パスタロンローションに切り替えれば頭部粃糠疹の適応が取れなくなります。
2025年9月9日、大塚製薬はウレパールローション10%の販売中止を正式に発表しました。長年にわたり角化症治療の現場で使われてきた製品であり、医療現場には少なくない影響があります。
発表内容によると、出荷停止の予定時期は2026年4月上旬(200g規格)または2027年4月〜6月上旬(500g規格)とされています。薬価基準からの削除に伴う経過措置期間の満了予定日は2027年3月末日です。つまり、経過措置期間内であれば保険請求は引き続き可能ですが、実際の在庫は先に尽きる見込みです。
在庫消尽後に販売中止という形が原則です。
医療機関や薬局では、在庫の消尽時期が施設ごとに異なる点に注意が必要です。2026年1月時点での情報では、200gプラスチック容器規格の出荷停止予定が2026年4月上旬と案内されており、現時点ではすでに入手困難な状況が続いています。発注の際はメーカーや卸と個別に在庫状況を確認することが基本です。
なお同時期、アクアチムローション1%も同様に販売中止となっており(経過措置満了2027年3月末)、ローション剤型をめぐる在庫調整が複数の製品で重なっています。これはある意味で「ローション市場全体の転換点」ともいえる時期です。
大塚製薬 公式「販売中止のご案内(ウレパールローション10%)」(医療関係者向け)
販売中止に際して代替品へ切り替える前に、ウレパールローション10%の適応をあらためて確認しておくことが重要です。見落としがちな項目があります。
ウレパールローション10%が保険適応として認められていた疾患は以下のとおりです。
このうち頭部粃糠疹は、ローション剤であるウレパールローション10%にのみ設定されている適応です。クリーム剤のウレパールクリーム10%にはこの適応はありません。これは単なる剤型の違いではなく、承認された適応症の違いです。
頭部粃糠疹が対象の患者に切り替えを行う際は、この点が鍵になります。
頭皮への使用を想定して処方されていた患者の場合、代替品として採用する製品が同じ適応を持っているかどうかを必ず確認してください。パスタロンローション10%については添付文書上で頭部粃糠疹の適応が記載されているかどうか、最新の電子添文で確認する手順が必要です。製品ごとの添付文書は独立した承認内容に基づくため、「成分が同じだから適応も同じ」とは限りません。これが原則です。
日経メディカル処方薬事典 ウレパールローション10%の基本情報・適応一覧
ウレパールローション10%の薬価は3.9円/gでした。代替品として検討できる主な製品を整理しておきましょう。
| 製品名 | メーカー | 剤型 | 薬価(/g) | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| パスタロンローション10% | 佐藤製薬 | ローション | 4.0〜4.1円 | 同成分・同剤型。適応の確認必要 |
| ウレパールクリーム10% | 大塚製薬工場 | クリーム | 3.9円 | 同メーカー。頭部粃糠疹の適応なし |
| 尿素クリーム10%「日医工」 | 池田薬品工業 | クリーム | 2.9円 | ジェネリック。安価だが剤型変更 |
| 尿素クリーム10%「SUN」 | サンファーマ | クリーム | 2.9円 | ジェネリック。安価だが剤型変更 |
| ケラチナミンコーワクリーム20% | 興和 | クリーム | 4.0円 | 尿素濃度が20%と異なる点に注意 |
同一成分(尿素)の製品でも、剤型・濃度・適応疾患・薬価はそれぞれ異なります。これは注意すべき点です。
たとえば、薬価の観点では後発品のジェネリック(2.9円/g)はウレパールローションに対して約25%安くなります。年間を通じて大量に処方する場合、患者1人あたりの負担にも差が出ます。たとえば1回50gを月2回処方するとすれば、1か月の薬剤費は先発品(4.0円)で400円、後発品(2.9円)で290円と、3割負担の患者なら月30円ほどの差が生じます。
ただし、剤型をクリームに変更した場合は、患者が塗布する場所や使い慣れた使用感に変化が生じます。特に頭皮への使用では、クリーム剤よりローション剤のほうが浸透しやすく使いやすいと感じる患者が多い傾向があります。代替品をただ機械的に選ぶのではなく、処方意図と患者の使用部位・習慣を踏まえて判断することが大切です。
KEGG MEDICUS 尿素の同効薬・薬価一覧(パスタロン・ウレパール・ケラチナミン比較)
現場では「ウレパールローションをパスタロンローションに変えれば問題ない」と判断されがちです。成分が同じであることは事実ですが、それだけでは不十分な場面があります。
まず確認すべきは、処方箋に記載された病名と、切り替え先の製品が持つ承認適応が一致しているかという点です。病名が頭部粃糠疹であれば、パスタロンローション10%が同じ適応を有するかどうか、最新の電子添文で確認する手順が必須です。添付文書の改訂によって適応内容が変わっている可能性もゼロではありません。
次に確認すべきは、後発医薬品調剤体制加算との関係です。後発品への変更が可能な場面では、薬局としてジェネリック品の使用も選択肢に入ります。しかし、剤型が変わる(ローション→クリーム)場合は患者への説明と同意が前提となります。患者が「前と違う」と感じたときにクレームにつながるリスクがあります。これは避けたいトラブルです。
また、院内でウレパールローションをすでに採用している医療機関では、採用マスタの更新が必要になります。在庫が消尽した後も処方オーダーが通ってしまうシステム上のリスクを防ぐため、薬剤部での早期のマスタ対応が求められます。
処方医への情報提供という面でも、薬剤師や看護師が先回りして「ウレパールローションは在庫消尽後に入手困難になる」という事実を伝えておくことが、スムーズな代替品切り替えにつながります。現場での情報共有が早いほど対応しやすくなります。
データインデックス くすりすと ウレパールローション10%の先発品・後発品一覧
今回のウレパールローション販売中止は、突発的な供給停止ではなく、メーカーが一定の余裕をもって事前通知した事例です。しかし実際には、2026年4月上旬の出荷停止予定に対して、多くの医療機関・薬局が十分な準備を整えられていないことも少なくありません。
こうした製品の販売中止・出荷停止情報をリアルタイムで把握するツールとして、DSJP(医療用医薬品供給状況データベース)の活用が有効です。このデータベースでは製品ごとの供給状況・代替品・出荷停止時期が一覧できます。これは使えそうです。
ウレパールローションのように「在庫消尽後に販売中止」という形式の場合、入手可能な時期が施設ごとにまちまちになります。近隣の医療機関・薬局との情報交換も、現実的な対応策のひとつです。
なお、2025年〜2026年にかけては医薬品の供給不安定が広範囲に及んでいます。アクアチムローション、ドンペリドン錠(日医工)、ジソピラミド徐放錠など複数製品が同時期に販売中止・供給停止となっており、個別対応だけでは限界があります。施設全体で情報集約と対応ルールを整えることが、医療安全にもつながります。システムとして動く仕組みが必要です。
DSJP(医療用医薬品供給状況データベース)- 販売中止・出荷停止情報の一元検索