RASTクラス2以上でも、実際に症状が出るとは限りません。
参考)https://www.crc-group.co.jp/crc/q_and_a/59.html
RAST法(Radioallergosorbent Test)は、血液中に存在する抗原特異的IgE抗体を測定する検査法です。 もともとは放射性同位元素を標識に使う手法でしたが、現在は蛍光酵素免疫測定法(CAP-RAST)が主流となっています。 「RAST」という名称は習慣的に特異的IgE検査全般の総称として使われているのが実情です。
測定できるアレルゲンは200種類以上に及びます。 花粉・ハウスダスト・食品など、それぞれのアレルゲンに対するIgE抗体価を0〜6の7段階クラスで表示します。 クラス2以上(抗体価0.70 UA/mL以上)が陽性判定の基準です。nakaient+2
RIST法(非特異的IgE測定)とRAST法はよく混同されます。これは別の検査です。 RIST法はアレルギー体質全体の傾向を見るもの、RAST法は特定のアレルゲンを絞り込むためのものです。 役割が異なるため、スクリーニングとしてRIST→陽性であればRASTという流れが臨床上の基本となります。kurokojibika+1
クラスが高ければ必ず症状が出ると思われがちですが、実際は違います。 例えばスギ花粉に対するクラス2(抗体価0.70〜3.49 UA/mL)では、実際の花粉症シーズンの発症率は約13%にとどまるというデータがあります。 クラス4でも発症率は50%程度であり、クラスと症状は必ずしも比例しません。
逆にクラス0(陰性)でも症状が出るケースがあります。 特に食物アレルギーでは、特異IgE抗体が低値または0であっても、そのアレルゲンを摂取すると症状が出ることが少なくありません。 これを偽陰性といい、RAST結果だけでアレルギーを完全に否定できない理由の一つです。terada-family-clinic+1
クラス単独で判断するのは危険です。 臨床症状・病歴・皮膚テストの結果などを組み合わせた総合判断が原則です。 クラス4以上でも無症状の患者が存在することは、日常診療でも実際に経験する場面があります。connect.doctor-agent+1
| クラス | 抗体価(UA/mL) | スギ花粉症シーズン発症率 |
|---|---|---|
| 0(陰性) | 0.34以下 | 3%以下 |
| 1(疑陽性) | 0.35〜0.69 | 3% |
| 2(陽性) | 0.70〜3.49 | 13% |
| 3(陽性) | 3.50〜17.4 | 38% |
| 4(強陽性) | 17.5〜49.9 | 50% |
| 5(強陽性) | 50.0〜99.9 | 85% |
| 6(強陽性) | 100.0以上 | 100% |
偽陽性が問題になりやすいのは、大豆などの植物性食品です。 大豆アレルギー患者の血清IgEが、共通の糖鎖抗原を持つ複数の植物性たんぱく質と交差反応を起こし、本来は関係のない食品のRASTが陽性になるケースが報告されています。 これを糖鎖抗原による偽陽性といいます。
参考)http://www.mac.or.jp/mail/130201/01.shtml
RASTでの偽陽性は3〜4割にのぼるという指摘があります。 特に食物アレルギーでは経口負荷試験や直接スクラッチテストとの結果が食い違う場面が多く、RAST単独での陽性判定に基づいた不必要な食品除去指導につながるリスクがあります。 これは患者の食生活の質にも直結する問題です。
偽陰性については、小麦など一部アレルゲンで特に問題になります。 RAST検査では必ずしもすべてのアレルゲンコンポーネントが網羅的に測定されているわけではなく、特定の小麦コンポーネントに感作されていても陰性に出ることがあります。 臨床症状が明確な場合は、陰性結果に過信しないことが基本です。
保険適用でのRAST検査には項目数の上限があります。 特異的IgE(RAST)は1回の検査で13項目まで算定可能であり、それを超えた分は査定される可能性があります。 医療機関で実際に査定を受けた事例も報告されています。shirobon+1
RIST(非特異的IgE)が正常値だった状態でRASTを同日算定すると、過剰検査として査定される場合があります。 「アレルギー体質の確認なしに特定アレルゲン検査を実施した」とみなされるためです。 RIST高値→RAST追加という流れが望ましいとされています。
参考)非特異的IgE(RIST)と特異的IgE(RAST)の算定に…
算定ルールを誤ると、患者負担増や返還請求につながります。 これは医療機関として避けたいリスクです。 保険請求の流れは定期的に確認しておくことをおすすめします。参考として、診療報酬の詳細は厚生労働省の告示で確認できます。
厚生労働省:診療報酬の算定方法(検査料の点数と算定上限ルール)
食物アレルギーの診断において、RAST法だけでは確定診断に至りません。 検査には皮膚試験・血液検査(RAST法)・食物経口負荷試験の3種類があり、それぞれに役割があります。 経口負荷試験が食物アレルギーの確定診断におけるゴールドスタンダードです。
RAST陽性+症状の対応とRASTの役割は変わります。 特に小麦・大豆・果物系のアレルゲンでは、コンポーネント特異的IgE検査(ImmunoCAP ISAC)の活用も検討の余地があります。 こうした精密検査を組み合わせることで、誤った除去指導や過剰診断を防ぐことができます。
皮膚テスト(プリックテスト)はRASTよりも感度が高い一方、特異性はRAST法が優ります。 両者の特性を踏まえた上で、患者の年齢・症状・既往歴に応じて使い分けることが重要です。 皮膚テストの手引きについては日本アレルギー学会が公開しているガイドラインが参考になります。kango-roo+1
日本アレルギー学会:皮膚テストの手引き(RAST法との使い分けや感度・特異性の比較が記載)