登録を済ませた薬局でも、6ヶ月間発注しないだけで調剤資格が自動的に失われます。
ノルスパンテープ(一般名:ブプレノルフィン経皮吸収型製剤)は、変形性関節症および腰痛症に伴う慢性疼痛を適応とした向精神薬です。オピオイド鎮痛剤の一種であり、日本では慢性疼痛に対するオピオイド使用経験が少ないという背景から、他の一般的な鎮痛剤とは異なる厳格な流通管理体制のもとに置かれています。
この流通管理の法的根拠は添付文書に記載された「承認条件」です。具体的には「変形性関節症及び腰痛症に伴う慢性疼痛の診断、治療に精通した医師によってのみ処方・使用されるとともに、本剤のリスク等についても十分に管理・説明できる医師・医療機関・管理薬剤師のいる薬局のもとでのみ用いられる」と規定されています。つまり、すべての薬局で取り扱えるわけではありません。
管理薬剤師のいる登録薬局のみが条件です。この承認条件は規制当局が付与したものであり、製薬会社・医療機関・薬局のいずれも遵守義務を負います。施設登録を経ずに調剤してしまうと、適正使用推進の枠組みを逸脱することになります。
ノルスパンテープは向精神薬として「麻薬及び向精神薬取締法」の規制対象でもあり、管理薬剤師を有する保険薬局であることが取り扱いの前提条件です。一般的な処方箋医薬品と同じ感覚で応需しようとすると、発注しても納品されないという事態が発生します。処方箋を受け取ってから慌てないために、事前に登録手続きを済ませておくことが現場対応の基本です。
参考:ノルスパンテープ承認条件・流通管理体制の全文
ノルスパン®テープ適正使用推進WEBサイト|医療機関・薬局の登録に関する確認事項(薬剤師用)
薬局がノルスパンテープの施設登録を行うには、2通りの方法があります。これはどちらを選んでも有効で、状況に応じて使い分けることができます。
まず1つ目は、ノルスパンテープ適正使用推進WEBサイト(norspan.jp)の「調剤される施設の登録(黄色ボタン)」から申請する方法です。申請手順の詳細はサイト内の「申請までの詳しい手順」に記載されており、初回でも流れに沿って進めることができます。
2つ目は、ノルスパンテープ流通管理窓口(0120-086808)に電話して登録する方法です。受付時間は月曜〜金曜の9:00〜17:00です。WEBの操作に不慣れな場合や、急ぎで登録を進めたい場合は電話が確実です。
いずれの方法でも、登録には薬局名・住所・管理薬剤師の氏名などの施設情報の入力が必要です。登録が完了すると、特約店(卸)からの納品が可能になります。
以前は担当MRに用紙を持参してもらい書面で登録するという方法が主流でしたが、現在はWEB申請が整備されています。これは使えそうです。なお、施設登録で使用したメールアドレスとID・パスワードは、その後の登録管理・更新にも必要になるため、管理薬剤師変更の際には確実に引き継ぎを行ってください。
ここで重要な注意点があります。管理薬剤師が転勤や交代した場合、その薬剤師の登録情報は個人ではなく施設に紐づいているため、前の薬局での登録情報を転勤先に流用することはできません。施設ごとに新規登録が必要です。
参考:施設登録の方法に関する公式Q&A
ノルスパンテープについてのよくある質問(MundipharmaPRO公式PDF)
ノルスパンテープの施設登録には実質的な「有効期限」があります。具体的には、以下のいずれかに該当した場合、登録が自動的に取り消されます。
これは特に注意が必要なポイントです。患者の処方が途絶えた、あるいは担当患者が転院したなどの理由で半年間ノルスパンテープを発注しなかったとき、気づかないうちに登録が失効しているケースがあります。そして久しぶりに処方箋を受け付けたタイミングで、卸業者から「登録失効のため納品できません」と連絡が来て初めて発覚するというシナリオです。厳しいところですね。
抹消後に再度ノルスパンテープを取り扱うには、最初の登録と同じ手続きを改めて踏む必要があります。再登録が完了するまでは新規の発注・納品ができないため、処方箋を受け取った患者への対応が遅れることになります。
