外用薬とは何か種類・剤形・正しい使い方と注意点

外用薬とは皮膚や粘膜に直接使用する薬の総称ですが、その定義や剤形・使い分けを正確に理解できていますか?軟膏・クリーム・貼付剤の違いから経皮吸収による全身副作用まで、医療従事者が知っておくべき情報を徹底解説します。

外用薬とは何か:種類・剤形・使い分けの基本と注意点

塗り薬を「薄く少量だけ」塗ると、治りが遅くなり患者の症状悪化を招くことがあります。


この記事の3つのポイント
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外用薬の定義と分類

外用薬は皮膚・粘膜に直接使用する薬の総称。坐薬・吸入薬も「外用薬」に含まれる点に注意が必要です。

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剤形と基剤の使い分け

軟膏・クリーム・ゲルは基剤の性質が異なり、患部の状態・部位・滲出液の有無などによって最適な剤形が変わります。

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経皮吸収と全身副作用リスク

外用薬でも広範囲・長期使用ではHPA軸抑制などの全身性副作用が起こりえます。特に小児や顔面・陰部への使用時は注意が必要です。


外用薬とは何か:定義と内服薬との根本的な違い


外用薬とは、皮膚や粘膜に直接塗布・貼付・噴霧・点眼などの方法で使用する薬剤の総称です。内服薬(飲み薬)が口から飲み込まれ、消化管を経由して吸収されるのに対し、外用薬は消化管を通らずに患部または体表面・粘膜面に直接作用します。この点が内服薬との最も根本的な違いといえます。


「外用薬=皮膚に塗る薬」というイメージを持つ医療従事者も少なくありませんが、これは不正確です。点眼薬・点鼻薬・点耳薬・坐薬・吸入薬・うがい薬・トローチ・舌下薬なども、すべて外用薬に分類されます。坐薬や吸入薬は体内に入りますが、消化管ではなく粘膜から薬が吸収されるため、外用剤に分類されているのです。つまり外用薬です。


法的な区分においても、医薬品は「内用薬」「外用薬」「注射薬」の3つに大別されます。日本薬局方や医薬品添付文書においても、この分類に沿って記載されており、調剤・保険請求においても重要な区分です。外用薬かどうかの判断が処方箋の読み取りや薬剤管理に直結するため、定義を正確に押さえておくことは臨床上の基本となります。


また「外用」と「局所作用」は同義ではありません。たとえば経皮吸収型の貼付剤(ニトログリセリン貼付剤やフェンタニルパッチなど)は、外用薬でありながら全身作用を目的として設計されています。外用薬であっても薬物が血中に移行し、全身を循環するケースがあることを常に念頭に置く必要があります。これが基本です。



以下の表に外用薬の代表的な分類をまとめます。











分類 代表的な剤形 作用部位
皮膚外用剤 軟膏・クリーム・ローション・ゲル・貼付剤 皮膚(局所・または全身)
眼科用薬 点眼薬・眼軟膏 眼粘膜
耳鼻科用薬 点鼻薬・点耳薬 鼻・耳粘膜
呼吸器用 吸入薬 気道粘膜(肺)
直腸・膣用 坐薬・膣錠 直腸・膣粘膜
口腔用 うがい薬・トローチ・舌下錠 口腔・咽頭粘膜


参考:千葉市薬剤師会 外用薬の種類と使い方(剤形の定義・分類について詳述)
https://www.chibashiyaku.or.jp/pdf/story/story_21_1.pdf


外用薬の剤形一覧:軟膏・クリーム・ゲル・ローションの特徴と違い

皮膚外用薬の剤形には軟膏・クリーム・ゲル・ローションなど多数ありますが、それぞれの基剤が異なるため、患部の状態や部位によって使い分けが求められます。これが原則です。適切な剤形を選ぶことは薬効を最大化し、副作用リスクを低減するうえで非常に重要です。


【軟膏(ointment)】は油脂性基剤または水溶性基剤を使ったぬり薬で、皮膚への親和性・保護作用に優れています。特に油脂性基剤(白色ワセリンなど)の軟膏は刺激性が低く、傷やびらんがある患部、炎症性皮疹に適しています。一方でべたつき感が強く、夏場の使用感を患者が嫌がる場合もあります。水溶性基剤の軟膏は滲出液の多い褥瘡などに向いていますが、汗で流れやすい点に注意が必要です。


【クリーム(cream)】は水と油を乳化した乳剤性基剤を使用します。水中油型(O/W型)と油中水型(W/O型)の2種類があります。O/W型はべたつきが少なく使用感が良好ですが、水で流れ落ちやすく、乾燥作用が出やすい面があります。W/O型は保湿性が高く、水で流れにくいという特徴を持ちます。意外なポイントとして、製品名に「軟膏」とついていてもクリーム基剤の製品が存在します。たとえばアクアチム軟膏は実際には油中水型クリームです。これは意外ですね。製品名だけで基剤を判断するのは危険であり、添付文書や製薬会社への問い合わせで確認することが重要です。


