「高性能なhepaフィルター空気清浄機を置くだけでは、院内感染リスクがむしろ高まる場合があります。」
HEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)とは、0.3μmの粒子を99.97%以上捕集できると規定された高性能フィルターです。ウイルスの多くは単体では0.1μm以下ですが、飛沫や水分・ホコリに付着した「エアロゾル粒子」として空気中を漂うため、HEPAフィルターが有効に機能します。
東京大学医科学研究所の研究では、HEPAフィルター搭載の空気清浄機を稼働させると、空間中の感染性SARS-CoV-2エアロゾルが約36分で99.9%以上減少することが確認されています。これは換気だけに頼るより大幅に速い数値です。
厚生労働省も「HEPAフィルタ方式の空気清浄機に、空気中のウイルスを低減させる効果があることは明らかである」と公式に認めています。結論は、HEPAフィルター搭載機は医療現場で有効な感染対策ツールです。
ただし注意が必要です。機器の性能が活きるかどうかは「選び方」と「使い方」次第であり、ただ置くだけでは期待する効果は出ません。医療従事者がこの機器を正しく理解して運用することが、院内感染リスクを下げる第一歩になります。
参考:HEPAフィルターによる感染性SARS-CoV-2エアロゾルの除去に関する東京大学の研究
東京大学医科学研究所|HEPAフィルターによるエアロゾル中の感染性新型コロナウイルス除去効果の定量的評価
参考:厚生労働省によるHEPAフィルター空気清浄機の感染対策効果に関する公式見解
厚生労働省|建築物衛生管理に関する検討会報告書(HEPAフィルタ方式の空気清浄機について)
カタログに記載されている「適用床面積」の数値を、そのまま設置する部屋の広さとイコールで考えていませんか。これが最も多い選択ミスです。
「適用床面積」はJEM1467(日本電機工業会規格)に基づく数値で、タバコ5本分の煙を30分以内に清浄できる広さを示しています。つまり「30分かけてきれいにする」ための理想条件での測定値です。感染症対策が求められる医療現場では、30分では遅すぎます。
クリニックや病院での導入では、実際に使用する部屋面積の2〜3倍の適用床面積を持つ機種を選ぶのが業界基準です。例えば20畳の待合室に空気清浄機を設置するなら、適用床面積40畳以上のモデルが必要ということになります。これは一般家庭用の基準と大きく異なるポイントです。
さらに、厚生労働省の推奨条件として「風量5.0m³/分程度以上のHEPAフィルター搭載機」という基準が示されています。この条件を満たすかどうかも、機種選定時に必ず確認してください。感染症対策上の換気補完として認められる数値です。
業務用と家庭用の主な違いは、適用床面積と風量の大きさにあります。クリニックの待合室や診察室など、不特定多数の人が出入りする環境では、家庭用の流用は推奨されません。業務用として設計された機種を選ぶことが、信頼性の確保につながります。
参考:クリニックでの空気清浄機選びと適用床面積の考え方
開業医サポート|クリニックの新たな必需品!空気清浄機の選び方のポイント
機種選定と同じくらい重要なのが「設置場所」です。意外ですね。正しい設置でないと、せっかくのHEPAフィルターの性能が大幅に損なわれます。
まず、壁際や隅への設置はNGです。空気清浄機の吸い込み口・吹き出し口が壁や家具でふさがれると、空気の循環効率が大きく低下します。一般的にメーカーは「左右と上方は30cm以上、後方は1cm以上」の間隔を推奨しています。待合室や診察室では可能な限り部屋の中央寄りに設置する意識を持ちましょう。
次に、外気が入ってくるドアや窓の近くも避けるべき場所です。外からの空気の流れが空気清浄機のセンサーに干渉し、誤作動や効率低下の原因になります。これは実際のクリニック設置でも見落とされがちなポイントです。
より効果を高めるには、サーキュレーターとの併用が有効です。空気清浄機の対角線上にサーキュレーターを配置すると、部屋全体の空気を効率的に循環させられます。特に広い待合室では、1台の空気清浄機だけでカバーしきれない「空気の淀み」が発生するため、補助的に空気を動かす工夫が重要です。
複数台設置する場合も、同じ場所に集中させるより部屋の対角に分散させる方が効果的です。これが原則です。
