プロマック顆粒を「胃潰瘍にしか使えない」と思い込んでいると、味覚障害患者への処方機会を逃します。
プロマック顆粒15%は、ゼリア新薬工業株式会社が製造販売する「亜鉛含有胃潰瘍治療剤」で、一般名はポラプレジンクです。「Protect Stomach(胃を守る)」を由来とする名称のとおり、胃粘膜損傷部位に直接付着・浸透して創傷治癒を促進する作用機序を持ちます。平成6年10月に販売が開始された歴史ある薬剤であり、長年にわたって臨床現場で広く使用されてきました。
販売中止が段階的に進んだ最初の契機は、2015年2月の「2,800包包装」の販売中止です。これは需要変化や生産・流通コスト上の「諸般の事情」とされており、製剤そのものの問題ではなく、包装規格の整理という形で処理されました。在庫が無くなり次第の自然消滅的な終了であったため、当時は臨床への影響が限定的でした。
後発品(ジェネリック)については複数のメーカーが参入していたものの、順次販売を終了しています。陽進堂の「ポラプレジンク顆粒15%『YD』」は2022年9月に販売中止を案内し、経過措置終了時期は2024年3月末とされました。同様に、日本ジェネリックの「ポラプレジンク口腔内崩壊錠」も販売中止となり、代替品としてゼリア新薬の先発品であるプロマックD錠75が案内されています。
現在も流通が継続しているのは、日新製薬の「ポラプレジンク顆粒15%『NS』」が主な選択肢として残っており、2025年4月時点では「通常出荷」のステータスが確認されています。いずれにしても、製品ラインナップが大幅に縮小されている状況です。
平成30年(2018年)3月29日には、厚生労働省よりプロマック顆粒15%およびプロマックD錠75の再審査結果が通知されました。結果としては有効性・安全性に重大な問題はないと判断されたものの、「使用上の注意」の改訂が自主的に行われています。これは市販後調査で蓄積された副作用情報をもとにした内容であり、銅欠乏症などの重大な副作用が改めて注意喚起されました。
PMDA|プロマック顆粒15% 再審査報告書(平成29年11月15日)
※再審査の詳細、有効性・安全性評価の根拠となる調査内容が記載されています。
プロマック顆粒15%が入手困難になった場合、まず検討すべき代替品は同一有効成分(ポラプレジンク)を含む製剤です。薬価・剤形ともに複数の選択肢があります。
| 製品名 | 剤形 | 薬価 | メーカー |
|---|---|---|---|
| プロマック顆粒15%(先発) | 顆粒 | 30.00円/g | ゼリア新薬工業 |
| プロマックD錠75(先発) | 錠剤 | 15.6円/錠 | ゼリア新薬工業 |
| ポラプレジンク顆粒15%「NS」(後発) | 顆粒 | 29.70円/g | 日新製薬 |
| ポラプレジンクOD錠75mg「サワイ」(後発) | 口腔内崩壊錠 | 14.3円/錠 | 沢井製薬 |
| ポラプレジンクOD錠75mg「JG」(後発) | 口腔内崩壊錠 | 9.3円/錠 | 長生堂製薬 |
処方変更の際に特に注意が必要なのは、剤形の違いです。顆粒から錠剤への切り替えは多くの場合で問題ありません。ただし、嚥下困難な高齢者や嚥下障害のある患者には、OD錠(口腔内崩壊錠)の活用が適しています。顆粒剤に比べてOD錠は薬価が低く、患者負担の軽減にもつながります。これは使えそうです。
用量換算についても整理が必要です。プロマック顆粒15%の標準的な用法は「1回0.5g(ポラプレジンク75mg相当)、1日2回、朝食後と就寝前」です。プロマックD錠75(1錠75mg)との切り替えでは、1包→1錠の単純な置き換えとなります。薬局への情報提供もあわせて行うと調剤ミスのリスクを下げられます。
また、院外採用の変更時には薬局との連携が欠かせません。処方箋上での「一般名処方」の活用も、供給不足リスクへの対応策として有効です。ポラプレジンク顆粒の一般名処方マスタ(令和6年4月1日版)には同成分が記載されており、後発品への自動切り替えが可能になります。
DATA INDEX|プロマック顆粒15%の先発品・後発品一覧(薬価比較)
※同一成分のジェネリック品目と薬価を一覧で確認できます。
2016年11月22日、厚生労働省はポラプレジンク(プロマック顆粒15%ほか)について、「銅欠乏症」を添付文書の【重大な副作用】に追記するよう製薬メーカーへ指示しました。この改訂は、2013年度以降に銅欠乏症関連の副作用が9例集積され、その中に輸血を要するほどの重篤な汎血球減少・貧血が含まれていたことを受けたものです。
