湿ったコットンスクラブを着続けると、黄色ブドウ球菌が数時間で10倍以上に増殖することがあります。
コットン(綿)は、アオイ科ワタ属の植物から採れる天然繊維です。医療現場で長時間着用されるスクラブや白衣の素材として、近年あらためて注目を集めています。
まずコットン最大の特性は、繊維の細かい構造による高い吸湿性と通気性です。繊維の中心部が空洞になっており、汗をよく吸い取りながら同時に体外へ水分を放出します。夏は涼しく、冬は繊維内の空気層が保温性を高めるため、オールシーズン快適に着用できます。これは化学繊維にはない大きな強みです。
次に、肌触りと静電気の少なさも重要です。コットン繊維の先端は丸みを帯びており、肌への刺激が非常に少ない構造になっています。敏感肌の医療従事者でも快適に着用でき、さらに吸湿性の高さがポリエステルに比べて静電気の発生を大幅に抑えます。医療機器が多い現場では静電気対策は見落とせないポイントです。
耐久性の高さも見逃せません。コットンはアルカリ性に強いため、市販の弱アルカリ性洗剤でそのまま洗え、繰り返しの洗濯にも耐えます。濡れた状態では乾燥時よりも繊維強度が10〜20%増す性質があり、洗濯で弱るどころか一定の強度を維持できます。
最後に、耐熱性です。コットンは石油由来のポリエステルと異なり、小さな火の粉や熱が触れても溶けて皮膚に張り付くリスクが低い素材です。電気メスやレーザー機器を扱う手術室周辺での着用に適しているとも言われます。つまりコットンは肌と安全の両面を守る素材です。
クラシコ|綿100%素材の医療スクラブ特集(コットンの特性と医療現場での活用について詳しく解説)
コットンにはメリットがある一方、医療現場での使用に際して見落とせないデメリットが存在します。特に感染管理の観点からは、無視できないリスクがあります。
最も重要な点が「乾きにくさ」です。コットンは吸湿性に優れているがゆえに、吸収した水分の蒸発が遅く、速乾性ではポリエステルに大きく劣ります。大阪教育大学の研究でも、綿100%の靴下は化学繊維の速乾機能つき靴下と比べて汗が残りやすく、菌も繁殖しやすいことが示されています。
湿ったコットン繊維上では、黄色ブドウ球菌や肺炎桿菌などの病原菌が増殖しやすい環境が生まれます。長野県工業技術総合センターの報告では、天然繊維に菌を接種すると生菌数が著しく増加することが確認されています。これはポリエステルなどの合成繊維とは対照的な性質です。医療現場では汗をかく場面が多く、コットンの濡れた状態が長時間続くと感染リスクが高まる可能性があります。
洗濯による縮みやシワも実務上の課題です。コットンは水を吸うと繊維が膨張し、乾燥時に元の長さに戻ろうとする力が働きます。着丈70cmのコットンシャツを高温乾燥させた場合、約67〜68cm程度まで縮むケースもあります。医療現場では毎日洗濯が基本のため、サイズ変化が積み重なって着用感が損なわれる場合があります。
また、染色されたコットン素材は色落ちしやすい性質があります。新型コロナウイルスやMRSA対策として推奨される次亜塩素酸ナトリウムによる消毒を行うと、コットン素材は急速に退色する可能性があります。感染対策と制服の維持管理を両立するには、素材選びの工夫が必要です。
東京ユニフォーム|スクラブ素材別の特徴と現場で求められる機能(制菌加工・SEKマークの詳細解説)
医療現場で使用されるスクラブの素材は大きく3種類に分類されます。綿100%・ポリエステル100%・ポリエステルと綿の混紡です。それぞれを正しく比較することが、快適で安全な服選びにつながります。
| 素材 | メリット | デメリット |
|------|---------|-----------|
| 綿100% | 肌触り◎・吸湿性◎・静電気少・耐熱性あり | 乾きにくい・縮みやすい・菌繁殖リスク |
| ポリエステル100% | 速乾◎・シワになりにくい・色落ち少 | 肌触りやや劣る・静電気あり・燃えやすい |
| 混紡(綿×ポリ) | 両方の長所を併せ持つ | バランスはポリエステル寄りが多い |
ポリエステル100%は、速乾性が高く、毎日のルーティン洗濯にも強い素材です。縮みや色落ちが少なく、ノーアイロンで使える製品が多い点も医療従事者には魅力的です。ただし通気性・吸湿性でコットンに劣り、特有のゴワつきや静電気が生じやすいというデメリットがあります。
