パキロビッドパック300の薬価は1シート12,538円ですが、5日分そろえると約63,000円になり患者の3割負担は約19,000円に跳ね上がります。
パキロビッドパックには「600」と「300」の2種類があります。これは単純なサイズ違いではなく、適応する患者層が明確に異なる別製品です。
パキロビッドパック600は通常用途のパッケージで、成人および12歳以上かつ体重40kg以上の小児に使用します。1シートあたりの薬価は19,805.50円で、5日間の治療で5シートを使用するため、薬価ベースの合計は99,027.50円(税抜)です。これはおよそ10万円という金額になります——新幹線の東京〜博多往復指定席とほぼ同額と聞くとイメージしやすいでしょう。
一方、パキロビッドパック300は中等度腎機能障害患者(eGFR 30mL/min以上60mL/min未満)専用です。薬価は1シートあたり12,538.60円で、5日分合計は62,693.00円となります。ニルマトレルビルの用量が1回300mgから1回150mgに減量されており、成分構成自体が異なる製品です。
| 製品名 | 対象患者 | 薬価(1シート) | 5日分合計薬価 |
|---|---|---|---|
| パキロビッドパック600 | 通常(成人・12歳以上40kg以上) | 19,805.50円 | 99,027.50円 |
| パキロビッドパック300 | 中等度腎機能障害(eGFR 30〜60未満) | 12,538.60円 | 62,693.00円 |
2023年3月15日に薬価基準に正式収載され、同年3月22日から一般流通が開始されました。それ以前は国による無償配分という形で医療機関に供給されていたため、保険請求の方式が切り替わった時期でもあります。つまり、薬価と算定の扱いが段階的に変わったという経緯があります。
後発品(ジェネリック)は現時点で存在しません。先発品のみが流通しているため、代替薬への切り替えによるコスト削減という選択肢は現状ありません。
参考:パキロビッドパック600/300の薬価収載に関するCareNet詳細記事
パキロビッドパック600/300が薬価収載/ファイザー|CareNet.com
2024年3月31日をもって、新型コロナウイルス感染症治療薬への公費支援は完全に終了しました。これは押さえておくべき重要な転換点です。
公費支援が適用されていた時期(2023年10月〜2024年3月)は、1割負担患者で3,000円、2割負担患者で6,000円、3割負担患者で9,000円という上限額が設けられていました。しかし、2024年4月1日以降は通常の保険診療の自己負担割合がそのまま適用されます。
患者さんへの説明に使える負担額の目安は以下のとおりです。
| 製品名 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
|---|---|---|---|
| パキロビッドパック600(5日分) | 約9,903円 | 約19,806円 | 約29,708円 |
| パキロビッドパック300(5日分) | 約6,269円 | 約12,539円 | 約18,808円 |
負担額は大きいですね。3割負担の成人患者であれば、薬代だけで約30,000円という計算になります。これに加えて診察料・処方料・検査料が別途かかるため、実際の窓口負担はさらに高くなることを患者に事前に伝えておく必要があります。
処方前に患者の経済的な懸念を確認し、限度額適用認定証の活用や、高額療養費制度の説明を行うことも医療従事者の重要な役割です。特に3割負担の現役世代に処方する際は、「薬代だけで3万円程度かかる」という説明を漏らさないようにしましょう。患者が窓口で突然の高額請求に驚くケースが、公費終了後に多く報告されています。
参考:令和6年4月以降の新型コロナウイルス感染症治療薬の費用負担について
厚生労働省「令和6年4月からの治療薬の費用について」(PDF)
パキロビッドパックの処方で最も見落としが起きやすいのが、投与適応と腎機能に基づく製品選択です。これが原則です。
まず適応条件として、本剤は「重症化リスク因子を有する等、本剤の投与が必要と考えられる患者」に限られます。重症化リスクとして代表的なものは以下のとおりです。
