親水軟膏と親水クリームの違いを正しく理解して使い分ける

「親水軟膏」と「親水クリーム」は同一品なのか、それとも別物なのか?名称だけで判断すると調剤ミスや症状悪化を招くリスクがあります。基剤の型・適応・混合の注意点まで徹底解説。知ってますか?

親水軟膏と親水クリームの違いを基剤から正しく理解して使い分ける

「親水クリームを湿潤型の患者に使うと、症状が悪化することがあります。」


この記事の3ポイント
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「親水軟膏」と「親水クリーム」は実質同一品

第16改正日本薬局方に伴う販売名変更で、成分・処方・効能効果に一切変更なし。ただし名称の混乱が現場に残っている。

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O/W型乳剤性基剤であることが最重要ポイント

「乾燥型」皮膚疾患に適応。吸水性があるため湿潤面には使えない。W/O型の吸水クリームと混同しないことが鍵。

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調剤・混合時には乳化崩壊のリスクあり

他の基剤との混合では乳化の安定性が変化するケースがある。配合変化の確認が安全な調剤の前提となる。


親水軟膏と親水クリームの名称変更の経緯と基本的な違い


現場で「親水軟膏」と「親水クリーム」という二つの名称に出会うとき、「成分が違うのか」「別の製剤なのか」と疑問を持つ医療従事者は少なくありません。結論から言えば、この二つは同一の製剤です。


2014年〜2015年にかけて、第16改正日本薬局方における日本名命名法の変更に伴い、各社が「親水軟膏」という販売名を「親水クリーム」に変更しました。日興製薬・丸石製薬をはじめ、ニプロ、吉田製薬、日本ジェネリックなど複数のメーカーが同様の名称変更を行っており、いずれも「成分・処方・効能効果・包装形態に変更はない」と明記しています。


つまり名前が変わっただけです。


ただし、この名称変更には一つ大切な意味があります。「軟膏」という字がついていても、製剤上の分類は「クリーム剤(乳剤性基剤)」であるという事実を、名称が正確に反映するようになったということです。もともと「軟膏」という名称は油脂性基剤の外用剤を指すケースが多いですが、親水軟膏・親水クリームはO/W型(水中油型)の乳剤性基剤であり、一般的な「軟膏」のイメージとは異なります。「○○軟膏」でもクリーム剤の場合がある、という事実はマルホ社も公式に注意喚起しています。


製品名で基剤を判断するのは危険です。


参考:剤形からみた基剤の分類と特徴(マルホ株式会社 皮膚外用剤の基礎知識)


親水クリームのO/W型基剤としての特性と成分構成

親水クリームは、O/W型(Oil in Water:水中油型)の乳剤性基剤です。外相(連続相)が「水」であり、その中に油の微粒子が分散している構造をとります。マヨネーズと同じ乳化の型といえばイメージしやすいでしょうか。


成分を見てみましょう。100g中に、白色ワセリン25g・ステアリルアルコール20g・プロピレングリコール12g・ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60が4g・モノステアリン酸グリセリン1g・パラオキシ安息香酸メチル0.1g・パラオキシ安息香酸プロピル0.1g・精製水(適量)が含有されています。白色ワセリンが25%含まれているにもかかわらず、クリーム状でさらっとしているのは、乳化剤と精製水が加えられているからです。


これが基本です。


O/W型の大きな特徴は「含有水分の蒸発による冷却効果」にあります。皮膚に塗布すると、外相の水分が蒸発し、気化熱が皮膚の熱を奪います。その結果として消炎・鎮痒効果が得られるため、かゆみや炎症を伴う乾燥型の皮膚疾患に適しています。日経メディカルの記事でも「夏季・高齢者の乾燥症状にはモッテコイ」と言及されており、特に暑い季節や高齢者の乾燥症状においてはO/W型基剤の使用感のよさが活かされます。


また、水で容易に洗い流せるため、包交時の疼痛を軽減したい場面でも使われることがあります。ターミナルケアの現場では腫瘍・皮膚潰瘍・出血のある患部に親水クリーム(親水軟膏)ベースの混合調剤を使うことがあり、洗い流しやすさが積極的なメリットになります。


さらっとした使用感もポイントです。


参考:基剤の種類と特徴(管理薬剤師.com)
https://kanri.nkdesk.com/hifuka/hosi1.php


親水クリームと吸水クリーム(W/O型)の混同に注意すべき理由

親水クリームと名称が似た基剤として「吸水クリーム(吸水軟膏)」があります。この二つは乳化型が根本的に異なります。混同すると処方設計の誤りに直結するため、違いを正確に把握しておく必要があります。


| 特性 | 親水クリーム(O/W型) | 吸水クリーム(W/O型) |
|---|---|---|
| 外相 | 水 | 油 |
| 水分含有量 | 多い(水相あり) | 少ない |
| 水での洗い流し | 容易 | 困難 |
| 使用感 | さらっと、べたつかない | やや油っぽい |
| 皮膚保護 | 弱め | 強め |
| 代表例 | 親水クリーム、ヒルドイドクリーム | ヒルドイドソフト軟膏、パスタロンソフト軟膏 |


