ビタミンB2をきちんと摂っているつもりでも、日本人成人の平均摂取量は推奨量を下回っており、肌荒れが慢性化している患者が後を絶ちません。
ビタミンB2(リボフラビン)は、体内でFMN(フラビンモノヌクレオチド)およびFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)という補酵素に変換され、糖質・脂質・タンパク質の代謝反応を広く支えています。「発育のビタミン」とも呼ばれ、皮膚・粘膜・爪・毛髪の細胞再生にとって欠かせない存在です。
肌荒れとの関係で特に重要なのが、皮脂分泌の調整機能です。ビタミンB2が不足すると脂質代謝が滞り、皮脂腺からの脂質分泌バランスが崩れます。結果として皮脂が過剰になりやすく、毛穴詰まりやアクネ菌の増殖を招きます。これが原因です。
欠乏が進行すると、以下のような症状が段階的に現れてきます。
| 症状 | 部位 | 特徴 |
|---|---|---|
| 口角炎・口唇炎 | 口の端・唇 | ひび割れ・痛みを伴う |
| 舌炎 | 舌 | 紫紅色に腫れ、ヒリヒリ感 |
| 脂漏性皮膚炎 | 頭皮・鼻周囲・眉間 | うろこ状の剥がれ、皮脂過剰 |
| ニキビ(尋常性痤瘡) | 顔・背中 | 皮脂過剰によるコメド・炎症性皮疹 |
| 角膜炎・結膜炎 | 眼 | 充血・光過敏 |
医療現場でよく見かけるのは、口角炎と軽度の脂漏性湿疹の組み合わせです。これは意外ですね。皮膚科受診の患者に対して栄養状態を問診することで、ビタミンB2欠乏の関与を早期に疑える場合があります。
MSDマニュアル(プロフェッショナル版)によると、リボフラビン欠乏は単独で起こるより、他のビタミンB群の欠乏と合併して起こることが多いとされています。患者の食歴を丁寧に聴取することが、鑑別の第一歩です。
参考:リボフラビン欠乏症の症状・診断について(MSDマニュアル)
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/09-栄養障害/ビタミン欠乏症-依存症-および中毒/リボフラビン欠乏症
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」が定める1日の推奨量は、成人男性(18〜49歳)で1.6〜1.7mg、成人女性(18〜64歳)で1.2mgです。数字だけ見ると「そこまで多くない」と感じるかもしれません。
ところが、令和元年の国民健康・栄養調査の結果では、日本人の食品からの平均摂取量は1日1.18mgにとどまっています。成人男性は1.11〜1.32mg、女性では0.96〜1.12mgという報告もあり、特に女性は推奨量の1.2mgを下回るケースが多いのが実態です。つまり不足が基本です。
さらに見落とされがちなのが、ストレスや多忙な生活習慣によるビタミンB2の消耗です。ビタミンB群は体内のエネルギー代謝全般に使われるため、ストレス負荷がかかる状況ほど需要が高まります。医療従事者自身が不規則な勤務で食事が乱れやすいことも、欠乏リスクを高める一因です。これは使えそうです。
妊娠・授乳中は付加量が設定されており、妊婦で+0.3mg、授乳婦で+0.6mgの上乗せが必要です。外来で妊産婦の栄養指導を行う際は、葉酸・鉄だけでなくビタミンB2の充足状況も確認する習慣をもつと、母体の肌トラブル予防にもつながります。
レバーは1食分(100g)で男性の推奨量をほぼクリアできるほど含有量が高いですが、毎日食べ続けるのは現実的ではありません。多様な食品を組み合わせることが基本です。
参考:ビタミンB2の食事摂取基準と含有食品(健康長寿ネット)
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/eiyouso/vitamin-b2.html
「ビタミンB2のサプリを飲み始めたのに、肌荒れが治まらない」という患者の相談は珍しくありません。この背景には、ビタミンB群同士の相互依存関係があります。
ビタミンB群はそれぞれ独立して働くのではなく、互いの代謝サイクルを補完しながら機能します。たとえばビタミンB2はB6の活性化に必要であり、B6はタンパク質代謝を通じて皮膚の再生を支えています。つまり協調が条件です。
