FTUという単位を「外用薬の量の目安」だと思っているなら、それだけでは患者への説明で誤解を招くリスクがあります。
FTUとは、Formazin Turbidity Unit(フォルマジン濁度単位)の頭文字をとった濁度の計量単位です。日本語では「ホルマジン濁度単位」と呼ばれることもあります。具体的には、精製水1リットルに対してホルマジン(formazin)を1mg溶解・分散させたときの濁りの程度を「1FTU」と定義します。つまり、この標準的な濁りを基準ゼロ点の比較対象として、測定対象液体の濁り度合いを数値化する仕組みです。
FTUが拠り所とする標準液「ホルマジン」は、硫酸ヒドラジン(hydrazine sulfate)とヘキサメチレンテトラミン(hexamethylenetetramine)を水中で重合反応させることで調製されます。この標準液は再現性と安定性に優れているため、世界中の濁度測定において長年使われてきた信頼性の高い物質です。
日本においては、FTUはJIS K0801「濁度自動計測器」に規定されています。これが基準です。一方で、ホルマジン標準液は毒性を持つため、取り扱いには特別な注意が必要であることも忘れてはなりません。
| 単位 | 正式名称 | 主な規格 | 標準液 |
|---|---|---|---|
| FTU | Formazin Turbidity Unit | JIS K0801 | ホルマジン |
| NTU | Nephelometric Turbidity Unit | EPA 180.1(米国) | ホルマジン |
| FNU | Formazin Nephelometric Unit | ISO 7027 | ホルマジン |
| 度(カオリン) | — | 旧来の日本基準 | カオリン |
FTUとNTUはどちらもホルマジン標準液を使い、数値的には同等とみなされるケースが多いです。ただし、FNUはISO 7027に基づく側方散乱方式(90°散乱)に限定した単位であり、後方散乱方式のFBU(Formazin Backscatter Unit)とは数値が一致しません。つまり、単位名だけで「同じ値だ」と判断するのは危険です。
医療現場での注意点として大切なのが、カオリン標準液との違いです。カオリン(白陶土)を標準物質とした「度(カオリン)」は粒度や成分が産地で変わり、測定再現性がFTUより劣ります。インタビューフォームや薬局方に記載された濁度値を読む際、どの標準物質を使った数値かを必ず確認する習慣が必要です。これが基本です。
参考:濁度の単位(FTU・NTU・FNUなど)の詳細な解説はアズワン株式会社のFAQに記載があります。
FTU(Formazin Turbidity Unit)とはなんですか? | アズワン よくあるご質問
ここが多くの医療従事者が混乱しやすいポイントです。実は「FTU」という略語は、全く異なる2つの概念に使われています。濁度の単位「Formazin Turbidity Unit」と、皮膚外用薬の塗布量の目安「Finger Tip Unit(フィンガーチップユニット)」です。意外ですね。
Finger Tip UnitのFTUとは、口径5mmの軟膏チューブから成人の人差し指の先端〜第一関節まで絞り出した量、すなわち約0.5gを「1FTU」と定義したものです。1994年にLong & Finlay(英国)が提唱した概念で、その後世界中の皮膚科臨床で広く採用されています。
この1FTUの量で、成人の手のひら2枚分(体表面積の約2%)に塗るのが適切とされています。体の部位別に必要なFTU数をまとめると以下のとおりです。
なぜこの知識が医療従事者にとって重要なのでしょうか?理由は、外用薬の塗布量が不十分だと薬効が不十分になり、治療期間が長引くからです。実際、ステロイド外用剤においては塗布量が少なすぎると炎症が繰り返し再燃し、結果的にステロイド総使用量が増えるというパラドックスが生じます。つまり「薄く塗る=安全」ではないということです。
注意が必要なのはチューブのサイズによる違いです。25〜50gの大きいチューブでは一押し0.5g前後ですが、5gの小さいチューブでは第一関節まで2回押し出してようやく約0.5gになります。患者への服薬指導の際には、チューブのサイズも考慮した説明が求められます。
また、1FTU=0.5gというのはあくまで「口径5mmのチューブ」が前提です。製品によってチューブ口径が異なると実際の重量は変わります。厳密な量の確認が必要な場合は、各製品の添付文書やインタビューフォームを参照してください。
参考:Finger Tip Unit(FTU)の詳細と部位別使用量については日本皮膚科学会のQ&Aにも掲載されています。
Q3 軟膏やクリームを塗る量はどのくらい? | 皮膚科Q&A(日本皮膚科学会)
FTUで表す濁度の値は、測定機器の原理によって数値が変わることがあります。これが現場での「数値のズレ」の原因になりやすいです。
濁度計の主な測定方式は3種類あります。
① 透過散乱光方式
光源から試料に光を照射し、透過光と散乱光を同時に検出して比率から濁度を算出する方法です。現在の現場計測で最も広く使われている標準的な方式です。FTUで表示できる機器が多く、環境水の監視や工場排水管理に適しています。
② 散乱光方式(ネフェロメトリー)
試料に入射した光の散乱光(多くは90°方向)だけを測定する方式です。ISO 7027に基づく機器はこの方式で、単位はFNUとなります。微粒子量が少ない低濁度液体(純水や精製水)の測定に特に優れています。医薬品の溶液品質管理や、飲料水・透析用水の精密管理に向いています。