混紡素材(例:綿47%・ポリエステル53%)は、コットンのしなやかな肌触りとポリエステルの速乾・耐久性を組み合わせた素材です。洗濯→乾燥→再着用のサイクルが効率的に回せるため、交替勤務の多い医療従事者に特に向いています。これは使えそうです。
なお最近では、MRSA・肺炎桿菌・黄色ブドウ球菌などを抑制する「制菌加工(SEK赤マーク)」を施したコットン混紡スクラブも登場しています。SEKマークはJTETC(一般社団法人 繊維評価技術協議会)が認証する品質基準で、医療現場向けには特定用途の「赤マーク」が最も信頼性が高いとされています。コットン素材を選ぶ際は、SEKマークの有無が条件です。
クラシコ|制菌加工・抗菌加工とは?SEKマークの種類と衛生的な白衣の選び方
コットン素材の服は、適切なケアを怠ると縮みや色落ち、雑菌の繁殖を招く可能性があります。医療従事者として毎日の洗濯習慣を整えることが、清潔な着用を維持するうえで非常に重要です。
洗濯の基本は「低温・弱水流・短時間脱水」です。コットンは40℃以上のお湯で洗うと繊維が収縮しやすくなります。30℃以下のぬるま湯か水を使い、洗濯機の手洗いコースや弱水流コースを選ぶのが原則です。洗濯ネットに入れることで摩擦による毛羽立ちや縮みを防げます。
乾燥方法も見逃せないポイントです。乾燥機の高温設定は縮みの大きな原因になります。自然乾燥の場合は、洗濯後すぐにタテヨコに引っ張って形を整え、直射日光を避けた風通しの良い場所で陰干しするのが理想的です。長時間干しすぎると繊維が劣化するため、乾いたらすぐに取り込む習慣をつけましょう。
感染対策として次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合は注意が必要です。通常のコットン素材は塩素系漂白剤に対する耐性が低く、繰り返し使用すると退色や生地の傷みが進みます。色落ち耐性を持つ「顔料練り込み型」の混紡スクラブを選ぶか、塩素消毒後は通常より早めに洗い流す工夫が有効です。
染色されたコットン素材は、初回洗濯の前にあらかじめ水洗いして余分な染料を落とすことを推奨します。これにより他の衣類への色移りを防ぐだけでなく、素材自体を柔らかく使いやすくする効果もあります。洗濯は単体で行い、直射日光を避けて陰干しするのが基本です。
万庄や|綿(コットン)素材の特徴・種類・お手入れ方法の完全解説
医療従事者は患者への感染予防として頻繁に手洗い・手指消毒を行いますが、衣服の素材が皮膚バリア機能に与える影響はあまり議論されていません。実はここに見落とされがちなリスクが潜んでいます。
ポリエステル素材は静電気を発生させやすく、塵や微粒子を衣服に引き付ける性質があります。一方、コットンは静電気が起きにくいため、浮遊する微粒子や汚染物質が付着しにくい環境を作ります。病棟内を頻繁に移動する医療従事者にとって、これは患者への交差汚染リスクの低減という観点でも重要です。
また、コットン素材は肌との摩擦が少なく、長時間着用しても皮膚の表面を傷めにくい性質があります。医療従事者の職業性皮膚炎(手荒れや肌トラブル)の原因として、衣服素材による物理的刺激が指摘されることがあります。特に汗と摩擦が重なりやすい脇や背中部分では、素材の柔軟性と肌触りの差が蓄積的なダメージとなり得ます。
コットンの保湿性という点も注目できます。皮膚の水分を適切に保持するコットンは、乾燥した病院環境での皮膚バリア維持に一定の効果があります。長時間のポリエステル着用による皮膚の乾燥感は、多くの医療従事者が経験する悩みのひとつです。これは知っておくと得する情報です。
素材の選択は単なる快適性の問題にとどまらず、日々のスキンコンディションや免疫機能の維持にも関わってきます。毎日12時間前後の勤務で着用するユニフォームだからこそ、コットン素材を基軸にしながら用途に応じて混紡素材を取り入れる戦略的な選択が、長期的な健康管理につながります。
イーユニフォーム|医療用スクラブ白衣・ナース服のおすすめ素材解説(機能加工の種類と選び方)

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