当帰飲子ツムラ何番か用途と注意点を解説

当帰飲子はツムラ何番の漢方薬なのか?効能・適応から副作用、透析患者への応用まで、医療従事者が押さえておくべきポイントをまとめました。処方時に見落としがちな注意点とは?

当帰飲子はツムラ何番か効能と注意点

複数の漢方薬を同時に処方したとき、甘草の重複で患者が低カリウム血症を起こすリスクがあなたの見落としで11%を超えます。


📋 この記事の3つのポイント
💊
ツムラ86番

当帰飲子はツムラ86番。血虚による乾燥・かゆみに用いる漢方薬で、主に高齢者や透析患者に処方される。

⚠️
甘草の重複リスク

当帰飲子には甘草が含まれ、他の漢方との併用で偽アルドステロン症のリスクが急上昇。1日摂取量の管理が必須。

🩺
透析患者への応用

透析患者の掻痒症に対し、レミッチが効かない症例でも当帰飲子が著効した報告がある。冷え症・血虚の見極めが鍵。

当帰飲子はツムラ何番か:86番の基本情報と処方名

当帰飲子(とうきいんし)はツムラ<strong>86番として知られる医療用漢方製剤です。 正式名称は「ツムラ当帰飲子エキス顆粒(医療用)」で、粉末を顆粒化した灰褐色の内服薬として流通しています。


参考)医療用医薬品 : 当帰飲子 (商品詳細情報)


処方の出典は中国の古典医書『済生方(さいせいほう)』であり、10種類の生薬から構成されます。 処方名の「当帰」は主薬であるセリ科植物の根を指し、「帰るべし=本来の健康に戻す」という意味が込められています。 「飲子(いんし)」は冷服する煎じ薬を指し、頻回服用を意味するという説も残っています。ngskclinic+2

項目 内容
ツムラ番号 86番
剤形 顆粒剤(内用)
出典 済生方(中国古典)
構成生薬数 10種類
主薬 当帰(とうき)

処方の中核は四物湯(しもつとう)という補血処方です。 四物湯に荊芥・防風・蒺藜子・何首烏・黄耆・甘草を加えた構成で、血を補いながら風邪(ふうじゃ)による皮膚のかゆみを取り除く設計になっています。kampo-do+1

当帰飲子ツムラ86番の効能と適応症:かゆみ・湿疹の使い分け

添付文書に記載された効能・効果は「冷え症のものの次の諸症:慢性湿疹(分泌物の少ないもの)、かゆみ」の2点です。 つまり、じゅくじゅくと滲出液が多い急性湿疹ではなく、乾燥してカサカサした慢性的な皮膚症状が主な対象です。ここが重要です。


参考)当帰飲子(とうきいんし)ってどんな薬?


適応となる疾患・症状をまとめると下記のとおりです。


参考)【当帰飲子】の解説~乾燥肌の皮膚のかゆみに用いる漢方薬~


  • 慢性湿疹・尋常性痒疹(皮膚のかゆみ)
  • 慢性蕁麻疹・アトピー皮膚炎・尋常性乾癬
  • 乾皮症・老人性皮膚掻痒症・皮脂欠乏性湿疹
  • 人工透析に伴う皮膚掻痒症

漢方的には「血虚生風(けっきょせいふう)」の病態が適応の核心です。 血液が不足して皮膚が栄養されず、乾燥・痒みが生じる状態を指します。


参考)当帰飲子(ツムラ86番):トウキインシの効果、適応症


患者像のイメージとして、「小柄で冷え性、顔色が悪く体力があまりない」高齢者が典型とされています。 若い患者でもアトピー性皮膚炎で乾燥・血虚傾向が顕著なケースには選択肢に入ります。 体力中等度以下が目安です。rheumatology.co+1