銅欠乏症が起きる仕組みは、亜鉛と銅の競合吸収です。成人の体内では亜鉛:銅のバランスが10:1程度に保たれている必要があります。プロマック顆粒は1包(0.5g)あたり亜鉛を16.9mg含み、通常1日2回服用するため、食事由来の亜鉛と合わせると亜鉛総量が増加します。亜鉛の過剰摂取は、腸管での銅の吸収を阻害するメカニズムで銅欠乏を引き起こします。
特にリスクが高い患者像としては、栄養状態不良の患者、長期臥床患者、低栄養を伴う高齢者が挙げられます。こういった患者では、もともと銅の摂取量が少ない状態でプロマックによって亜鉛・銅のバランスがさらに崩れやすくなります。厳しいところですね。
銅欠乏症の症状は見落とされやすい点が問題です。主な症状は貧血・白血球減少・神経症状などで、これらは他疾患や他薬剤の影響とも混同されやすいです。定期的な血液検査で血清銅値・血清亜鉛値を確認し、異常が認められた場合は速やかに投与中止と適切な処置が必要です。投与中止が遅れた症例も報告されているため、定期的なモニタリングの習慣化が重要です。
GemMed|銅欠乏症による汎血球減少・貧血の副作用—厚労省(2016年11月)
※厚労省による注意喚起の内容と対象医薬品の一覧が確認できます。
プロマック顆粒(ポラプレジンク)は、承認上の適応症が「胃潰瘍」のみです。しかし、味覚障害への適応外使用については、厚生労働省の通達(保医発0928第1号、平成23年9月28日付)により、保険審査上、使用が認められています。これは知っておくと処方の幅が広がる重要な情報です。
社会保険診療報酬支払基金の「審査情報提供事例(事例番号225)」には、「原則として、ポラプレジンク【内服薬】を『味覚障害』に対して処方した場合、当該使用事例を審査上認める」と明記されています。根拠は薬理学的な作用機序、すなわち亜鉛補給による味蕾細胞の再生促進効果であり、臨床的なエビデンスも蓄積されています。
ただし、注意点があります。亜鉛欠乏症そのものを病名として処方した場合は保険適応外となります。「味覚障害」の病名がある場合に限って保険審査上の適用が認められる、という点を混同しないよう確認が必要です。
また、2017年3月に承認された「ノベルジン(一般名:酢酸亜鉛)」は「低亜鉛血症」への正式な保険適応を持つ薬剤です。プロマックと異なり、亜鉛補充が主目的ならノベルジンを選択するほうが適切なケースもあります。状況に応じた使い分けが臨床上のポイントです。
口内炎への使用についても現場では行われることがありますが、こちらは味覚障害とは異なり保険審査上認められている根拠が異なるため、使用の際には注意が必要です。
社会保険診療報酬支払基金|審査情報提供事例225(ポラプレジンクの味覚障害への適応外使用)
※保険審査上の根拠と具体的な使用例が確認できます。
プロマック顆粒の段階的な販売中止は、単に「在庫が無くなった薬を切り替える」作業ではありません。現場に残る実務的なリスクを整理しておくことが、患者への影響を最小化する上で重要です。
まず意識すべきは、長期処方患者の見直しです。プロマックを胃潰瘍で長期に処方されている患者、特に低栄養リスクのある高齢者・在宅療養中の患者については、銅欠乏モニタリングの体制が整っているか確認する機会として活用できます。代替品への切り替えのタイミングで、処方内容全体の見直しも行うことが理想です。これが原則です。
次に注目したいのが、後発品メーカーの供給状況の変動リスクです。現在、ポラプレジンク顆粒として流通しているのは「NS」ブランドが主体ですが、後発品は製造上の問題や需要・供給バランスによって突然の供給停止が起こりやすい状況にあります。DSJP(医療用医薬品供給状況データベース)での定期的な確認が有効です。データベースには各製品の出荷状況がリアルタイムで掲載されているため、調剤薬局との共有情報として活用できます。
さらに見落とされがちな点として、プロマックと経腸栄養剤の併用患者への対応があります。長期の経腸栄養(エンシュア、ラコール等)を使用している患者は、亜鉛過剰になりやすい傾向があります。学術報告でも、エンシュアHとプロマックの長期併用により銅欠乏症を来した事例が報告されており(J-STAGE収載)、プロマック中止と定期モニタリングが推奨されています。銅欠乏に注意すれば問題ありません、とは言えない状況なのです。
代替品への切り替えが避けられない場面では、患者への説明も欠かせません。「同じ成分の薬に変わります、効果は変わりません」という一言が、患者の不安を解消し服薬継続率を維持する上で大きな意味を持ちます。意外ですね、と思うかもしれませんが、薬の見た目が変わることで飲み方を間違える患者も少なくないため、丁寧なアナウンスが最終的なアドヒアランス維持につながります。
厚生労働省|ポラプレジンクを含む重要な副作用等に関する情報(2016年)
※銅欠乏症の追加記載を含む「使用上の注意」改訂の公式通知です。医薬品安全管理の根拠として参照できます。