また、エアコンとの併用時は直接エアコンの吹き出し風が当たる位置を避けることも必要です。暖房時は温かい空気が機器内を通り過ぎてしまい、フィルター通過効率が落ちます。設置後は実際に気流を確認し、必要に応じて位置を微調整することが望ましいです。
フィルター交換のタイミングを誤ると、空気清浄機が院内感染の「発生源」になることがあります。これが最も重大なリスクです。
病院・クリニック環境では、一般家庭より格段に多くの病原体・粉塵・有機物がフィルターに蓄積します。福岡市内の医療施設での実態報告では、HEPAフィルターの目詰まりによる風量低下が起き、通常6ヶ月〜1年での定期交換が必要とされています。家庭用の「5年交換不要」という感覚をそのまま持ち込むのは危険です。
プレフィルター(外側の粗いフィルター)の管理も見逃せません。月1回の掃除機での清掃・交換を行うことで、HEPAフィルター本体への負荷を大幅に軽減できます。プレフィルターを管理しない場合、HEPAフィルターの寿命が半年以下になるケースも報告されています。
フィルター交換時の注意点も見落としがちです。交換作業の際にフィルターを素手で触ったり、捕集された粒子を振るい落としたりすると、病原体が再び室内に拡散するリスクがあります。交換時は手袋・マスクを着用し、使用済みフィルターはそのまま密封廃棄するのが正しい手順です。
機器メーカーが提供するリースサービスやメンテナンス契約の利用も有効な選択肢です。例えばパナソニックの「ジアイーノ」では月額4,400円の定額利用サービスがあり、フィルター交換を含むメンテナンスをプロに任せることができます。院内スタッフの管理負担を減らしながら、確実なメンテナンスサイクルを維持する方法として検討する価値があります。
参考:病院環境でのHEPAフィルター交換頻度と管理方法の実態
九州冷熱工業|福岡市の医療施設向け空調設備工事とHEPAフィルター管理
HEPAフィルター空気清浄機は「換気の代替」ではなく「換気の補完」として使うのが原則です。ここを混同すると、感染対策に大きな穴が開きます。
厚生労働省は感染対策として「1時間に2回以上の換気(30分に1回以上、数分間窓を全開)」を求めています。窓開けによる自然換気が困難な冬季や、窓のない診察室などでは、HEPAフィルター空気清浄機が「相当換気」として換気不足を補う手段として認められています。つまり換気が十分にできる状況でも、できない状況でも、HEPAフィルターの役割は存在します。
感染症対策での換気回数の目安として、一般診察室では1時間6回以上、隔離透析室では1時間12回以上の空気入替が推奨されています。これは「1時間で部屋の空気がすべて入れ替わる回数」のことです。例えば30m³の診察室で1時間12回の換気を確保するには、毎時360m³以上の風量が必要になります。これだけの風量を空気清浄機1台でカバーするのは難しく、複数台の導入や換気設備との組み合わせが現実的です。
また、ULPAフィルター(Ultra Low Penetration Air Filter)という選択肢もあります。HEPAフィルターが0.3μm粒子に対し99.97%の捕集率であるのに対し、ULPAは0.15μm粒子に対し99.9995%という超高性能フィルターです。フクダ電子の「FDSシリーズ」などが医療機器メーカーとして開発した製品で、さらに高水準の清浄が求められる手術室周辺での活用事例があります。これは使えそうです。
HEPAフィルター空気清浄機の導入は、あくまで換気・手洗い・マスク着用などの基本的感染対策と組み合わせてはじめて最大の効果を発揮します。「空気清浄機を置いたから安心」という認識は避け、総合的な感染管理プロトコルの一部として位置づけることが重要です。
参考:厚生労働省によるHEPAフィルター搭載空気清浄機の換気補完効果に関する記述
厚生労働省|建築物衛生管理に関する検討会報告書(換気とHEPAフィルター空気清浄機の関係)
参考:感染症対策における換気回数と空気清浄機の風量計算の考え方
T-Iトレーディング|感染症対策用HEPAフィルター付空気清浄機(陰圧対応)製品情報

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