顔の多汗症にエクロックゲルを処方すると、保険適用外になり患者が全額負担になります。
原発性局所多汗症は、特定の基礎疾患がないにもかかわらず、特定部位から過剰な発汗が生じる疾患です。日本皮膚科学会が公表した疫学データによれば、原発性腋窩多汗症の有病率は日本人の約5.75%(約20人に1人)、原発性手掌多汗症については約5.3%(約493万人)とされており、決して珍しい疾患ではありません。
かつては「体質」として片付けられることも多く、適切な治療が受けられない患者が多数存在しました。実態として重要なのです。2020年のエクロックゲル保険収載を皮切りに、2022年のラピフォートワイプ、2023年のアポハイドローション承認と、保険適用の外用薬が急速に整備されてきた経緯があります。
日本皮膚科学会は「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」を策定しており、患者が困っているなら積極的に治療することを推奨しています。医療従事者がこの流れを正確に把握し、患者への適切な案内ができるかどうかが問われる時代になっています。
重症度評価には「HDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale)」という4段階スケールが用いられます。このスコアが保険算定の可否に直結する場面もあるため、臨床での評価は欠かせません。
| HDSSスコア | 状態 |
|---|---|
| 1 | 発汗は気にならず、日常生活に支障なし |
| 2 | 発汗が我慢できる程度で、たまに支障あり |
| 3 | 発汗がほぼ我慢できず、頻繁に支障をきたす |
| 4 | 発汗が我慢できず、常に日常生活に支障あり |
ガイドラインの改訂により、多汗症診療は一般内科や家庭医でも対応しやすい環境が整ってきました。これはいいことですね。ただし、保険算定の要件は薬剤・治療法ごとに細かく異なるため、正確な知識の更新が求められます。
参考:日本皮膚科学会「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」
https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/takansho2023_231220.pdf
保険適用の多汗症外用薬で最も見落とされやすいのが、「部位に対する適応の制限」です。エクロックゲル5%(ソフピロニウム臭化物)とラピフォートワイプ2.5%(グリコピロニウムトシル酸塩水和物)はともに、承認適応が「原発性腋窩多汗症」に限られています。
つまり、手のひら・足の裏・顔・頭部の多汗症にこれらを処方した場合、保険が認められない適応外使用となり、患者に全額自己負担を求めることになります。これが冒頭で触れた注意点の実態です。
手掌多汗症については、2023年6月に保険収載されたアポハイドローション20%(オキシブチニン塩酸塩)が日本初の保険適用外用薬として登場しました。久光製薬が発売したこの薬は、就寝前に手のひらへ塗布するタイプで、3割負担の患者で1本(約2週間分)あたり800〜1,000円程度の薬剤費となります。
一方、顔面・頭部多汗症については、現時点で保険適用となる外用薬がありません。つまり、部位別の対応薬を正確に把握していないと、患者への誤った説明や不適切な処方につながるリスクがあります。
足底多汗症にはイオントフォレーシス(微弱電流を流す治療)が保険適用される場合がありますが、施設によって実施状況が異なります。患者が「足汗もひどい」と訴えた際の対応として、事前に連携先や院内の対応可否を確認しておくことが実務上の安全策です。
参考:渋谷スクランブル皮膚科「汗の悩み(多汗症)」
https://shibuyaderm.com/dermatology/p4/
エクロックゲルとラピフォートワイプは、どちらも原発性腋窩多汗症に対する抗コリン外用薬として保険適用を受けており、2023年ガイドラインでも第一選択薬として位置付けられています。作用機序はどちらも汗腺を刺激するアセチルコリンの働きをブロックする点で共通しており、薬効の大きな差はありません。
使用感と剤型の違いが両薬の最大の相違点です。エクロックゲル5%はゲル状で専用アプリケーターを用いて腋窩に塗布するタイプ、ラピフォートワイプ2.5%は個包装の使い捨てシートで腋窩を拭くタイプです。患者のライフスタイルに合わせて選択できます。
