毎日洗っているそのスクラブ、実は肌荒れを悪化させているかもしれません。
「ヘンプの服って大麻から作るんでしょ?」と不安に感じる人は少なくありません。結論から言うと、ヘンプ素材の服は合法です。理由は、精神作用成分THC(テトラヒドロカンナビノール)の含有量がほぼゼロに等しい産業用品種を使っているからです。違法とされる大麻のTHC含有量が10〜20%程度なのに対し、ヘンプ繊維のTHCはおよそ0.3%以下。衣類用の繊維部分にはほとんど含まれません。つまり「違法薬物」とは別物です。
日本の家庭用品品質表示法では、衣類に「麻」と表示できるのはリネン(亜麻)とラミー(苧麻)の2種類だけと決まっています。ヘンプは植物学的には麻の仲間であっても、法律上は別の表示区分になります。だから洋服のタグに「麻」ではなく「ヘンプ」と書かれているわけです。これは知っておくと服の素材表示を読む際に役立ちます。
| 素材名 | 原料植物 | 素材表示 | 強度 |
|---|---|---|---|
| リネン | 亜麻(アマ科) | 麻 | 中 |
| ラミー | 苧麻(イラクサ科) | 麻 | 中〜高 |
| ヘンプ | 大麻(アサ科) | ヘンプ | 高(綿の約8倍) |
リネンもヘンプも「麻系」としてひとくくりにされがちですが、性質は異なります。リネンの方が柔らかく光沢感があり、ヘンプの方が繊維がやや硬くて強度が高いです。「丈夫さを取るならヘンプ、柔らかさを取るならリネン」が基本です。医療の現場では繰り返しの洗濯に耐える耐久性が求められるので、ヘンプの特性はとくに注目に値します。
参考:ヘンプ素材の服の特徴・メリット・デメリットを詳しく解説しているページです。
ヘンプ素材の服って?特徴からメリット・デメリットまでまるわかり|CBD JAPAN
「天然素材だから衛生面が心配」と思っているなら、その認識は変わるかもしれません。繊維製品の抗菌性の評価基準となるJIS L 1902(ISO 20743)では、抗菌活性値3.0以上が「強い抗菌効果あり」とされていますが、天然のヘンプ繊維はこの3.0以上を自然の状態でクリアするとされています。これは加工・薬剤処理なしで達成できる数値という点で、他の天然素材とは一線を画します。
つまり、薬剤不使用で抗菌効果があるということですね。
ヘンプの抗菌性は、汗由来の臭いのもとになる「アンモニア」「酢酸」「イソ吉草酸」にも対応しています。長時間勤務の多い医療現場では、においの蓄積は看護師・医師ともに気になるポイントです。抗菌・消臭機能は「清潔感」という患者への印象にも直結するため、実用的なメリットとして考えられます。
ポリエステル主体のスクラブを長期使用すると、繊維の奥に菌が入り込んで洗濯しても臭いが取れなくなる「バイオフィルム」の問題が指摘されています。天然素材であるヘンプにはこのリスクが低い点も、衛生環境に敏感な医療従事者には見逃せない情報です。これは使えそうです。
参考:ヘンプ繊維の抗菌性・機能性について専門店目線で解説しているページです。
「UVカット服ってUVカット加工が必要では?」と思うかもしれません。ヘンプは繊維自体が天然でUVを遮断する性質を持っており、紫外線防止率(UPF)は90〜95%以上とされています。シルク素材のUVカット率よりも高く、同じ麻系のリネン・ラミーとは比較にならないほどの数値です。繊維が紫外線に強いのはそのまま「屋外でも劣化しにくい」ことを意味します。
耐久性についても数字が明確です。ヘンプの引っ張り強度は、綿(コットン)の約8倍と言われています。たとえばA4用紙を8枚重ねたものをこぶしで叩いた時の違いをイメージすると、素材の強さの差がわかりやすいかもしれません。医療スタッフは毎日ユニフォームを洗濯し、しゃがんだり腕を伸ばしたりと動作も多いため、素材の強度は制服寿命に直接響きます。
また、ヘンプの吸水性は綿の約3倍です。すなわち汗をより速く吸収し、速乾性も高いということ。長時間立ちっぱなしの手術室や、夏場の外来対応でも快適さを維持しやすくなります。「夏は涼しく冬は暖かい」という特性は、繊維の断面がストロー状の中空構造になっており、空気の層が断熱材のような働きをすることで生まれます。これが矛盾しているように聞こえて実際に機能する仕組みです。
| 特性 | ヘンプ | コットン(綿) |
|---|---|---|
| 引っ張り強度 | 綿の約8倍 | 基準値 |
| 吸水性 | 綿の約3倍 | 基準値 |
| UVカット率 | 天然で95%以上 | 加工必要 |
| 抗菌活性値 | 3.0以上(天然) | 加工が必要なことが多い |
