スーパーで「鮭」を選ぶとき、あなたは知らずにアスタキサンチンを7分の1しか摂れていないかもしれません。
アスタキサンチンは、カロテノイド類のなかでも「キサントフィル」というグループに分類される赤橙色の天然色素です。もともとは微細藻類(ヘマトコッカス藻)が生成し、それを食べたオキアミや小型甲殻類に蓄積され、さらにその甲殻類を捕食する鮭の体内に移行するという食物連鎖によって、鮭の身に蓄えられます。
鮭が白身魚に分類されることをご存知でしょうか。農林水産省も公式に「サケは白身魚」と説明しており、あの赤みがかった身の色は筋肉中のミオグロビンによるものではなく、アスタキサンチンという外来の色素成分によるものです。つまり、鮭の赤い身は赤身魚の証明ではなく、アスタキサンチンの蓄積量を示すバロメーターであると言えます。
臨床面からも注目すべき点があります。京都府立医科大学(内藤裕二ら)の研究では、アスタキサンチンが糖尿病性腎症モデルマウスにおいて酸化ストレスを軽減し、腎糸球体への障害を抑制する可能性が示されています(Vitamins(Japan)85巻11号、2011年)。また、抗炎症・動脈硬化抑制・眼精疲労軽減など多岐にわたる機能性が臨床試験によって報告されており、医療従事者が患者への食事指導で活用できる根拠の一つとなっています。
抗酸化力の強さも際立っています。アスタキサンチンはビタミンEの100〜1000倍、ビタミンCの約6000倍ともいわれる一重項酸素消去能を示すとされています。これは脂質二重膜の内外両方から活性酸素を捕捉できる、アスタキサンチン特有の分子構造に由来します。これが基本です。
参考:日本ビタミン学会 – アスタキサンチンの疾病予防に向けた研究(査読付き学術論文)
患者への食事指導で「鮭を食べるように」と一言で済ませていませんか。実は鮭の種類によって、アスタキサンチンの含有量は最大で約7倍以上もの差があります。これを知らずに指導すると、患者が秋鮭をメインに選んでも、期待した摂取量には遠く及ばない可能性があります。
以下に、主要な鮭の種類別アスタキサンチン含有量をまとめます。
| 種類 | 含有量(mg/100g) | 6mg摂取に必要な量の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 🥇 紅鮭(ベニザケ) | 2.5〜3.5mg | 約2〜2.5切れ(160〜200g) | 天然のみ。養殖不可。最もアスタキサンチン豊富 |
| 🥈 キングサーモン(マスノスケ) | 1.0〜2.0mg | 約3〜6切れ | 脂質が豊富で脂溶性成分の吸収を助ける |
| 🥉 銀鮭(ギンザケ) | 0.8〜1.4mg(養殖) | 約4〜7切れ | スーパーに最多流通。養殖主体で安価 |
| アトランティックサーモン | 約0.5mg | 約10〜12切れ以上 | 回転寿司・刺身で広く流通。養殖主体 |
| 秋鮭(白鮭・シロザケ) | 0.3〜0.5mg | 約12〜15切れ以上 | 国内流通量トップ。産卵前で脂少なめ |
秋鮭(白鮭)は日本のスーパーで最もよく見かける鮭です。しかし、紅鮭に比べてアスタキサンチンの含有量は約7分の1にとどまります。産卵のために川を上る直前の個体では、エネルギーや色素成分を卵や稚魚のために消費する段階にあるため、身に蓄えたアスタキサンチンが減少していると考えられています。つまり秋鮭です。
一方で、紅鮭はまだ養殖技術が確立されておらず、市場に流通しているものはすべて天然物です。身の色が深い紅色を帯びているほど、アスタキサンチンを豊富に含む目安になります。これが条件です。
参考:アスタキサンチン含有量の食品比較データ(水産研究資料)
エスロード株式会社「世界でたった1%の、鮭。」(鮭種別アスタキサンチン含有量比較表)
臨床的に参考とされるアスタキサンチンの1日目安摂取量は、約6〜12mgとされています。眼精疲労の機能性表示食品では6mgが基準として用いられており、医療機関限定サプリメントでは12mg/日(1日2錠)を推奨するケースもあります。
食品だけで6mgを補う場合、以下のような量が必要です。
| 食品(1単位) | 6mg摂取に必要な量 |
|---|---|
| 🐟 紅鮭 1切れ(80g) | 約2.4切れ |
| 🐟 キングサーモン 1切れ(80g) | 約5切れ |
| 🦐 車エビ 大1尾(70g) | 約30尾 |
| 🦀 毛ガニ 1杯(500g) | 約1.8杯 |
| 🍣 イクラ 大さじ1杯(25g) | 約30杯 |
車エビ30尾・イクラ大さじ30杯は、現実的に日々の食事で達成するのは難しいと言えます。これは使えそうです。
紅鮭なら1日2〜3切れが現実的な目安となりますが、毎日それを継続するのも患者によってはハードルが高い場合があります。アスタキサンチンが目的の場合は「鮭の種類を指定した上で、週に何回、何切れ」という具体的な指導ができると、患者の行動変容につながりやすくなります。6mgが基本です。
