白癬の皮膚に現れる特徴と種類ごとの症状を解説

白癬(はくせん)の皮膚に現れる特徴は、発症部位や病型によって大きく異なります。医療従事者が知っておくべき臨床型ごとの見た目の違い・鑑別のポイントとは?

白癬が皮膚に現れる特徴と種類・鑑別の要点

足白癬の患者さんが「かゆい」と言っていたら、それは白癬ではない可能性が高いです。


白癬の皮膚特徴:3つの重要ポイント
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かゆみは「必須症状」ではない

足白癬全体でかゆみを伴うのはわずか10%程度。角質増殖型はほぼ無症状で、見落としリスクが高い病型です。

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視診のみでの確定診断は不可

皮膚科専門医でも視診だけでは正確な診断が困難。KOH直接鏡検による菌の確認が診断の基本です。

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爪白癬は足白癬再発の温床

爪白癬を放置したまま足白癬を治療しても、菌が爪から再び角層へ移行するため、足白癬が容易に再発します。


白癬の皮膚における基本的な病態と感染のしくみ


白癬とは、皮膚糸状菌(白癬菌)が皮膚の角層・爪・毛に寄生して起こる表在性真菌感染症です。表在性皮膚真菌症全体の約9割を占め、日本では5人に1人が足白癬、10人に1人が爪白癬に罹患しているとされています。


白癬菌が皮膚に付着してから感染が成立するまでには、健常な皮膚でおよそ1日、皮膚に傷がある場合でも約半日かかります。これは、白癬菌がタンパク分解酵素(ケラチナーゼ)を分泌して角層バリアを破壊するのに時間を要するためです。つまり、公衆浴場などで菌が付着しても、帰宅後すぐに足を洗えば感染を防止できます。


| 感染部位 | 病名 | 俗称 |
|---|---|---|
| 足 | 足白癬 | 水虫 |
| 爪 | 爪白癬 | 爪水虫 |
| 体幹・四肢 | 体部白癬 | ぜにたむし |
| 股部 | 股部白癬 | いんきんたむし |
| 頭部 | 頭部白癬 | しらくも |
| 手 | 手白癬 | — |


白癬菌はケラチンを栄養源として増殖するため、角層の豊富な部位に寄生します。粘膜では免疫応答が活発でターンオーバーが速いため寄生できません。つまり、口内やのどが白癬になることはありません。重要な点ですね。


一方で、死んだ細胞の集積である角層はターンオーバーに最低2週間かかるため、白癬菌にとって格好の住処となります。菌は角層内でゆっくり増殖しながら、やがて表皮細胞と接触することで炎症を引き起こします。


参考:白癬の基本病態・感染成立メカニズムについて詳しく解説されています
白癬の〝真〟常識|ファーマスタイルWEB(埼玉医科大学皮膚科教授 常深祐一郎氏監修)


白癬の皮膚に現れる特徴:足白癬3つの臨床型

足白癬(水虫)は臨床的に3つの病型に分類されます。それぞれの皮膚所見の特徴を正確に把握しておくことが、見落とし防止と鑑別診断の出発点となります。


① 趾間型(しかんがた)


足の指の間に発症するもっとも頻度の高い病型です。第4趾(薬指)と第5趾(小指)の間に生じやすいという特徴があります。皮膚所見としては、趾間の浸軟(白くふやけた状態)・鱗屑(りんせつ)・亀裂・びらんがみられ、重症化すると滲出液を伴うこともあります。季節性があり、高温多湿の夏季に悪化・秋から冬に軽快する傾向があります。


② 小水疱型(しょうすいほうがた)


足底・土踏まず・足縁を中心に小さな水疱が多発するタイプです。水疱が破れると皮むけを生じ、強いかゆみを伴うことが多い病型です。夏季に出現し、秋以降に軽快するという季節変動を示します。


③ 角質増殖型(かくしつぞうしょくがた)


足底全体の角質が分厚く硬くなるタイプです。これが一番の落とし穴です。かゆみをほぼ伴わず、季節変動もないため、患者自身が「加齢による皮膚の変化」や「乾燥肌」と思い込んで受診しないケースが多くあります。冬季にはひび割れが悪化して疼痛を来すこともあります。外用薬だけでは難治であり、内服抗真菌薬の併用が必要となる唯一の足白癬病型です。


| 病型 | 好発部位 | かゆみ | 季節変動 | 外用のみで治療可能か |
|---|---|---|---|---|
| 趾間型 | 趾間(特に第4・5趾間) | 中等度 | あり(夏悪化) | ○ |
| 小水疱型 | 足底・土踏まず | 強い | あり(夏悪化) | ○ |
| 角質増殖型 | 足底全体 | ほぼなし | なし | △(内服併用が必要) |


つまり「かゆいから水虫」「かゆくないから水虫ではない」という判断は、どちらも正確とは言えません。


白癬の皮膚特徴とかゆみの関係:「水虫はかゆい」は医学的に誤り

多くの患者は「水虫=かゆい」と認識しています。しかし実際は、足白癬全体でかゆみを伴うのはわずか10%程度とされています。これは意外な数字ですね。


専門家の間では「かゆみを主訴に受診した患者には、足白癬よりも湿疹や接触皮膚炎を先に疑うべき」という考え方が浸透しています。逆に言えば、かゆみがない皮膚病変にも、白癬を鑑別に挙げるべきということです。