sukuiというブランドでは、次世代ヘンプ素材を使った医療従事者向けスクラブを開発しています。一般的なスクラブのLサイズが235g程度なのに対し、sukuiのスクラブは190gと約19%の軽量化を実現しており、2026年にはiF DESIGN AWARD 2026を受賞しています。重量の差はわずかに見えますが、12時間以上着続ける現場では体への負担として積み重なります。
参考:医療従事者向けヘンプスクラブ「sukui」の機能詳細ページです。
FEATURES|sukui(医療従事者向け次世代ヘンプスクラブ)
「ヘンプ100%が一番いいのでは?」と考えがちですが、実際には混紡比率が重要です。ヘンプを多くしすぎると繊維の硬さでゴワゴワ感が出やすく、色落ちも起きやすくなります。各ブランドが「ヘンプに何を混ぜるか」「どの割合にするか」を工夫しているのは、着心地と機能性のバランスを保つためです。
服のタグやブランドの商品ページには「ヘンプ55%・オーガニックコットン45%」のような混率が記載されていることがあります。「サラッとした着心地を重視するならヘンプ多め、柔らかさを重視するならコットン多め」が選び方の目安です。これだけ覚えておけばOKです。
また、日本のブランドの中では「GOHEMP(ゴーヘンプ)」が20年以上の実績を持つヘンプウェアの専門ブランドとして知られています。無印良品やパタゴニアもヘンプ商品を展開しており、国内での入手ハードルは年々下がっています。医療ウェアに特化したものを探すなら、前述のsukuiのように医療現場の機能要件を設計に組み込んだブランドを確認するのが近道です。
参考:ヘンプ素材の特性とリネン・コットンとの違いをまとめたサステナブルブランドの解説記事です。
サステナブル素材の新定番「ヘンプとは?」リネン素材や麻素材との違い|Shift C
「麻系だから洗うのが難しそう」というのは多くの人の先入観ですが、基本さえ押さえれば自宅で問題なく洗えます。洗濯で失敗しやすい原因は、完全に乾いた後にシワが「定着」してしまうことです。乾ききってからアイロンをかけようとしても、繊維が固まっているのでシワが取れにくくなります。この点に注意すれば大丈夫です。
医療ユニフォームは毎日洗濯するケースが多いため、素材の傷みが蓄積しやすい環境にあります。ヘンプは洗濯を重ねるほど繊維が柔らかくなる特性を持つため、「使うほどに育つ」感覚で長期使用できる点が大きなメリットです。初期のゴワゴワ感が気になっても、3〜5回の洗濯後にはなじんでくることが多いので、すぐに手放さないことが重要です。
保管時は折りたたまずにハンガーにかけて保管するか、折り回数を最小限にすることでシワがつきにくくなります。使用・洗濯・保管の3つの場面で意識するポイントを守れば、ヘンプの服は他の天然素材より長持ちする素材です。
参考:ヘンプの服の洗濯手順とシワ対策を店員目線で丁寧に解説したページです。
【ヘンプの服】ヘンプ服のお洗濯方法。アパレル店員の実際の洗濯|レイブ前橋
「環境のためと言われても、現場の実用性が優先」と思う医療従事者の方も多いでしょう。ただ、ヘンプが注目される理由には、環境面と個人の健康面が重なる部分があります。サステナブルな選択が、自分自身の快適さにもつながるという点は知っておく価値があります。
ヘンプの栽培では農薬・化学肥料の使用量が非常に少なく済みます。対照的に、コットン(綿)の栽培は世界の農薬使用量の約16%を占めるとされており、農業従事者の健康被害や土壌汚染が問題視されています。医療の現場で働く人が「素材の製造過程での健康リスク」に無頓着でいることには矛盾があるかもしれません。
また、ヘンプは1ヘクタールあたり年間9〜15トンのCO₂を吸収するとされており、一部のデータではヘクタールあたり13.7トンという計測値も出ています。ファッション産業は世界の温室効果ガス排出量の約8〜10%を占めるとも言われています。医療ウェアも衣類である以上、素材選びは間接的に環境負荷と関わっています。
ヘンプ素材を使ったsukuiのスクラブでは、製品にブロックチェーン型DPP(デジタルプロダクトパスポート)を搭載し、CO₂吸収量をスクラブで12.50kg、パンツで17.58kgと計測・公開しています。いいことですね。透明性の高いサステナブル医療ウェアとして、医療業界からも注目を集めています。
「着るだけで環境にも自分の体にも優しい選択ができる」というのがヘンプ素材の服の本質です。衣類として長持ちすることは廃棄量を減らすことにもなり、繰り返し着用するほど肌になじんでいくことは着用者の快適性にも寄与します。医療従事者がユニフォームを選ぶとき、機能性だけでなくこうした視点も加えることで、より納得感のある一着に出会えるはずです。
参考:ヘンプが究極のサステナブル素材と呼ばれる理由と栽培特性をForbes JAPANが詳しく解説しています。

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