ザジテン点眼販売中止の理由と代替薬の選び方

ザジテン点眼液が販売中止になった理由はなぜか?需要低下の背景から後発品・代替薬の選択、医療従事者が押さえるべき切り替え注意点まで徹底解説。あなたの処方は大丈夫ですか?

ザジテン点眼が販売中止になったなぜの理由と、代替薬への切り替え方

先発品が販売中止でも、同じ成分の後発品に切り替えると患者の自己負担がむしろ下がります。


この記事のポイント3つ
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販売中止の直接理由は「需要低下」

ザジテン点眼液(先発品・市販品)は、後発品の普及とより効果的な新世代薬の登場により需要が低下。市販品(ザジテンALシリーズ)は2020年4月、医療用先発品(50本包装)も段階的に販売を縮小しました。

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ケトチフェン成分の後発品は複数存在

有効成分ケトチフェンフマル酸塩の後発品(ジェネリック)は現在も複数社から販売継続中。薬価は先発品の273円/瓶に対し、後発品は約130〜160円/瓶と大幅に低コストです。

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代替薬への切り替えには注意点あり

エピナスチン(アレジオン)・オロパタジン(パタノール)など上位シェアの代替薬への切り替えには、用法・副作用・薬価の違いを把握することが不可欠です。


ザジテン点眼液が販売中止になった「なぜ」の背景

ザジテン点眼液(一般名:ケトチフェンフマル酸塩点眼液0.05%)は、抗ヒスタミン作用と肥満細胞安定化作用を併せもつ抗アレルギー点眼薬として、1990年代から眼科・耳鼻科・内科を中心に長く処方されてきました。しかし、2020年前後を境に「販売中止」というキーワードで検索される機会が急増しています。


販売中止が生じた経緯は、市販品(OTC薬)と医療用に分けて理解する必要があります。


まずOTC薬(市販品)の「ザジテンALシリーズ」については、2020年4月をもって製造販売が中止となりました。メーカーが公表した中止理由は「需要が少なくなったため」というシンプルなものです。実態を掘り下げると、スイッチOTC化(医療用成分の市販薬への転用)が2007年に行われたものの、その後アレグラFX・クラリチンEX・ケアビエンなど眠気の少ない第2世代抗ヒスタミン薬の市販品が相次いで登場し、ケトチフェンフマル酸塩配合の市販薬は競合に押し負けた形になりました。


次に医療用先発品については、製造販売元がノバルティス ファーマから2012年4月に日本アルコンへ承継されました。その後、50本包装が先行して販売中止となり、現在は10本包装で限定的な販売が続いています。医薬品供給状況データベース(DSJP)によれば、包装小50瓶は「販売中止」のステータスとなっており、先発品自体の市場での存在感は大幅に縮小しています。


ポイントはここです。先発品「ザジテン点眼液0.05%」が縮小・中止されていても、有効成分ケトチフェンフマル酸塩の後発品は現在も10社以上から継続して販売されています。ケトチフェン点眼液「ニッテン」「SW」「ツルハラ」「杏林」「CH」など複数ブランドが存在しており、処方や供給に実質的な影響は少ない状況です。


区分 製品名 販売状況
市販品(OTC) ザジテンAL点眼薬 2020年4月 製造販売中止
医療用先発品 ザジテン点眼液0.05%(50本包装) 販売中止(10本包装のみ継続)
医療用後発品 ケトチフェン点眼液各社 現在も複数社が販売継続中


つまり「ザジテン」というブランドが縮小しているということです。成分自体が消えたわけではありません。


医療用医薬品供給状況データベース(DSJP)|ザジテン点眼液0.05%の包装別ステータスが確認できます


ザジテン点眼液の需要が低下したなぜの本当の理由:抗アレルギー点眼薬市場の変化

医療従事者の中には「ザジテンはよく効く薬なのに、なぜ需要が落ちたのか?」と感じる方も多いかもしれません。それは正しい疑問です。


日経メディカルが実施している抗アレルギー点眼薬の処方シェア調査(第7回・2026年3月公表)によると、最も処方頻度が高い薬剤として選んだ医師の割合は次のとおりです。