単体のビタミンB2を高用量で長期摂取すると、体内のビタミンB群全体の代謝バランスが崩れる可能性があります。特にサプリで単独摂取するケースでは注意が必要で、医師や管理栄養士が関与しない無監督の高用量摂取は推奨できません。
一方で、ビタミンB2は水溶性ビタミンであるため、過剰分は尿として排出されます。耐容上限量も現時点では設定されていません。ただし尿が鮮黄色に変色することがあり、尿検査値に影響する可能性があるため、検査前後の服用には注意が必要です。
患者への指導ポイントを整理すると、以下のようになります。
参考:皮脂過剰とビタミンB2・B6の関係(大阪・石田クリニック)
https://osaka-ishidaclinic.com/column/皮膚に良い食べ物-第2回:皮脂過剰と戦う「ビタミン/
ビタミンB2欠乏が関与する肌荒れに対して、処方薬として用いられるのが「ハイボン(リボフラビン酪酸エステル)」です。主成分はビタミンB2であり、脂溶性エステル化によって消化管からの吸収効率が高められています。これが特徴です。
ハイボンの添付文書上の適応症は、口角炎・口唇炎・舌炎・脂漏性湿疹・結膜炎・びまん性表層角膜炎など、「ビタミンB2の欠乏または代謝障害が関与すると推定される場合」に限定されています。通常用量は成人1日5〜20mgを2〜3回に分服で、高コレステロール血症の場合は1日60〜120mgという高用量が設定されています。
薬価はハイボン錠20mgで1錠あたり約5.9円です。保険適用の範囲内で処方できるため、患者の経済的負担も抑えやすいといえます。
注意すべき点が一つあります。添付文書には「効果がないのに月余にわたって漫然と使用すべきでない」と明記されています。ビタミン不足とは無関係の原因(カンジダ感染、アレルギー、薬剤性など)による口角炎や皮膚炎では、ハイボンは無効である可能性が高いためです。鑑別が大切です。
| 選択肢 | 主な対象 | 特徴 |
|---|---|---|
| ハイボン錠(処方薬) | 欠乏症状が明確な場合 | 保険適用、吸収効率が高い |
| 市販ビタミンB2製剤 | 軽度の肌荒れ・予防目的 | 手軽に入手可能、用量調整が必要 |
| Bコンプレックスサプリ | B群全体のバランス補給 | 相互依存を考慮した設計 |
| 食事改善 | 全例の基本介入 | 持続可能、副作用なし |
参考:ハイボン(リボフラビン)の特徴と使い方(巣鴨千石皮ふ科)
https://sugamo-sengoku-hifu.jp/medicines/hibon.html
医療従事者が患者への栄養指導を行う際、見落とされがちな視点があります。それは「患者が置かれている勤務・生活環境によるビタミンB2消耗リスク」です。
夜勤・長時間労働・高ストレス職種の患者は、エネルギー代謝の回転数が上がるため、同じ食事量でもビタミンB2の需要が相対的に高まります。さらに「食事が不規則」「外食・コンビニ中心」「極端なダイエット」というライフスタイルが重なると、ビタミンB2の慢性的な不足状態が生まれやすくなります。
実際、消化器内科や皮膚科の外来で「繰り返す口角炎」「治りにくいニキビ」「慢性的な肌荒れ」を主訴に来院する患者の背景を丁寧に問診すると、食生活の乱れや高ストレス環境が共通して浮かび上がることは珍しくありません。
問診で確認したい具体的な項目は次のとおりです。
ビタミンB2の過不足は血液・尿検査(EGRac値:赤血球グルタチオン還元酵素活性係数)で評価可能です。EGRac 1.3以上がビタミンB2不足の指標として用いられています。ただし測定方法の統一化が課題とされており、通常の外来では簡易的に「食事内容+症状パターン」から欠乏を推定する方法が現実的です。
患者への指導は「まず食事の底上げ」→「不足が明らかな場合はサプリか処方薬で補完」という順序で進めると、過剰な薬剤依存を防ぎつつ持続的な改善につながります。この順序が原則です。
特にビタミンB2を多く含む食品として納豆・卵・ブロッコリーは、調理の手間が少なく日常的に取り入れやすいため、忙しい患者にはこれらを優先的に提案すると継続しやすくなります。

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