ザクロを毎日食べても、約2人に1人はウロリチンAを体内で作れません。
ウロリチンAとは、ザクロやラズベリー、クルミなどに含まれるポリフェノールの一種「エラグ酸」が、腸内細菌によって分解・代謝されることで生成される生理活性物質です。食品に直接含まれているわけではなく、あくまで腸内での代謝産物として体内に現れる点が大きな特徴です。
医療従事者の観点からまず理解しておきたいのは、この成分が「ポストバイオティクス」に分類されるという点です。腸内細菌が産生した後に体内に吸収される代謝産物であるため、プロバイオティクスやプレバイオティクスとは異なる位置づけで研究が進んでいます。
ウロリチンAが注目される最大の理由は、細胞内のオートファジー(自食作用)を強力に活性化する点にあります。オートファジーとは、37兆個あるといわれるヒトの細胞が、内部の老廃物や損傷したタンパク質、機能低下したミトコンドリアなどを分解・リサイクルする仕組みです。この機能は加齢とともに低下することが明らかになっており、各種疾患の背景にあるメカニズムとして注目されています。
ミトコンドリアに特化したオートファジー、すなわち「マイトファジー」においても、ウロリチンAは特筆すべき働きを見せます。古く傷んだミトコンドリアを選択的に除去し、新しいミトコンドリアの産生を促すことで、細胞全体のエネルギー産生効率を高める可能性が示されています。
つまり、細胞レベルで「古いものを捨て、新しくする」流れを促進するのが基本です。
ウロリチンAの代謝経路についての詳細な研究内容は、日本栄養・食糧学会誌(2023年)に掲載された以下の論文を参照してください。
サプリメントとしてのウロリチンAの有効性を語るうえで外せないのが、2022年5月に権威ある医学誌『Cell Reports Medicine』に掲載されたスイス連邦工科大学(EPFL)グループによる二重盲検プラセボ対照試験の結果です。
この試験は40〜64歳の中高年男女88名を対象に実施されました。参加者は、ウロリチンA500mg摂取群、1000mg摂取群、プラセボ群の3群にランダムに割り付けられ、4カ月間にわたり毎日サプリメントを摂取しました。
結果として注目されたのは以下の点です。
| 評価指標 | 500mg群 | 1000mg群 |
|---|---|---|
| ハムストリング筋力 | +12%(有意差あり) | +9.8%(有意差あり) |
| 膝関節屈曲時筋力 | +10.6%(有意差あり) | +10.5%(有意差あり) |
| 最大酸素摂取量(VO₂max) | 参考値 | +10%(臨床的改善) |
| 6分間歩行テスト | 参考値 | +33メートル(臨床的改善) |
特筆すべきは、これらの改善が参加者の運動習慣を一切変えることなく達成された点です。筋力が12%向上したということは、たとえば100kgのバーベルを扱えていた人が、112kgまで対応できるようになるイメージに近い変化といえます。
これは驚くべき数字ですね。
さらに、骨格筋生検と血液検査でミトコンドリア健康バイオマーカーの有意な改善と炎症マーカーの低下が確認されており、単なる筋力という「表面的な数値」だけでなく、細胞レベルでの機能回復が示されています。また、安全性と忍容性についても問題なしと評価されており、医療現場での活用を検討する際の重要な根拠となっています。
日本国内の臨床研究としては、株式会社ダイセルと医療機関が共同実施し、2024年に『診療と新薬』に掲載された試験があります。健常日本人女性59名を対象に、ウロリチンA10mgまたは20mgを12週間摂取させたところ、肌の弾力・シミ・赤み・シワのすべての項目で摂取前比有意な改善が確認されています。
診療と新薬2024年掲載:ザクロ抽出発酵物(ウロリッチ®)摂取によるオートファジーに関連した有効性と体内動態の検証(PDF)
ウロリチンAのサプリメント効果を理解するうえで、医療従事者が患者や利用者に必ず伝えるべき重要な事実があります。それは、「食品からウロリチンAを得られるかどうかは、個人の腸内環境による」という点です。
エラグ酸からウロリチンAへの変換には、特定の腸内細菌(主にGordonibacter属など)が必要です。しかし研究によれば、日本人全体の約53%しかこの変換を行える腸内環境を持っていないと報告されています(卯川裕一ほか,日本栄養・食糧学会誌, 2023, Vol.76, No.6, 383-390)。
これが基本です。
つまり、残りの約47%の方はザクロジュースを毎日飲んでも、クルミをたっぷり食べても、体内でウロリチンAはほとんど産生されない可能性があります。鳥取砂丘の砂が一粒も川に流れないような状態で、素材だけあっても変換する仕組みがなければ意味をなしません。