かゆみが生じるメカニズムは、白癬菌が増殖して角層下層まで達し、生きた表皮細胞と接触することで炎症反応が引き起こされるためです。菌がまだ角層の上層にとどまっている段階では炎症は起きず、かゆみもありません。感染初期や角質増殖型では、まさにこの「無症状の菌増殖」が長期にわたって続くことになります。


「自称・水虫」患者の約3割には実際には白癬菌が検出されなかったという研究結果もあります。また逆に、かゆみなどの症状がない患者に白癬菌が見つかるケースも少なくありません。こうした事実は、臨床症状のみで判断することの限界を示しています。


かゆみに頼らない診断のためには、KOH直接鏡検法による菌の確認が不可欠です。鑑別が必要になる主な疾患は汗疱(かんぽう)・掌蹠膿疱症・接触皮膚炎・疥癬・皮膚カンジダ症などです。特に汗疱と小水疱型白癬は外見が非常に類似しており、鏡検なしでの鑑別は困難です。


参考:かゆみと白癬の関係、鑑別診断のポイントについて詳しく掲載されています
足白癬 診断コンパクトガイド|久光製薬サポートウェブ(医療従事者向け)


白癬の皮膚における部位別の特徴:爪・体部・頭部白癬の所見

白癬は足だけに起きる病気ではありません。部位によって皮膚所見が大きく異なるため、各病型の特徴を整理しておくことが重要です。


爪白癬(つめはくせん)


爪の先端または側縁から白癬菌が侵入し、爪が白〜黄色に混濁します。進行すると爪が肥厚・変形し、爪甲剥離(爪が浮き上がる状態)が起きます。かゆみはなく、自覚症状がほとんどないため治療が遅れやすいのが特徴です。外用薬(爪外用液)を1年間使用した場合の完全治癒率は約15〜30%と低く、内服薬が有効な例が多い病型です。


足白癬がある限り、爪への菌の移行は容易に起きます。逆に、爪白癬を放置すると爪から足の角層へ菌が移行し、足白癬が再発します。足白癬を治療しても再発を繰り返す患者の場合、爪白癬が見落とされているケースを疑う必要があります。


体部白癬(たいぶはくせん)


体幹・四肢に発症し、境界明瞭な環状紅斑が特徴です。発疹は辺縁が赤く隆起し、中央部は治癒したように見えるリング状の外観を呈します。境界がはっきりしているのが湿疹との重要な鑑別点です。


動物由来菌(ペットのネコや犬が持つMicrosporum canis等)による感染では、炎症が強く出る傾向があります。格闘技選手間ではTrichophyton tonsuransによる集団感染も報告されており、問診での接触歴の確認が診断に役立ちます。


頭部白癬(とうぶはくせん)


白癬菌が毛髪に寄生して起きます。フケ様の皮膚片と脱毛が主な所見です。以前は子どもに多くみられましたが、現在は成人での発症も報告されています。T.violaceumやT.tonsuransによる感染が典型的です。視診のみでの診断が特に困難な病型のひとつです。


股部白癬(こぶはくせん)


陰股部を中心に環状の紅斑が広がります。足白癬との合併が多く、足白癬からの自己感染が主要な発症経路です。カンジダ症との鑑別が必要になる場合があります。カンジダと白癬では使用する薬剤が異なるため、鏡検による確定が治療選択の観点から重要です。


参考:各部位の白癬の臨床所見と症例画像、治療の考え方が整理されています
白癬の種類と症状・治療法|田辺ファーマ(渡辺晋一 帝京大学名誉教授監修)


白癬の皮膚特徴を見落とさないための診断・鑑別の独自視点:「ステロイドを塗ってもよくならない皮疹」への対応

医療現場でときどき遭遇するシナリオがあります。湿疹と判断してステロイド外用薬を処方したところ、一時的に改善したように見えたが、ある時点から悪化した、という経過です。これが「tinea incognito(ティネア・インコグニタ)」と呼ばれる、ステロイドにより症状が修飾された白癬です。


ステロイドには免疫抑制作用があるため、白癬に塗布すると一時的に炎症が沈静化し、かゆみや赤みが軽快します。しかし、同時に皮膚の免疫応答が抑制されるため白癬菌の増殖が促進され、やがて通常の白癬では見られないような非典型的な皮疹が広がります。これは厳しいパターンですね。


tinea incognitoの皮膚所見上の特徴は以下の通りです。


- 通常の環状紅斑が失われ、境界が不鮮明になる
- 毛嚢炎様や丘疹が散在する
- 体幹に広範囲に広がることがある
- かゆみの程度が変化し、ステロイド中止後に急に悪化する


「ステロイドを塗るとやや改善するが、すぐ再発する皮疹」には白癬を鑑別に挙げることが重要です。特に処方前に鏡検を行っていない場合、この状況に陥るリスクがあります。鏡検が原則です。


なお、KOH直接鏡検を行う際には検体採取部位に注意が必要です。辺縁の剥がれかかった鱗屑を採取することが菌検出率を上げる鍵であり、すでに剥離してしまった部分や中央の治癒した部分では菌が少なく偽陰性になりやすいことが知られています。また、市販の水虫薬や抗真菌薬を受診前に使用している患者では、皮膚表面の菌量が減少していることがあり、同様に偽陰性となりやすい点も押さえておくべき知識です。


ステロイド外用薬の誤使用リスクについては、日本皮膚科学会の皮膚真菌症診療ガイドライン2019においても、確定診断なしに外用薬を使用することの危険性が明記されています。


参考:KOH法の手技・採取のポイント、誤診を防ぐための診断フローが掲載されています
日本皮膚科学会 皮膚真菌症診療ガイドライン2019(PDF)




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