ゾビラックス軟膏販売中止で知るべき代替品と対応

ゾビラックス軟膏5%が2024年1月より出荷停止となり、医療現場への影響が続いています。代替品や切り替え時の注意点を正しく把握していますか?

ゾビラックス軟膏の販売中止と医療現場への影響

アシクロビル軟膏の後発品に切り替えれば、処方内容はまったく同じだと思っていませんか?実は剤形や適応範囲に見落としやすい違いがあり、そのまま処方を続けると患者対応でトラブルが起きることがあります。


ゾビラックス軟膏 販売中止:医療従事者が押さえるべき3つのポイント
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出荷停止の経緯

GSKは2024年1月より、ゾビラックス軟膏5%を出荷停止。承認規格を満たさないロットが発生し、2025年12月時点でも供給再開の見通しは立っていない。

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推奨される代替品

GSK公式の案内ではアシクロビル軟膏(後発品)またはビダラビン軟膏が代替品として提示されている。ただし適応範囲が異なるため注意が必要。

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切り替え時の注意点

アシクロビル軟膏5%「トーワ」は生物学的同等性が確認済み。一方、ビダラビン軟膏は帯状疱疹にも適応があるが、重症例への単独外用は原則として不適切とされる。


ゾビラックス軟膏が販売中止になった理由と出荷停止の経緯

ゾビラックス軟膏5%は、グラクソ・スミスクライン株式会社(GSK)が製造販売する抗ヘルペスウイルス外用薬で、有効成分はアシクロビルです。口唇ヘルペスや性器ヘルペスなどの単純疱疹に対して長年使われてきた先発品として、多くの医療機関で処方実績がありました。


問題が表面化したのは2024年1月のことです。出荷予定だったロットが承認規格を満たさないことが判明し、GSKはただちに出荷停止の措置をとりました。製造所では原因究明と対策の検討を続けたものの、2025年12月に発出された続報においても「現在に至るまで原因の特定には至っておらず、供給再開の目途も立っていない」と明記されており、事態は深刻です。


2026年1月時点での医薬品供給状況データベース(DSJP)でも「供給停止」のステータスが継続中です。つまり、現時点でゾビラックス軟膏5%は事実上、市場から姿を消した状態にあります。


同じタイミングで「ゾビラックスクリーム5%」については限定出荷が継続されましたが、こちらも2024年当初は新規注文が困難な状況でした。2024年7月に通常出荷が再開されたという情報は日本感染症学会からも発出されており、クリームと軟膏では対応状況が大きく異なる点は重要な情報です。


医療現場では、この出荷停止の影響で「いつもの薬が出ない」という事態が発生しています。特に長期的にゾビラックス軟膏を処方されていた患者への対応に、薬剤師や医師が頭を抱えるケースが続きました。出荷停止はあくまで「自主的な供給停止」であり、厚生労働省への届出も行われていることから、正式な手続きに沿った措置であることはわかります。ただし、現場への影響は否定できません。


また、後発品であったアシクロビル軟膏5%「NIG」(日医工)も、品質管理体制と製造ラインの適正化が困難と判断したとして、在庫消尽をもって販売中止となっています。さらにアシクロビル眼軟膏3%「ニットー」(日東メディック)も2025年8月に販売中止を発表し、2027年3月31日の経過措置期間終了が予定されています。


つまり、アシクロビル外用薬全体の供給が不安定な状況下で、ゾビラックス軟膏の停止が重なっているという認識が必要です。


GSK公式「ゾビラックス軟膏5% 出荷停止のご案内とお詫び(続報)2025年12月版」


ゾビラックス軟膏 販売中止後の代替品一覧と選び方

GSKが公式に示している代替品は「アシクロビル軟膏またはビダラビン軟膏」の2系統です。それぞれに特徴があり、単純に置き換えればよいというものではありません。代替品の選択には、適応症・患者背景・在庫状況の3軸での判断が求められます。


