亜鉛華軟膏の効果と褥瘡ケアの正しい選択

亜鉛華軟膏は褥瘡の創面保護に有効な外用薬ですが、どの病期でも使えるわけではありません。感染創や壊死期への誤使用でかえって治癒が遅れるリスクも。正しい選択基準を知っていますか?

亜鉛華軟膏の効果と褥瘡への正しい使い方

感染創に亜鉛華軟膏を塗ると、治癒が数週間単位で遅れます。


亜鉛華軟膏と褥瘡ケア:3つのポイント
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亜鉛華軟膏の基本的な効果

酸化亜鉛を主成分とする油脂性基剤の外用薬。創面保護・収れん・軽度の抗炎症作用をもち、浅い褥瘡(びらん・浅い潰瘍)や急性期の創面保護に適用されます。

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使用してはいけない病期がある

感染創・壊死組織が多い時期・炎症が強い黒色期~黄色期には使用不適。亜鉛華軟膏には抗菌作用がなく、使い続けると過乾燥を招きむしろ治癒を妨げます。

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DESIGN-R®と外用薬の選択

褥瘡の病期をDESIGN-R®2020で評価し、「N(壊死)→n」「I(炎症/感染)→i」「G(肉芽)→g」の順で治療目標を設定。亜鉛華軟膏は主に赤色期(肉芽形成・上皮化期)に活躍します。


亜鉛華軟膏が褥瘡に効果を発揮する仕組みと成分


亜鉛華軟膏の主成分は「酸化亜鉛(ZnO)」で、白色ワセリンなどの油脂性基剤に混合されています。油脂性基剤の特性として「疎水性」があるため、少量の滲出液を創面にとどめ、適度な湿潤環境を維持しながら創面を外力から保護します。これが亜鉛華軟膏の最大の強みです。


酸化亜鉛そのものには、①軽度の収れん作用(血管収縮・滲出液の吸収)、②軽度の抗炎症作用、③創面の保護・緩和な防腐作用、という3つの薬理作用があります。つまり「劇的に傷を治す薬」ではありません。


「創面を守って自然治癒を助ける薬」というのが正確な位置づけです。


日本褥瘡学会の「褥瘡予防・管理ガイドライン」では、亜鉛華軟膏(酸化亜鉛)は「発赤・水疱・びらん・浅い潰瘍」「DTI(深部損傷褥瘡)疑い」「急性期の創面保護」に対する外用薬として推奨度C1(根拠は限られているが行ってもよい)で掲載されています。さらに「肉芽が十分に形成され、創の縮小を図る段階」でも酸化亜鉛はC1として選択肢に挙がっています。つまり、使える場面は複数ありますが、それぞれの「なぜ使うか」の根拠を理解することが大切です。


外用薬は「主薬(薬効成分)」と「基剤(薬剤を保持・運搬する成分)」で構成されており、亜鉛華軟膏の場合、主薬は酸化亜鉛、基剤は白色ワセリンを中心とした油脂性基剤です。創傷治癒において湿潤環境の維持は非常に重要であり、油脂性基剤はその役割を担う保湿型の基剤です。滲出液が多い創に使う「水溶性基剤(吸水型)」とは真逆の性質を持つため、使う場面の選択が治療の質を大きく左右します。


これが条件です。「どんな創にも使える万能薬」ではない、ということを現場でしっかり押さえておく必要があります。


なお、亜鉛華軟膏と亜鉛華単軟膏は名前が似ていますが別物で、亜鉛華単軟膏は酸化亜鉛の濃度が異なり、収れん性はより高い傾向があります。浸軟(皮膚が水分を過剰に含んでふやける状態)が生じているケースには、むしろ収れん性が高い亜鉛華単軟膏が適することもあるため、両者の使い分けを意識することも重要なポイントです。


参考:褥瘡の局所治療概要と外用薬の選択基準について詳しく解説されています。


亜鉛華軟膏が褥瘡の病期ごとに果たす役割と使い分け

褥瘡の局所治療で最も重要なのは「今この創がどの病期にあるか」を正確に見極めることです。外用薬の選択はそこから始まります。これが原則です。


褥瘡の病期は大きく「急性期」と「慢性期」に分けられ、慢性期はさらに「黒色期(壊死期)」「黄色期(感染・炎症期)」「赤色期(肉芽形成期)」「白色期(上皮化期)」の4期に分類されます。亜鉛華軟膏(酸化亜鉛)の出番は主に「赤色期」以降と「急性期の浅い褥瘡」です。


