フィブラストスプレー250の何回分かと算定・保存の正しい知識

フィブラストスプレー250は1本何回分使えるか正確に把握していますか?噴霧回数の計算式から溶解後の保存期限、保険算定の注意点まで、医療従事者が現場で即使える情報をまとめました。あなたは正しく使えていますか?

フィブラストスプレー250の何回分かを正確に知ると算定ミスが防げる

1本が約1週間分」と思い込んだまま使うと、実は処置ごとに過少・過大請求が起きているかもしれません。


この記事の3ポイント
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フィブラストスプレー250は約8.3回分(5噴霧×8日)

250μg ÷ 1日量30μg = 8.33日分。単純に「1週間分」とは言い切れない計算値を正確に把握しておくことで、処方・算定のズレを防げます。

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溶解後は必ず冷蔵保存、使用期限は2週間以内

タンパク質製剤であるため常温放置や凍結で活性が低下します。溶解後の期限管理は薬剤の有効性に直結するため、現場での声かけが重要です。

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1本を複数患者に分割請求できる、ただし使用分のみ

外来処置などで1本を複数患者へ使用する場合、分割請求が認められています。1瓶丸ごとではなく、使用した分の薬剤料のみ請求するのが正しいルールです。


フィブラストスプレー250の噴霧回数を正確に計算する方法

フィブラストスプレー250には、凍結乾燥品にトラフェルミン(遺伝子組換え)250μgが含有されています。添付文書上の用法では、1日1回・1回5噴霧(30μg)が標準投与量です。


この数値をもとに計算すると次のようになります。


$$\text{使用可能日数} = \frac{250\mu g}{30\mu g/日} \approx 8.3日$$


つまり、約8回分というのが正確な答えです。「1週間分(7日分)」と覚えている方が多いですが、実際には7日より少し余裕があります。


噴霧数で考えると少し変わります。1プッシュあたりの薬量は約6μgなので、理論上の総噴霧可能回数は次のとおりです。


$$\text{総噴霧可能回数} = \frac{250\mu g}{6\mu g/噴霧} \approx 41噴霧$$


41噴霧が理論値です。


5噴霧を1セットとすれば、41噴霧 ÷ 5噴霧 = 約8.2セット分ということになります。計算上は8回分ですが、現実には噴霧器の残液・空噴霧ロスなどを考えると実質的に8日分として運用するのが安全です。


なお、フィブラストスプレー500と比較するとわかりやすいです。500μg製剤は同様の計算で約16回分(約16日)となり、単純に250の2倍です。500の方がコスト効率は高いですが、使いきれるかどうかを含めて選択する必要があります。

























製品 含有量 1日量 使用可能日数 薬価(参考)
フィブラストスプレー250 250μg 30μg(5噴霧) 約8日 約6,119円
フィブラストスプレー500 500μg 30μg(5噴霧) 約16日 約6,908円


コスト面で見ると、500μg製剤の方が1日あたりの薬価は割安です。しかし複数箇所への処置や複数患者への使用がない場合、2週間以内に使い切れるかの見通しを立ててから選ぶことが大切です。使い切れなければロスになり、かえってコスト増となります。


参考:1本あたり使用可能日数の計算根拠(科研製薬 製品Q&A)
https://medical-pro.kaken.co.jp/support/qa/fiblast/index.html


フィブラストスプレー250の溶解後に正しく保存しないと効果がゼロになる理由

フィブラストスプレーの有効成分であるトラフェルミンはタンパク質製剤です。これが非常に重要なポイントで、タンパク質は熱・凍結・時間経過によって容易に失活します。活性を失った薬剤を創面に噴霧しても、肉芽形成も血管新生も起きません。効果がゼロになります。


溶解後の保存ルールは次のとおりです。



  • 10℃以下の冷暗所(冷蔵庫)に保存すること

  • 溶解後2週間以内に使用すること

  • 凍結は避けること(凍結した場合は自然融解させ、穏やかに振り混ぜてから使用)

  • 熱湯など高温での溶解はタンパク変性を招くため厳禁


現場でよく見かける問題が、溶解後のスプレーをトレー上に出しっぱなしにしたまま処置を進めるケースです。室温環境への長時間暴露が続くと、安定性が著しく低下します。処置前に冷蔵庫から取り出したら、使用後は速やかに戻す習慣が必要です。


溶解前の安定性は、凍結乾燥品で冷所(15℃)保存ならば36か月(3年)の有効期間があります。一方、溶解後はわずか2週間という期限の短さです。この差は約780倍。開封(溶解)後の扱いがいかに重要かがわかります。


凍結した場合は使用不可ではありませんが、自然融解後に溶液が2層分離することがあります。その際は穏やかに振り混ぜてから使用すること、また熱湯による急速溶解は活性低下を招くため絶対に避けてください。これは意外と知られていない注意点です。


参考:フィブラストスプレーの安定性・保存方法(科研製薬 製品Q&A)
https://medical-pro.kaken.co.jp/support/qa/fiblast/index.html


フィブラストスプレー250の1本分割請求と保険算定の正しい知識

フィブラストスプレーは1本で数千円する高価な薬剤です。1本丸ごと使わなかった日も、1本分の薬剤費を請求していませんか?


