保湿をしっかりしているつもりでも、使った成分が原因で色素沈着が3〜6ヶ月残ることがあります。
ポテンツァは、韓国Jeisys Medical社が開発したマイクロニードルRF(高周波)治療機器です。極細のマイクロニードルを皮膚に刺入し、針先から高周波エネルギーを照射することでコラーゲン・エラスチンの産生を促す仕組みになっています。RFの熱には止血作用があるため、同種のダーマペンと比較して内出血が起きにくく、ダウンタイムが短いのが大きな特徴です。
ダウンタイムの期間は一般的に2〜7日程度とされており、施術のモード・針の深さ・出力設定によって個人差があります。ざっくりとした経過を頭に入れておくと、患者への説明や施術前後のケア指導がスムーズになります。
| 経過日数 | 主な症状 | 対応のポイント |
|---|---|---|
| 当日(Day 0) | 赤み・熱感・ヒリつき・点状出血(稀) | 冷却+低刺激保湿。サウナ・飲酒・長風呂はNG |
| 翌日〜3日(Day 1–3) | 赤みは軽減傾向。ザラつき・むくみが残ることも | 摩擦を避けた洗顔+UV対策を徹底 |
| 3〜7日(Day 3–7) | 点状のかさぶた(痂皮)。乾燥しやすい | かさぶたを剥がさない。保湿を継続 |
| 1〜4週(Week 1–4) | 真皮リモデリングが進行。見た目は落ち着く | 引き続き摩擦・紫外線を回避 |
施術当日は肌に無数の針穴が開いており、バリア機能が著しく低下した状態です。外部からの刺激や細菌感染のリスクが高まります。
3〜7日目にかけて形成されるかさぶた(痂皮)は、直径1〜2mm程度の非常に微細なものです。例えるなら、細かい砂粒が顔全体に薄く散らばったような感触で、患者は「ザラザラする」と表現することが多いです。このかさぶたを無理に除去すると、PIH(炎症後色素沈着)につながる可能性があるため、自然脱落を待つよう指導することが必要です。
つまり「症状の段階に応じてケアの内容を変える」のが基本です。
スキンケアの失敗で最も多いのは「いつも使っている製品をそのまま使い続けること」です。施術後の肌は通常時と異なるフェーズにあり、成分選びの基準が根本的に変わります。
ポテンツァ後の肌の回復は、大きく3つのフェーズに分かれます。①炎症期(Day 0–1)、②増殖期(Day 2–7)、③再構築期(Week 2–4+)です。それぞれのフェーズで推奨される成分と避けるべき成分を理解しておくと、患者指導の精度が格段に上がります。
| 成分カテゴリ | 炎症期(Day 0–1) | 増殖期(Day 2–7) | 再構築期(Week 2+) |
|---|---|---|---|
| セラミド・コレステロール・脂肪酸(バリア補修) | ◎ 推奨 | ◎ 継続 | |
| ヒアルロン酸・グリセリン・アミノ酸(保水) | ◎ 推奨 | ◎ 継続 | |
| パンテノール・アラントイン・ツボクサエキス(鎮静) | ○ 推奨 | ○ 継続 | |
| ビタミンC誘導体(APPS・VC-IP等) | △ 原則見送り | ○ 低濃度・隔日から | ◎ 濃度UP可 |
| ナイアシンアミド | △ 敏感肌は注意 | ○ 低濃度(2〜5%目安) | ◎ 調整可 |
| レチノール・レチナール・トレチノイン | ✕ 完全回避 | △ 低濃度を週1〜2回から | ○ 段階的に頻度UP |
| AHA・BHA・スクラブ・ピーリングソープ | ✕ 回避 | △ ごく低濃度・短時間のみ | ○ 肌に合わせて再開 |
| 日焼け止め(SPF30〜50/PA+++〜) | ◎ 必須(ノンケミカル推奨) | ◎ 継続(塗り直し必須) | ◎ 外出時マスト |
とくに注意が必要なのがレチノール類です。普段から積極的に使用している患者ほど、施術後もそのまま継続してしまうケースがあります。レチノール・トレチノインはバリア機能が低下した炎症期の肌に対し、過剰な皮膚刺激・落屑・赤みの悪化を引き起こします。再開の目安はWeek 2以降で、週1回の低濃度・低頻度から始めるよう指導するのが安全です。
これは使えそうな知識ですね。
一方で見落とされやすいのが「アルコール配合化粧品」です。使い慣れた化粧水や美容液に含まれる配合アルコール(エタノール)も、ダウンタイム中の傷ついた肌には刺激になります。施術後1週間程度は、アルコールフリー・無香料・無着色の低刺激製品に切り替えることが条件です。
「施術後いつから洗顔できますか?」という質問は患者から最もよく寄せられるもののひとつです。クリニックによって指示内容に若干の違いがある場合もありますが、一般的な目安として以下の基準が広く用いられています。
