疑い病名だけでレセプトを出すと、特異的IgE検査が全額減点されることがあります。
特異的IgE半定量・定量検査(D015「13」)は、特定のアレルゲンに対するIgE抗体量を個別に測定する検査です。 IgEはⅠ型(即時型)アレルギーに関与する免疫グロブリンであり、この検査はアレルゲンの同定を目的に行われます。 非特異的IgEが「アレルギーがあるかどうか」を調べるスクリーニングであるのに対し、特異的IgEは「何のアレルゲンに反応しているか」を特定するための検査です。 ssk.or(https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/sinsa_jirei/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/kensa_1.files/kensa_172.pdf)
レセプト上では、検査1項目あたり110点が算定されます。 1回の採血で複数のアレルゲンを調べても、算定できるのは最大13項目・合計1,430点が上限です。 これが基本ルールです。 note(https://note.com/clinic_dx/n/nd73d7f56564d)
さらに別途、免疫学的検査判断料144点が算定できる点も押さえておく必要があります。 ただし後述するように、小児科外来診療料を算定しているケースでは、この検査を別途算定することができません。 note(https://note.com/clinic_dx/n/nd73d7f56564d)
診療現場では「アレルゲンを幅広く調べたい」という判断から39種類パネル検査を行うこともありますが、どれだけ多くの種類を測定しても、請求できる診療報酬は13項目分・1,430点が最大となります。 つまり多く測るほど病院側の費用負担が増える構造です。これは意外ですね。 note(https://note.com/clinic_dx/n/nd73d7f56564d)
特異的IgE検査のレセプト算定で最も重要なのが「病名の種類」です。 算定が認められる主な確定病名は以下のとおりです。 wakayamahifuka(https://wakayamahifuka.com/contents/hokenshinryo/kensa.html)
これらはすべてⅠ型(即時型)アレルギーに関与する疾患です。 確定診断のついた病名がレセプトに記載されていることが条件となります。 確定病名が原則です。 ssk.or(https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/sinsa_jirei/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/kensa_1.files/kensa_185.pdf)
食物アレルギーについては例外的な扱いがあり、「疑い」病名であっても算定が認められるケースがあります。 令和6年10月31日付の支払基金・国保統一事例において、「食物アレルギーの疑いに対するD015『13』特異的IgE半定量・定量の算定は、原則として認められる」と明示されました。 これは他の疾患の「疑い」とは扱いが異なる点です。 ssk.or(https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/sinsa_jirei/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/kensa_1.files/kensa_115.pdf)
病歴のみでは食物アレルギーの診断を確定できないため、アレルゲン確定のプロセスにおいて特異的IgE検査が有用と判断されたためです。 食物アレルギーの疑いは例外です。 ssk.or(https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/sinsa_jirei/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/kensa_1.files/kensa_115.pdf)
算定が「原則として認められない」と明示されている病名も存在します。 医療事務・医師ともに注意が必要な点です。 ssk.or(https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/sinsa_jirei/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/kensa_1.files/kensa_172.pdf)
令和7年2月28日付の支払基金取扱事例では、以下の病名に対する算定は原則として認められないと判断されています。 ssk.or(https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/sinsa_jirei/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/kensa_1.files/kensa_172.pdf)
アレルギー性接触皮膚炎はⅣ型(遅延型)アレルギーに分類される疾患であり、IgEが関与するⅠ型アレルギーとは機序が異なります。 そのため「アレルギー」という名称が含まれていても、特異的IgE検査の算定根拠が成立しません。 これが大きな落とし穴です。 koazarashi(https://koazarashi.com/2019/07/09/post-5683/)
アレルギー性皮膚炎という病名で請求して査定が返ってきた事例が実際に報告されており、「必要とした傷病名をお知らせ願います」という審査結果が届いたケースもあります。 類似した病名の混同は実損につながります。 shirobon(http://shirobon.net/qabbs_detail.php?bbs_id=31089)