順位 有効成分 代表商品名 処方シェア(2026年)
1 エピナスチン塩酸塩 アレジオン点眼 首位(シェア拡大傾向)
2位 オロパタジン塩酸塩 パタノール点眼 23.7%
3位 ケトチフェンフマル酸塩 ザジテン・後発品 9.3%


ケトチフェンは「第3位」という位置づけです。しかし、2022年・2024年の同調査でもほぼ11〜12%前後を推移しており、処方シェアが「ゼロになった」わけではありません。


需要低下の本質的な理由は主に3点あります。第一に、1日2回点眼で済むアレジオン(エピナスチン)やパタノール(オロパタジン)に比べ、ケトチフェンは1日4回点眼が必要であることです。点眼回数が少ないほうがアドヒアランスが高まるため、処方医が新薬に切り替えるインセンティブが生まれました。第二に、ケトチフェン成分自体のジェネリック化が進み、先発品メーカーが維持するメリットが小さくなったことです。第三に、OTC市場ではアレグラFX(フェキソフェナジン)・クラリチンEX(ロラタジン)など眠気の少ない第2世代薬が市場を席巻し、眠気が出やすいケトチフェンOTCの競争力が落ちました。


これは「薬が悪い」のではなく、市場環境の変化の結果ということです。


日経メディカル|抗アレルギー点眼薬は首位のエピナスチンがさらにシェア拡大(2026年3月調査)※要会員登録


ザジテン点眼液のなぜを理解するために知っておくべき薬理と特徴

ザジテン点眼液(ケトチフェン)は、他の抗アレルギー点眼薬と比べてどのような薬理的特徴を持つのかを正確に把握しておくと、代替薬を選択する際の基準が明確になります。


ケトチフェンフマル酸塩の作用機序は大きく2つあります。ひとつはH1受容体拮抗作用(抗ヒスタミン作用)で、放出されたヒスタミンが直接受容体に結合するのをブロックします。もうひとつは肥満細胞安定化作用で、肥満細胞や好塩基球・好中球からのヒスタミン・SRS-A(スロー・リアクティング・サブスタンス)などの化学伝達物質の放出そのものを抑制します。この二重作用が、ケトチフェンが長期にわたって臨床で支持されてきた理由です。


適応症は「アレルギー性結膜炎」のみです。用法・用量は「1回1〜2滴、1日4回(朝・昼・夕・就寝前)点眼」となっています。この1日4回という点が、1日2回で済む競合薬との大きな差別化ポイントです。


副作用についても医療従事者は把握が必要です。


  • 👁️ <strong>眼局所の副作用(0.1〜5%未満):結膜充血、眼刺激感
  • 👁️ 眼局所の副作用(0.1%未満):角膜びらん
  • ⚠️ 過敏症:眼瞼炎、眼瞼皮膚炎、そう痒感(頻度不明)
  • 😴 全身性副作用(0.1〜5%未満):眠気(点眼薬にもかかわらず報告あり)
  • 🚫 コンタクトレンズ着用中の使用は不可(ソフトコンタクト装着中は点眼薬成分が吸着する可能性あり)


点眼薬でも眠気が0.27%の確率で生じると報告されています。これは意外ですね。内服薬ほどではありませんが、患者へのインフォームドコンセント時には伝えておくべき情報です。


また、コンタクトレンズを使用中の患者には、点眼前にレンズを外し、15分以上待ってから再装着するよう指導することが必要です。コンタクト使用者が多いアレルギー性結膜炎患者の場合、この指導を怠ると患者の自己判断によるトラブルにつながるリスクがあります。


ザジテン点眼販売中止後の代替薬の選び方:処方変更を迫られたときの実践的な比較

先発品のザジテン点眼液が入手困難・処方不可になった場合、次の3つのアプローチで代替薬を選択することになります。


① 同成分の後発品に切り替える


最もシンプルな対応です。ケトチフェンフマル酸塩の後発品は現在も10社以上から供給されており、薬価は先発品の273円/瓶に対して後発品は約130〜160円/瓶と約4〜5割低コストです。患者の自己負担が下がるという点では、むしろメリットがある選択です。添加物の違いによる刺激感を訴える患者が一部いますが、有効成分・効能・用法は同一です。代表的な後発品としては「ケトチフェン点眼液0.05%「ニッテン」」「同「SW」」「同「杏林」」などが挙げられます。


