先発品のメサデルムクリームは、まぶた周辺への長期使用で緑内障になるリスクがあります。
デキサメタゾンプロピオン酸エステルクリームの先発品は、岡山大鵬薬品が製造販売する「メサデルムクリーム0.1%」です。有効成分はデキサメタゾンプロピオン酸エステル(Dexamethasone Propionate)で、1g中に1mg(0.1%)を含有します。グルココルチコイド受容体に結合して皮膚の炎症を抑制し、赤み・かゆみ・腫れを速やかに改善します。
ステロイド外用薬は強さによって5段階に分類されており、メサデルムはⅢ群「ストロング(Strong)」に該当します。つまり上から3番目の強さです。同じストロングクラスには、フルコート(フルオシノロンアセトニド)、ベトネベート(ベタメタゾン吉草酸エステル)、リンデロンV(ベタメタゾン吉草酸エステル)、エクラー(プロピオン酸デプロドン)などがあります。
ここで注意すべき点があります。名前が似ていても強さが同じとは限りません。たとえば「デキサメタゾン吉草酸エステル(ボアラ)」も同様にストロングクラスですが、「デキサメタゾンプロピオン酸エステル(メサデルム)」とはエステル部位が異なる別の化合物です。名称が類似しているため取り違えに注意が必要です。
薬価は9.6円/gで、5g包装(48円)と10g包装(96円)があります。後発品(ジェネリック)の薬価は7.3円/g程度であり、先発品との差額は約2.3円/gとなります。3割負担の患者がメサデルムクリーム10gを処方された場合の患者負担は約28.8円(薬剤費のみ)です。これは薬剤費のみの計算なので覚えておきましょう。
剤型は軟膏・クリーム・ローションの3種類があります。クリームはW/O型(油中水型)という特徴的な基剤を採用しており、O/W型(水中油型)クリームより若干べたつきがあるものの、皮膚への浸透性と水への耐性に優れています。
| 剤型 | 特徴 | 適した皮疹・部位 |
|---|---|---|
| 軟膏 | 油分多め・刺激少ない | 湿潤型・苔癬化型・滲出あり |
| クリーム(W/O型) | 浸透性高・水に強い | 乾燥~亜急性・広範囲 |
| ローション | さらっとしたのび | 有毛部・頭皮・広範囲 |
参考:メサデルムクリームの基本情報(日経メディカル)
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/26/2646726N1090.html
メサデルムクリームの適応疾患は非常に幅広く、一般的な炎症性皮膚疾患だけにとどまりません。添付文書に記載されている適応疾患を整理すると、湿疹・皮膚炎群(アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎など)、痒疹群(蕁麻疹様苔癬、ストロフルス)、虫さされ、薬疹・中毒疹、乾癬、掌蹠膿疱症、紅斑症、特発性色素性紫斑、肥厚性瘢痕・ケロイド、肉芽腫症、悪性リンパ腫(菌状息肉症を含む)、アミロイド苔癬、斑状アミロイドージス、天疱瘡群、円形脱毛症などが含まれます。
「悪性リンパ腫」が適応に含まれているのは意外ですね。菌状息肉症など皮膚型悪性リンパ腫では腫瘍細胞に対するアポトーシス誘導作用が期待されるためです。実際の有効率も63.0%(81例中51例)と報告されています。
臨床試験の集計データ(クリーム・軟膏・ローション合算、2628例)では全体の有効率が85.4%(2243/2628例)という結果が出ています。疾患別の有効率も注目に値します。
ケロイドや肥厚性瘢痕への有効率が約38%と他の疾患より低いことに気づくかもしれません。これはステロイドの抗炎症・線維芽細胞抑制作用を利用した適応ですが、重症ケースではシリコンゲルシートや注射療法との組み合わせが検討されます。有効率が低いからといって使えないわけではなく、治療ステップとして位置づける視点が重要です。
副作用発現率は1.7〜3.5%(試験により異なる)と比較的低く、その多くは塗布部位局所の症状でした。ステロイドざ瘡(ニキビ様皮疹)の報告は0.1%にとどまっています。安全性の数字を把握しておくことが患者説明に役立ちます。
参考:メサデルムの有効性・安全性データ(KEGG MEDICUS)
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00055576
デキサメタゾンプロピオン酸エステルクリームの後発品(ジェネリック)としては、「デキサメタゾンプロピオン酸エステルクリーム0.1%「MYK」(日本ジェネリック)」「同「ラクール」(東光薬品工業)」などが存在します。生物学的同等性試験では先発品との間に統計学的有意差は認められておらず、有効成分の量・品質は同等とされています。
有効成分は同じです。ただし、基剤・添加物の組成は製品ごとに異なります。先発品メサデルムクリームはW/O型(油中水型)基剤を採用しており、これが使用感や混合調剤時の挙動に影響します。
特に混合調剤において先発・後発の差が問題になる場合があります。たとえば保湿剤(ヘパリン類似物質軟膏など)と混合する際、先発品との混合は問題なくても後発品との混合では乳化が不安定になる製品が存在することが報告されています。混合調剤時には先発品・後発品のどちらを使うかを事前に確認し、各製品のインタビューフォームで混合可否を確認することが原則です。