具体的な適用場面を整理すると、以下のとおりです。


褥瘡の病期・状態 亜鉛華軟膏の適否 理由
急性期(発赤・水疱・浅いびらん) ✅ 適用可(推奨度C1) 創面保護・適度な湿潤環境の維持
深部損傷褥瘡(DTI疑い) ✅ 適用可(推奨度C1) 毎日の観察を前提に創面保護目的で使用
黒色期(壊死組織多い) ❌ 不適 壊死除去作用がなく、感染リスクを高める
黄色期(感染・炎症が強い) ❌ 不適 抗菌作用がなく、感染を助長するリスクがある
赤色期(肉芽形成が進んでいる) ✅ 適用可(推奨度C1) 創縮小・上皮化の補助として使用可
白色期(上皮化が進んでいる) ✅ 適用可 創面保護・皮膚再生の補助


黄色期・黒色期に亜鉛華軟膏を使用してはいけない。これはガイドラインでも明確に示されている点です。津山中央病院の褥瘡治療資料にも「感染創、壊死組織が多い、炎症が強い時期には使わない」と明記されています。


なぜ問題になるかというと、亜鉛華軟膏の油脂性基剤は創面を被覆してしまうため、感染を起こしている創部では細菌の増殖を助長し、治癒を著しく遅延させる可能性があるためです。感染が疑われる創には、ヨード系(カデックス軟膏・ユーパスタコーワ軟膏)など抗菌作用のある外用薬を選ぶのが正解です。


意外ですね。油脂性基剤の「保護する」という性質が、感染創では逆に「細菌を保護する」方向に働いてしまいます。


DESIGN-R®2020のスコアで「I(感染・炎症)」が大文字のままであれば、まずその感染制御を優先し、Iが「i(小文字)」に下がってから上皮化・創縮小を目的とした亜鉛華軟膏の使用を検討するという流れが基本です。スコアで病期を客観評価し、外用薬の切り替えタイミングを見極めることが、現場の看護師・医療従事者に求められる実践的なスキルといえます。


参考:褥瘡外用薬の作用別分類と各病期への使用根拠が詳しく記載されています。


アルメディアWEB|外用薬が褥瘡に効くメカニズムを知って効果的に使用する


亜鉛華軟膏の褥瘡への正しい塗布方法と除去のコツ

亜鉛華軟膏の塗布量・方法は、使用している現場でもばらつきが見られます。標準的な塗布量は「約3mm厚」です。ちょうど厚紙1枚分程度の厚みをイメージするとわかりやすいでしょう。


薄すぎると保護効果が不十分になり、厚すぎると逆に過乾燥を招きます。つまり塗布量が「薬効の質」に直結します。「とりあえずたっぷり」でも「薄く伸ばせばいい」でもなく、3mm程度という基準を部署内でスタッフ間が統一することが非常に重要です。塗布回数は基本的に1日1回以上で、滲出液の量が多い場合は1日2回が目安とされています。


次に除去方法についてです。亜鉛華軟膏は油脂性基剤のため、水では溶けません。毎回丁寧に拭い取ろうとして水やアルコールを使うと、軟膏が落ちないうえに皮膚を刺激して二次損傷を引き起こすリスクがあります。


落とすにはオイルが必要です。ベビーオイルやオリーブオイルなどの油分を含ませたコットンやガーゼで軟化させ、優しく拭き取ってから洗浄するのが正しい手順です。


亜鉛華軟膏を塗り重ねて放置すると、「石のように固まる」状態になることがあります。これを無理に剥がすと皮膚剥離(スキン-テア)の原因になります。完全に除去することにこだわらず、1日1回の陰部洗浄・全身清拭のタイミングで丁寧にオイルで軟化させて拭き取り、新しく塗布するというサイクルが現場では現実的です。


💡 チェックポイント:排便後のおむつ交換時など、頻繁に交換が必要な場面では、毎回全量除去する必要はありません。表面の汚染部分だけを拭い取り、減った分を「上塗り」する方法で、皮膚への機械的刺激を最小限に抑えることができます。


また、固定のためにガーゼを当てる場合は「非固着性ガーゼ」の使用が必須です。通常のガーゼは乾燥すると創面に固着し、交換時に組織を傷つけ、せっかく形成された肉芽を破壊してしまいます。この点は見落とされやすいため、特に注意が必要です。


参考:在宅での亜鉛華軟膏の固着問題と正しい除去法について解説されています。


ナース専科ナレッジ|困った!固まって落とせない亜鉛華軟膏


亜鉛華軟膏だけでは治らない?褥瘡と亜鉛欠乏・全身管理の関係

「亜鉛華軟膏を使っているのに褥瘡が治らない」という現場の悩みは、実は局所療法だけに目を向けているために起こっていることが少なくありません。


驚くべき事実があります。ある79歳の患者は約6年間にわたり病院・施設を行き来し、様々な局所療法を受けたにもかかわらず、難治性褥瘡が治らなかったのに対し、亜鉛含有製剤であるプロマック顆粒15%(ポラプレジンク)を1g/日投与するという「全身への亜鉛補充療法」を開始したところ、わずか約50日で褥瘡がほぼ治癒したという報告があります(日経メディカルAナーシング掲載事例)。


