褥瘡発生予防の看護計画で押さえるべき評価と実践

褥瘡発生予防の看護計画は、アセスメントから介入まで体系的な視点が必要です。リスク評価ツールや具体的な看護介入の方法を知っていますか?

褥瘡発生予防の看護計画:アセスメントから介入まで

毎日体位変換を2時間おきに実施しても、褥瘡が発生した患者の約40%はその「2時間ルール」通りに動かされていた事例が報告されています。


この記事でわかること
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褥瘡リスクのアセスメント方法

ブレーデンスケールをはじめとする標準的な評価ツールの使い方と、スコアに応じた看護計画の立案ポイントを解説します。

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具体的な看護介入と根拠

体位変換・スキンケア・栄養管理など、エビデンスに基づいた介入方法とその根拠を具体的な数値とともに紹介します。

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看護計画の記録と評価の実際

OP・TP・EPの区分ごとの記載例や、計画の見直しタイミングについて、現場で使える形で整理します。


褥瘡発生予防のためのリスクアセスメントと評価ツールの使い方

褥瘡発生予防の看護計画を立案するうえで、最初にすべきことはリスクのある患者を正確に特定することです。感覚的な判断に頼るのではなく、標準化された評価ツールを用いることで、チーム全体が同じ基準で患者を評価できます。


日本で最も広く使われているのはブレーデンスケール(Braden Scale)です。このスケールは「知覚の認知」「湿潤」「活動性」「可動性」「栄養状態」「摩擦とずれ」の6項目をそれぞれ1〜4点(摩擦とずれは1〜3点)で評価し、合計スコアが18点以下でリスクありと判定します。スコアが低いほどリスクが高い点に注意が必要です。


ブレーデンスケールの感度は約80〜90%とされており、感度は高い反面、特異度がやや低く過剰介入につながることもあります。そのため、スコアだけでなく患者の全身状態・既往歴・使用薬剤も合わせて評価するのが原則です。


また、急性期病院ではOHスケール(OH Scale)も広く使用されます。OHスケールは「自力体位変換」「病的骨突出」「浮腫」「関節拘縮」の4項目で構成され、特に日本人高齢者の体型に合わせて開発された経緯があります。合計スコアが1点以下を低リスク、1〜3点を中リスク、3点超を高リスクとして分類します。


つまりアセスメントツールの選択は施設方針に合わせて統一することが条件です。


評価は入院時だけでなく、状態変化があったとき(術後・転倒・感染症発症など)にも再評価を行うことが重要です。週1回以上の定期評価を行っている施設では、褥瘡の院内発生率が最大30%低下したという報告もあります。これは使えそうです。




























ツール名 主な使用場面 項目数 リスク判定スコア
ブレーデンスケール 全般的な急性・慢性期 6項目 18点以下でリスクあり
OHスケール 急性期・日本人高齢者 4項目 1点超で中〜高リスク
ワーテルローモデル 欧州・特定高リスク群 8項目 10点以上でリスクあり


褥瘡発生予防に必要な体位変換・ポジショニングの看護介入

体位変換は褥瘡予防の基本中の基本です。しかし「2時間ごとに体位変換」というルールが形式的に実施されている現場では、かえって効果が出にくいケースがあります。


日本褥瘡学会のガイドラインでは、体位変換の間隔について「患者の個別リスクと使用するマットレスの種類によって調整する」と明記されています。高機能なエアマットレス(圧切替型)を使用している場合は、4時間ごとの体位変換でも同等の予防効果が得られるという研究結果があります。2時間ルールが絶対という思い込みは捨てるべきです。