また、「軟膏」と「クリーム」は同成分でも別剤形に分類されます。薬局での変更調剤において「軟膏→クリーム(あるいはその逆)」は、患者同意のみでは行えず疑義照会が必要となります。一般名処方の場合も剤形変更は原則不可です。処方する際にはクリームと明記しておくことが現場のトラブルを防ぐ上で重要になります。
参考:後発医薬品の変更ルール解説(m3.com 薬剤師向け)
https://pharmacist.m3.com/column/dispensation_point/6996
メサデルムクリームをはじめとするデキサメタゾンプロピオン酸エステルクリーム先発品には、ステロイド外用薬特有の副作用があります。ここで整理しておきましょう。
まず局所の副作用として、毛包炎・膿疱、潮紅・毛細血管拡張、皮膚萎縮、ニキビ様皮疹(ステロイドざ瘡)、刺激感などが報告されています。これらは長期・広範囲使用で生じやすく、特に皮膚が薄い顔面や陰部では軽微な使用量でも出やすくなります。
重大な副作用として見落とせないのが眼への影響です。眼瞼皮膚(まぶた周辺)への使用においては眼圧亢進・緑内障のリスクがあります。さらに密封法(ODT)や大量・長期の広範囲使用では後嚢白内障・緑内障が生じることがあります(頻度不明)。目の周辺に使う場合は必ず患者に説明し、視力低下・頭痛・目のかすみ・まぶしさなどの自覚症状が出た際にはすぐ受診するよう指導することが不可欠です。
これが原則です。眼周囲への処方では定期的な眼科受診も検討に値します。
禁忌事項もしっかり確認が必要です。以下の患者への使用は禁忌です。
「皮膚感染症があるように見えるが湿疹もある」という混合した病態には特に注意が必要です。真菌感染症(白癬など)を見逃したままメサデルムを使用すると、感染が急速に拡大する「tinea incognita(ステロイドによる白癬の変容)」を招くリスクがあります。皮膚の見た目だけで判断せず、KOH直接鏡検などで感染症を除外してから処方する姿勢が求められます。
また、患者が独断で以前処方されたメサデルムの残薬を別の症状に使用するケースも臨床現場では見られます。残薬の自己利用は禁忌疾患への誤使用につながりかねないため、薬局・外来での残薬指導も欠かせません。
参考:メサデルム軟膏0.1%の添付文書情報(くすりのしおり)
https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=47505
最後に、医療現場で処方・服薬指導を行う際に役立つ実践的なポイントをまとめます。知識として持つだけでなく、実際の患者対応につなげることが重要です。
塗布量の指導では「FTU(Finger Tip Unit)」を活用するとわかりやすいです。1FTUは人差し指の先端から第一関節までチューブから絞り出した量(約0.5g)で、成人の手のひら2枚分(体表面積約2%)に相当します。クリームは軟膏より伸びがよいため、同じ面積でも少量で十分なことを説明に加えると患者の理解が深まります。これは使えそうです。
患者に「どれくらい塗ればいいかわからない」と言われることは多いです。「チューブの口から第1関節まで絞り出した量が手のひら2枚分に相当します」という説明に一言添えるだけで、患者の安心感が違います。
先発品から後発品へ切り替えを検討する場合、患者が使い心地(テクスチャー、のび方)の変化を気にするケースがあります。先発品のメサデルムクリームはW/O型の独特なテクスチャーを持つため、後発品に変更した際に「前と違う」と感じる患者が一定数います。変更時には事前の説明が残薬・コンプライアンスの問題を防ぎます。
ステロイドの「ランク」だけで薬剤を選ぶのは不十分です。同じストロングクラスでも、塗布部位によって実際の効果は大きく変わります。顔・陰部は全身で最も経皮吸収率が高く、腕の内側(前腕屈側)の約13倍ともいわれます。部位に合わせたランクの調整と使用量・期間の管理が適切な処方の条件です。
アトピー性皮膚炎では症状の再燃を防ぐために「プロアクティブ療法」の考え方が重要になってきました。寛解維持を目的として皮疹が消退した後も週1〜2回の間欠的外用を継続する方法で、日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021でも推奨されています。メサデルムクリームはストロングクラスであり、プロアクティブ療法には原則としてミディアム以下が推奨されますが、皮疹の重症度や部位によって医師が判断します。この点を患者に正確に伝えることで、長期使用への不安を軽減できます。
参考:ステロイド外用薬の使い分けポイント・早見表(m3.com 薬剤師向け)
https://pharmacist.m3.com/column/special_feature/6778
参考:ステロイド外用薬「メサデルム(デキサメタゾン)」解説(巣鴨千石皮ふ科)
https://sugamo-sengoku-hifu.jp/medicines/methaderm.html