「アレルギー性鼻炎の疑い」で請求した場合、返戻事項として「病名からみて特異的IgE半定量・定量の算定について」と記載されて返戻されるケースがあります。 疑い病名での算定は危険です。 hhk(https://www.hhk.jp/member/shinsa-taisakubu/2015/0305-120611.php)
さらに、疑い病名で非特異的IgEと特異的IgEを連月で併算定している場合、特異的IgEのみ査定されることもあります。 連月算定には注意が必要です。 koazarashi(https://koazarashi.com/2019/07/09/post-5683/)
非特異的IgEと特異的IgEを同一日に算定することについては、正確なルールを把握していないと損をします。
令和6年(2024年)の支払基金・国保統一事例では、以下の確定病名においては同一日の併算定が「原則として認められる」と明示されました。 ssk.or(https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/sinsa_jirei/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/kensa_1.files/kensa_185.pdf)
| 病名 | 同日併算定 |
|---|---|
| アトピー性皮膚炎(確定) | ✅ 認められる |
| 気管支喘息(確定) | ✅ 認められる |
| アレルギー性鼻炎(確定) | ✅ 認められる |
| 食物アレルギー(確定) | ✅ 認められる |
| 疑い病名 | ❌ 原則認められない |
Ⅰ型アレルギー疾患では確定診断後に、病勢の確認(非特異的IgE)とアレルゲン同定(特異的IgE)を同時に進める医学的必要性があるため、両検査の同日算定が認められています。 目的が違う検査です。 ssk.or(https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/sinsa_jirei/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/kensa_1.files/kensa_185.pdf)
非特異的IgEはアトピー性皮膚炎・湿疹・蕁麻疹でも算定できます。 ただし特異的IgEはこれとは別のルールで算定可否が決まるため、病名によっては非特異的IgEのみ算定可で特異的IgEは不可というケースも生じます。 病名ごとに確認が条件です。 wakayamahifuka(https://wakayamahifuka.com/contents/hokenshinryo/kensa.html)
また、非特異的IgEの算定回数は「3か月に1回が妥当」という基準が示されており、アレルギー反応の経過観察での連月算定は査定対象になりうることも把握しておく必要があります。 回数にも上限があります。 shimane-naika.sakura.ne(https://shimane-naika.sakura.ne.jp/activity/2019/act02/20191120.pdf)
参考:しまね国保連通信「診療報酬請求上の留意点」非特異的IgE算定回数の考え方について
https://shimane-naika.sakura.ne.jp/activity/2019/act02/20191120.pdf
小児科外来診療料を算定しているクリニックには、特に注意が必要なルールがあります。 知らないと赤字になります。 note(https://note.com/clinic_dx/n/nd73d7f56564d)
小児科外来診療料は、初診(院内処方なし)で604点・再診で410点が算定される包括報酬です。 この包括点数の中に多くの検査・処置が含まれているため、特異的IgE抗体検査を別途算定することができません。 note(https://note.com/clinic_dx/n/nd73d7f56564d)
仮に特異的IgE抗体を13項目測定した場合、本来であれば1,430点+免疫学的検査判断料144点の計1,574点が算定できますが、小児科外来診療料算定時はこれが全額算定不可となります。 1,574点は約15,740円相当の診療報酬です。検査コストは病院側が負担することになるため、完全に赤字となる構造になっています。 痛いですね。 note(https://note.com/clinic_dx/n/nd73d7f56564d)
この問題を防ぐには、検査実施前に「当月・当日の算定方式」を確認するフローを院内で設けることが有効です。電子カルテの算定チェック機能や、医療事務向けのレセプト点検システムを活用することで、算定漏れや過剰算定の両方を防ぐことができます。
参考:note「アレルギー診療と診療報酬」小児科外来診療料と特異的IgE算定の関係について詳しく解説
https://note.com/clinic_dx/n/nd73d7f56564d
参考:支払基金「特異的IgE半定量・定量(アレルギー性気管支炎等)の算定について」令和7年2月28日取扱事例(PDF)
https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/sinsa_jirei/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/kensa_1.files/kensa_172.pdf
参考:支払基金「非特異的IgEと特異的IgEの同一日併算定について」(PDF)アトピー性皮膚炎等4疾患での同日算定可否
https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/sinsa_jirei/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/kensa_1.files/kensa_185.pdf