③ 積分球方式
試料への入射光を積分球内で受光・積算する方法です。試料の色の影響を受けにくいという利点がありますが、試験室での静置測定が前提となります。機器のメンテナンス負荷が高いため、研究・品質管理ラボ向きです。
測定方式が違うと、同じ試料でも数値が異なる場合があります。特に、後方散乱方式(FBU)と側方散乱方式(FNU)では自然水中の測定値が一致しないことが2007年以降のASTM委員会の調査で明らかになっています。機器を選定する際は「どの単位を使うか」「どの測定方式か」を必ずセットで確認することが条件です。
医療施設の透析室や中央滅菌室で濁度計を使用する場合、測定対象の水が「ほぼ無色透明に近い低濁度」であることが多いです。そのような場合はISO 7027準拠の散乱光式(FNU表示)の機器が高感度で適しています。FTUとFNUは数値的に近い場合が多いですが、厳密には異なる単位です。両者を混用しないよう、院内の水質管理マニュアルに使用機器と単位を明記しておくと安全です。
| 測定方式 | 対応単位 | 特徴 | 適した用途 |
|---|---|---|---|
| 透過散乱光方式 | FTU / NTU | 汎用性が高い | 環境水・排水管理 |
| 散乱光方式(90°) | FNU | 低濁度で高感度 | 飲料水・医療用水・医薬品 |
| 後方散乱方式 | FBU | オンライン連続測定向き | 河川・ダム・高濁度排水 |
| 積分球方式 | NTU / FTU | 色の影響を受けにくい | 研究ラボ・品質管理室 |
医薬品の品質管理においてFTUは非常に身近な単位です。日本薬局方(第十八改正)には、医薬品各条の純度試験として「溶状」という項目があり、ここで液体医薬品や注射剤の濁りの程度をFTUで規定しています。
たとえば、特定の注射剤のインタビューフォームを見ると、安定性試験の「溶状(濁度)(FTU)」という数値が時系列で記載されています。製造後の経時変化で濁度が規格値を超えた場合、その製剤は患者に投与してはいけません。これは品質規格です。
透析治療との関係も非常に重要です。透析用水(RO水)は、患者の血液と直接接触する透析液の原料となるため、水道水よりもはるかに厳格な水質基準が課されています。日本透析医学会の2016年版透析液水質基準では、原水として水道水を使用することが前提とされており、水道水の濁度基準(1度以下)より高い清浄度が求められます。
透析室での水質管理として、少なくとも以下の点を確認しておくことが推奨されます。
注目すべき点は、「水道水の濁度が低ければ透析用水も安全」という考え方が成立しないことです。透析用水の安全性は濁度だけでなく、エンドトキシン(0.050EU/mL未満が超純水透析液基準)や生菌数(標準透析液で100 CFU/mL未満)で総合的に判断されます。濁度はあくまで「入り口の指標の一つ」に過ぎないということですね。
参考:日本透析医学会が策定した透析用水の水質管理基準。
ここまで解説してきたように、FTUという略語には「濁度単位(Formazin Turbidity Unit)」と「外用薬塗布量(Finger Tip Unit)」という2つの意味があります。医療文書の読み取りや患者指導の場面で混乱しないための、実践的なポイントをまとめます。これは使えそうです。
文書を読むときの見分け方
FTUが使われている文脈から判断します。インタビューフォームや薬局方関連の品質データ、水質管理書類に記載されている「FTU」はほぼ例外なく「Formazin Turbidity Unit」です。一方、処方箋の備考欄、皮膚科の外来指示書、患者向け説明書などに登場する「FTU」は「Finger Tip Unit」です。前後の文脈と単位の後に続く数値のスケールも判断材料になります(濁度FTUは0.1〜数百の範囲、外用薬FTUは1〜10前後)。
患者への服薬指導で注意すること
外用薬の指導時に「1FTUとは指先1本分の量です」と説明する際、患者が使用中のチューブのサイズを必ず確認してください。5gの小チューブと50gの大チューブでは1FTUを絞り出す量感が全く違います。5gの場合は「指先〜関節まで2回押し出した量」と補足説明を加えると誤差を防げます。
院内マニュアル整備のポイント
水質管理マニュアルや医薬品品質管理の院内文書を作成・見直す際には、FTUの定義を明記することを強く推奨します。単に「FTU」と書くだけでなく「FTU(Formazin Turbidity Unit、ホルマジン濁度単位)」と略語の展開を記載する習慣が、後任者への引き継ぎミスを防ぎます。これが原則です。
濁度計を使用するすべての職員へ
濁度計の機器更新や新規導入を行う際、旧機器と新機器の単位表記(FTU・NTU・FNUなど)が一致しているか確認してください。同じ試料でも測定方式が変わると数値が異なる場合があります。機器切り替えの際は、旧機器と新機器で同じ試料を並行測定し、相関を確認するバリデーション作業が必要です。導入前にメーカーへの問い合わせや、施設内の臨床工学技士・薬剤師との連携を行うことが推奨されます。
参考:濁度単位の違い(FTU・NTU・FBU・FNUなど)とセンサー技術の対応について詳しく解説されています。
FTU、FNU など、使用されるさまざまな濁度単位の違いは何ですか? | Campbell Scientific Japan
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