ステロイドを毎日塗っているのに、肌は逆に薄くなっています。
アトピー性皮膚炎の標準治療は、ステロイド外用剤・タクロリムス・抗ヒスタミン薬・スキンケア・悪化因子対策が中心です。漢方はその「次のステップ」として位置づけられています。
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021では、「ステロイドやタクロリムスなどの抗炎症外用薬や抗ヒスタミン薬内服、スキンケア、悪化因子対策を十分に行なった上で、効果が得られないアトピー性皮膚炎の患者に対して、漢方療法を併用することを考慮してもよい」と明記されています。 これはつまり、漢方はあくまで「補完的選択肢」として認められているということですね。
ただし重要なのは、「ステロイドが効かないから漢方に切り替える」という発想ではなく、「ステロイドを使いながら、体質を底上げするために漢方を加える」という併用の視点です。 これが原則です。
参考)アトピーと漢方薬
漢方の処方において、最も重要なのは「証(しょう)」の見立てです。証とは患者の体質・状態・症状パターンを総合的に判断する概念で、同じ「アトピー」でも証が違えば処方も大きく変わります。
アトピーにおける主な証の分類は以下のとおりです。
参考)アトピー性皮膚炎 – フロル漢方内科クリニック|…
| 証のタイプ | 主な症状・体質の特徴 | 代表的な漢方薬 |
|---|---|---|
| 🔥 熱証(ねつしょう) | 皮膚の赤み・ほてり・口渇・いらいら | 黄連解毒湯、白虎加人参湯 |
| 💧 血虚(けっきょ) | 乾燥・皮膚の栄養不足・冷え・不眠 | 当帰飲子、十全大補湯 |
| 🌫️ 湿証(しつしょう) | 浸出液・じゅくじゅくした湿疹・むくみ | 消風散、越婢加朮湯 |
| ⚡ 気虚(ききょ) | 疲れやすい・免疫力低下・胃腸が弱い | 補中益気湯、十全大補湯 |
| 🌀 気滞・ストレス | 精神的ストレスで悪化・イライラ | 抑肝散、加味逍遙散、柴胡桂枝湯 |
急性期と慢性期でも使う漢方薬は異なります。 急性期には白虎加人参湯・黄連解毒湯・越婢加朮附湯など「熱を冷ます」処方が有効で、効果が早く出るのが特徴です。慢性期・寛解期には当帰飲子や補中益気湯など「体質を補う」処方に移行します。これが基本です。
参考)漢方(アトピー性皮膚炎)
柴朴湯(さいぼくとう)はやや知られていない選択肢ですが、アトピー患者26例への8週間投与で有効率69.2%、2週間以内に75%に効果が見られたという報告もあります。 免疫調整とストレス対策を兼ねる処方として、難治性症例への応用が期待されます。これは使えそうです。
参考)寛解期の漢方薬
アトピー性皮膚炎の漢方治療において、「血虚(けっきょ)」は最も重要な概念の一つです。
参考)【アトピー性皮膚炎】に漢方という選択|症例紹介あり|一二三堂…
血虚とは、身体を栄養する「血(けつ)」が不足した状態を指します。血が不足すると、皮膚への栄養供給が滞り、乾燥・かゆみ・バリア機能の低下が引き起こされます。 さらに、疲労感・動悸・不眠・ドライアイなどの全身症状を伴うことも多く、皮膚だけでなく「全身の血の不足」として捉えるのが漢方的な視点です。
参考)【アトピー性皮膚炎】に漢方という選択|症例紹介あり|一二三堂…
血を補う生薬(補血薬)として代表的なのは、地黄(じおう)・当帰(とうき)・芍薬(しゃくやく)・阿膠(あきょう)・何首烏(かしゅう)などです。 これらを含む漢方薬が、体質改善の中心的な役割を担います。
参考)【アトピー性皮膚炎】に漢方という選択|症例紹介あり|一二三堂…
たとえば川口漢方薬局の症例では、1ヶ月半の服用でかゆみが半減し、5ヶ月継続で皮膚の乾燥感が消失、生理周期も正常化したという報告があります。 皮膚症状の改善と同時に、他の「血虚症状」も連動して回復していくのが特徴です。つまり漢方の体質改善は、皮膚だけに作用するのではないということですね。
参考)アトピー性皮膚炎 - 静岡市清水区で漢方薬のご相談なら川口漢…
薬日本堂:アトピー性皮膚炎・湿疹に対して漢方でできる体質改善とは(補血薬・体質別アプローチの解説あり)
ステロイドは即効性に優れ、アトピー治療の第一選択であることに疑いの余地はありません。厳しいところですね。しかし、長期連用によって生じるリスクを医療従事者として正しく把握しておくことは不可欠です。
ステロイド外用薬の長期連用で起こりうる皮膚の問題には、以下のものがあります。 shimoda-漢方薬によるアトピー治療についてとその改善写真(アトピー性皮…
アトピーの患者が「掻くとすぐに皮膚が傷つく」と訴えるケースの一部は、ステロイドによる皮膚脆弱化が関係しています。 ステロイドで炎症を抑えても、皮膚を丈夫に回復させる力が追いついていない状態です。
参考)漢方薬によるアトピー治療についてとその改善写真(アトピー性皮…
こういった症例に漢方を追加することで、皮膚そのものの回復力を補うアプローチが期待できます。 ステロイドを減量しながら、漢方で体質を底上げしていく「テーパリングのサポート」として活用するのが、東西両方のメリットを活かす方法です。
参考)アトピーと漢方薬
漢方緑川クリニック大阪:ステロイドと漢方の併用による体質改善アプローチ(臨床的考え方の解説)
漢方の体質改善に要する期間は、症例によって大きく異なります。これは患者説明で特に注意が必要な点です。
目安として、軽症例では2〜3ヶ月、中等症〜重症例では6ヶ月〜1年以上かかることが多いです。 実際に、10年以上続いたアトピーが漢方治療1年で寛解した40代男性の症例報告もあります。 また、4ヶ月で寛解した症例、10ヶ月で完治した症例なども報告されています。 治療期間には幅があるということです。
参考)アトピー性皮膚炎(10年以上)が漢方1年で寛解|症例 - 漢…
患者への説明では、以下のポイントを押さえると納得感が高まります。
漢方治療の途中経過で「症状の一時的な増悪(好転反応のような変化)」が起きることがあります。痛いですね。この時期に患者が治療を中断してしまうケースが多いため、事前に「変化が起きても経過を見ることが重要」と伝えておくことが継続率を高める上で重要です。
急性増悪期・寛解期のそれぞれで適切な漢方薬に切り替える視点を持ち、患者の状態を定期的に評価しながら処方を調整することが、漢方体質改善の成功につながります。
参考)寛解期の漢方薬
m3.com(薬剤師向け):中医学からみるアトピー性皮膚炎の考え方(血虚・陰虚・証の解説)
日本東洋医学会:漢方製剤の記載を含む診療ガイドライン(アトピーへの漢方療法のエビデンスと推奨度を確認できる公式PDF)