局所より全身のほうが決め手になることがあります。


亜鉛は体内で多数のタンパク質の構造・機能維持と酵素の活性調整因子として機能しており、創傷の炎症期・線維増殖期・皮膚再生期のすべてに関与します。亜鉛が欠乏すると、線維芽細胞の増殖が低下し、肉芽組織の形成が遅延するだけでなく、免疫機能の低下から感染リスクも高まります。つまり、局所でいくら良い軟膏を使っても、全身の亜鉛が不足していれば治癒は進みません。


褥瘡患者が1日に必要とする亜鉛量は15〜30mgとされていますが、寝たきりの高齢者・経管栄養患者・服薬が多い患者は特に亜鉛欠乏に陥りやすい状態にあります。食事の加工・調理過程で亜鉛は失われやすく、また亜鉛とキレートを形成する薬剤(キノロン系抗菌薬・フィチン酸含有食品など)の服用も亜鉛欠乏の原因となります。


日本褥瘡学会が在宅療養患者を対象に行った調査(207施設、褥瘡群290名・非褥瘡群456名)では、「低栄養」が褥瘡発生リスク因子の中で最も強く関与していたことが明らかになっています(Clin Nutr. 2010;29:47-53.)。


亜鉛の欠乏が疑われるケースでは、亜鉛強化のある経腸栄養剤や、亜鉛・アルギニン・ビタミンCを含む栄養補助食品の活用が選択肢となります。海外で行われたRCTでは、通常食に亜鉛・アルギニン・ビタミンCの栄養補助食品を追加した群が、他の群と比較して褥瘡の状態が有意に改善したという結果も出ています(Clin Nutr. 2005;24:979-97.)。


亜鉛は必須です。褥瘡が難治化している患者を担当する際は、血清亜鉛値の確認と栄養状態の評価を主治医・管理栄養士と連携して行うことが求められます。


参考:亜鉛欠乏と褥瘡治癒の関係を具体的な症例と研究データで解説しています。


カンゴルー|褥瘡治癒の決め手は「亜鉛」にあった


亜鉛華軟膏を使う際に見落とされがちな独自視点:浸軟と過乾燥のリスク管理

亜鉛華軟膏の「乾燥させる」という性質は、使いどころを誤ると治癒を阻害する「両刃の剣」になります。これは現場でも見落とされやすいポイントです。


日本皮膚科学会の「創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023)」には、酸化亜鉛軟膏について「薄く塗れば創面保護、厚く塗れば乾燥作用」と明記されています。「乾燥作用」というのは滲出液が多い浸軟した皮膚には有用ですが、すでに乾燥傾向のある創に使い続けると「過乾燥」を引き起こします。


過乾燥になると何が起きるか。創面の組織が乾燥・壊死化し、治癒速度が著しく低下します。また、かゆみが生じて患者が掻破し、感染のリスクが高まることもあります。


具体的なリスクが発生する状況として、次の3つが挙げられます。


  • 滲出液がほぼなくなったのに亜鉛華軟膏の使用を続けているケース:本来なら保湿性の高い薬剤(例:アズノール軟膏・ワセリン)や湿潤環境を維持するドレッシング材への切り替えを検討するタイミングです。
  • 褥瘡の上皮化が進みかさぶた状態になっているのに亜鉛華軟膏を継続しているケース:過乾燥と痂皮形成を促進してしまいます。
  • 仙骨部などの骨突出部に対して、排泄ケアのつもりで広範囲・過剰量に塗布しているケース:周囲の正常皮膚まで乾燥させ、スキン-テアのリスクが上がることがあります。


一方で、失禁関連皮膚炎(IAD)が合併している褥瘡周囲皮膚には、亜鉛華軟膏が非常に有効です。尿・便による過剰な湿潤(浸軟)状態には、亜鉛華軟膏の収れん・乾燥作用が適切に機能します。この場面では「皮膚が見えなくなるくらいたっぷり塗る」ことが推奨されており、バリア機能の回復を優先します。


つまり、「同じ亜鉛華軟膏でも、IADには厚塗り・乾燥した創面には薄塗りか切り替え」という使い分けが必要です。同じ薬でも塗り方と場面次第で効果が真逆になるのが亜鉛華軟膏の特徴です。


「今この創は乾燥しすぎていないか?」「滲出液の量に変化はないか?」という問いかけを毎回のケア時に持ちながら、薬剤の継続・変更を医師・薬剤師とともに動的に判断することが、質の高い褥瘡ケアにつながります。


参考:日本皮膚科学会による最新の創傷・褥瘡ガイドライン(2023年版)原文です。


日本皮膚科学会|創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン(2023)−1 創傷一般(第3版)






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