O/W型は水が外側、W/O型は油が外側です。


W/O型(吸水クリーム・コールドクリーム型)は油が外相のため水で洗い流れず、皮膚保護効果が高い一方、やや油っぽさが残ります。冬場や重症の乾燥症例ではW/O型の方が保護作用として優れる場面もあります。逆に夏場や軽症例、顔面や広範囲に使う場合はO/W型の親水クリームのさらっとした使用感がアドヒアランスを高めます。


さらに重要な知識として、「親水ワセリン」は乳剤性基剤ではなくW/O型の水相を欠く油脂性基剤に近い分類です。「親水」という名が付いていても、親水クリームとは全く異なるものです。「親水」という言葉を共通の性状と誤解しないよう注意が必要です。これは意外ですね。


参考:薬剤師国家試験 第108回 問53 解説(e-REC)
https://e-rec123.jp/e-REC/contents/108/53.html


親水クリームを湿潤型皮膚疾患に使うと症状が悪化するメカニズム

親水クリームの添付文書には、次の重要な一文があります。「乾燥型の皮膚疾患に適用し、湿潤型のものでは皮膚分泌物との混和性及び皮膚浸透性が大きく、分泌物の再吸収により、ときに症状の悪化をきたすことがある」。


これが核心です。


O/W型基剤は外相が水であるため、皮膚の分泌物(滲出液など)と混和しやすく、浸透性が高い性質を持ちます。湿潤型の皮膚疾患に使用すると、分泌物が再吸収されて病態を悪化させるリスクがあるのです。


たとえば、ジュクジュクした湿疹や滲出液の多い皮膚炎の患者に親水クリームを塗ってしまうと、皮膚から出てくる分泌物と混ざり合い、患部がより刺激を受けるような状態になります。肉眼的には「塗れている」ように見えても、内側では病態が進んでいる可能性があります。


湿潤面には乳剤性基剤全般が適さない点も覚えておくべきです。O/W型・W/O型を問わず、乳剤性基剤は吸水性があるため湿潤面には用いません。湿潤面への適応では、マクロゴールに代表される水溶性基剤が選択の基本となります。


この原則が条件です。


| 皮膚の状態 | 推奨される基剤 |
|---|---|
| 乾燥型(ドライスキン) | 乳剤性基剤(O/W型やW/O型)、油脂性基剤 |
| 湿潤型(滲出液多め) | 水溶性基剤(マクロゴールなど) |
| 炎症・ びらん | 油脂性基剤(刺激が最小) |


皮膚の状態が処方設計の出発点です。


参考:親水クリーム「ニッコー」添付文書・インタビューフォーム(医薬情報QLifePro)
https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1&yjcode=7122704X1269


親水クリームの調剤・混合時に押さえたい転相と乳化安定性の問題

医療現場での調剤において、親水クリームは他剤の基剤として混合されることがあります。ここで見落とされがちな現象が「転相」と「乳化崩壊」です。


転相とは何でしょうか?


親水クリームはO/W型(水外相)の乳剤ですが、皮膚に塗布すると含有水分が蒸発していき、最終的にW/O型に転相します。この転相の過程で冷却効果や消炎効果が現れるのですが、調剤の過程で他の油脂性成分を過剰に加えると、乳化のバランスが崩れ、外観では分離が見えなくてもクリームの乳化状態が破壊されることがあります。


これは使えそうな知識です。


具体的な例として、ヒルドイドソフト軟膏(W/O型)に倍量のワセリンを加えると乳化剤が不足して分離する、という現象がよく知られています。同様の乳化崩壊リスクは親水クリームを基剤とした混合調剤でも起こりうるため、混合比率や相性の確認は欠かせません。日経DIの報告でも「混合調剤には基剤の乳化安定性や主剤の安定性、皮膚透過性などが変化するという思わぬ落とし穴がある」と指摘されています。


また、pHの変化による主薬の分解にも注意が必要です。尿素との混合ではpHが変化してステロイドの構造が変化し、効果が数分の一に低下するケースが知られています。親水クリームを基剤に用いた調剤においても、主薬のpH安定性は事前に確認することが原則です。


乳化型の判断には添付文書が必須です。


混合調剤の可否や安定性に関して疑問がある場合には、PMDAの医薬品情報提供ホームページでインタビューフォーム(IF)を確認するか、製薬企業のMSLやMRに問い合わせるのが最も確実な方法です。


参考:外用基剤の混合の可否について(日本病院薬剤師会 月刊薬事)
https://www.jpwa.or.jp/kinyaku/siryo/gekkan/gekkan201106.pdf






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