洗顔については、施術当日は「水洗い程度なら可」とするクリニックと「当日はNG」とするクリニックに分かれます。クリニックによっては「施術後12時間は洗顔料の使用不可」と定めているケースもあります。迷ったら担当医師の指示を最優先にするのが原則です。
翌朝からは洗顔料を使った洗顔が可能です。ただし、ぬるま湯を使用し、泡立てた洗顔料で優しくなでる程度にとどめます。スクラブ入り洗顔料・酵素洗顔・拭き取り化粧水はダウンタイム中は完全に避けます。タオルで顔を拭く際は「こする」のではなく「押し当てる」動作にすること。これだけで摩擦によるPIHリスクが下がります。
メイクについては「翌日から可能」が標準です。注意点として、施術当日に限っては日焼け止めクリームも使用不可とするクリニックが多いです。施術日の帰宅ルートが屋外になる場合は、夕方〜夜の施術時間帯を選ぶよう患者に事前案内しておくと親切です。
入浴・運動・飲酒はいずれも血行を促進する行為です。血流が増加すると施術部位の赤みや腫れが悪化し、ダウンタイムが長引く原因になります。目安は48〜72時間で、落ち着いてから段階的に再開します。
厳しいですが、これがダウンタイムを最短にする近道です。
医療従事者として特に押さえておきたいのが、PIH(Post-inflammatory Hyperpigmentation=炎症後色素沈着)のリスクと予防です。PIHはポテンツァの施術そのものではなく、「炎症×紫外線×摩擦」という3つの要因が重なることで発生しやすくなります。
通常、PIHが生じた場合の改善には3〜6ヶ月程度かかります。これは患者にとって大きな精神的・経済的ダメージになりえます。予防ケアへの投資は、トラブル後の対処コストを大幅に下回ります。
PIH予防のために実践すべき具体的なアクションは以下のとおりです。
実は、「日焼け止めは翌日からでいい」と思っている患者が多いです。しかし炎症期(Day 0〜1)から紫外線は肌に影響を与えます。施術翌日だけでなく、当日の帰宅時点からUVケアを開始するよう指導することが重要です。これを知らないと損する、と声を大にして伝えるべきポイントのひとつです。
なお、ビタミンCやナイアシンアミドなど色調改善に有効な成分については、炎症期を過ぎてから低濃度・低頻度で段階的に再開します。PIHが出てしまった場合は、トラネキサム酸・ハイドロキノン・ビタミンC誘導体などの美白治療を組み合わせることも選択肢のひとつです。
PIH予防が条件です。
医療従事者として患者指導を行う上で、多くのガイドラインには載っていない「現場感覚のポイント」があります。これはリサーチや施術経験から見えてくる部分で、患者との信頼関係を築く上でも役立ちます。
まず注目したいのが「マスクによる摩擦」です。日常的にマスクを着用している患者では、マスクの内側が施術部位に常時こすれ続けます。これはダウンタイムを延長させる原因になるにもかかわらず、見落とされがちです。マスクのサイズを調整する、内側にガーゼを挟む、柔らかい素材のマスクに変更するといった対処を具体的に伝えると喜ばれます。
次に「睡眠中の枕との摩擦」も無視できません。寝返りを打つたびに顔が枕と摩擦します。清潔なフェイスタオルを枕の上に敷くだけで接触刺激が軽減でき、衛生面でも優れています。
もうひとつ、意外と多い問題が「スキンケアのルーティン変更への心理的抵抗」です。長年使ってきたブランドの化粧水や美容液を急に変えることに抵抗を感じる患者は少なくありません。「完全に変えなくていい、1週間だけ成分を確認してから選んでください」という伝え方が、コンプライアンス向上に効果的です。
また、施術後の肌状態の変化は「1〜4週目に真皮リモデリングが進む」という事実を患者と共有しておくことが重要です。見た目がある程度落ち着いた後も、真皮の奥では活発な組織再生が続いています。この時期に摩擦や紫外線にさらし続けると、せっかくの施術効果が最大化されません。
「見た目が落ち着いた=回復完了」ではないということですね。
旅行・撮影・挙式などの予定がある患者には、施術の2〜3週間前からダウンタイムが完全に収まるよう逆算してスケジュールを立てるよう事前カウンセリングで案内することも、医療従事者として付加価値の高いサポートになります。
施術後のホームケアについて、成分の詳細な「使い分け時期マトリクス」は0th CLINIC日本橋によるコラムに詳しくまとめられています。
成分別のOK・NG・注意の時期別一覧として参考になります。
【保存版】ポテンツァ後のホームケア|再生期に相性が悪い/良い成分(時期別)|0th CLINIC日本橋
アイシークリニック上野院の専門医監修による、ダウンタイムの症状・過ごし方を網羅したガイドです。
ポテンツァのダウンタイム完全ガイド|期間・症状・過ごし方を専門医が解説|アイシークリニック上野院