実は、1本を複数の患者に分けて使用した場合、使用した分の薬剤料のみ請求するのが正しいルールです。2025年4月薬価をもとにした計算は以下の通りです。


$$\text{フィブラストスプレー250の1回分(5噴霧:0.3mL)の薬剤料} = 73点$$


$$\text{計算式:}6{,}118.70円 \times \frac{0.3mL}{2.5mL} = 734.24円 \Rightarrow 73点(1点未満切り上げ)$$


1本(2.5mL)丸ごとで算定してしまうと過大請求になります。分割使用の場合は必ず使用分のみ請求してください。これを知らずに1本丸ごと請求すると査定・返戻の対象となります。


算定は厳格です。支払基金の統一事例(令和6年6月28日)によれば、トラフェルミンの1日使用量は原則として1,000μgまでとされており、月使用量の上限も「1日量×月の日数」の範囲内とされています。保険審査上の基準が明示されているため、これを超えた場合は返戻リスクが高まります。


また、保険算定の取り扱いは都道府県ごとに判断が異なる場合があります。詳細は各地域の審査機関に確認することを推奨します。


なお、フィブラストスプレー500μgの1回分の算定は41点(6,907.70円 × 0.3mL ÷ 5mL = 414.46円)となっており、250μg製剤より低い点数です。これは1本に含まれる総量が多い分、1回あたりの比率が下がるためです。正確な請求のためには製剤ごとの計算が必要です。


参考:支払基金 統一事例「皮膚潰瘍に対するトラフェルミンの算定について」令和6年6月28日
https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/sinsa_jirei/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/touyaku_1.files/touyaku_49.pdf


フィブラストスプレー250の何回分を最大限活かす正しい噴霧タイミングと使い方

せっかく計算通りに噴霧回数を管理しても、使い方を誤ると治癒効果が大幅に減少します。現場でよく見られる間違いが「処置の最後に、ガーゼの上からシュッと噴霧する」というものです。


これは効果がほぼゼロです。


フィブラストスプレーに含まれるbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)は、創面の線維芽細胞・血管内皮細胞・表皮細胞のFGF受容体に直接結合してはじめて作用します。ガーゼや軟膏の上からでは、薬剤が細胞に届きません。正しい使い方の順番は以下のとおりです。



  1. 患部および周辺を洗浄・清拭する

  2. 必要に応じてデブリードマンを実施する

  3. 創面から約5cm離してフィブラストスプレーを直接噴霧(5噴霧)

  4. 30秒程度静置する(FGF受容体への吸着に必要)

  5. 軟膏などの外用剤を使用する場合は30秒静置後に重ねる

  6. 非固着性ガーゼ・フィルム材・ドレッシング材で被覆する


「30秒静置」が必須です。


科研製薬の情報によれば、bFGFは30秒程度でFGF受容体に吸着するため、30秒が経過した後であれば被覆材を重ねても問題ありません。逆に言えば、30秒を待たずに他の外用剤を重ねてしまうと、吸着が不十分になるリスクがあります。


噴霧距離も重要で、約5cm離すことで直径約6cmの円形状に噴霧されるよう設計されています。距離を変えると噴霧面積が変わるため、指定の5cmを守ることが必要です。


また、消毒後に使用する場合は、生理食塩水などで洗浄し余分な消毒薬を除去してから噴霧してください。消毒薬が残存した状態で噴霧すると、bFGFの活性が阻害される可能性があります。これも見落とされがちな注意点です。


参考:フィブラストスプレー噴霧方法(科研製薬 医療関係者向け情報)
https://medical-pro.kaken.co.jp/product/fiblast/support/usage/howto1.html


フィブラストスプレー250の何回分を無駄にしないための「使い始めるべき創の状態」の見極め

高価なフィブラストスプレー250を処方しても、使い始めるタイミングが早すぎると全く効果が出ない、という状況が発生します。これは回数・量の問題ではなく、創の状態の問題です。


フィブラストスプレーが有効に作用できるのは「創面に良性肉芽が見え始めてから上皮化の完了まで」の期間です。逆に使い始めてはいけない状態は次のとおりです。



  • 🚫 黒色・黄色の壊死組織が広く残っている段階

  • 🚫 感染創(濃い膿・悪臭・周囲の発赤・熱感を伴う状態)

  • 🚫 デブリードマンが未実施で壊死組織が除去されていない段階


感染が先にある場合は、まず感染コントロールが優先です。感染創に対してフィブラストスプレーを使用しても、炎症性サイトカインがbFGFの作用を阻害し、肉芽は育ちません。まず抗菌治療でコントロールし、良性肉芽が見え始めてから使用を開始します。


これは「汚れた畑に高価な肥料を撒く」ようなもので、薬剤のポテンシャルを完全に無駄にしてしまいます。


また、約4週間投与しても改善傾向が認められない場合は、外科的療法を考慮する必要があります。これが効果判定の目安として設けられている期間です。漫然と投与を続けることは保険算定上も問題が生じるため、治癒の経過評価を定期的に記録することが重要です。


深い褥瘡(ポケット・トンネル創)の場合、薬剤が創の入口付近にとどまってしまい、底部に届かないケースがあります。この状況では、フィブラストスプレーの効果が出にくくなります。陰圧閉鎖療法(NPWT)との併用により創底部への治癒促進が期待できるため、難治性の褥瘡では積極的な併用を検討する価値があります。





























創の状態 フィブラストスプレーの使用可否 優先すべき処置
良性肉芽が見え始めている ✅ 使用開始のタイミング 噴霧開始・被覆材管理
壊死組織が残存している ❌ 使用不可 デブリードマン
感染徴候あり(膿・悪臭) ❌ 使用不可 抗菌治療・感染コントロール
4週間使用しても改善なし ⚠️ 継続要検討 外科的療法の検討


使うべきタイミングを見極めることが、フィブラストスプレー250の1本(約8回分)を無駄なく最大限に活かす第一条件です。投与開始のタイミングを適切に判断することが、治癒の速さと薬剤コストの両方に直結します。


参考:フィブラストスプレーの投与タイミングについて(科研製薬)
https://medical-pro.kaken.co.jp/support/documents/FGF348.pdf