費用面では、3割負担でエクロックゲルが1本(1週間程度)で600〜700円、ラピフォートワイプ(30枚入り、約1ヶ月分)で1,500〜2,000円程度が目安です。どちらも月額の薬剤費負担は比較的少なく、継続しやすい治療選択肢といえます。
臨床試験のデータによると、ラピフォートワイプは2週目の時点で発汗重量が50%以上改善した患者の割合が92.9%に達しており、即効性が高い点が特徴です。エクロックゲルも2週間程度で多くの患者が効果を実感しはじめると報告されています。
副作用については両薬ともに塗布部位の紅斑・かゆみ・湿疹が報告されており、局所的なかぶれが問題になることがあります。皮膚トラブルが出た場合はもう一方の薬剤への変更を検討するか、保湿ケアの指導と合わせて対応する形が実務上のスタンダードです。問題ないなら問題ありません。
どちらを第一選択とするかは患者の好みと生活スタイル次第です。「塗る」か「拭く」かの違いを患者に説明し、本人が使い続けやすい方を選んでもらうのが最もよい継続率につながります。
参考:巣鴨千石皮ふ科「エクロックゲル5%」
https://sugamo-sengoku-hifu.jp/medicines/ecclock_gel.html
原発性腋窩多汗症に対するボツリヌス毒素注射(ボトックス注射)は、2012年11月から保険適用となっています。診療報酬上はG017「腋窩多汗症注射(片側につき)」として200点が設定されており、両脇で400点を算定できます。同一側に2か所以上注射した場合でも片側1回のみの算定となる点は押さえておくべきです。
保険算定の要件は複数あり、すべてを満たす必要があります。これが条件です。
保険3割負担での費用は、両脇で1回あたり薬剤費・施術料含め約2〜3万円程度が目安です。効果の持続期間は個人差があるものの、一般的に4〜9か月とされており、年に2〜3回の再投与が必要になるケースが多いです。
重要なのは「手汗・足汗・顔汗へのボトックス注射は保険適用外」という点です。これを患者が誤解しているケースは少なくありません。自費で行う場合、手のひらへのボトックスは片側5〜10万円、頭部・顔面では3〜8万円程度と高額になります。事前の丁寧な説明が必要ですね。
レセプト請求の際はコメント記載要件も確認が必要です。HDSSスコアや前治療の記録が算定根拠として求められる場面があり、診療録に明記しておくことが安全な請求につながります。
参考:今日の臨床サポート「G017 腋窩多汗症注射」
https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_6_1_1/g017.html
内服薬として唯一、多汗症に対して保険適用を持つのが臭化プロパンテリン(商品名:プロ・バンサイン)です。抗コリン薬に分類され、神経伝達物質アセチルコリンの働きを全身で抑制することで汗の分泌を減らします。腋窩・手掌・足底・頭部・顔面など、部位を問わず全身の発汗に適応できる点が外用薬との大きな違いです。
薬価は1錠あたり9.2円程度と非常に安価で、1日4回服用・30日分の薬剤費は3割負担でおよそ330円程度という計算になります。コスト面では際立ってリーズナブルな治療選択肢です。
ただし、禁忌となる疾患が複数あり、処方前の確認が欠かせません。具体的には閉塞隅角緑内障・前立腺肥大による排尿障害・重篤な心疾患・麻痺性イレウスの4つが禁忌に該当します。高齢患者では特に閉塞隅角緑内障や前立腺肥大の合併が多いため、問診票や既往歴の確認は必須です。
副作用として口渇・便秘・目のかすみ・排尿困難・眠気などが比較的高頻度で生じます。服用中の自動車運転や機械操作は禁止が原則です。また、高温環境にある患者では発汗抑制により体温上昇のリスクがあるため、夏季の使用には特段の注意が必要です。
プロバンサインに加え、オキシブチニン(ポラキス)やコハク酸ソリフェナシン(ベシケア)も多汗症に対して使用されることがありますが、多汗症への保険適用はなく自費扱いとなります。日本皮膚科学会の皮膚科Q&Aでも「唯一保険適応があるのは臭化プロパンテリン(プロバンサイン)」と明記されています。この点は患者説明でも正確に伝える必要があります。
処方の際は部位を問わず全身の多汗症に対応できるメリットと、禁忌・副作用のデメリットを天秤にかけて判断することが基本です。禁忌の確認が条件です。
参考:日本皮膚科学会「皮膚科Q&A 多汗症に効く内服薬はありますか」
https://qa.dermatol.or.jp/qa32/q13.html
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