【ゲル(gel)】は弾性を持つ分散系で、医薬品では水性ゲル(ヒドロゲル)が主流です。水性ゲルは皮膚を乾燥させるため、連用時には注意が必要です。また、ゲル同士の混合は相転移が起こりやすいため避けるべきです。


【ローション(lotion)】は液状またはエマルション状の外用薬で、頭皮や広範囲の皮膚への使用に向いています。アルコールを含む製品は揮発時の清涼感がある反面、乾燥や刺激の原因になり得ます。



以下に主な剤形の特徴を比較してまとめます。











剤形 主な基剤 適した患部 注意点
油脂性軟膏 白色ワセリン 傷・びらん・乾燥皮膚 べたつき、汚れやすい
水溶性軟膏 マクロゴール 滲出液の多い褥瘡 汗で流れやすい
O/Wクリーム 水中油型乳剤 湿疹・皮膚炎 乾燥・水で流れる
W/Oクリーム 油中水型乳剤 乾燥皮膚・保湿 やや重い使用感
水性ゲル ヒドロゲル 頭皮・毛髪部位 連用で乾燥
ローション 水・アルコール 頭皮・広範囲 刺激感・乾燥


参考:マルホ株式会社 医療関係者向けサイト「服薬指導に役立つ皮膚外用薬基礎講座:剤形からみた基剤の分類と特徴」(基剤の分類・混合禁忌について詳述)


外用薬の正しい塗布量:FTU(フィンガーチップユニット)の活用と服薬指導への応用

外用薬の使用量は、患者指導において見落とされやすい重要なポイントのひとつです。特にステロイド外用薬では「副作用が怖い」という思い込みから患者が過少に塗布するケースが多く見られます。しかし実際には、少量すぎる塗布量は薬効を低下させ、治癒が遅延するという問題を引き起こします。


この問題を解決するために用いられる指標が FTU(フィンガーチップユニット / Finger Tip Unit) です。1 FTUとは、成人の人差し指の指先から第一関節まで薬を絞り出した量のことで、チューブ口径が5mm程度の製品では約0.5gに相当します。そして1 FTUで塗布できる面積は、大人の手のひら2枚分(体表面積の約2%)とされています。これだけ覚えておけばOKです。


実際に全身各部位に必要なFTU数の目安は以下のとおりです。



  • 🖐️ <strong>顔・首:2.5 FTU(約1.25g)

  • 💪 片腕:3 FTU(約1.5g)

  • 🦵 片脚(足も含む):6 FTU(約3.0g)

  • 🫁 胸・腹部:7 FTU(約3.5g)

  • 🔙 背部(臀部含む):7 FTU(約3.5g)


たとえば両に塗布する場合は 3 FTU × 2 = 6 FTU、すなわち約3gが必要です。はがきの短辺(約10cm)の長さ分を指に2回絞り出すイメージです。「薄く少量で十分」という患者の思い込みを、具体的な数字で修正することが服薬指導の肝になります。


ローションタイプの場合、1 FTUの目安は「1円玉大の量」とされています。これも忘れずに服薬指導に組み込むと、患者の理解度が上がります。


また、小児への塗布量は体重・体表面積に応じた上限があります。たとえば2〜5歳(20kg未満)の場合は1回あたり上限1g(4 FTU相当)、13歳以上(50kg以上)では内容により上限が設定されます。これは必須です。小児は体表面積あたりの吸収率が成人より高く、全身副作用リスクが大きいため、特に注意が必要です。


参考:日本皮膚科学会 皮膚科Q&A「軟膏やクリームを塗る量はどのくらい?」(FTUの詳細な解説)
https://qa.dermatol.or.jp/qa39/q03.html


外用薬の経皮吸収と全身性副作用:「塗り薬だから安全」は危険な思い込み

外用薬の副作用として多くの医療従事者がまず思い浮かべるのは、皮膚の発赤・刺激・かぶれなどの局所反応でしょう。しかし外用薬でも、使い方によっては内服薬と同様の全身性副作用が生じることがあります。「塗り薬だから全身への影響は少ない」というのは、医療従事者の間にも根強く残る誤解のひとつです。


最も代表的なのは、ステロイド外用薬によるHPA(視床下部-下垂体-副腎)軸の抑制です。高効力ステロイドを広範囲に、または密封法(ODT)で長期間使用すると、副腎皮質機能抑制が起こることが添付文書にも明記されています。特に顔面・頸部・陰部・間擦部では皮膚が薄く経皮吸収率が高いため、同じ薬でも部位によってリスクが大きく変わります。これが条件です。


