維持療法に切り替えるタイミングを1週間でも早めると、寛解率が約10ポイント下がる可能性があります。
トレムフィア(一般名:グセルクマブ)は、もともと乾癬の治療薬として2018年に発売されましたが、2025年3月27日に中等症から重症の潰瘍性大腸炎への適応が追加承認されました 。同年5月には点滴静注200mg製剤と皮下注200mgシリンジ・ペンが発売開始となっています 。 kyodonewsprwire(https://kyodonewsprwire.jp/release/202505209140)
この薬剤の最大の特徴は、「dual-acting(二重作用)」という点です。IL-23のp19サブユニットへの結合に加え、炎症性単球の細胞表面に発現するCD64にも結合し、膜近傍でIL-23を捕捉するという、唯一承認された完全ヒト型IL-23p19モノクローナル抗体です 。つまり二段階でIL-23を抑え込む仕組みです。 kyodonewsprwire(https://kyodonewsprwire.jp/release/202505209121)
IL-23は腸管の炎症を引き起こすTh17細胞の活性化に深く関わっており、この経路を効果的に遮断することで潰瘍性大腸炎の粘膜炎症が改善されると考えられています 。他のIL-23阻害薬と比べてもCD64への結合作用が加わる点は独自性があり、今後の臨床的意義の解明が期待されています。 tremfya(https://www.tremfya.jp/pts/uc/about_tremfya/index.html)
正確に理解するが基本です。
標準的な導入療法では、グセルクマブとして200mgを「初回・4週後・8週後」の計3回、点滴静注で投与します 。点滴時間は30分以上かけて行うよう添付文書に規定されており、急速投与は禁止されています。スケジュールを1回でも飛ばすと再評価が必要になります。 jnj(https://www.jnj.com/innovativemedicine/japan/press-release/20250327-3)
| 投与法 | 用量 | タイミング | 投与方法 |
|---|---|---|---|
| 点滴静注(標準) | 200mg | 初回・4週後・8週後 | 30分以上かけて点滴 |
| 皮下注(新承認) | 400mg | 初回・4週後・8週後 | 皮下投与 |
どちらの導入法を選択するかは患者の状態・通院環境・血管アクセスの状況を考慮して決定します。現時点では点滴静注製剤を用いた導入が主流ですが、2026年2月の承認以降、皮下注導入の選択肢が現場で広がりつつあります 。 iyakutsushinsha(https://iyakutsushinsha.com/2026/02/21/%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%A0%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%80%80%E4%B8%AD%E7%AD%89%E7%97%87%EF%BD%9E%E9%87%8D%E7%97%87%E6%BD%B0%E7%98%8D%E6%80%A7%E5%A4%A7%E8%85%B8%E7%82%8E%E5%AF%9B%E8%A7%A3%E5%B0%8E/)
導入療法の効果判定は12週目が一つの目安です。12週時点で効果不十分な場合は、継続の是非を判断する必要があります。投与間隔のずれは有効性に影響するため、計画的なスケジュール管理が欠かせません。
導入療法終了後の「8週後」が、維持療法開始の標準タイミングです 。具体的には、8週目(3回目の点滴静注)から数えてさらに8週後、すなわち投与開始から16週目に皮下注100mgの初回投与を行います。 tremfya(https://www.tremfya.jp/pdf/TRM-0279_UC_2509.pdf)
維持療法には2つの選択肢があります。
4週間隔・200mgへの変更は、「患者の状態に応じて」という条件付きです。具体的には、8週間隔での効果が不十分な場合や、症状のコントロールが安定しないケースが対象となります 。つまり最初から全員に強化維持を選ぶ必要はありません。 jnj(https://www.jnj.com/innovativemedicine/japan/press-release/20250327-3)
切り替えタイミングのミスが現場では起きやすいです。「導入終了=8週目」と勘違いして16週目でなく12週目に切り替えてしまうケースや、逆に切り替えが20週まで遅れるケースも報告されています。電子カルテへの投与計画の事前登録と、チーム全体での確認が有効です。
また、QUASAR試験では2年間にわたり臨床的寛解・内視鏡的寛解・症状寛解の持続が確認されています 。維持療法を途中で中断すると再燃のリスクが高まるため、患者への継続服薬の説明も重要な役割です。 kyodonewsprwire(https://kyodonewsprwire.jp/release/202505209121)
スケジュール管理こそが鍵です。
現場で最も多いのが「週数のカウントミス」です。トレムフィアの投与計画は「初回を0週」として4週・8週・16週と進みますが、施設によっては「初回を1週目」としてカウントするケースがあり、4週〜8週のズレが生じることがあります 。1週間のズれでも血中濃度の推移に影響しうるため、施設内でのカウント基準の統一は必須です。 tremfya(https://www.tremfya.jp/pts/uc/about_tremfya/schedule.html)
次に多いのが「同一部位への繰り返し投与」です。皮下注は腹部・大腿部・上腕部などに分散して実施する必要があり、同一部位への連続投与は皮膚硬結・吸収効率の低下を招きます 。注射部位のローテーション記録を患者自身にもつけてもらうと、管理精度が上がります。 tremfya(https://www.tremfya.jp/pdf/TRM-0281_UC_202503.pdf)
また、潰瘍性大腸炎患者は外来受診のたびに体調変動が大きいため、投与日の体調確認チェックリストを準備しておくと現場の負担が減ります。感染症スクリーニング(結核・HBV再活性化等)は投与開始前だけでなく維持期にも定期的に行うことが適正使用ガイドに明記されています 。 pmda.go(https://www.pmda.go.jp/RMP/www/800155/28f49e59-6f4b-4aad-b420-3ec6b64de466/800155_3999446G1021_02_002RMPm.pdf)
参考:トレムフィア適正使用ガイド(潰瘍性大腸炎)|PMDA公開資料(投与前スクリーニング・管理手順を収録)
https://www.pmda.go.jp/RMP/www/800155/28f49e59-6f4b-4aad-b420-3ec6b64de466/800155_3999446G1021_02_002RMPm.pdf
他剤からトレムフィアへのスイッチ時のスケジュール設計は、添付文書には詳細な記載がない点が実は見落とされがちです。これは使えそうです。
抗TNF-α製剤(インフリキシマブ・アダリムマブ等)やウステキヌマブからトレムフィアへ切り替える場合、前剤の半減期を考慮したウォッシュアウト期間が必要になります。例えばアダリムマブの半減期は約2週間であり、少なくとも2〜4週間のウォッシュアウトを置いてからトレムフィアの初回投与を開始するのが一般的な考え方です。薬剤重複期間は感染リスクを高めます。
一方、ウステキヌマブ(IL-12/23阻害薬)からトレムフィア(IL-23p19阻害薬)への切り替えは、同じIL-23経路の阻害薬間の移行にあたります。この場合は直接的な免疫学的競合はないとされていますが、ウステキヌマブの皮下注は投与後約3〜4週で血中濃度が最高に達し、半減期が約3週間であることを考慮します。臨床的には前剤の投与間隔の末尾を合わせて導入を開始するケースが多いです。
切り替えには感染症再評価(結核・B型肝炎・帯状疱疹ワクチン接種歴の確認)も必要です。スイッチ前に院内のIBDチームで方針を共有し、チェックリストを用いた手順化が安全性の担保につながります。スイッチ前の確認が条件です。
参考:ヤンセンファーマ 承認取得プレスリリース(2025年3月27日)|用法用量・QUASAR試験データの詳細を確認できます
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000294.000006157.html