当帰飲子ツムラ86番の用法・用量と薬価:処方時に押さえる数字

用法・用量は成人1日7.5gを2〜3回に分割し、食前または食間に経口投与します。 年齢・体重・症状により適宜増減が可能です。これが原則です。


効果発現までの期間は2週間〜1か月以上かかることもあります。 ステロイド外用薬と比較すると即効性はありませんが、長期的な体質改善を目的とする場合に有用です。


💰 薬価について具体的な数字を確認します。


参考)漢方薬86「当帰飲子(トウキインシ)」 - 巣鴨千石皮ふ科


  • 1包(2.5g)あたり薬価:52.5円
  • 1日薬価:157.50円
  • 30日処方・3割負担の場合:薬剤費のみ約1,418円

患者負担が1か月1,418円程度というのは、外用薬と比較して費用対効果を説明しやすい数字です。 ただし、調剤技術料・薬学管理料は含まれないため、実際の窓口負担はこれより高くなります。


処方箋を記載する際は「ツムラ当帰飲子エキス顆粒(医療用)」または「ツムラ86」と記載します。なお、クラシエからも当帰飲子の製剤が存在しますが、ツムラの医療用製剤はツムラ86番に一本化されています。


当帰飲子ツムラ86番の副作用:甘草による偽アルドステロン症の見落としリスク

注意すべき副作用として、偽アルドステロン症・低カリウム血症・血圧上昇・浮腫・体重増加・ミオパチーが挙げられます。 これらはすべて甘草(かんぞう)に含まれるグリチルリチン酸が引き起こすものです。


問題になるのは「重複処方」です。 医療用漢方製剤148品目のうち、甘草を含有するものは109処方にのぼります。複数の漢方を同時処方すると、意図せず甘草の1日摂取量が危険量を超えます。


参考)漢方の複数内服に注意!偽性アルドステロン症。


偽アルドステロン症の発症率は甘草摂取量によって変わります。


1日の甘草摂取量 偽アルドステロン症の発症率
1g 約1.0%
2g 約1.7%
4g 約3.3%
6g以上 約11.1%以上

例えば、加味逍遙散(甘草1.5〜2g)+葛根湯(甘草2g)+小青竜湯(甘草3g)を同時投与すると、1日の甘草摂取量は6.5〜7gになり、発症リスクが11%を超えます。 当帰飲子にも甘草が含まれるため、他の漢方製剤との重複処方時は必ず甘草の総量を計算することが重要です。


発症タイミングは原因薬剤の内服開始後3か月以内が約40%ですが、長期使用後に突然発症することもあります。 痩せ型・高齢・高血圧薬服用中の患者は特にリスクが高いため、定期的な電解質チェックが必要です。


参考:偽アルドステロン症と甘草の用量依存性について
漢方の複数内服に注意!偽性アルドステロン症|名駅さこメンタルクリニック

当帰飲子ツムラ86番と透析患者:レミッチが効かない症例への独自視点

透析患者の皮膚掻痒症は、透析患者の多くが悩む症状です。 透析で除去しきれない尿毒素の蓄積・皮膚の乾燥・神経過敏が複合的に関与するとされています。


参考)かゆみ(透析そう痒症)


標準治療としてはオピオイドκ受容体作動薬のレミッチ(ナルフラフィン塩酸塩)が用いられますが、レミッチが効かない症例や、冷え症・血虚傾向が強い高齢透析患者に対して、当帰飲子が著効した臨床報告があります。


参考)かゆみに当帰飲子(漢方薬)が著効した透析患者さん - 加古川…


選択の判断ポイントは以下の通りです。


  • 皮膚がカサカサで乾燥している
  • もともと冷え症がある
  • 顔色が悪く、体力が低下している
  • 浮腫が少ない(偽アルドステロン症リスクが低い)

透析患者への処方では、腎機能低下による生薬成分の蓄積リスクも念頭に置く必要があります。 中国の臨床研究では、血液透析患者80例を対象に当帰飲子の血虚風燥型皮膚掻痒症への有効性を検討した報告があります。 結論は「証(しょう)の見極めが条件」です。jglobal.jst+1
血虚・冷え症が明確な透析患者では、保湿剤とスキンケアの指導と組み合わせることで、より高い効果が期待できます。 腎臓内科・皮膚科・薬剤師が連携し、電解質管理と並行して処方判断を行うことが現実的な運用です。


参考:透析患者の掻痒症に当帰飲子が著効した症例
かゆみに当帰飲子(漢方薬)が著効した透析患者さん|きたうらクリニック