ポジショニングでは、以下の点が特に重要です。



  • 🔹 <strong>30度側臥位:仙骨部・大転子部への圧力分散に有効。90度側臥位は大転子部への集中圧が高まるため、褥瘡リスクがある患者には原則避ける。

  • 🔹 頭部挙上は30度以下:ベッドの頭部挙上が30度を超えると仙骨部への「ずれ力」が増大する。食事・処置時のみ30度超とし、終了後は速やかに戻す。

  • 🔹 踵部の浮上:踵部は組織の厚みが薄く、褥瘡が発生しやすい部位のひとつ。クッションで下腿全体を支え、踵部を完全に浮かせる「ヒール浮上」が推奨される。

  • 🔹 ずれ力の管理:体位変換の際にシーツを引きずらず、スライディングシートを活用することで摩擦・ずれを軽減できる。


褥瘡予防に特化したポジショニングクッションとしては、モルテン社の「ピタ」シリーズや、タイカ社の「アルファプラ」などが現場で広く使用されています。使用前に患者の体型・体重・可動域を確認したうえで選択することが大切です。


30度側臥位が基本です。


また、手術後や処置後に長時間同一体位になりやすい時間帯(深夜〜早朝)は、特に体位変換の遵守率が下がるというデータがあります。夜間の体位変換を確実に行うために、電子カルテへの実施記録をタイムスタンプ付きで残すことが、現場でのアカウンタビリティ向上に役立ちます。


褥瘡発生予防における栄養管理と水分摂取の看護計画

褥瘡の発生・悪化には栄養状態が深く関与しています。皮膚の再生・維持には、タンパク質・亜鉛・ビタミンCなどの栄養素が欠かせません。これは見落とされがちな視点です。


血清アルブミン値が3.0g/dL未満の患者では、褥瘡の発生リスクが正常値の患者と比較して約2〜3倍に上昇するとされています。アルブミン値の低下は栄養不足だけでなく、炎症反応(急性期反応)でも起こるため、プレアルブミン(トランスサイレチン)や総リンパ球数も補完的に参照することが推奨されます。


栄養アセスメントにはMNA-SF(簡易栄養状態評価表)やMUST(栄養不良ユニバーサルスクリーニングツール)が使用されます。入院時のスクリーニングで「低栄養リスクあり」と判定された患者には、管理栄養士との連携を速やかに行い、個別の栄養補給計画を立てることが看護師の重要な役割です。


栄養管理の具体的な看護介入としては、以下が挙げられます。



  • 🥗 経口摂取が可能な場合:高タンパク・高カロリー補助食品(例:メイバランスMini、アルジネードウォーターなど)を活用し、目標エネルギー量(25〜35kcal/kg/日)・タンパク質量(1.2〜1.5g/kg/日)の充足を支援する。

  • 💧 水分摂取の管理:皮膚の乾燥・脆弱化は褥瘡リスクを高める。1日の水分摂取目標は30〜35mL/kgが一般的な目安。心不全・腎不全患者は制限がかかるため、主治医・栄養士と相談して個別に設定する。

  • 📊 体重・BMIの定期的なモニタリング:急激な体重減少(1週間で1〜2kg以上)は栄養状態悪化のサインであり、看護計画の見直しトリガーとして設定しておくと有用。


栄養状態と褥瘡の関係については、日本褥瘡学会が発行する「褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版)」に詳細なエビデンスが整理されています。


日本褥瘡学会|褥瘡予防・管理ガイドライン(第5版) — 栄養管理・スキンケアを含む最新の臨床推奨がまとめられており、看護計画立案の根拠として活用できます。


褥瘡発生予防のスキンケアと皮膚観察の看護計画記載例

スキンケアは褥瘡発生予防における看護介入の中で、最も日常的かつ継続性が求められる領域です。皮膚の清潔・保湿・保護の3要素を意識したケアが基本です。


まず「清潔ケア」については、過剰な清拭・洗浄は皮膚のバリア機能を損なう可能性があります。石鹸を使った強い摩擦は皮脂を過剰に除去し、経皮水分蒸散量(TEWL)を増加させます。弱酸性の洗浄剤を用い、やさしくなでるように洗うことが推奨されます。清潔を保つことは大切ですね。