まず、アシクロビル系の後発品について整理します。現在流通している主な製品は以下のとおりです。





























製品名 販売会社 現在の出荷状況(2026年3月時点)
アシクロビル軟膏5%「トーワ」 東和薬品 ✅ 通常出荷
アシクロビル軟膏5%「ラクール」 東光薬工 ⚠️ 限定出荷(2026年3月9日〜)
アシクロビル軟膏5%「NIG」 日医工 ❌ 販売中止(2022年6月〜)
ゾビラックスクリーム5% GSK(先発) ✅ 通常出荷再開(2024年7月〜)


アシクロビル軟膏5%「トーワ」は、生物学的同等性試験でゾビラックス軟膏5%と同等と判断された製品です。東和薬品が行った背部皮膚感染症モデル・性器感染症モデルの動物実験でも、発症抑制効果と生存日数において両剤に差はなかったと報告されています。同等品を選ぶという意味では、現時点でもっとも安定した選択肢です。


次に、ビダラビン軟膏(代表例:アラセナ-A軟膏、持田製薬)についてです。こちらはゾビラックス軟膏とは有効成分が異なります。ビダラビンはDNAポリメラーゼを阻害することで抗ウイルス作用を発揮するため、アシクロビル耐性ウイルスへも有効とされています。ただし、正常細胞内でもリン酸化されてしまう性質があり、ウイルスへの選択性はアシクロビルのほうが高い点は意識しておく必要があります。


ビダラビン軟膏で特に注意が必要なのは適応の範囲です。アラセナ-A軟膏は単純疱疹だけでなく帯状疱疹にも適応を持っていますが、「軽症例に限る」という条件があります。重症の帯状疱疹に対して外用のビダラビン単独で対応するのは適切ではなく、内服・点滴など全身投与が原則となります。この点を見落として代替選択をすると、不適切な治療につながりかねません。代替品として「とりあえずビダラビン」と選ぶのは避けたほうが賢明です。


また、クリームと軟膏という剤形の違いも現場では盲点になりやすい点です。ゾビラックスクリームは同じアシクロビルを含み、現在は通常出荷されていますが、軟膏とクリームでは患者の使用感や塗布後の皮膚の状態が異なります。特に患部の状態(湿潤か乾燥かなど)に応じて剤形を判断することが、患者満足度や治療効果に影響します。


DSJP 医療用医薬品供給状況データベース:ゾビラックス軟膏5%の代替品・出荷状況確認ページ


ゾビラックス軟膏 販売中止時に処方変更で見落としがちな適応の違い

代替品への切り替えを行う際、最も重大なリスクになりうるのが「適応範囲の違い」の見落としです。ゾビラックス軟膏(アシクロビル軟膏)の適応は「単純疱疹」のみです。これに対してビダラビン軟膏(アラセナ-A軟膏等)は「単純疱疹および帯状疱疹」が適応に含まれています。


この違いがどういう意味を持つかを考えてみます。たとえば帯状疱疹の患者に対し、ゾビラックス軟膏5%を使っていた場合を例に挙げます。この場合、皮膚科医や眼科医が内服薬(バラシクロビルやアシクロビル錠など)の補助として外用薬を処方していたケースも多かったはずです。内服でアシクロビルをカバーしつつ、患部への局所作用として外用を加えていた、というパターンです。


ゾビラックス軟膏が使えなくなったとき、アシクロビル軟膏の後発品であれば適応は同じ「単純疱疹」のみで変わりません。つまり、帯状疱疹に対して後発品のアシクロビル軟膏を外用として単独で使うことは、添付文書上の適応外になります。この部分は意外と軽視されがちですね。


一方で、ビダラビン軟膏を帯状疱疹に使う場合には「軽症例」という条件がつきます。帯状疱疹後神経痛のリスクが高い高齢者や、免疫抑制状態の患者に対して外用薬のみでの対応を選択することは、ガイドライン上も推奨されていません。重症例では内服・点滴による全身療法が基本であることを再確認する必要があります。


また、保険請求の観点からも注意が必要です。口唇ヘルペス(単純疱疹)に対して内服の抗ヘルペスウイルス薬(バラシクロビル、ファムシクロビルなど)と外用薬を同時に処方するケースは、地域の審査機関によっては査定対象になりうるとされています。大阪では特に厳しいとの声もあり、内服か外用かどちらか一方に絞る対応が基本とされています。


