温度変動が少なく安定しています。また、冷蔵庫の温度は定期的にモニタリングする必要があり、特に院内薬局や調剤薬局の冷蔵庫は温度記録ロガーを使って管理記録を残すことが推奨されます。
冷蔵管理が必要です。
具体的なチェックポイントは以下の通りです。
院内薬局では、調剤後の冷所保存製品を患者に渡す際、薬袋への「冷蔵保存・点眼前に室温へ戻す」の記載が患者アドヒアランスに直結します。口頭指導だけでなく、書面での確認が重要です。
冷蔵保存の目薬を、冷凍庫で凍らせてしまったことはないでしょうか。
凍結は絶対NGです。目薬が凍結すると、有効成分の結晶析出・乳化状態の破壊・防腐剤の偏析が起こり、品質が回復不可能になることがあります。外見上、解凍後に透明に見えても、有効成分の均一性が失われている可能性があります。
特に問題になるのが、冬季の配送時や保管庫の温度設定ミスによる凍結です。0℃以下になると、ラタノプロスト点眼液などは添付文書上「凍結を避ける」と明記されており、凍結品はそのまま廃棄対象となります。
これは損失ですね。
1本のキサラタン®点眼液(2.5mL)の薬価は約1,000〜1,500円程度(2024年薬価基準参照)で、病院在庫が複数本凍結した場合、経済的損失は即座に発生します。在庫管理の観点からも、医療機関での凍結リスクは無視できません。
温度逸脱(2〜8℃の範囲外になった場合)が発生した際は、以下の手順で対応します。
温度逸脱への対応マニュアルを薬局・病棟内に整備しておくと、現場判断のブレを防ぐことができます。
正しい知識を持っていても、患者に伝わらなければ意味がありません。
医療従事者が冷蔵保存の目薬を処方・調剤した際、患者への説明が不十分だと、患者が「目薬を冷凍庫に入れてしまった」「常温に出しっぱなしにしていた」「家族が捨てた」というトラブルが実際に報告されています。
特に高齢患者では、「冷蔵庫に入れる」という指示を「冷凍庫でもよい」と解釈するケースが少なくありません。65歳以上の患者へのアドヒアランス調査では、保管方法を正確に実行できていた割合が60〜70%程度にとどまるというデータもあります(日本薬剤師会誌掲載の薬局実務調査より)。
指導のポイントが肝心です。
効果的な患者指導のポイントをまとめると以下の通りです。
薬剤師・看護師・医師が連携して統一された指導内容を患者に伝えることで、保管ミスによる治療効果の低下を防ぐことができます。チーム医療の中での情報共有が、最終的な患者利益につながります。
公益社団法人 日本薬剤師会(薬剤師向け患者指導・薬物療法の情報源)
独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA):添付文書・安全性情報の確認に活用
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