さらに、現時点でウロリチンAを産生できる腸内細菌を持っている場合でも、食生活の変化や抗菌薬の使用、加齢による腸内環境の変化によって、産生能力を失う可能性があります。
ウロリチンAはまた、体内に蓄積されにくく排泄されやすい性質があるため、継続的な摂取が効果の維持に必要とされています。医療従事者がこの点を患者に伝えることで、利用者自身が自分の状況を正確に把握して適切な選択ができるようになります。
UHA味覚糖オートファジー研究所:ウロリチンサプリメントの失敗しない選び方(腸内細菌と産生率について詳細解説)
医療従事者が特に関心を寄せるべき領域の一つが、ウロリチンAとサルコペニア・フレイル予防の関係性です。
サルコペニアは加齢に伴う骨格筋量・筋力の低下であり、後期高齢者の約30%が該当するとされています。転倒リスクの上昇、ADLの低下、入院期間の延長など、医療・介護全体に大きな負担をもたらす病態です。
これは臨床上の大きな課題ですね。
ウロリチンAはミトコンドリアのマイトファジー活性化を通じて、骨格筋細胞内のエネルギー産生を改善することが示されており、特に筋肉はミトコンドリアを多く含む組織であるため、この機能改善の恩恵を受けやすいと考えられています。
加えて、ウロリチンAには全身の炎症を低減させる作用があることも複数の試験で示されています。サルコペニアの病態には慢性低度炎症が深く関与していることが知られており、C反応性タンパク質(CRP)などの炎症マーカーの改善は、サルコペニアの病態緩和の可能性を示すデータとして注目されます。
高齢の入院患者やリハビリ対象者に対して、ウロリチンAサプリメントを標準的なリハビリプログラムや栄養管理に組み合わせることで、回復を補助できるかどうかを検討する価値はあるでしょう。現時点では「補助的な選択肢のひとつ」として位置づけるのが適切ですが、エビデンスの蓄積は着実に進んでいます。
また、65歳〜90歳の高齢者を対象とした別の臨床試験(JAMA Network Open掲載)では、ウロリチンAが筋持久力の向上と炎症の低減、ミトコンドリア健康指標の改善をもたらすことが示されており、高齢者への安全性と有効性のエビデンスが積み上がっています。
ウロリチンAサプリメントが市場に増えていますが、医療従事者として患者やご自身が選択する際に注意すべき点がいくつかあります。
製品ごとのウロリチンA含有量には大きなばらつきがあります。日本国内のヒト試験で有効性が確認された量は1日10mg(美容・オートファジー効果)から、筋力改善目的では1日500〜1000mg(Cell Reports Medicine 2022試験)という幅があります。これが条件です。
摂取タイミングについては、現時点で「このタイミングが最適」という強いエビデンスはありませんが、消化吸収の観点から食後に摂取するケースが多く見られます。患者への指導時は「毎日決まった時間に、食後に摂取する」というシンプルなアドバイスが継続しやすく実用的です。
これは使えそうです。
なお、降圧剤(特にACE阻害剤)を使用している方、抗凝固薬を服用している方については、サプリメント試験の除外基準にも含まれていたことから、相互作用のリスクについて慎重に検討する必要があります。医師や薬剤師への事前相談を推奨してください。
株式会社ダイセル:ウロリッチ®(ウロリチンA含有食品素材)の開発背景と品質について
ウロリチンAは全体として安全性の高い成分とされていますが、医療従事者として患者に伝える際には、リスクについても正確に把握しておくことが重要です。
2024年の日本国内試験(診療と新薬掲載)では、12週間にわたる継続摂取において重大な有害事象は報告されておらず、血液検査・尿検査のパラメーターにも基準値逸脱は観察されませんでした。EPFL主導の2022年試験でも、500mg・1000mgという高用量でも安全性・忍容性に問題はないとされています。
安全性については問題ありません、とは言い切れませんが、現段階のエビデンスは比較的良好です。
ただし、以下の点については慎重に対応する必要があります。
また、過剰摂取が効果を高めるわけではない点も、患者への教育として重要です。臨床試験での有効用量の範囲内での摂取が推奨されており、「多く飲めば早く効く」という誤解を持つ利用者も多く見られます。
医療現場では、「標準的な治療に加える補助的なアプローチ」として位置づけ、エビデンスの範囲内で適切に情報提供を行うことが医療従事者としての適切な姿勢といえます。患者からの相談があった際、「ダメです」で終わるのではなく、「こういう条件なら有用性が示されています」と根拠を持って答えられることが、信頼関係の構築にもつながります。
メタジェン×ダイセル共同研究:ウロリチンによる血管内皮機能改善効果と腸内環境との関連性(個人差の背景と安全性データ)