経過措置が終わっても、在庫があれば処方していい——その思い込みが、レセプト査定につながります。
ネリゾナソリューション0.1%(主成分:ジフルコルトロン吉草酸エステル)は、レオ ファーマ株式会社が「諸般の事情」として2024年3月に製造販売中止を告示した外用液剤です。出荷終了は2024年6月末日。そこから設けられた「経過措置期間」の満了日が2025年3月31日でした。
経過措置とは何か、おさらいしておきましょう。厚生労働省の告示によって設定されるこの期間中は、製造販売が中止された医薬品であっても薬価基準に残り、保険請求が認められます。医療機関や薬局が在庫を適切に消化し、代替品に切り替えるための「準備期間」として機能します。つまり2025年3月31日をもってネリゾナソリューション0.1%は薬価基準から削除された、ということです。
重要な点が1つあります。経過措置期間は延長されていません。
一部の剤型(ネリゾナ軟膏・クリーム・ユニバーサルクリームの5g×10包装)でも販売中止はありましたが、これらは「一部包装のみの中止」に該当するため経過措置期間は設定されませんでした。ネリゾナソリューションとは取り扱いが異なる点に注意が必要です。これは意外なポイントです。
また、販売移管の経緯も混乱を招きやすい部分です。2024年7月1日付でLTLファーマ株式会社からレオ ファーマ株式会社へ販売が移管されています。LTLファーマが販売した在庫については「使用期限満了まで使用可能」という案内が出ていましたが、これはあくまで薬剤の物理的な使用を指すものです。経過措置終了後の在庫を保険適用で処方することとは別の話です。混同しないようにする必要があります。
参考:レオ ファーマ株式会社によるネリゾナソリューション製造販売中止のご案内(岐阜薬科大学掲載版)
ネリゾナ®ソリューション 0.1%製造販売中止 およびネリゾナ®製剤一部包装 販売中止のご案内(PDF)
経過措置期間が終了した医薬品を処方した場合、その医薬品はすでに薬価基準から削除されています。つまり保険請求が通らない状態になります。
具体的に何が起きるか、整理しましょう。医療機関が経過措置切れの薬品で院内処方を行い、保険請求したとしても、審査支払機関のレセプト審査で弾かれます。返還を求められる、いわゆる「査定」が発生します。院外処方の場合も同様で、薬局側がレセプト処理でエラーとして気づいたケースも報告されています。痛いですね。
さらに問題になりやすいのは、電子カルテのシステムに古い薬品コードが残ったままになっているケースです。処方画面で入力できてしまっても、レセプト請求時にエラーになります。システム上の警告が出ないまま処方が進み、翌月の請求段階で問題が発覚するというパターンが起きやすいのです。
対策として最初に確認すべきことは1点です。電子カルテや処方支援システムのマスタから、ネリゾナソリューション0.1%の薬品コードが削除または使用停止に設定されているかどうかを確認してください。院内採用薬リストからの削除と、処方システムへの反映はタイムラグが生じることもあります。2025年3月末を過ぎている現在、まだ確認が済んでいない施設は早急な対応が求められます。
参考:経過措置医薬品の保険請求ルールについて(社会保険診療報酬支払基金)
ネリゾナソリューション0.1%の代替品を選ぶ際には、「成分」「剤型」「ステロイドランク」の3点を同時に確認する必要があります。
まず成分の観点から見ると、ネリゾナソリューションの主成分はジフルコルトロン吉草酸エステルです。同一成分の代替品(液剤・ローション剤)は現時点で市場にありません。つまり代替品は必然的に「異なる成分のVery Strongローション・液剤」になります。
レオ ファーマ社が公式に案内している代替候補は以下の通りです。
| 分類 | 製品名 | 成分 | ランク | 販売元 |
|---|---|---|---|---|
| 類似薬(液剤) | ジフルプレドナートローション0.05%「イワキ」 | ジフルプレドナート | II群(Very Strong) | 岩城製薬 |
| 類似薬(液剤) | パンデルローション0.1% | 酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン | II群(Very Strong) | 大正製薬 |
| 同ランク参考 | アンテベートローション0.05% | ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル | II群(Very Strong) | 鳥居薬品 |
