「ナチュラル」と書いてあるコスメの90%にアレルギー成分が入っていて、肌荒れが悪化することがあります。
「ナチュラルコスメ」と「オーガニックコスメ」は同じようなものだと思っていませんか。実はこの2つには明確な違いがあり、医療従事者がスキンケアを選ぶうえで非常に重要な区別です。
ナチュラルコスメとは、化学合成成分をできる限り使わず、植物エキスや天然ミネラルなどの自然由来成分を主体にした化粧品を指します。一方のオーガニックコスメは、その中でもさらに厳しい条件をクリアしたもので、有機農法(農薬・化学肥料不使用)で育てられた植物原料を使用している製品です。
つまり「すべてのオーガニックコスメはナチュラルコスメ」ですが、「すべてのナチュラルコスメがオーガニックコスメではない」ということ。この関係性が基本です。
重要なのは、日本には「ナチュラル」「オーガニック」「天然由来」「ボタニカル」「肌にやさしい」といった表示に関する法的規制が存在しないという事実です。つまり、どんな成分が入っていても、それらのキャッチフレーズを製品に使うことは自由にできてしまいます。消費者が表示だけを見て安心するのは危険といえます。
医療現場で働く方々は、感染対策のため1日に数十回の手洗い・アルコール消毒を繰り返しています。これによって手肌のバリア機能、つまり角質層にある細胞間脂質(主成分はセラミド)が失われ続けます。ダメージを受けた肌に「なんとなくナチュラルっぽい」製品を選ぶだけでは、かえって刺激を与えることがあります。成分を理解して選ぶ姿勢が、医療従事者には特に求められます。
| 種類 | 特徴 | 第三者認証 |
|---|---|---|
| ナチュラルコスメ | 天然・自然由来成分を主体。合成成分をなるべく使わない | なし(任意) |
| オーガニックコスメ | 有機栽培原料を使用。ナチュラルコスメの上位概念 | COSMOS・NATRUE など |
| 無添加コスメ | 特定の成分を配合しないことをうたう | なし(日本では基準なし) |
| ミネラルコスメ | 天然ミネラル由来の色素や成分を主に使用 | なし(任意) |
「天然だから安全」という考え方は、医学的に正確ではありません。これは医療従事者にとって特に重要な知識です。
2022年、スタンフォード大学医学部の皮膚科医3名が発表した研究では、アメリカの大手小売店3社で販売されている「ナチュラル」表示のスキンケア製品1,651種類を調査しました。その結果、約90%の製品に接触アレルギーの原因となりうる成分が含まれていたことが明らかになっています。これは意外ですね。
特に注意が必要なのは、植物精油(エッセンシャルオイル)の存在です。精油は1種類の中に100〜500以上の化学物質を含むことがあります。リナロール(ラベンダーなどに含まれる)やリモネン(柑橘系に含まれる)、ラノリンなどは代表的なアレルゲンです。天然精油のほうが合成香料よりもアレルギーを起こしやすいケースもあると、研究で示されています。
バリア機能が低下した医療従事者の肌では、健常な肌よりも成分の浸透が深くなります。そのため、通常であれば問題がないアレルゲン量でも反応を起こしてしまうリスクが高まります。接触皮膚炎を発症すると、数週間から数ヶ月にわたって症状が続くこともあり、業務に支障をきたすことも少なくありません。
さらに厄介なのは、一度アレルゲンに感作(免疫系が反応を覚えること)されると、同じ成分に触れるたびに反応が再発するという点です。医師が「接触皮膚炎は一度なると生涯反応し続ける可能性がある」と指摘するのはこのためです。
参考:ナチュラルコスメにアレルゲンが含まれるという調査について(スタンフォード大学の研究をもとにした解説)
ほとんどの「ナチュラルコスメ」にアレルギー成分が入っている事実 | CONCIO
「ナチュラル」「オーガニック」の表示に法的基準がない日本では、第三者認証マークが品質を見極める最も信頼できる指標になります。認証取得が条件です。
代表的な認証機関として世界的に知られているのがCOSMOS(コスモス)認証です。これはヨーロッパの主要オーガニック認証団体(ECOCERT・BDIH・Cosmebio・Soil Association・ICEAなど)が連携して2017年に統一した国際基準で、「COSMOSオーガニック」と「COSMOSナチュラル」の2段階があります。オーガニック認証では、製品に含まれるオーガニック成分が一定比率以上でなければならず、製造工程も環境負荷を最小限に抑えることが求められます。
もう一つ知っておきたいのがNATRUE(ナトゥルー)認証です。2008年にドイツを中心に設立されたこの機関は、ドイツブランドのDr.ハウシュカやマルティナなどが取得していることで知られています。厳格な基準を持ち、「ナチュラル」「ナチュラル+オーガニック」「オーガニック」の3段階に分類されています。
日本独自のものとして、JASオーガニック認証(農林水産省管轄)があります。ただし、これは食品・農産物が主な対象で、化粧品専用のものとは異なります。化粧品分野では上記の海外認証に頼るのが現状です。
認証マークをチェックする際は、パッケージの裏面や公式サイトを確認しましょう。認証番号が記載されている場合は、認証機関のウェブサイトで照合することも可能です。
| 認証名 | 設立・主要機関 | 主な認証ブランド例 |
|---|---|---|
| COSMOS オーガニック | ECOCERT他(欧州統一) | メルヴィータ、チャントアチャームなど |
| NATRUE | ドイツ・欧州主導 | Dr.ハウシュカ、マルティナなど |
| Soil Association | 英国オーガニック機関 | ニールズヤード レメディーズなど |
| BioGro | ニュージーランド | アンティポディース(ANTIPODES)など |