食品摂取だけでは補いきれないと判断される場合、アスタキサンチンを含む機能性表示食品やサプリメントを補助的に提案することも選択肢の一つです。医療機関から処方・推奨できるアスタキサンチンサプリメントも市場に存在するため、患者のニーズや背景疾患に応じて検討できます。
参考:アスタキサンチン推奨摂取量(6mg/日)の食品換算データ
日本マリンバイオテクノロジー「アスタキサンチン推奨摂取量を食品でとるときの目安一覧表」
アスタキサンチンは脂溶性カロテノイドです。これは体内で吸収される際に、消化管の胆汁酸ミセルに取り込まれるプロセスが必要であることを意味します。油脂が存在すると胆汁分泌が促進され、アスタキサンチンのミセル化と吸収が高まります。
この特性を踏まえた調理法として、以下のアプローチが有効です。
注目すべき点として、アスタキサンチンは加熱に対して比較的安定していることが知られています。熱に強い性質があるため、焼く・煮る・蒸すといった一般的な調理でも、含有量が大幅に損なわれることは少ないとされています。意外ですね。
さらに、鮭の皮と皮直下の脂質部分にはアスタキサンチンと相性のよいコラーゲン・DHA・EPAが集中しています。皮ごと食べることで、アスタキサンチンの吸収を助ける脂質も同時に摂取できる点で効率的です。患者への栄養指導では「皮まで食べてください」という一言を付け加えるだけで、摂取効率が変わります。これだけ覚えておけばOKです。
参考:農研機構「カロテノイドの腸管吸収と脂質の関係」(PDF資料)
農研機構「カロテノイドの腸管吸収・代謝・機能」(脂溶性成分と油脂摂取の関係を解説)
「鮭」と「サーモン」という表示の違いは、アスタキサンチン含有量を考える上で見逃せないポイントです。一般的に日本の市場では、天然物を「鮭」、養殖の淡水・海水魚を「サーモン」と区別して流通させることが多いです。
天然の鮭がアスタキサンチンを体内に蓄積するのは、海でオキアミや小型甲殻類を大量に食べることによります。一方、養殖サーモン(アトランティックサーモン、トラウトサーモンなど)は白い身のままでは商品価値が低いため、飼料にアスタキサンチンを配合し、色づけを行っています。配合されるアスタキサンチンには天然由来(ヘマトコッカス藻由来)のものと合成品があります。
ここで注意が必要です。養殖サーモンの飼料に添加されるアスタキサンチン量はコスト面の制約を受けるため、天然の紅鮭と比較するとアスタキサンチンの蓄積量は少ない傾向があります。回転寿司やスーパーの刺身コーナーで見かける「サーモン」はほぼアトランティックサーモンの養殖品であり、その含有量は100gあたり約0.5mgと、紅鮭の5〜7分の1程度にとどまります。
医療従事者として患者への栄養指導を行う際には、「サーモンを食べているから大丈夫」という患者の思い込みに対して、「回転寿司のサーモンは含有量が少ない。紅鮭の切り身がベスト」と具体的に説明できると指導の精度が上がります。食品表示の「紅鮭」または「天然」の記載を確認するよう伝えることで、患者が自分で選択できるようになります。結論は種類の指定が鍵です。
参考:養殖サーモンの色とアスタキサンチンの役割に関する解説
オカムラ食品工業「養殖サーモンの色と味 サーモン養殖の豆知識」
医療従事者として「アスタキサンチンを含む食品を勧める」ことは珍しくなくなりました。しかし、どの鮭の種類を、どれくらいの頻度で、どんな調理法で食べてもらうかまで踏み込んでいるケースはまだ多くありません。
臨床的に特に注目される場面として、以下が挙げられます。
2型糖尿病患者90例を対象とした無作為化比較試験(2025年)では、運動療法にアスタキサンチン摂取を組み合わせることで、単独群よりも酸化ストレスマーカーと炎症指標が有意に改善したという結果が報告されています。これは運動指導と食事指導の統合アプローチを考える医療従事者にとって、有力なエビデンスの一つとなります。いいことですね。
食事だけで十分な量を摂取できない患者には、アスタキサンチンを主成分とした機能性表示食品や医療機関専用のサプリメントを紹介することも現実的な対応です。特に高齢者や食欲の低下した患者では、食事だけで毎日紅鮭2切れを継続するのは現実的ではありません。そうした場合は、サプリメント(アスタキサンチン6〜12mg含有)を補助的に活用し、患者の負担を下げながら継続性を確保するアプローチが有効です。まず「鮭の種類確認」から始めることが大切です。
参考:アスタキサンチンと2型糖尿病患者の酸化ストレス・炎症改善に関する無作為化比較試験(2025年報告)
CareNet Academia「2型糖尿病女性に運動とアスタキサンチン併用、酸化ストレスと炎症が改善」
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