② 作用機序が近い同効薬へ切り替える


1日2回点眼への切り替えを希望する場合や、ケトチフェン後発品でも眼刺激感が強い場合は、以下の同効薬が候補になります。


成分名 代表商品名 点眼回数 特徴
エピナスチン塩酸塩 アレジオン点眼液0.05% 1日2回 処方シェア1位。アドヒアランス良好
オロパタジン塩酸塩 パタノール点眼液0.1% 1日2回 抗ヒスタミン+肥満細胞安定化の二重作用
レボカバスチン塩酸塩 リボスチン点眼液 1日4回 速効性が高い


エピナスチン(アレジオン)への切り替えが処方シェアを見ても最も多い選択です。ただし、アレジオン眼瞼クリームとの同時処方は保険診療上、原則として認められていないため、診療録上の記載や算定に注意が必要です。


③ 点眼回数・防腐剤の有無で選択する


コンタクトレンズ使用者や、ベンザルコニウム塩化物(防腐剤)への過敏症がある患者には、防腐剤フリー(PF)タイプの点眼液が選択肢になります。ケトチフェン後発品にも「ケトチフェンPF点眼液0.05%「日点」」(防腐剤無添加)があり、こちらはコンタクト装着直前の使用が可能なモデルとして有用です。


後発品への切り替えを行う場合は、薬局段階で自動変更となることも多いですが、防腐剤の有無が患者個々の状態に関わる場合には、処方箋への明記または薬局への連絡が安全です。


データインデックス|ザジテン点眼液0.05%の先発品・後発品一覧(薬価・成分比較に活用可)


ザジテン点眼液の販売中止に伴う医療従事者が見落としがちな独自視点:「処方習慣の慣性」が起こす潜在リスク

医療用先発品ザジテン点眼液の縮小・廃番に際して、あまり語られることのない重要な視点があります。それは「処方習慣の慣性」によって生じる潜在的なリスクです。


長年ザジテンを処方してきた医師や、処方箋を受け付けてきた薬局では、製品名の変化に気づかないまま処方・調剤が続くケースがあります。具体的には次のような問題が起きやすいです。


  • 📋 カルテ・処方システムに「ザジテン点眼液」が登録されたまま、後発品切り替えが自動化されていないケース
  • 💬 患者が「ザジテン」という薬名に強いこだわりを持ち、後発品への切り替えを拒否するケース
  • 🔁 後発品への切り替え時に防腐剤の種類が変わり、眼刺激感が増したという患者申告への対応が遅れるケース
  • 📦 複数の後発品が乱立する中で、薬局在庫の都合により毎回メーカーが変わり、患者が混乱するケース


「薬が変わっても成分が同じだから大丈夫」というのは処方側の論理です。患者にとって外観・容器・苦味・刺激感が変わることは、「薬が変わった」という心理的不安につながります。


この問題を回避するための実践的な対策として、処方切り替え時には患者への説明が1ステップ追加することをお勧めします。「お薬の名前が変わりますが、成分・効果・用法はまったく同じです。外見や容器が変わる場合がありますが、問題ありません」という一言が患者の不安を大幅に軽減します。


また、薬局薬剤師の立場からは、後発品メーカーが変わった際に患者に伝達するフローをあらかじめ構築しておくことが、クレームや疑義照会の削減につながります。複数の後発品が供給可能な場合は、なるべく同一メーカーを継続使用できるよう在庫調整を行うことが望ましいです。


処方箋に「先発品希望」の記載がある場合は、ザジテン点眼液先発品の供給状況(包装規格・在庫)を事前に確認することが必要です。現時点では10本包装のみの対応となっているため、大量処方を想定した在庫確保が難しいケースがあることも把握しておくべき情報です。


これはすぐに実行できる対策です。電子カルテの処方オーダー画面に、後発品一覧をポップアップ表示させる設定を加えるだけで、処方時の選択精度が上がります。病院・クリニックの薬剤部・薬局と連携して、ザジテン後発品の採用銘柄を統一しておくことが、患者ケアの一貫性を保つ上でも有効な手段です。


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