ランクはいずれもネリゾナソリューションと同じII群(Very Strong)です。強さは同等です。
ただし成分が異なるため、患者が過去に使用していた薬と基剤の構成が変わります。アレルギーや使用感の違いが生じるケースも想定されます。特に頭皮や毛髪部位への使用が多い液剤という特性上、患者から「以前の薬と感触が違う」という声が上がる可能性があります。切り替え時には患者へのひと言の説明が、不要なトラブルを防ぎます。
病院薬剤部ニュース(高松市立みんなの病院)でも、「代替:アンテベートローション0.05%」として採用変更が報告されており、現場ではアンテベートローションへの切り替えが主流になっています。これは使えそうです。
参考:病院薬剤部ニュース(令和6年12月)でのネリゾナソリューション削除と代替品の案内
薬剤部ニュース 令和6年度第3回(2024年12月)- 高松市立みんなの病院(PDF)
ネリゾナソリューションが特に多く使われていた部位は、頭皮や有毛部位です。液剤(ソリューション)という剤型そのものが、毛髪のある部分に薬剤を浸透させやすいという利点から選ばれてきた側面があります。頭皮の脂漏性皮膚炎や円形脱毛症に伴う炎症、アトピー性皮膚炎の頭部病変などへの使用例が多くあります。
ここで注意が必要です。軟膏やクリームでは頭皮への塗布が難しく、患者自身も塗布しにくいと感じます。代替品も必ずローション・液剤タイプを選ぶことが、使用感と治療継続性の観点から重要です。
パンデルローション0.1%は「酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン」を主成分とするローション剤で、有毛部位への使用も対象に含まれています。ジフルプレドナートローション0.05%「イワキ」も同様に有毛部位への適応があります。ランクはいずれもVery Strongで、ネリゾナソリューションと同等と考えて良いでしょう。
一方、アンテベートローション0.05%はベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステルを主成分とします。これも同じVery Strongランクです。添付文書上の適応症は「湿疹・皮膚炎群、乾癬、掌蹠膿疱症など」となっており、頭皮病変を含む幅広い部位への使用実績があります。
あまり語られない盲点として、患者が「ソリューション」という名前に慣れており、ローション剤との違いを正確に認識していないケースがあります。「液体の薬なら同じ」と患者が思い込み、塗布量や塗布頻度の調整を怠ることがあります。処方変更時は製品名だけでなく、用法・用量の再確認も必ずセットで行うことが大切です。これが原則です。
経過措置終了に伴い、医療機関として対応が必要な業務は複数あります。ここでは実務的に確認すべき項目を整理します。
まず処方システムへの対応です。電子カルテや調剤システムのマスタからネリゾナソリューション0.1%を削除または使用停止に設定します。システムベンダーによっては自動更新される場合もありますが、確認済みかどうかをシステム担当者に直接確認するのが確実です。経過措置終了後に入力できてしまうシステムでは、後日のレセプト査定リスクが残ります。確認は必須です。
次に在庫の確認と廃棄方針の決定です。経過措置終了後に残った在庫を保険請求で処方することは不可ですが、その在庫を「自費で処方する」「廃棄する」のいずれを選択するかは施設の判断になります。患者に安価に提供できる代替品がある状況で自費対応を継続するケースは現実的には少なく、廃棄が主流です。廃棄の際は各施設の廃棄手順に従ってください。
代替品の採用手続きも必要です。アンテベートローション0.05%やパンデルローション0.1%が院内採用薬に含まれていない施設では、薬事委員会への採用申請が必要になる場合があります。院外処方に切り替えることで対応している施設も一定数あります。
患者説明の準備も忘れてはいけません。特に長期継続処方をしていた患者に対して、薬の名前と見た目が変わることを事前に伝えておく必要があります。「薬が変わった=悪くなった」と感じる患者も一定数いるため、「同じ強さのステロイド外用液で、頭皮への使い方も変わりません」と一言添えるだけで不安を減らせます。
チェックリストをもとに施設全体で再確認することで、レセプト査定リスクと患者トラブルの両方を最小化できます。院内でのダブルチェックの仕組みを作っておくのがベストです。
参考:ネリゾナシリーズの経過措置情報および販売移管の詳細(LTLファーマ)
ネリゾナ製剤 販売移管に関するご案内 - LTLファーマ株式会社(PDF)