次に製品選択の判断軸となる腎機能についてです。中等度の腎機能障害(eGFR 30〜60 mL/min未満)の患者にはパキロビッドパック600ではなく300を選択します。一方、重度の腎機能障害(eGFR 30mL/min未満)や透析患者については添付文書上「投与しないこと」とされており、禁忌に相当します。
腎機能が原則です。処方前のeGFR確認を怠ると、過量投与や効果不足につながるため、必ず処方前の検査値を確認してください。
もう一点、見落としやすい条件があります。本剤は「症状発現から速やかに投与を開始」しなければ効果が期待できません。臨床試験において、症状発現から6日目以降に投与を開始した患者では有効性のデータが得られておらず、タイミングが命綱になります。患者が「少し様子を見てから」と言い出したとき、それは手遅れになりかねない場面です。発症後5日以内の処方が条件です。
参考:パキロビッドパック適正使用ガイド(ファイザー)
パキロビッドパック 適正使用ガイド(統合版)(PDF)
医療従事者の中でも意外と知られていないのが、介護老人保健施設や介護医療院入所者にパキロビッドパックを投与した場合の薬剤料算定の取り扱いです。これは使えそうです。
通常、介護老人保健施設(老健)や介護医療院の入所者に対する薬剤費は「介護報酬の中に包括されている」とされ、個別の薬剤料を診療報酬として算定することはできません。これが原則の考え方です。
ところが、厚生労働省は2023年3月30日付の事務連絡(「新型コロナウイルス感染症に係る診療報酬上の臨時的な取扱いについて(その81)」)において、一定条件を満たす場合に限り、パキロビッドパックの薬剤料を例外的に算定できると明示しました。
具体的には、入所者が新型コロナウイルス感染症に罹患し、療養上必要な指導を行ったうえで本剤を投与する場合、特掲診療料の施設基準等の規定に定める「抗ウイルス剤」に準じる形で薬剤料が算定可能とされています。
この特例ルールを知らずに施設内での処方を見送ったり、薬剤費を施設負担として計上していたりするケースは見過ごせません。介護施設でコロナ患者に対応する機会のある医師・薬剤師は、この特例の存在を必ず頭に入れておきましょう。適切に算定できれば、施設経営への不必要な負担を防ぐことができます。
参考:介護医療院・老健入所者へのパキロビッド投与と薬剤料算定について
介護医療院や老健施設に入所するコロナ患者への「パキロビッドパック」投与、特例で薬剤料の算定認める—厚労省|GemMed
2026年3月23日、ファイザーはパキロビッドパック600および300について、6歳以上かつ体重20kg以上の小児に対する適応追加承認を国内で取得したと発表しました。最新情報です。
従来は「12歳以上かつ体重40kg以上の小児」が最低ラインでしたが、今回の適応拡大により対象年齢が大幅に引き下げられました。6歳の子どもの体重目安はおよそ20〜22kg前後が一般的であり、体重条件の20kg以上と合わせると小学校1年生前後の患者にも処方可能な状況となりました。
今回の承認は、18歳未満の小児を対象にした国際共同第2/3相試験(C4671026試験)のうち、6歳以上かつ体重20kg以上の患者に関するデータをもとにしたものです。重症化リスクを有する小児患者においても、成人同様の投与レジメン(ニルマトレルビル300mg+リトナビル100mgを1日2回、5日間)が検討されます。
この適応拡大は、特に小児科や感染症科の医師、保険薬局の薬剤師にとってすぐに影響が出てくる変化です。これから処方箋でパキロビッドパックを目にする機会が増えるにあたり、小児の体重・年齢条件と腎機能を確認したうえで処方・調剤する体制が求められます。
また、薬価については現時点で600・300の区別はこれまでと変わらず、小児においても同一の薬価基準が適用されます。体重20〜40kg未満の小児(6歳以上)への用量については、個別に適正使用ガイドや添付文書の最新版を確認することが必須です。
参考:ファイザー公式プレスリリース(2026年3月23日)
パキロビッド® 6歳以上かつ体重20kg以上の小児への適応追加承認取得|ファイザー株式会社