「保湿ケア」では、ヘパリン類似物質含有クリームや尿素含有ローションなどが広く使用されます。保湿剤の塗布は入浴・清拭後5〜10分以内に行うと、角質層への浸透効果が高まります。1日2回の保湿を継続することで、皮膚の水分量が有意に改善されたという報告があります。


「保護ケア」については、失禁がある患者では便・尿の刺激が皮膚浸軟を引き起こし、褥瘡リスクを著しく高めます。この場合、撥水性スキンケア製品(皮膚保護クリーム・撥水スプレー)を活用し、失禁関連皮膚炎(IAD)の予防を同時に行うことが重要です。



  • 👁️ 皮膚観察のポイント:発赤・熱感・硬結・水疱の有無を確認。特に仙骨部・踵部・大転子部・肩甲骨部・後頭部は優先して観察する。

  • 🔴 ステージ判定の活用:NPUAP/EPUAP分類(ステージⅠ〜Ⅳ、深さ不明、DTI疑い)を用いて記録することで、経時的な変化が把握しやすくなる。

  • 📋 記録の一元化:皮膚観察の結果は、ボディチャートと合わせて電子カルテに記録し、チーム全体で共有する。


スキンケアに関する標準的な手順は、各施設のクリニカルパスや看護手順書にも盛り込むことが、ケアの均質化につながります。


皮膚観察は1日1回以上が基本です。


褥瘡発生予防の看護計画をOP・TP・EPで記載する実際の方法

看護計画を実際に記載する際は、OP(観察計画)・TP(ケア計画)・EP(教育計画)の3区分に整理することで、看護師間の情報共有が明確になります。


OPの記載例としては、「①体圧分散マットレスの機能確認(1日1回)」「②骨突出部・発赤部位の皮膚観察(毎日清潔ケア時)」「③栄養指標(アルブミン・体重・食事摂取量)のモニタリング(週1回)」「④体位変換実施状況の確認(各勤務帯)」などが挙げられます。観察項目は具体的な頻度を記載することが条件です。


TPの記載例としては、「①30度側臥位による体位変換(4時間ごと、エアマットレス使用時)」「②踵部浮上のためのポジショニングクッション使用(臥床時常時)」「③会陰部・仙骨部への保護クリーム塗布(失禁後・清拭後)」「④スライディングシートを使用した体位変換(摩擦・ずれの軽減)」などが基本的な内容です。


EPの記載例については、患者・家族への教育として、「①体位変換の重要性と患者自身が行える小さな体動(1〜2cmのずれ動き)の指導」「②栄養摂取の重要性について分かりやすく説明し、補助食品の紹介」「③皮膚の変化(発赤・硬結)に気づいたらナースコールするよう伝える」などを含めます。


この区分で整理すれば記録がシンプルになります。


看護計画は最低でも週1回の評価・見直しが推奨されます。特に以下のタイミングでは必ず計画を見直します。



  • 🔄 入院後72時間以内(初回アセスメント後の早期見直し)

  • 🔄 術後・侵襲的処置後(全身状態の変化に伴うリスク再評価)

  • 🔄 褥瘡が新たに発見されたとき(予防から治療へ移行するタイミング)

  • 🔄 退院・転棟・施設移送時(継続ケアの引き継ぎのため)


看護計画の記載・評価の仕方については、日本看護協会が発行する「看護記録に関する指針」も参考になります。


日本看護協会|看護記録に関する指針 — OP・TP・EPの記載基準や記録の倫理的側面について、現場での実践根拠として確認できます。


計画の形骸化を防ぐためには、「記録のための記録」にならないよう、実際の患者の反応や変化を反映した動的な計画として運用することが求められます。これが看護計画本来の意義です。


日本褥瘡学会|褥瘡予防・管理ガイドライン第5版PDF — 看護計画立案の際のエビデンスレベル別推奨一覧が掲載されており、根拠に基づいたケア計画の策定に役立ちます。