切り替えの判断は「成分が同じか」だけで終わりにしてはいけません。適応・剤形・処方パターン・保険上のリスクを総合的に確認することが条件です。


Pharmacista:ゾビラックス(アシクロビル)とアラセナ(ビダラビン)の作用機序・違い・使い分けの解説


ゾビラックス軟膏 販売中止が眼科領域にもたらす独自の課題

ゾビラックス軟膏は皮膚科での使用だけでなく、眼科領域でも長年の処方実績がありました。特に帯状疱疹性眼炎や単純ヘルペス性角膜炎において、内服・点滴と並行して補助的に使用されるケースが多く見られます。しかし、一般的に語られる「代替品への切り替え」の文脈では、眼科ならではの制約について言及されることがほとんどありません。


重要な点として、アシクロビル軟膏5%「トーワ」の添付文書には「投与経路:眼科用として角膜・結膜に使用しないこと」と明記されています。皮膚用軟膏は眼科用途に転用できないということです。これは、アシクロビル軟膏の後発品全般に共通する制約です。


眼科領域での角膜ヘルペスに対応するためには、ゾビラックス眼軟膏3%(アシクロビル眼軟膏)という別の剤形の製品が必要になります。皮膚用の軟膏5%と眼軟膏3%は、濃度も剤形も別製品として区別されています。


さらに、このゾビラックス眼軟膏3%のジェネリックであるアシクロビル眼軟膏3%「ニットー」(日東メディック)が、2025年8月に販売中止を発表しました。経過措置期間は2027年3月31日までとされており、眼科領域のアシクロビル外用薬の選択肢が狭まりつつあることを示しています。


眼科においてヘルペス治療薬の外用を処方する場合は、皮膚用と眼科用を混同しないよう、処方時の品目確認が必須です。特に皮膚科と眼科を兼任する医療機関や、複数科で処方を分担しているケースでは、誤処方リスクが高まります。眼科用途には、必ず眼軟膏として承認されている製品を選ぶことが原則です。


日東メディック:アシクロビル眼軟膏3%「ニットー」販売中止のご案内(2025年8月)


ゾビラックス軟膏 販売中止後に医療機関が取るべき実務対応のポイント

出荷停止・販売中止の情報を把握した後、実際に医療機関として何をすべきかという実務の観点も整理しておきます。知っているだけでは不十分で、院内での共有と対応フローの整備が求められます。


まず、院内採用薬品の見直しです。既にゾビラックス軟膏5%を採用薬として登録していた施設では、代替品への切り替え申請が必要になります。東邦大学大橋病院薬剤部の例では、ゾビラックス軟膏から「アシクロビル軟膏5%『トーワ』(東和薬品)」への切り替えが院内で対応済みとして記録されています。こうした院内での採用切り替え対応が、処方の混乱を防ぐうえで第一の対策となります。


次に、処方オーダー時の注意です。電子カルテ上でゾビラックス軟膏5%の処方セットが残っていると、医師が無意識にそのまま選択してしまう可能性があります。処方セットの更新・削除は、薬剤部と情報システム部が連携して対応する必要があります。こうした地味な対応が、実際の処方ミスを防ぐ上で重要です。


患者への説明についても対応が必要です。長年ゾビラックス軟膏を使用してきた患者に代替品を渡す際、「同じ薬ですか?」と確認されるケースは少なくありません。成分・効果は同等であることを伝えたうえで、見た目やチューブの形状・使用感の違いについても説明できるよう準備しておくと、患者満足度の低下を防げます。


供給状況のモニタリングも継続的に必要です。2026年3月時点では「アシクロビル軟膏5%『ラクール』」が限定出荷に移行しており、代替品として想定していた後発品そのものの供給が不安定化するリスクもあります。DJSPのデータベース(drugshortage.jp)を定期的に確認し、在庫状況の変動を早期に把握することが賢明です。


GSKへの問い合わせ窓口はカスタマー・ケア・センター(TEL: 0120-561-007、平日9:00〜17:45)です。供給見通しについての最新情報は、直接問い合わせることで入手できます。情報は常に更新されるので、定期的な確認が最も確実です。


日本感染症学会:ゾビラックスクリーム5% 通常出荷再開のご案内(2024年7月)