参考:COSMOS認証の基準と内容について詳しく解説されたページ
オーガニックコスメの世界統一基準・COSMOS(コスモス)認証 | amasia journal
医療従事者が実際に取り入れやすいナチュラルコスメブランドを、目的別に整理しておきましょう。これは使えそうです。
まず、スキンケア特化で肌を立て直したい方に向いているのが、ETVOS(エトヴォス)です。国産ブランドで、医学博士監修のもと開発されています。ミネラルコスメとしても有名で、クレンジング不要のファンデーションが敏感肌から高い支持を得ています。全製品が肌科学を根拠にした設計で、バリア機能の維持・回復を重視した成分構成になっています。
メイクしながらスキンケアもしたい方にはNaturaglacé(ナチュラグラッセ)が適しています。原料100%天然由来にこだわり、植物オイルと植物エキスベースのスキンケア成分にミネラルで色をつけた処方です。メイクをするほど肌が整っていくアプローチが特徴で、医療従事者のようにスキンケアの時間を取りにくい方にも向いています。
植物エキスの力を重視したい方には、chant a charm(チャントアチャーム)が選択肢として有力です。自社農場で育てた無農薬ハーブを配合しており、COSMOSオーガニック認証も取得しています。マスク着用が多い医療現場で気になる摩擦刺激に対して、低刺激処方の製品が揃っています。
海外ブランドから選ぶ場合には、1921年スイス創設のWELEDA(ヴェレダ)が信頼度の高い選択肢です。全製品がオーガニック認証(NATRUE)を取得しており、医薬品メーカー発祥という背景から皮膚科学への意識が高いです。特にボディオイルやハンドクリームは乾燥肌・手荒れに悩む医療従事者からも定評があります。
同じく海外からは、1981年英国発のNEAL'S YARD REMEDIES(ニールズヤード レメディーズ)も信頼できます。英国の厳格な認証機関・ソイルアソシエーション認定を多くの製品が取得しており、「本当に効くオーガニックコスメ」を目指した設計が評価されています。
ブランドのイメージや認証だけに頼るのではなく、全成分表(成分リスト)を自分で確認する習慣を持つことが、最も確実なアレルギー・トラブル回避策です。これが原則です。
日本の化粧品は、薬機法(旧薬事法)の規定により配合量の多い順に全成分を表示することが義務付けられています。つまり、成分リストの最初に近いほど、その成分が多く含まれているということです。
香料(フレグランス)の表示に注意が必要です。「香料」とだけ表示されている場合、その中に何種類の化合物が含まれるかは分かりません。前述のリナロールやリモネンが含まれていても、一括して「香料」と書かれることがあります。精油(エッセンシャルオイル)が配合されている場合は個別にラテン語名(例:ラベンダー油=Lavandula Angustifolia Oil)で表示されるので、これを参照しましょう。
全成分表を読む際の実践的なチェックポイントは次のとおりです。先頭5〜10成分は含有量が多いため特に重視します。「Fragrance」「Parfum」「香料」表記の確認をします。気になる成分は「CosmEtics Info Japan」(化粧品成分検索サービス)や「EWG スキンディープ(米国)」などで調べることができます。
特に接触皮膚炎を既往に持つ方や、アレルギー体質の方は、使用前に腕の内側などでパッチテスト(24〜48時間貼付)を行うことも有効です。ほんの少しの手間がトラブルを防ぎます。
また、複数のナチュラルコスメを同時に新規導入することは避けるのが賢明です。スタンフォード大学の研究によれば、1日に使用する化粧品が多いほどアレルゲンへの接触頻度が増加し、感作リスクが高まります。新製品を試すときは1アイテムずつ、1〜2週間の間隔を置いて導入することが安全です。
参考:化粧品アレルギーと全成分表の読み方について、皮膚科学の観点から解説
D19. 美容皮膚科学 化粧品の安全性 V1.0 | 再生医療ネットワーク
医療現場という特殊な環境では、一般的なスキンケアの「常識」がそのまま通用しないことがあります。知っておくと大きな差がつく視点です。
まず、ナチュラルコスメを「勤務中」と「勤務後」で使い分けることを提案します。勤務中はアルコール消毒との相性が問題になります。油分が多い植物オイル系ハンドクリームは、アルコール消毒を繰り返すことで成分が流れてしまい効果が持続しにくいです。一方、グリセリン・セラミド・ヒアルロン酸などの水溶性保湿成分を主体にしたナチュラルコスメの方が、消毒後の肌に浸透しやすく、バリア機能の補修に適しています。
勤務後のホームケアには、植物オイルやシアバター配合のナチュラルコスメブランドのリッチなトリートメントが効果的です。例えば、ヴェレダの「スキンフードオリジナル」(税込約2,000円程度)や、チャントアチャームの「ハンドアンドネイルクリーム」などは、保湿成分に加えて皮膚保護成分が豊富で、就寝前のナイトケアに向いています。
また、ナチュラルコスメブランドの中でも「処方の透明性(成分開示の徹底度)」に大きな差があります。医療従事者という立場から、製品の安全性に関するデータや臨床試験の有無、成分の詳細な情報を開示しているブランドを優先して選ぶことも賢い判断です。ETVOS・ナチュラグラッセのような国産ブランドは、日本語での成分情報が充実しているため確認しやすいというメリットがあります。
日常的に感染対策を行い、肌を消耗させ続けている医療従事者にとって、スキンケアは単なる「美容」ではなく「職業上のセルフケア」です。バリア機能を守ることは、皮膚を健康に保ち、外部からの感染リスクを低減することにもつながります。
参考:医療従事者の職業性手荒れ対策と、ナチュラル成分の使い分けについての実践的な解説
医療従事者・美容業界・飲食業界の方必見!職業性手荒れを防ぐ5つの対策 | NEWSCAST