一方、登録が失効する前(最後の購入・登録から約5ヶ月時点)には、WEB登録時に登録したメールアドレス宛に「再登録依頼の案内」が自動送信されます。この通知を見落とさないように、登録したメールアドレスを定期的に確認することが大切です。
なお、在庫が残っている場合は登録抹消後でも調剤自体は可能です。ただし、新たに発注して補充するには再登録が必要になります。6ヶ月以内に次の発注を行えば登録は自動更新されるため、継続して取り扱いを維持する薬局では発注サイクルの管理が鍵になります。
| ステータス | 発注・納品 | 既存在庫の調剤 |
|---|---|---|
| 登録有効中 | ✅ 可能 | |
| 登録抹消後 | ❌ 再登録が必要 | ✅ 可能(在庫分のみ) |
施設登録が完了した薬局であっても、処方箋を受け取るたびに必ずやらなければならない作業があります。それが「処方元医師がe-learning受講済みであるかどうかの確認」です。これは省略できません。
確認方法は2種類あります。1つ目は、norspan.jpの「薬剤師の先生方(紫色ボタン)」から薬剤師のID・パスワードでログインし、WEBで検索する方法です。2つ目は、流通管理窓口(0120-086808)に電話して確認する方法です。WEBが使えない場合や素早く確認したい場面では電話が便利です。
確認が取れれば調剤を進めます。問題は確認が取れなかった場合です。
処方元医師のe-learning受講が確認できない場合は、ノルスパンテープの調剤を行わず、処方元医師に疑義照会を行うとともに、流通管理窓口に連絡しなければなりません。薬剤師法第21条に定める「調剤を拒否できる正当な理由」に該当するため、未受講医師からの処方箋に基づいて調剤してしまうと、適正使用推進体制を逸脱した行為となります。
「いつもの先生だから大丈夫だろう」という判断は禁物です。例えば、担当医師が休暇中で代診医師が処方した場合、前回と全く同じ処方内容であっても代診医師がe-learningを受講していなければ処方は無効です。e-learning受講は個人に紐づいており、施設単位ではありません。
つまり、毎回・処方ごとの確認が原則です。手間に感じることもありますが、この確認プロセスがノルスパンテープの安全な流通を担保しています。
参考:ノルスパンテープの調剤手順と登録医確認の詳細
登録医確認の必要な医薬品一覧|管理薬剤師.com
ノルスパンテープの実務では、施設登録と医師確認以外にも知っておくべき細かいルールがあります。ここでは現場でよく生じる疑問を整理します。
薬局間譲渡について
コンサータやリタリンとは異なり、ノルスパンテープの薬局間譲渡は可能です。ただし、以下の条件をすべて満たす必要があります。
薬局間譲渡の詳細は都道府県の薬務担当部署への事前確認が推奨されています。地域によって独自のルールが設けられている場合もあるため、一律に「できる」と判断しないことが重要です。
管理薬剤師が変更になった場合
これは盲点になりやすい点です。管理薬剤師が異動・退職した場合、登録は施設単位で管理されていますが、WEB登録のID・パスワードの引き継ぎが必要です。引き継ぎが不十分だと、後任の薬剤師がログインできず、処方医のe-learning確認がWEB上でできなくなるリスクがあります。確実な引き継ぎが条件です。
調剤フロー全体の流れ
ノルスパンテープの調剤フローを整理すると以下のようになります。
「確認が取れてからでないと調剤してはいけない」というこの順番が原則です。また、ノルスパンテープの処方は原則1回14日分(1枚/週)が上限であり、旅行などの特別な事情がある場合に限り最大30日分(28日分)まで可能とされています。
患者への服薬指導の場面でも、貼付部位は「前胸部・上背部・上腕外部・側胸部の4箇所に限られること」「MRI検査時は必ず剥がすこと(アルミニウム含有のため)」「貼付部位を温めると副作用リスクが高まること」の3点を確実に伝えることが管理薬剤師の役割です。
参考:ノルスパンテープの処方箋受付から調剤交付までの全手順
ノルスパンテープの処方箋を受け付けた時の対応は?|ファーマシスタ