小児では成人より体表面積あたりの薬物吸収量が多いため、より少ない使用量でも全身副作用(成長障害、クッシング症候群様症状など)が生じる可能性があります。アトピー性皮膚炎診療ガイドラインにおいても、12〜17歳群で1日2回塗布を行った臨床試験において副腎抑制が確認された事例が報告されています。厳しいところですね。


外用薬の経皮吸収に影響する主な因子は以下のとおりです。



  • 🔬 部位:陰嚢の経皮吸収率は前腕の約42倍(前腕を1とした場合)と報告されており、部位差が非常に大きい

  • 🌡️ 皮膚の状態:炎症・傷・びらんがある皮膚はバリア機能が低下し、吸収率が著しく上昇する

  • 👶 年齢:新生児・乳幼児は角質層が薄く、体表面積/体重比が大きいため吸収量が多くなりやすい

  • 🩹 密封法(ODT):ラップ包帯などで皮膚を覆うと吸収率が数倍に上昇する


また、経皮吸収型製剤(TDDSやTTS)として設計された貼付剤は、最初から全身作用を目的としています。ニトログリセリン貼付剤(狭心症治療)やフェンタニルパッチ(がん疼痛治療)が代表例で、肝初回通過効果を回避しながら持続的に血中濃度を維持できる点がメリットです。これらは「外用薬でありながら全身作用薬」であり、内服薬と同等以上の慎重な投与管理が必要です。


参考:久光製薬株式会社「経皮吸収のメカニズム~皮膚を中心に」(経皮吸収の部位差・影響因子を詳述)
https://www.hisamitsu-pharm.jp/assets/img/tdds/pdf/pamphlet05.pdf


外用薬の使い方:剤形別の注意点と服薬指導で必ず伝えるべきこと

外用薬の薬効を最大限に発揮させるためには、剤形ごとの正しい使い方を患者に確実に指導することが不可欠です。ここでは主要な剤形ごとに、服薬指導で特に意識すべきポイントをまとめます。


【点眼薬】の使用で最も多いミスは「複数使用時の間隔不足」と「容器先端の汚染」です。複数の点眼薬を使用する場合は、少なくとも5分以上の間隔をあける必要があります。5分未満では先に点眼した薬が後の薬で洗い流されてしまうからです。また容器の先端がまぶたやまつ毛に触れると薬液が汚染されるため、厳しく指導する必要があります。点眼後は目頭を約1〜2分軽く押さえると、涙道への流出を防いで眼への滞留時間が長くなります。これは使えそうです。


【点鼻薬】は使用前に鼻をかんで鼻腔内を清浄にすることが基本です。頭をうつむき加減にして噴霧することで薬液が鼻粘膜に接触しやすくなります。液状タイプは毎回よく振ってから使うものが多く、この指示を見落とすと薬効にムラが生じる可能性があります。


【坐薬】の挿入が困難な場合は、先端を体温でわずかに温めることで滑りがよくなります。温度の高い場所での保管は変形の原因になるため、冷所保管が指示されているものは厳守が必要です。また坐薬の方向は先端(とがった側)を肛門に向けて挿入します。これが基本です。


【貼付剤】には局所作用型と全身作用型(経皮吸収型製剤)があります。全身作用型は用量管理が重要で、貼り替え忘れや二重貼付は過剰投与につながります。また、貼付部位は毎回変えてローテーションすることで皮膚トラブルを予防できます。しわが生じないよう、平らで清潔・乾燥した皮膚に貼ることが必要です。汗をかいた状態で貼付するとはがれやすく、吸収量が不安定になります。


【吸入薬】は使い方が複雑で、患者教育に最も時間をかける必要がある剤形のひとつです。吸入不足・吸入速度の誤り・吸入後のうがいの省略(ステロイド吸入薬の場合)などが誤用として頻出します。デバイスごとに吸入方法が異なるため、実物を用いてのデモンストレーション指導が有効です。




外用薬は種類・剤形が多岐にわたるため、患者への指導内容が個々に異なります。服薬指導では「どこに」「どれだけ」「どのように」の3点を明確に伝えることが最低限のルールです。FTUを用いた量の視覚化や、具体的な部位ごとの塗布範囲の説明を組み合わせることで、患者の理解度と治療アドヒアランスを大幅に向上させることができます。


参考:大塚製薬 医療関係者向け情報サイト「皮膚外用薬(塗り薬)の適切な使い方と注意点」(剤形別の使用法・指導ポイントを詳述)
https://www.otsuka-elibrary.jp/support/32041/index.html




レジデントノート 2019年12月 Vol.21 No.13 うまく使おう! 外用薬〜研修医も知っておきたい、外皮用薬・坐剤・点眼薬などの選び方と使いどころ